東方物部録   作:COM7M

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あらすじに注意書きなど書いています。見てない方はそちらを。

それとあらすじにも書いていますが、史実の知識は無いです。当然調べたりもしましたが、飛鳥時代というのもあって調べても資料が少なかったりもするので。

試験的な作品ではありますが、よければご覧になって下さい。




飛鳥時代に転生

死後に別の存在として生まれ変わることを一般的に転生と呼ぶ。憧れる響きだ。もし記憶を持ったまま別の世界に転生できたら楽しいだろうなと、昔は俺もよく思っていたがその考えは中学二年生特有の病気が治ると自然に無くなり、死んだ後の事よりも今が大事だと色々頑張ってきた。その結果が交通事故での死亡とは、世界はかくも残酷だ。

 

何故唐突に転生について話をしたのかというと、まさに俺はその転生というものにより甦ったからだ。

さて、俺が転生してからだいたい一週間が経っただろうか。人間一週間経てば色々と現実が受け入れられるようになってきた。授乳や排泄もそうだが、それ以上に俺はこの世界を受け入れるのに随分と時間が掛かった。磨かれた木に白い壁、まだ畳すら存在しなく床も板張りになっており、布団も気持ちよいとは決して言えない。赤ん坊の部屋であるというのに11畳は軽くある大きさや、召使がいることからかなりの金持ちだと分かるが、文化の水準が低い所為かさほど喜べない。それもそうだ。なにしろこの時代は未来では飛鳥時代と呼ばれる、俺がいた世界より1400年も昔。いや、下手をすればまだ飛鳥時代にすら入っていないのかもしれない。

ここまでは先程も述べた通り、一週間の時間を費やしたて何とか受け入れる事ができた。何しろこの貧富の差が激しい時代に名家に生まれる事ができたのだ。生まれながらの勝ち組と言える、本来ならば。

 

「しかしまこと布都は可愛いのう。あなたのおかげで物部家は笑顔が絶えません」

 

抱っこする母が優しく俺に語り掛けてきて、俺は笑顔で返す。勿論苦笑いだ。だが母から見れば純粋な赤ん坊の笑みなのだろう。

そう、生まれて来た家が、近い将来滅びてしまう物部家でなければの話だ。今が西暦何年かは分からないが、590年くらいに物部家は蘇我氏との戦いで滅びてしまう。それに気づいてすぐは何とかしてその争いが起こらないようにしようと思ったが、戦争の原因は過酷な宗教争いによるもの。この時代の頭の固い宗教家の意志を曲げる話術など俺は持ち合わせていない。

 

そんな絶体絶命の家に生まれた俺だが唯一の救いと言えるのがあった。それが物部布都という名前。

物部布都は、前世で俺が好きだった東方Projectと呼ばれる作品に登場するキャラで、今の俺と同じく飛鳥時代出身のキャラだ。アホの子でありながら仏教の寺を燃やそうとする放火魔として描かれることが多く、俺もそのイメージを持っている。他にもどうでもいい知識もいくつかあるが、特に大事なところは一つ。彼女は現代で言うコールドスリープに近い方法で尸解仙となって1400年後の世界に聖徳太子と一緒に復活してきた。つまりもしこの世界が東方Projectの原作開始前の飛鳥時代ならば、この世界の聖徳太子は女性で、彼女についていけば無事に生き残り、幻想郷ではあるが1400年後の世界に戻る事ができる。

 

「だぅあうあー」

 

そこを利用するしかないな、と呟いたのだがこの小さい舌でそんな器用な発音なんてできるわけもなく、母が心配そうに顔を覗き込む。大丈夫だと適当に笑顔を作ると、母はよしよしと頭を撫でて来た。

考える時間は無駄にある。とりあえず今はこの世界の言葉をしっかり理解していこう。そんな事を考えているといつの間にか睡魔が襲ってき、気が付けば俺の意識は眠りの世界に旅立った。

 

 

 

我が転生してから既に五年の時が過ぎた。どうも魂が物部布都の体に影響されたのか、我の口調は早くも原作通りの爺臭いものになってしもうた。母上は我の口調が年相応ではなく心配していたが父上は、布都は天才なのだ、むしろ誇るがよい、と笑いながら我の頭を撫でてくれた。う~む、どうやら我の性格は父上に似たようじゃのう…。

そんな我は数か月前から書物を読み始めておる。まだ近代化には程遠い時代ゆえに書いていることは、生や死、神などの概念的な話が多く、正直さほど面白いとは言えん。まあかと言って数学や理科が好きでもない。それにもし本当に我の知っている聖徳太子、豊聡耳神子がこの世界にいるのなら、書物を読んでおればそれだけで彼女との会話の種になるかもしれん。なにより傍から才児と呼ばれるのは後々の発言力を強める可能性があろう。

 

「おお、布都!また書物を読んでおったのか。お前は本当に賢い子じゃ」

 

「はい。父上の子であるので当然ですぞ」

 

まだ滑舌が不安定じゃが、五歳児にもなればもう十分に話すことも可能。元の世界でここまで言葉を知っている五歳児がおれば不審に思われるかもしれんが、この時代だと天才と言われる為、我も言葉選びを考えることは余りせん。流石に横文字は控えておるが。

皆が褒めてくれるのは嬉しいが、やはりこれらの書物がさほど面白くないことには変わりない。丁度父上が居られるので、我は軽い気持ちで聞くことにした。

 

