機動戦士ガンダムSEED 外伝   作:オールドタイプ

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戦場
WAR3 反攻の狼煙


 地球連合軍は大量生産した初の量産型MS『ストライクダガー』の配備を第一とした。当然各方面部隊もこれを急いだ。

 パナマを失った地球連合軍は宇宙への門を閉ざされた。Z.A.F.Tとの決着は奴等の本拠地が宇宙にあることから宇宙で付けられる。戦力を十分に確保するためにも、閉ざされた宇宙への門を開くしかなかった。

 当面は月面基地で凌げるが、資源が限られる宇宙において万全とは言えない。どれだけ地球の広大な資源を保有していようがそれを宇宙へ運べなければ意味がない。地上の奴等を掃討したところで次から次へと奴等は降ってくる。戦争の早期終結のためにも奴等の本拠地を叩くしかないのだ。

 長期戦に持ち込むことも可能だが、長引けば長引くほど戦火は広がり、磐石な地球連合への国民からの信頼も失われていく。

 情けないことにオーブ以外にもコーディネイター共に賛同する者達も現れている。戦争が長引けばそちらに傾く者達もきっと増える。連合上層部は内部崩壊を招かないためにも早期終結を目指している。

 我々地球連合軍は敗北するわけにはいかない。戦争には勝たなければ意味がない。負けていいことなど一つもない。

 

 その為にもオーブには地球連合に加入してもらい手を貸して貰いたかった。しかし、オーブのアスハは大西洋連邦との穏便な交渉を一方的に拒否。

 平和的な解決を目指していたが、オーブは理念と立場からコーディネイター達を多く囲っている。地球の政府組織でありながら唯一連合に賛同しない反乱因子。

 上層部もオーブがZ.A.F.Tに与することを危惧し、ブルーコスモスの盟主『ムルタ・アズラエル』氏を筆頭に、最終通告として部隊を率いて『オーブ解放戦線』を発動。

 連合軍は新型GAT-Xシリーズを投入するも、離反した『アークエンジェル』が立ち塞がり、二度の作戦を実行するもオーブを落とすことは出来なかった。

 それだけならばまだしも、オーブのアスハは議員と共にマスドライバーを自爆装置にて破壊。マスドライバーを狙っていた連合はオーブがマスドライバーを道ずれにしたことで作戦の必要性を失い撤退。

 

 連合の宇宙への門は閉ざされたままである。

 

 

    ◆ ◆ ◆

 

『攻撃開始!』

 

 旗艦の合図と共に連合艦隊から『ビクトリア基地』に対して対地攻撃を開始。無数の艦対地ミサイルを狼煙に各艦からMS部隊が発進。

 

『GAT01ストライクダガー発進』

 

 俺が搭乗するストライクダガーも第一陣が出撃した直後に出撃することとなった。

 水上艦艇のMS発進口が開かれ中から4機のストライクダガーが姿を見せる。ストライクダガーのデュアルアイが同時に光る。

 開口と同時にコックピット内の視界が海面と青空を映す。既に攻撃は始まっていることから目標のビクトリア基地近辺では熾烈な戦闘が起きている。空中で光る無数の輝きがその証。

 焦っている連合軍からは、パイロット増加のために簡略化されたMS操縦訓練しか用意されていない。勿論それを全てこなし修了させたが、それだけでしかない。正直不安が残る。

 

「シュミレーション抜きでいきなり実戦かよ」

 

「そうぼやくな。実戦で腕を磨けばいい。相手をどれだけ殺しても文句は出ないからな」

 

 地上部隊が展開を終え、予定通りに事が進んでいるのならば俺達が侵入するポイントは制圧済みのはず。

 『第三次ビクトリア攻防戦』には量産されたストライクダガーとそのバリュエーション機が大量に投入されることになっている。

 アラスカ、パナマ、オーブと失敗が続いている連合はなりふり構っている場合ではなかった。何としてでもビクトリア基地を支配下に置き、同基地のマスドライバーを手に入れなければならない。

 

「お喋りはそこまでだ。行くぞ」

 

