WAR1 地球連合
ーーCE70年.2月14日
地球連合軍による『Z.A.F.T』の『プラント』コロニーへのに侵攻作戦。その際に壊滅したコロニー『ユニウスセブン』からその後の有史において俗に『血のバレンタイン』と呼ばれることとなった。
事の発端となる事件が2月5日に発生した。『コペルニクスの悲劇』。地球連合によるプラント側との交渉の場として選ばれた月面での会議。通称『月面会議』参加予定者であった地球側の国連理事国代表者、並びに国連総長以下の各国首脳陣を含めた複数の人間が『コペルニクス』での爆弾テロにより死亡した。
この事件発生時プラント代表者である前議長『シーゲル・クライン』は移動用のシャトルの故障により会議出席に遅れていたこともあり難を逃れていた。
ーー2月7日
事件から二日後。プラント代表の会議への遅刻。まるで始めから出席が遅れることを知っていたかのように狙いすまされた爆弾テロ。地球側は出来すぎた事象から爆弾テロの犯行をプラントの過激派によるものだと断定。これをプラントによる人類に対する宣戦布告行為であるとし、批判した。
地球側は『アラスカ宣言』をし、新政府組織『地球連合』を結成した。
これに対してプラントは事件の犯行をプラント過激派ではないと否定。両陣営の間に再び亀裂が生じる。
プラントとの和解を目的とした会議が奇しくも両陣営の溝を更に深めることになったとは誰も思っていなかった。
だが、地球では元々プラント......強いては『コーディネイター』に対する偏見、軋轢、差別意識が根強い。
しかしなが、全ての『人類』が『コーディネイター』に対して否定的ではないのも事実。例として挙げれば『アスハ宣言』により独立、中立を宣言した『オーブ』の『アスハ』がそれに当たる。
コーディネイター、人類関係なしにオーブはアスハの宣言とその理念に基づき全てを受け入れていた。穏健派な人類はオーブに渡りコーディネイターと共に生活していると聞く。
しかし大多数の人類がコーディネイターに否定的な意見を持っている。
作られた身でありながら創造主たる人類を見下し、あたかも自分達が本物であるかのように思い上がっている。
始まりのコーディネイター『ジョージ・グレン』も我々人類が創造した生命体。奴らコーディネイターはジョージ・グレンと変わらない模造品に過ぎない。
なのにいつしかコーディネイター達は我々の保護から離れ独自に数を増やし、宇宙へと巣立った。そして再び地球へ戻ってきた。そして人類を格下だと嘲笑い始めた。
勝手に出ていき、勝手に戻ってきていながら人類を見下すその態度に苦渋を舐めさせられた人間は多い。
認めたくないが、奴らコーディネイターは『遺伝子操作』により能力を意のままに調整が可能であった。自然な命から生まれる我ら人類とは違い奴らは全てを選べる。結果的に人間は劣ってしまっている。
逆をつけば奴らは天然な存在ではない人工物。我々人類とは違い、人間ではない。付け上がったコーディネイター達と我々人間との確執は日に日に膨れ上がっていった。
そして起きたコペルニクスの悲劇。この犯行をコーディネイターと仲良しこよしをしている連中は、地球連合によるコーディネイターとの確執を決定付けるための出来レースだと抜かしている。当然そんな発言をする輩は身柄を拘束され、徹底的な教育を施されるが、そういった連中は一向に減らない。
膨れ上がった反コーディネイター意識は遂に人類とコーディネイターの争いに終止符を打つ出発点へと至った。
ーー2月11日
地球連合がプラントに対して宣戦布告をし戦争が始まった。
月面基地プトレイマオスからプラントに向け地球連合軍が侵攻を開始。
そして血のバレンタインとなった2月14日。圧倒的戦力を有する地球連合軍であったが、プラントが開発した機動兵器『MS』の前に地球連合軍は壊滅的打撃を受けることとなった。
これが人類にとって初のMSとの遭遇でもあった。機動性、運動性、汎用性の何から何までが圧倒的であったMS。それら高性能なMSを多数生産、保有していたことから、コーディネイターが地球に侵略する意思があったことは明白。
更に卑劣な奴らは地球連合軍を惑わすために自らのコロニーの一つであるユニウスセブンを自爆作戦の捨てゴマとして扱い、自爆作戦の犠牲を地球連合軍によるものだと批判した。この目的は反ナチュラル意識をコーディネイター全体に植え付けるためのもの。
当然地球連合は猛反発。だが、プラントは聞く耳を持たなかった。
そしてプラント内ではプラント最高評議会議長が交代。シーゲル・クラインから『パトリック・ザラ』へ。パトリック・ザラは生粋の反ナチュラル派。自らの作戦で使用したユニウスセブンの犠牲者達のともらいと称し地球に核反応を抑える『Nジャマー』を2月22日の『世界樹攻防戦』で投下。
