機動戦士ガンダムSEED 外伝   作:オールドタイプ

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かなり遅くなりましたが続きです。

ちょっとした過去の話になります。かなり私の妄想が多いです。


WAR8 血のバレンタイン

ーーCE.70.2.14日。『ユニウスセブン』

 

 農業プラントであるユニウスセブン。その近辺の宙域で地球軍とZ.A.F.T.による熾烈な戦闘が繰り広げられていた。

 宣戦布告後、僅か3日の内の出来事。当然Z.A.F.T側はこの戦闘に対して、入念な準備が整えられていなかった。

 ユニウスセブンを含め、全部で4基ある農業コロニー。宣戦布告を受けたプラントの非戦闘員、民間人の疎開地として受け入れが決まっており、この日までに多数の民間人が同コロニーに疎開をしていた。

 農業コロニーは地球側にとってもプラントにとっても資源の確保という面では欠かせない、両陣営同様の資産とも言えた。

 宣戦布告を受ける切っ掛けとなった、地球連合の前身となる組織と、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの会談時のテロ。

 これを受けるまでプラント側も地球側に対して友好の証しとして資源の提供を行っていた。

 地球の人口はCEを迎えるそれまでに100億は越えており、地球上での資源供給が間に合ってはいなかった。

 地球側もプラントからの資源の提供を拒否する理由は、一部を除いてはなかった。

 宣戦布告を受けてから供給そのものは停止したが、地球軍も、同コロニーが農業コロニーであることは把握済みであり、軍施設の有無は確かめるまでもなかった。

 だが、現実として地球軍は進撃。プラント側は意表を突かれる形として対応が遅れた。

 

 この時地球軍な狙いはあくまでもプラント本国であり、ユニウスセブンに対しては何の脅威も見立てはいなかった。そう、"地球軍"は。

 

      ◆ ◆ ◆

 

『ハッチ開放、進路クリア。メビウス・ゼロ、ロラン機発進どうぞ』

 

「メビウス零式、ロラン・マクディガル出るぞ」

 

 地球連合主力艦ドレイク級から発進するオレンジ色の機体。MAと呼ばれる地球軍の主力兵器。それのプロトタイプである。

 正式採用された量産型のメビウスと、プロトタイプのメビウスゼロには大きな違いがある。

 まず、メビウスゼロには"ガンバレル"と呼ばれる特殊兵装ポッドが備えられている。

 全部で4つあるガンバレルにはそれぞれ推進機があり、本体の推進機と合わさることで、量産型のメビウスよりも機動性が高い。その上ポッドそのものにミサイルや機関砲といった武器が搭載されている。

 プロトタイプとして先行生産されたメビウスゼロ。正式量産されたメビウスにはガンバレルが搭載されていない。その理由が、メビウスゼロを操縦する上での決定的な差となっている。

 

 メビウスゼロを操縦する上で欠かせないのが、"高度な空間認識能力"であるからだ。戦闘機を操縦する上で一定の空間認識能力は求められらるが、メビウスゼロはその更に高い空間認識能力を必要とする。

 

 それは、特殊兵装のガンバレルによる全方位からの"オールレンジ"を行う為である。

 

 4基のガンバレルは機体本体とワイヤーで繋がれており、有線で機体から分離し、各方向から攻撃を可能とする。

 

 その操作は敵機へのロックから展開までは自動だが、その後の操作は機体本体の動きに影響される。その為、メビウスゼロのパイロットはガンバレルの動きにも意識を傾けながら機体を操縦する必要があった。

 故に、メビウスゼロは並のパイロットでは扱い切れない。その扱いきれない特徴が、メビウスゼロを大戦前半の地球軍の最強兵器としての地位を勝ち取っていた。

 

「グリーン機行くぞ」

 

「ユーロ機発進する」

 

 先頭のメビウスゼロを追うようにして、もう二機のメビウスゼロも出撃。

 メビウスゼロ3機で1部隊。量産型のメビウスが10機編隊を基本とするに対してメビウスゼロが3機編隊なのは、先のガンバレルが大きく基因している。

 ガンバレルによるオールレンジ攻撃は如何にコーディネーターといえど、複数方向からの攻撃には辛苦。

 Z.A.F.Tのプラントが開発した新型兵器"MS"と互角に渡り合える唯一の兵器といっても過言ではない。

 だが、それは後々の話である。

 

「コロニーに駐在する部隊が出てくるが、そっちに気を取られ過ぎるなよ。俺達の目的はあくまでもプラントからの敵主力艦隊だ」

 