 ロラン隊長のストライクダガーに続き、俺達のストライクダガーも空に飛び上がった。小隊長のロラン・マクディエル中尉は今年で45歳になる軍歴20年を越えるベテラン兵士。故郷には10歳になる娘さんがいる。

 

「地上のコスモ隊は予定通り我々の侵入点を確保してくれたようだ」

 

 海岸沿いに着地した小隊は付近を警戒しながら道中を進む。既にこの場所での戦闘は終了しているようだ。残骸となったZ.A.F.TのMSがその辺に転がっている。その中には味方のストライクダガーもいる。

 

「よく頑張ったな。お前たちのお陰で俺達はここにいれる。後は任せろ」

 

 戦場で倒れた仲間へ労いながら先を進む。深い森に覆われている進路をMSならば平然と進める。

 俺達の目的は別行動で基地近辺に接近し、本命の部隊に注意がいっている間に基地内部の機能を停止させることだ。

 MSは移動手段でもあり攻撃手段でもある。元々特殊戦をこなしてきた俺達だからこそ与えられた任務だ。

 

「前方からディンが3機」

 

 ストライクダガーのメインカメラがビクトリア基地方面から飛来してくるZ.A.F.Tのディンの姿を捉えた。こちらの数は5。相手は3。数ではこちらが勝っているが俺達の作戦上無駄に戦闘行為をするわけにはいかない。ここはきづかれないようにやり過ごす。

 それにディンは空中能力を有するMS。ストライクダガーでは荷が重い。

 

「どうやら行ったみたいだな」

 

「ディンの飛んできた方向にビクトリア基地がある。もう少しだ」

 

 作戦が開始し俺達がビクトリア基地に向かい初めてからまだ20も経っていないが、体感時間は何時間も経っているように感じる。生身だったときには感じなかった緊張がある。後は対等に戦えるようになったことでの武者震いもする。

 敵に気づかれないように慎重にストライクダガーの足を進める。独特な金属音が響くストライクダガー。重量感があまり感じられないな。

 

「しまった......敵のジンだ!」

 

 森を抜け見晴らしのいい場所にたどり着いた瞬間に警戒監視に当たっていたジンと遭遇してしまった。

 

 数はこちらと同じ5。姿を見られたことで連絡を入れられてしまう。その前に殺るしかない。見つかってしまったのだもう隠密は無理だ。

 俺はストライクダガーのビームライフルをジンに素早く照準する。敵のジンもまさかこんなところから敵が出て来るなど想像していなかったのだろう。数秒間呆然とこちらを見つめている。それが命取りとも知らずに。

 ストライクダガーを操縦するレバーのボタンを2回押し、ストライクダガーのビームライフルから緑色のビームが2発発射され、2発ともジンの胴体を貫いた。

 

「な、ナチュ......」

 

 断末魔の悲鳴をあげることなくジンは木っ端微塵に吹き飛んだ。仲間のジンがやられたことで残りの4は本格的に臨戦体勢をとっる。

 

「敵襲だ! 基地後方から地球軍のMS部隊だ」

 

「良い判断だカイル伍長。各機散開!」

 

 隊長の命令で縦列だったストライクダガーは横に大きく展開。攻撃を開始。

 

「生意気なナチュラル共が!」

 

「いい気になるなコーディネイター共!」

 

 迫り来るジンとぶつかり合う。重斬刀を降り下ろされる前にジンと密着し、攻撃を阻止する。

 

「今までの報いだ」

 

 密着した状態でストライクダガーの頭部に搭載されている75mm対空自動バルカン砲塔システムイーゲルシュテルンをジンの胸部にお見舞いする。至近距離でのバルカン砲はジンの厚い装甲であっても貫通し、小さな穴ボコを形成。中のパイロットを蜂の巣にする。

 

「エネルギーは無駄に出来ないんでね」

 

 一機始末した後にもう一機を相手にする。そのもう一機は同僚と戦っていた。

 

「援護する」

 

 背中からビームサーベルで切りつけようとするが、直前でジャンプし外れてしまった。勢いよく切りつけようとしていたためストライクダガーを急停止させ、味方への攻撃を未然に防ぐ。

 

「ちょこまかと」

 

