昨日二件もご感想を頂きました。本当に嬉しいです、ありがとうございます! 早速小躍りして大はしゃぎしました!
そしてやる気ももりもりですのでこれからもコウキたちの物語をよろしくお願いします!
そして今回は幼少期のミウこと美海です! 今と比べると幼くて可愛いですね!
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私が悪いんだ。
千智ちゃんはあの後すぐに到着した救急車に運ばれていった。そしてすぐに手術が施されて──なんとか一命を取り留めた。でも3日が経った今でもまだ意識が戻らない。脳の一部に損傷があると聞かされた。今後目覚めるかどうかは……正直、お医者さんにも分からないらしい。
私が悪いんだ。
千智ちゃんを轢いた車の運転手さんは、その直前に心臓発作を起こして意識を失っていて千智ちゃんを轢いてしまったらしい。
運転手さんも駆けつけた救急隊員さんの迅速な救助のおかげで一命を取り留めたらしい。つまり、あの事故は死傷者ゼロで終わったという事になる、一応。
私が悪いんだ。
その後、唯1人現場に居合わせた参考人として私は警察の人に詳しい当時の状況なんかを聞かれた。と言っても私は事故当時、本当に見ていることしかできなかった。だから大したことは何も話せなかったけど。
私が悪いんだ。
その後2日ほど私は学校をお休みした。病院の先生に心のダメージを心配されたからだとお母さんから聞いた。
私が、悪いんだ。
そうして今日は3日ぶりの登校日。家族には本当に大丈夫なのかと心配されたけど体調も悪くないのにいつまでも休んでいるわけにもいかない。
……私が、あの時千智ちゃんの手を引いていられたら、こんなに多くの人に迷惑をかけなかった。千智ちゃんも傷つかなかったし、皆何事もなく日常を送れていた。
それを壊したのは私だ。千智ちゃんを傷つけたのも私だ。警察でも病院でも家族にも美海は悪くないって言われたけど、そんなわけがない。もちろん病気だった運転手さんも悪くない。悪いのは私だけだ。
クラスで、学校で謝ろうと思った。全部私が悪いと。千智ちゃんの他の友達や学校の皆に。迷惑をかけてごめんなさいって。
そんな覚悟を持って登校して、靴を履き替え、教室の前に来る。
謝るんだ。何を言われても私にできることはそれだけしかない。
意を決して、教室の扉を開ける。
教室の中は私が姿を見せるとシン……と静まり返った。
視線が痛い。でも、それだって当然の報いだ。とにかく謝らないとと大きく息を吸った──瞬間、
「美海、大丈夫だったか!?」
「え……?」
「美海ちゃん怪我とかしてない!? 元気になった!?」
「よかったなぁ、大野学校に来れて。ずっと心配してたんだぞ?」
皆が集まってきて各々が思い思いに私を心配し、安心し、笑顔になる。
なに、これ、ちょっと待ってほしい。
「ちょっと、待って、私皆に謝ろうと思って」
「謝る? なんで?」
「だ、だって、私のせいで千智ちゃんが大怪我しちゃって、それに皆にも迷惑かけちゃって……」
そうだ。私があの時ちゃんとしていれば──しかし、そんな私の思いは。
「なぁんだ、そんなことか」
「大丈夫だよ、こうやって美海ちゃんが出てきてくれたから!」
「そりゃあ千智ちゃんのことはショックだったけど、美海ちゃんだけでも無事でよかった」
「美海ちゃんが気にすることじゃないって、美海ちゃんは悪くないよ!」
誰にも、届かない。
そんなわけがない。私があの時手を引かなかったから、私があの日遊びに行ったから。私が千智ちゃんと約束したから──。
誰か、誰かいないのか。誰か私のことを正しく罰してくれる人は。
囲んでくる皆を見るが誰も彼も私のことを心配し、安心し、笑わせようとしてくる人ばかり。
違う、違う違う違う違う違う違う違う違う!!!! そんなことをしに来たんじゃない!
私は、私は……!
「あ、美海ちゃん!!」
千智ちゃんへの罪悪感と不甲斐なさと、現状への吐き気が抑えられなくなって私は教室を走って後にする。
すれ違う人、先生、誰も彼もが私のことを心配そうに見て、怪我がないことを確認すれば安心したように笑う。
違う! 違うの!!