 コロニーからは防衛部隊のMS。プラントからはローラシア級5隻の艦隊がユニウスセブン近辺の宙域に展開。

 対する地球軍もメビウスゼロ部隊20機を擁する第1艦隊を派出。ドレイク級10隻、メビウス50機による大部隊。

 

 数で勝る地球軍。しかし、この時地球軍はZ.A.F.Tの新型兵器MS"ジン"に対する情報は皆無に等しかった。

 

 敵の艦隊から出撃する見慣れない兵器。ピンク色の単眼の瞳に、緑と灰色のボディ。人型の汎用兵器MSジン。CEにおいて地球軍が初めて遭遇し、戦闘することになった。

 

「な、何だ!? あの運動性は!?」

 

 メビウスから発射された誘導ミサイル。だが、ジンは悠然といとも簡単にスラスターを吹かせ、飛び上がることでミサイルを回避。反転し、右手の重突撃銃がミサイルを撃ち落とす。

 一連の流れに地球軍のメビウスのパイロットは度肝を抜かれる。

 人型の兵器をZ.A.F.Tが有していることなど地球軍は知らなかった上に、その性能はそれまでの兵器の歴史を覆す程であった。

 

「くそっ! なんで当たらない!」

 

 搭載されている40mm機関銃がジンに向けられるが、メビウスの照準がジンを捉えることはない。

 小刻みかつ、不規則に動き回る自由度があるジンに対してメビウスといったMAはあくまでも一撃戦離脱に基づいた、直線的な動きしか出来ない。

 ジンのパイロットからすればメビウスは鬱陶しく飛び回る蝿同然だった。

 

 すれ違い様に両断されるメビウス。

 

 想定外な事態に対して地球軍は困惑。50機もいたメビウスはその数を半分近くまで減らされていた。

 

 しかし、メビウスゼロのパイロット達は違った。

 

 驚異的なジンの性能を前にしても、メビウスゼロは敢闘。ガンバレルを駆使し、オールレンジ攻撃を仕掛ける。ジンのパイロットも複数方向からのオールレンジ攻撃に対応出来ず、機関砲で沈められる。

 

「う、後ろからだとっ!」

 

 後方に回り込んだガンバレルの機関砲を背部に受けたジン。背部スラスターが破壊され、バランスを崩したジンをリニアガンで撃墜。

 

「グリーン、ユーロ、ガンバレルで確実に囲め。そうすれば落とせる」

 

 ジンのメインエンジンが爆発。その爆風の中を突き抜ける3機のメビウスゼロ。

 

 投入されたジンは20機。地球軍に比べれば数は劣るが、それを補うどころか上回るジンの性能によって、戦況はZ.A.F.Tへと傾きつつあった。

 

「中尉! バンベルグが!」

 

 地球軍の部隊を抜けたジンによって、僚艦ドレイク級が1隻宇宙の塵とかす。

 

「ええいっ!」

 

 味方を沈められたことに激昂。

 

 ガンバレルのトリッキーな戦法と、部隊による連携で奮闘をするが、味方は徐々に落とされていく。

 

 メビウスゼロも何機か落とされており、一時的に優位であったロラン・マクディガルのメビウスゼロ部隊も肉薄する味方の影響で次第に押され始める。

 

「うわっ!」

 

 グリーン機のメビウスゼロのガンバレルが2基破壊される。

 メビウスゼロのオールレンジ攻撃に対して、Z.A.F.Tのジンも連携を組み、全方位を警戒することでオールレンジ攻撃をに対して対抗をとる。

 

「やつら、互いに死角を補い始めやがった!」

 

 敵の見えない方向から裏をかくのがガンバレルによるオールレンジ攻撃。それが常に視界に捉えられているのでは効果は半減。

 

「攻撃の手を緩めればこっちがやられる」

 

 ガンバレルの推進機により、メビウスゼロはメビウスよりも機動性が高いが、ガンバレルを分離してしまうと、その分機動性は落ちる。

 よって、ガンバレルを常に展開するのではなく、回避や移動の際にはガンバレルを戻す必要がある。

 

 過酷を強いられる地球軍。そんな中、旗艦であるドレイク級のブリッジの中である動きがあった。

 

     ◆ ◆ ◆

 

「大佐、敵は現在我が軍のメビウスゼロ部隊と交戦中の模様です」

 

「喧しい! 奴等を一撃せねばおさまらん!」

 