 距離を離したジンは重突撃銃をフルオートで発射。高速の弾丸がストライクダガーに迫る。流石に全弾食らって無事なほどストライクダガーの装甲は高くない。こういったときに『PS装甲』搭載機が羨ましく感じる。

 PS装甲。詳しい理論は知らないが一部のMSに搭載されている特殊な装甲。展開すれば実弾兵器を通さない無敵の装甲らしい。搭載されているのは主にXシリーズと呼ばれている『G』だけ。

そんな機体があればどれだけ楽なことか......贅沢は言ってられないな。

 

「しまっ......!」

 

 回避行動が遅れた同僚のストライクダガーが吹き飛んだ。

 

「ちくしょう!」

 

 目の前で仲間が殺られたことに熱くなり俺はシールドを捨て、吹き飛んだ味方のビームライフルを拾い左手でビームライフル。右手でビームサーベルを装備。ライフルを練射しながら接近する。

 

「調子に乗るからだナチュラル」

 

 正確に照準していないライフルの精度は酷い。コーディネイター相手には簡単に避けられてしまう。

 

「終わりだな」

 

 ビームサーベルの間合いに入れたが、ジンは怯むどころか正面から重斬刀を構えながら接近してくる。操縦技術やMSを操縦するに当たっての反応はコーディネイターが優れている。

 降り下ろされる重斬刀に対して機体を少し右に反らし、重斬刀の軌道をストライクダガーの胴体から左手にすり替える。

 

「何っ!」

 

「死ね......コーディネイター!」

 

 左手を失いながら右手のビームサーベルでジンの腰部を右から凪ぎ払う。ビームサーベルのビームの熱がジンの装甲を溶断し、ジンを真っ二つにする。下半身と上半身が別れても爆発しないジンに止めを指すために動けなくなったジンの上半身を踏みつけビームサーベルを突きつける。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 ジンのパイロットが命乞いをするが聞く耳を持たない。

 

「命乞いをなんて人間らしいことをしてるんじゃねぇよ。化け物の分際で」

 

 容赦なくビームサーベルを突き刺す。コックピットごと貫かれた敵のパイロットをあっという間に蒸発した。

 

「隊長や他の皆は」

 

 周囲を見渡すと皆苦戦していた。

 

「くそ、もうエネルギーが......」

 

 援護しようとするがストライクダガーのエネルギー残量は危険域に到達しようとしていた。ストライクダガーのエネルギーが切れれば帰りの移動手段を失い、戦闘が継続している敵地のど真ん中を歩いて帰らなければならなくなる。

 だが、仲間が窮地なのに自分の保身なんて考えている暇はない。考えるのは後だ。

 

「大丈夫ですか隊長!」

 

「......なんとかな」

 

 隊長のストライクダガーは両手を失っていた。

 

「ちっ、ナチュラルごときに殺られたのかよ」

 

 生き残っているジンが集結し出した。こちらも生き残りを固めるが満身創痍な機体ばかり。向こうはほとんど無傷に近い。数ではこちらが。状態は相手。俺のストライクダガーのエネルギーは残り僅か。笑えない状況だ。俺一人で奴等を相手にする力はない。万策尽きたか......

 すると目の前のジンが突然爆発した。攻撃が飛んできた方角を見るがそこには何もない。

 

「新手か!」

 

 振り向いたジンも一瞬で破壊された。

 

「頑張っているな地球軍の兵士も」

 

 俺達の背後から黒いMSが姿を現した。俺達の背後には誰もいなかった。それだかではなく、このMSは突然何もないところから現れた。

 

「行くがいい」

 

「......味方のようだな」

 

 突然現れた謎のMSは俺達の代わりに敵を引き受けてくれるようだ。ありがたい。

 謎のMSは全身が黒で機体のラインが金色に塗装されている。特徴的なのは右手の装備。盾のようでもあるが、銃口と槍のような物が装備されていることから武器でもあるようだ。

 

「逃がすかナチュラル!」

 

 ジャンプし接近するジンをジンの真下から現れたオレンジ色のMSが両断した。

 

「獲物が多いな」

 