家でも病院でも警察でも学校でも! 君は悪くないよって、仕方がないことだって、君だけでも無事で本当に良かったって、そんなことばかり!! 私は慰められたいんじゃない!!
私は、ただ、取り返しがつかないことをしてしまったことを、せめて謝りたくて──
「──美海ちゃん?」
その声に、私の心臓は飛び跳ね、足が急停止する。
がむしゃらに走っていたらいつの間にか職員玄関の前に来ていたようだ。
そこにいたのは少し驚いたように私の名前を呼んだ、千智ちゃんのお母さん。
「ごめん、なさい……」
やっと、ちゃんと、謝れる。
「ごめんなさい! 私のせいで千智ちゃんに大怪我させちゃってごめんなさい。何回謝っても足りないと思うけど、それでも、本当にごめんなさい!!」
詰まっていたものが吐き出るように私は一呼吸に一気に言葉を綴る。
そうでもしないともう押し潰されそうだった。自分がどうにかなってしまいそうだった。こんなことをしても千智ちゃんの怪我がなかったことになるわけでもない。それでも謝ることもできないのはあまりに辛すぎる。
本当に大事な友達だったからこそ、私は私の誠意を、少しでも見せたくて。
そんな私の言葉に、千智ちゃんのお母さんは。
「……ごめんなさい」
ぎゅっと、私の体を包み込むように優しく抱きしめてきた。
温かく、優しい香りが私を包む。
「ごめんなさい、私、自分のことばかりで、美海ちゃんがそんなに自分のことを責めていたなんて知らなくて……気付けなくてごめんなさい」
優しい言葉が、優しい気持ちが、私の心を癒そうとしてくる。
誰もが、私に優しくする。私に笑ってほしいと誰もが願う。
──
そうか。そうだったんだ。
「あは」
私は、笑っていればいいんだ。なぁんだ、簡単なことじゃないか。
千智ちゃんにも言われたし、皆にも言われるし、笑っていればいんだ。だって、皆がそれを望むんだから。
皆への申し訳なさがあって、責任を取りたいなら、皆が望む通りにすればいい。笑っていれば皆も安心して笑ってくれるんだから。
千智ちゃんに罪悪感があって、責任を取りたいなら、千智ちゃんが笑えていたはずの分、私が笑えばいい。千智ちゃんが作っていたはずのお菓子の分、私が作ればいい。千智ちゃんを助けられなかったことを悔やむなら──これから目の前で困っている人を、全て助ければいい。
いや、そうしないといけない。そうしないと私は自分を許せなくなる。
いつでもどこでも笑っていればいい。いつでもどこでも助け続ければいい。
それが、私自身への罰。
あはは、簡単なことじゃないか。
うんそうしよう。それが良い。あはは、目の前が一気に明るくなった気がする。目標ができるだけでこんなにも世界は見え方が変わってくるんだ。
もちろん、申し訳なさも、罪悪感も、変わらず重石として私にのし掛かっている。あまりの重さに潰れてしまいそうなほどに。
それでも、これが私の在り方だと、断言できる。
「──あはは、あはははっははははっはははっははは!!」
私は泣きながら笑い続けた、いつまでも、いつまでも。
SIDE Kouki
「──だから、私は私を罰し続けるよ。いつまでもいつまでも。これは私の罪だから。コウキに一緒に背負ってもらうなんてできないし、したくない」
過去の話を語り、そう締めくくったミウの言葉には重みがあった。
俺なんかとは違う、自分の過去に向き合って自分でしっかりと答えを出している。
その答えはきっとミウの中で不変なもので、絶対的なものなんだろう。
そこまで分かっていて、俺は自分自身に問う。
覚悟は良いか、と。今から俺はミウを傷つけるかもしれないぞ、と。
その問いに俺は即答する。傷つける覚悟でミウを助ける、助けてみせる、と。
「なら、俺はそんなミウの考えを否定するよ」
「は……」
あまりにも意外だったのだろう、俺の宣言に唖然とした表情を見せるミウ。
そしてすぐに髪の毛が逆立つほどの怒りを見せたかと思えば、それをすぐに抑え込む。
「……やっぱり、分からないよね。分かってるよ、考え方が異常なことくらい。それでも私はこの生き方をやめない。それが今も目覚めてない千智ちゃんへの贖罪なんだから」