 艦長席で荒々しく声を上げる地球軍士官。当初の予定ではZ.A.F.Tの艦隊を突破し、プラントに攻め込むものだったが、MSにより戦況が悪化。苛立ちが募っているのだ。

 

「もうよい! プランBだ!」

 

 大佐の男がブリッジの部下に対してそう告げる。大佐の補佐官の男はプランBが何なのか分からないでいる。

 

「大佐、ここは一時撤退したほうが良いかと」

 

「貴様! あんな奴等にやられぱなしで退けと言うのか!」

 

 胸ぐらをつまみ上げられる補佐官。大佐の男は子供のように感情的に行動を起こしている。

 

「このままでは我が軍は壊滅します。貴重なメビウスゼロ部隊を失うわけにはいきません」

 

 そんな男に対して補佐官は冷静に対応。戦況を冷静に考えた上で撤退を進言しているに過ぎない。だが、男は補佐官の言葉に耳を傾けようとはしない。頑なに反戦の意識しかない。

 

「艦長、『ピースメーカー』より準備よしとのことです」

 

 オペレーターの言葉に反応した男は、補佐官を突き放し、艦長席座る。

 

「よし、『ユニウスセブン』に向けて核攻撃開始だ」

 

 冷淡に指示をする男。そんな男の言葉に今度はそれまで冷静でいた補佐官は慌てて反応する。

 

「お待ち下さい! ユニウスセブンは農業コロニーで民間人も多数います! 何よりもその近辺には我が軍の部隊がまだ展開しております! 大佐!」

 

 最早男の耳に補佐官の言葉は届いていない。ただただ勝ち誇ったように笑みを浮かべるだけである。

 

     ◆ ◆ ◆

 

 追い詰めれる中、ロラン・マクディガルは奇妙な違和感を感じとる。

 

(なんだ......この胸騒ぎは。とてつもない悪意が災いがの元が迫ってくる......)

 

 確信はない。朧気に、虫の報せのように働く勘のようなもの。だが、当の本人には不透明な未来のように思えている。

 

 そしてそれが現実となる。

 

 彼らが交戦する場所から少し離れた、ユニウスセブンに近づくメビウス。通常白を基調としているメビウスだが、このメビウスは黒色で統一されている。

 宇宙に対する保護色の意味合いもあるが、このメビウスはある試験も兼ねている。

 

 なぜ、メビウスが1機だけコロニーの駐在部隊やZ.A.F.T艦隊のMS部隊の防衛網を突破し、ユニウスセブンに近接出来たのか。

 

 それは、Z.A.F.TのMSジンの存在とその性能に誰よりも早くに気付き、衝撃を受けたハルバートンが提唱するG開発計画の中に答えはあった。

 G開発計画中で開発されている"GAT-X207ブリッツ"に搭載が予定されている"ミラージュコロイド"と呼ばれる特殊な粒子がある。

 平たく言えばレーダーや目視でも捕らえることの出来ない完全なステルス迷彩。機体を透明化させる物。

 このメビウスにはそれが搭載されていた。ミラージュコロイドにより、黒いメビウスは誰にも気づかれることなく静かにユニウスセブンを射程圏内に捉えていたのだ。

 そして合図を待っていた。その合図も今しがた下された。

 

 メビウスの機体腹部に一際目立つミサイルが一発。それは過去の時代、旧暦における最大の兵器であり、禁忌ともされている"核ミサイル"であった。

 冷酷に発射される核ミサイル。それを止めるものは誰もいない。ミサイルを発射したメビウスは離脱。徐々に近づくミサイル。コロニーに住む人達を始め、Z.A.F.T側は誰もこれから起きる惨事に気づけない。

 

(よせ! それを撃ってはならん!)

 

 ただひとりロラン・マクディガルだけはそれを察知していた。

 

 マクディガルのメビウスゼロ本体スラスター部にジンの無反動砲が直撃。激しい揺れに襲われる。

 

 直後、宙域全体に目映い閃光が犇めく。地球軍、Z.A.F.T両陣営共に、その閃光に目を奪われる。

 そしてやってくる核の余波。衝撃波と爆風と熱がメビウスゼロ、ジン、メビウスのパイロット達を見境なく襲う。

 MSやMAの耐熱材を越える温度の熱は機体のエンジンを誘爆させ、次々と破壊していく。

 核の直撃を受けたユニウスセブンは目にも当てれない。一発の核ミサイルでは完全崩壊とまではいかかったが、核ミサイルによりコロニーの至る所に穴が空く。

 空いた穴からは、コロニー内で生成されている空気と共に、人や家屋といったものが宇宙空間に生身で放り出される。

 逃れる術がないコロニー在住の人々。戦闘宙域までにもユニウスセブンの人々は飛ばされている。

 生身で放り出されて無事なはずもなく、空気もない宇宙空間で次々と窒息していく。女子供老人関係なく。

 