 また現れた味方(?)に感謝しつつ俺達は先に進んだ。あのオレンジ色のMSの顔......GAT-Xシリーズにそっくりだった。

 先を進む俺達の背後には、敵が呼んだ増援部隊を相手に圧倒的蹂躙を繰り広げるあの2機の姿があった。数の差を感じさせない戦いぶり。俺には真似できない芸当であった。

 

 

     ◆ ◆ ◆ 

 

 何とか基地近辺に接近できた俺達はストライクダガーを隠せる植生の濃い場所を探し、そこにストライクダガーをしゃがみ込ませコックピットから外に出た。ここから先は生身での仕事。

 人は5人から3人に減ったがやることは変わらない。手はず通り基地に侵入し爆薬等を仕掛け基地を混乱させる。

 基地のフェンスを破り、気づかれないように音を立てないように基地ないをジグザグに走る。基地は本命のMSの対応に追われていた。歩兵の存在など気づくまい。

 

「よし、先ずはここだ」

 

 C4爆薬を仕掛けタイマーをセットし、次に向かう。ところが......

 

「なに......? 作戦は変更? ビクトリア基地は落ちただと?」

 

 なんと、俺達の作戦を果たす前にビクトリア基地が陥落したようだ。広いビクトリア基地の一角に潜入していた俺達は本命の部隊の活躍を見ていない。予想以上に早く終わってしまった。命がけでここまで来たと言うのに。

 

「我々の作戦の必要性はなくなった引き上げるぞ」

 

 引き上げる俺の視界に一人のZ.A.F.T兵が目に入った。何やら慌てた様子で何処かに向かっている。

 

「隊長......あのZ.A.F.T兵怪しいです」

 

「......何かをしようとしているようだな」

 

 隊長達を呼び止め影からZ.A.F.T兵を監視する。随分と慌てているため此方には全く気づいていない。何もない行き止まりの壁の前で周囲をキョロキョロと何度も見渡す。すると何もない壁に扉が出現し、出現した扉を開きZ.A.F.T兵は扉を閉めずに中に入っていった。

 

「隊長どうしますか?」

 

「追うぞ」

 

 ホルスターから拳銃を抜き装填を確認し、隊列を組み全周警戒をしながら開きぱなしの扉からZ.A.F.T兵の後をつける。扉に入ると狭い通路になっており、突き当たりに光を確認した俺達は壁際に寄り添い、中を確認する。Z.A.F.T兵はキーボードで何かを打ち込んでいるようだ。

 隊長のサインで一斉に室内に飛び込んだ俺達は、こちらを向いたZ.A.F.T兵に一斉射撃。絶命したZ.A.F.T兵の死体とキーボードを調べ、何をしていたのかを突き止める。

 

「隊長......こいつビクトリア基地のマスドライバーの自爆装置を作動させようとしていたようです」

 

「作動はしていないのか?」

 

「寸でのところで」

 

「間一髪だったか......」

 

 完全に作動されていたら止める手立てはない。危うく作戦の意味を無くすところだった。パナマ、オーブとマスドライバーを手に入れられなかっただけに、ここまでも失うわけにはいかなかった。

 

「別の者に作動されないように破壊しとけ」

 

 拳銃で自爆装置の入力機を破壊する。これでマスドライバーは自爆出来まい。基地も連合の手に落ちたことだ。念願のマスドライバーを手にいれることがようやく出来たのだ。ここまで多くの犠牲を払った。仲間の無念も少しは晴れるだろう。だけどまだまだ戦争は続く。これでこちからがまた少し有利になっただけ。これからも俺はZ.A.F.Tと戦っていくさ。

 

 第三次ビクトリア攻防戦。連合はZ.A.F.Tの地上における重要基地を落としマスドライバーを手にいれた。その背景として、アラスカ、パナマと大戦力を投入し疲弊していたZ.A.F.Tの姿があった。まだ地球上にはカーペンタリア基地とジブラルタル基地が残っているが、Z.A.F.Tはその戦力集中を宇宙へと移すことになった。

 また、地球連合軍もビクトリア攻防戦において、複数のダガーのバリュエーション機を投入し、実戦における戦闘データーを得ることが出来た。これにより地球連合軍のMS開発は更に飛躍的成長を遂げることとなり、Z.A.F.Tとの戦いはより熾烈なものと発展していく。

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