これにより地球上では核兵器、核分裂エンジンが使用不能に陥った。何よりも原子力発電が不可能となったことが地球経済に深刻なダメージを与え、エネルギー不足により地球上では餓死者も多数出た。
その他にもNジャマーの副作用として電波の伝達を阻害し、長距離通信が不能となった。携帯電話もレーダーも役に立たない。
電波誘導による近代的兵器を多数導入していた地球連合軍もその影響を受けた。長距離通信手段とレーダーを失ったことで戦争は再び有視界での戦闘を余儀なくされた。
ここでも活躍するのがMSであった。有視界での戦闘を想定して開発されていたMS。奴らは血のバレンタインを利用し、大義名分の元にNジャマーを投下し、大打撃を受けた地球を一掃するつもりだったのだ。
全て血のバレンタイン以前から計画されていたこと。挙げ句の果てにパトリック・ザラはナチュラルへの裁きだと公言した。
これを受けて地球内の反コーディネイター感情は爆発。地球上のほとんど全ての国家が地球連合に賛同。コーディネイターへの粛清が始まった。
◆ ◆ ◆
ーーCE71年5月25日
その日はやけに暑かった。まだ5月終盤だってのに夏並みの気温と湿気があった。梅雨時でもないのにだ。
蒸れた軍服を掴み前後に揺すりながら一時的に軍服内に風を発生させる。気休め程度だが何もしないよりはましだった。
「敵さんはいないな」
現在俺が所属する地球連合軍第13独立機動部隊は、アフリカの前線基地で補給を受けていた。
交代で哨戒に辺りながら俺達は次の作戦指令を待っていた。
地球連合軍に入隊して2年。ZAFTのコーディネイター達を根絶やしにするために入隊した。奴らを根絶やしにするためにも実戦が待ち遠しかった。
「それよりも聞いたか? 何でもパナマ基地に地球軍製のMSが配備されているらしいぜ?」
「何? 本当かそれは?」
地球連合軍は開戦から2年経った今でもMSを有していなかった。いや、正確には地球軍製のMSは開発されていた。詳しくは知らないが太平洋連邦とモルゲンレーテ社が合同でMS開発に着手。それを資源衛星へリオポリスで極秘で行っていたらしい。
ところが、その情報がZAFTに漏れてしまいへリオポリスは襲撃され開発されていたMS5機の内の4機を奪取された。内1機は奪取を逃れたが、奪取されな4機はZAFTの戦力として投入されていると聞く。
人のもの盗んで平気で使う盗人どもが......それにあのコロニーは中立国であるオーブ所属。中立国のコロニーを平気で襲撃する奴らの気が知れない。
「もしこれが本当ならコーディネイターを根絶やしに出来る日も近いな」
「あぁ、制式に量産されれば俺達もMSのパイロットととして貢献、活躍することができる」
俺はMAのパイロットではない。かといって戦車乗りでもない。俺の所属する32独立機動群は歩兵戦力。主にZAFTの補給基地や前線基地を歩兵戦力で潜入、襲撃することを任務としている。
襲撃、潜入の訓練とそれに付随する鍛練を怠っていないのが自慢であり、そのお陰で俺の所属する部隊ら数多くの基地の襲撃を成功させている。
俺達が襲撃した基地を、主戦力の部隊が押し掛けコーディネイター達を撃破していく。それが俺達の任務。
襲撃が成功した基地からは運が良ければコーディネイター共のMSが手に入る。憎きコーディネイター共の兵器を俺達が使うのは気乗りしないが押され気味な俺達がなりふり構っている暇はない。
ただし、認めたくないがコーディネイター程上手くMSは操縦出来ない。だからこそ地球軍製のMSの配備が本当ならば喜ばしいのだ。
「おい、二人ともちょっとこい!」
哨戒中の俺達を同胞が基地内部へと呼び出した。同胞の慌てた様子からただ事ではなさそうだ。
「これを見てみろよ」
呼び出されたのは俺達だけではなかった。他のとこらからも大勢の同胞が基地の大食堂に集められていた。集められた全員が大食堂に設置されているテレビの画面を食い入るように見ていた。
『今私は壊滅した地球連合軍のパナマ基地上空に飛んでいます』
テレビ局のリポートらしき人物がカメラに写りながら、遠く離れた同胞の戦況を報告している。
戦場に現れるテレビ局のリポーターは多い。ほとんどが戦闘後の様子のリポートだが、中には戦闘中にリポートするテレビ局もある。
報道関係者に、非戦闘員である第三者に攻撃を加えることは国際条約で禁止されているが、コーディネーター共はそれを無視して平気で残虐な攻撃を加える。
「ちょっと待ってくれ......今パナマって言ったな......それに壊滅?」
先程までMSが配備された噂のパナマ基地の話をしていた。地球軍にMSが配備されて喜んでいた矢先にこれかよ......