「そんなもの、贖罪なんかじゃない。ミウの自己満足だ」
絞り出すように言葉を紡いだミウを一刀両断する。
確かに、話を聞いただけじゃミウの気持ちの全てを分かってあげることはできない。前にミウに言ってもらった通り、俺はミウじゃないのだから。でも、だからこそ言えることがある。違う答えを導き出せる。
「ミウはただ楽になりたいだけだろ。それは罰にはならないよ」
さらに追い討ちをかけるような言葉。それにいよいよミウの怒りが沸点を超える。
「なにそれ、なんでそんなこと言うの!? コウキにあの時の私のなにが分かるの!?」
「分からないさ、分からないからこうして手を伸ばしてるんだろ! ミウを本当の意味で救うために!」
「だから言ってるでしょ!? 私は救いなんかいらない。私が欲しいのは罰なんだから。誰も彼もが私を許すなら、私は私を許さない、絶対に!」
「許す許さないじゃないんだよ! ミウのそれは罰を受けることで許されたがっているミウの甘えだ!」
「な…….甘えなんて、そんなこと」
ミウの勢いがそこで削がれる。その隙をついて俺はさらにミウの覚悟を壊していく。
「あるだろ! 誰からも罰を与えられないから自分を罰する? 違うんだよ、自分を罰するのは代替行為なんかじゃない。確定事項なんだよ。その上に誰かからの罰があるからこそ、人は罪を償えるんだ!」
「だから! それが貰えないから私は私自身で……」
「じゃあ、それがミウが与えられた罰なんだよ」
「それ……?」
「誰からも罰をもらえないっていうのが罰なんだよ。ミウはそれから逃げたいから自分を罰してるんだろ?」
「そんな、そんなの、だって、あんなのをずっと続けるなんて、私には──」
今にも泣き出してしまいそうな、まるで小学2年生の当時のミウが出てきたかのような顔をする。
正直、きついことを言っている自覚はある。本当なら気楽に構えるところを、ミウは持ち前の正義感で自分を殺し続けてしまっている。
でも、どれだけ自分にきついことを課しているとしても、それは罰にはならない。甘えだ。
「だって、罰があるから怖くても頑張れた。悲しくても耐えられた。痛くても我慢できた。心折れそうでも堪えてきた……でも、これが違うのなら私はどうすればいいの……?」
「助けてって言えばいい。怖がればいい、耐えなくてもいいんだよ。ミウが今まで助けてきた人たちのように助けてって言えばいいんだよ」
「そんなのできるわけがない! 千智ちゃんを助けられなかった私に誰かに助けられる資格なんて──」
「助けられるのに、資格なんているはずがないだろ!!」
本当にいつもと逆の立場だなと荒げる声と別に冷静な自分が考える。
屁理屈を捏ねる俺に、真っ直ぐに正面から言葉をかけてくれるミウ。真逆も良いところだ。
でも、それで良いと思う。いつも俺を導いてくれるミウを、他でもない俺自身の手で助けたい。
「ミウだって助けを求めて良いんだ。自分を助けようとして良いんだ。誰がなんて言おうとも、ミウ自身が言おうとも、ミウは助かってもいいし、俺はミウを助ける」
そもそも考えれば、おかしな話なんだ。
俺と同じ14歳。死への恐怖がないはずがない。人の悪意が怖くないはずがない。自分を騙し、殺し続けない限り。そんな簡単なことにも気付けなかった自分自身も腹立たしいが、自省は後回しだ。
今は、目の前で助けを求めている女の子を助けたいんだ。
「なんで、そこまで……」
「それが、俺の願いだからだよ」
今まで何回もミウの顔が曇る瞬間を見てきた。もうあんなものはたくさんだ。
ミウには笑っていてもらいたい、でもそれは泣いちゃいけないこととイコールじゃない。
ミウだって泣いても良いんだ。笑うことしか許されない人生なんて、そんなもの、俺が壊してやる。
「ミウが罰を欲しているのなら、俺がミウを罰するよ。千智ちゃんのことは、どうしようもないけど。ミレーシャさんのことは違う。あれは俺だって当事者だ。俺も、ミウと同じ、ミレーシャさんに助けられて、ミレーシャさんを助けられなかった」
「コウキ……」
「だから、俺の恩人を殺す一因になったミウを恨み続けるよ、ずっと。そしてそれと同じくらい、俺は誰かを助けることで自分を罰し続けたミウを許し続けるよ」