 ユニウスセブン近辺で戦闘を行っていた地球軍、Z.A.F.Tも核により全滅。残骸と化したMSとMA。墓場となった戦場。意味もなく漂う残骸。

 

 そんな中、ロラン・マクディガルは奇跡的に生存していたが、無事ではない。ガンバレルは全て失い、機体も完全に停止し、外装はところどころ融解。慣性に従って漂い続けている。

 コックピットから外に出たマクディガル。目の前の光景が現実とは思えないでいる。

 

 部下であるグリーンとユーロのメビウスゼロのシグナルはロスト。周囲に散乱する二人の機体の残骸。その姿は何処にもない。

 

「......嘘だろ」

 

 空虚になるマクディガル。現実を受け止められないマクディガルに容赦なく現実を突き詰める部下の機体の残骸と、ユニウスセブンの犠牲者の死体。

 

 心の中で叫び声を上げる。勿論それが聞こえるものは誰もいない。

 

 後に"血のバレンタイン"と呼ばれる悲劇。これを契機に、地球軍とZ.A.F.Tは緊迫状態から一気に本格的な武力衝突へと発展。

 

 誰もが疑わなかった数で勝る地球軍。が、両者共にじり貧のまま疲弊。一進一退の攻防を続けるだけで、現在でも戦争に終結の兆しは見えてこない。

 

 ロラン・マクディガルはこの事件を気に上官の命令に反発、揉めることが増え、命令違反や不服従を繰り返し、メビウスゼロを降ろされ、現在に至る。その後任にはムウ・ラ・フラガが就くこととなる。

 

 その後、幾つもの戦闘を経て、メビウスゼロ部隊はその数を減らしていき、残ったメビウスゼロ部隊もCE70.5.14日のグリマルディ戦線において、ムウ・ラ・フラガを除いて全滅。

 

 この戦闘により、20機のメビウスゼロ部隊は全滅。ジンによる撃墜もそうだが、何よりも核攻撃の被害を受けていたのも多い。

 ロラン・マクディガルはその事実を懸命に伝えようとしたが、誰も信じなかった。それどころか、彼を"死神"だと陰口を叩く者も出てきた。

 

 そもそもこの事件は、一部の過激派思想の持ち主達によって引き起こされた惨劇と言われている。地球軍内部でもユニウスセブンへの核攻撃を信じているものは多くなく、Z.A.F.Tによる自演と思い込んでいる者もいる。

 

 開発中のG兵器の技術を積んだメビウス。

 

 1発とはいえ核を持ち出し、運用。更に独断でそれを発射。

 

 これは初めから上層部で仕組まれていたことかもしれない。

 

 しかし、真実は闇の中のままである。

 

 




初めはメビウスゼロ部隊って沢山いて、その後色々あって月面のエンデュミオンで15機だけになったのかなと思い、この話では20機出しました。ちょっと多すぎたかもしれません。

それでユニウスセブンへの核攻撃もZ.A.F.T側が対処出来なかったのも、物理的に対処出来なかったのかなと思い、メビウスにミラージュコロイドを積ませました。

運命でもガーディー・ルーがミラージュコロイドでアーモリーワンに近づいてましたし、ユニウスセブンでも同じことをしていたのかもしれません。ブリッツとかも開発中でテストも含めて。

ユニウスセブンの人を避難させなかったのも、まさかよもや核攻撃なんてしてくるはずないだろう。民間人も沢山いて、農業コロニーであることは明白だったからかも。

全部私の妄想です。

補佐官と大佐のやり取りは別ガンダムのネタです。いつぞやでも演説していた人と同じです。

一応真っ当な地球軍人ということもあり、ブルーコスモスのやり方は気に入らないけど、主人公男はコーディネーターは嫌いです。女はナチュラル大嫌いです。

ブルーコスモスはティターンズみたいなので、ティターンズを嫌う連邦軍側だと思ってください。

もう少しメビウスゼロ部隊の戦闘をしたかったのですが、戦闘メインではない話だったのでこんなに短くなりました。
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