「見ての通りだ。パナマはZAFTの手に落ちた。配備されていたMS部隊も全滅だ。情報ではZAFTの連中は降伏した味方に攻撃もしていたらしい」
それを聞いた俺達は苦虫を噛み潰したような顔をし、コーディネイターへの恨みを更に募らせた。
降伏した味方にまで毒牙に掛けるなんて......絶対に許さねぇ。奴らはやはり悪魔だ。俺達と同じなのは皮だけだ。中身は薄汚い醜い化け物だ。
テレビ画面は次々にパナマの惨状を映し出す。そこには破壊されたZAFTのとは明らかに違うMSの姿があった。完全に破壊され機能を停止しているがあれが地球軍のMS。あれさえ有れば俺だって。
「全員注目!」
大食堂の入り口から基地司令が姿を現した。基地司令クラスぎ一般隊員食堂に姿を現すことなど本来あり得ない。俺達は戸惑いながらも基地司令に対して敬礼をした。
「楽に休みたまえ」
「休め!」
基地司令からの指示に側近の号令官が号令を下す。それに即応し俺達は休めの体勢で基地司令の顔に注目する。
「全員既に知っているかもしれないが、地球連合軍のマスドライバーを有するパナマ基地がZAFTに陥落され占領された。先のアラスカ基地に続き我々地球連合軍はZAFTに対して劣勢なのは否めない」
劣勢という言葉に司令の前であることは分かっていながらも顔を渋くする。
地球軍の統合最高司令部のあるアラスカ基地は、Z.A.F.Tの『オペレーション・スピットブレイク』により壊滅していた。
地上最大と言っても過言ではない攻防戦。アラスカ基地の防衛部隊は突破され、アラスカ基地の放棄を決定した地球軍はZ.A.F.Tを基地内部に誘き寄せ、『サイクロプス』を作動させZ.A.F.Tの大半の戦力を道ずれにした。
その事実を聞いたときには驚いたが、既に放棄が決定され『全部隊が脱出した後での自爆』であったため、司令部の判断は間違ってはいなかったと司令部の考えを賛美。結果的にスピットブレイクに投入されたZAFTの大半の戦力を削いだのだから。
けど今回はアラスカとは違う。完全にこちらの敗北。開戦当初から劣性を強いられてはいたが、重要基地での敗北は未だになかった。中でもパナマは何度か侵攻されても陥落はしなかった。それだけにショックは大きい。
「だが、パナマ基地は我々にある希望を残してくれた。それはMSだ」
暗い顔をしていた俺達の顔が晴れやかになっていく。
「我々地球連合軍はMSの量産に成功した。以後は制式に『ストライクダガー』が各部隊に配備されるだろう」
MSの制式な配備に全員が我を忘れて歓喜の声を挙げた。勿論俺もその一人だ。
皆待ちに待っていたのだ。まともにコーディネイター共に対抗出来る手段が来るのを。
「諸君、我々は遂に奴らに思い知らせる手段を手に入れたのだ。地球連合軍人としてその命の炎を燃やせるのだ。どうだ嬉しいか?」
「青き清浄なる世界の為に」と口々に口説き文句のような台詞が挙がる。地球連合軍を支援する団体である『ブルーコスモス』が掲げていることだ。最近ブルーコスモスが地球連合軍と密接な関係になっていることに関係があるのだろう。
まぁ、ブルーコスモスが掲げる理想は俺も同
じだし、嫌悪感なんて無いけどな。
「諸君らのこれからの奮起に期待する。以上解散!」
別れの号令と共に士気が上がった同胞達が元の配置へと戻っていく。
「カイル......嬉しい知らせが来たぜ」
「嬉しい知らせ?」
「なんと量産されたMSを俺達の部隊でも運用するようだ。そしてそのパイロットの候補に俺達が選ばれたんだぜ」
パイロットの候補として選ばれた。その言葉にどれ程俺の心が踊ったことか。
制式に配備されることになったとはいえ、全員が全員パイロットになれるわけがない。MSの絶対数が恐らく足りないことから何らかの適性検査やテストが実施されるだろう。
それに受からなければパイロットにはなれないはず。それに合格して初めてパイロット候補生になり、長い訓練期間を終えて正式にパイロットになる。これは戦闘機やメビウスのパイロットでの話だが、MSも恐らく過程は一緒のはず。それなのにいきなり候補生に選ばれるとは。嬉しくないわけではない。ただ突然過ぎて実感がないだけだ。
もし仮にこの話がなくても志願はしていたけどな。その手間が省けたのも良いことだ。
こうして俺ことカイル・ザーランドの地球連合軍での本格的な戦いの幕が開けたのだった。