俺は、ミウに手を差し出す。今後ずっと、ミウを
ミウは堪えきれないとばかりに大粒の涙をこぼし始める。まるで今まで耐えてきたものを全て解放していくかのように。
「コウキ、私、良いのかな、自由に生きても」
「当たり前だ。誰もミウのことを縛りつけたりしてないんだから。生きたいように自由に生きればいいんだよ」
「コウキ、コウキィ……っ、ひ、うぁぁ……っ」
ミウの泣き声が深夜の街に吸い込まれていく。
俺は泣きながらも握り返された手の温かさを離さないためにも強く握り、ミウを見守り続けた。
「コウキにめちゃくちゃ泣かされた」
「ものすっごい誤解を招きそうな言い方だな……」
まだ鼻を啜るような音は聞こえるが、とりあえず泣き止んだミウは泣き疲れたのか俺の肩に頭を預けながらもずっとむくれて拗ねていた。
拗ねているのにくっついてくるとはこれいかに。未だにミウの考えは不思議でいっぱいだ。
「なんか馬鹿にしてるよね?」
「してないですしてないです」
こんな状態でもサラリと心を読んでくるのが怖い。
とはいえだからと言ってミウを突き放すわけにもいかないし、前に俺が全力で泣いた時のお返しということで納得しておこう……明日またミウの顔見れなくなりそうだけど。
「……ねぇ、コウキ」
「ん?」
「コウキは、私とずっと一緒にいてくれるの? 私をずっと、罰し続けてくれるの?」
「あぁ、いるよ。ずっと。ミウを1人にしたらまたなにし出すか分かんなくてこっちが不安で眠れなくなる」
「やっぱり馬鹿にしてる」
「だからしてないって。どんな形であれ、俺はミウからは離れないよ。ミウが困ってる時、1番に助けたいしな」
「それが、今回だった?」
「そういうこと。あのままじゃミウがいつか擦り潰れるまで自分を殺し続けそうだったから」
「うん……うん、そうだね。そういう気持ちはあったよ。いや、今も私の中にある。私は、やっぱり私を許せないから」
ミウが頭を預けたままどこか遠くを見る。目の前を流れる川を見ているのか、それとも在りし日の出来事を見ているのか。
俺には分からない。でも、大事なのは、今のミウがどうするかだ。
「俺もさ、まだまだ自分を許せそうにないよ。もしかしたら一生このままかもしれない。それでも、変わろうとする意思そのものがとても大事なものなんだって思うよ。だからさ──」
言葉を切り少し体を離せばミウと正面から向き合う。
「──俺と一緒に変わっていかないか? お互いがお互いを見続けてさ。違う方向に行きそうになったら繋いでる手で引き止めて、一緒に進んで行くのは、ダメかな?」
「……なに、それ」
クスリ、とミウが笑う。同時に僅かに頬が赤みがかるのが分かる。そしてきっと俺もそうなっているのも。そして、この言葉が、今日のこの行動が、どういう感情から由来したものかも、いい加減俺も正面から見つめるべきだと言うことも。
ミウは空を見上げ、ふーっと大きく息を吐いた。まるで今まで溜めていた何かを空へと還すかのように。そうして上を見上げたままミウは言う。
「……きっと、これからも私は私を罰し続ける。コウキと同じで、これは一生続くかもしれない。それでも、それを全部背負って、目を背けないでいくよ。今まで逃げてきた分も、しっかり背負って。だから……コウキ、こんな私の人生でよければ、むしろ私の方から一緒に進ませて。私は弱いから、きっとすぐに逃げようとしちゃうから、しっかり捕まえておいて」
「もちろん。ミウの隣に立つことに関しては誰よりも自信があるよ」
そこまで言って、互いに吹き出し、声を上げて笑い始める。
あぁ、重い。吸う空気があまり美味しくない。でもそれで良いんだ。それこそが、俺たちが選んだ業の道。俺もミウも、やっと正面から自分の罪に向き合っていけることが嬉しくて誇らしくて、カッコ悪い自分たちに笑いが止まらなかった。
お気に入り、感想、評価、もらえるだけ作者がとてもめちゃくちゃ大喜びしてはしゃぎ踊りますのでどうかお願いします。
それとイラストですが、こちらも感想等あれば欲しいです。知人が大喜びします。