「父上、これらの書物以外に我が家にはなにかありませぬか?やはり我には少々難しいですぞ」

 

「む~、そうか。儂もそんなに書物は読まぬからの…分かった、今度どなたかに書物を貸してもらう事にしよう」

 

この時代の書物はかなりの高級品。いくら父上が力を持っていようとも、それをそう簡単に貸してくれる者がいるとは思えん…。そんな我の考えに答える様に、父上は独り言の様に呟く。流石に五歳の我には分からないだろうと声を落としたのだろう。

 

「こちらにある書物と交換と言えば、相手も喜んで差し出すだろう」

 

わざわざ我の為に交換してくれると聞いて、少々申し訳なかった。我は読みやすい本よりも、少々曰くつきの、もっとはっきり言うなら道教についての本を探しておる。原作の設定では、本来敵対している聖徳太子と我を繋いだのが道教だったはずだから、なるべく道教について知っておきたかった。その時、父がポンと手を叩いて再び我に話しかける。

 

「そうじゃ、大王(おおきみ)の遣いが来られての。どうやらお前の才能が大王のお耳に入ったようで、是非お前に大王のお子様である神子様の相手をして欲しいとのことだ」

 

今の時代、天皇の名をそのまま口にすると無礼極まりないとのことで、天皇の事は基本的に大王あるいは陛下とお呼びする。だが天皇と呼ぶ方が親しみのある我は、声に出す時以外は天皇と呼んでおる。

現天皇のお名前は用明天皇。その名は知っておった。聖徳太子の親で、天皇に即位されて僅か二年でに死亡された。今年になって用明天皇が即位されたのじゃが、その時は驚きのあまり発狂しそうになった。というのも、先程も申したが用明天皇は即位して僅か二年で亡くなり、その後継者争いの戦で物部が滅んだはず。もう用明天皇が即位されたとなると、もしかしてあと二年以内に後継者争いが始まるのかもしれん。

しかし冷静になって考えると、そもそも我がおるこの世界は東方Projectの原作前の世界であって、我が元いた世界から直接タイムスリップした訳ではない。現に史実だと我の娘の立場に居る屠自古も、原作だとただの悪友じゃ。

 

「やはり神子様は居られるのか!」

 

ともあって我は用明天皇の件に関しては、あえて考えないようにしていた。もし二年後に戦が起こってしまうとしても、必ずその前兆はあるだろうから、その時考えればよい。まず今は我の知っている神子の名が父上の口から出たことを喜ぶことにした。神子が居てくれれば、一気に幻想郷に行ける可能性が高まる。

父上は我の頭を撫でながらも、少し呆れた声で返す。

 

「何を当たり前の事を言っておる」

 

 

 

 

そして数日後、本当に我は皇居、この時代の言葉を使うと(みや)に来ることができた。現代でも京都御所に観光に行ったことはあるが、あそこは一部しか回れず、当然であるが実際に天皇が住まれている訳ではない。だが今我の前に広がる光景は、何人もの門番や警備の者が武器を構えて立っており、高貴な着物を羽織った者が歩き回っておるなど生活感が見られる。門を潜ると日本独特の美的センスを最大限に使った美しい木々や庭が広がっておった。

 

「わあっ~!凄いですぞ父上!せめてあの石の川だけでも我らの庭にも取り入れましょうぞ!」

 

石と砂を使って山水の風景を露わしたものを見て、我は父上の手を引っ張った。それは枯山水と呼ばれるようだが、そこまで詳しくない我はそれらしい例えを使った。だが父上はいつもよりも厳しい口調で返してきた。

 

「布都、静かにしなさい。ここは宮だ。言った通りにせんか」

 

「す、すみませぬ父上。いささか興奮しておりました…」

 

声のトーンは低いが口調は明らかに怒っていたので、我は大人しく父上の言う通りにした。それから父上は、いかにもそれっぽい格好をした天皇の小間使いと幾分か会話したあと、小間使いについていくように歩き出したので、我も慌ててそれについていく。

本当に家なのかと疑う程に家は広く、既に五分は歩いておる。我の家もかなり広い豪邸ではあるが、このペースで歩いておれば家の端から端まで付く。やはり文字通り格が違うのだろうと感心しておると、どうやら目的地の天皇の元へ着いたようだ。父上が廊下に座ったので、我も慌てて父上と一緒に胡坐をして座る。

小間使いが扉越しに物部氏が来られましたと告げると、中から入ってよいとの許しが出た。小間使いがゆっくりと扉を開き、それに合わせて親子一緒に頭を下げた。

 

「お久しぶりでございます。本日は娘共々お招き頂き誠にありがとうございます。これがその、布都でございます」

 

突然会話が振られたが、もっと長々と挨拶をすると予想しておった故にすぐに反応することができなかった。ほんの数秒の間が空いた後、我は慌ててもう一度頭を下げ、一呼吸おいて心を落ち着かせて父上に教わった通りの挨拶をする。

 

「お初にお目にかかります。物部尾輿の娘、物部布都と申します。本日は(わたくし)をお招き下さりありがとうございます」

 

完璧に決まったと内心でドヤ顔を決めたのだが、天皇の返事が返って来なかった。何か不具合でもあったのかと父上の顔を確認したいのじゃが、お許しが来ん限り頭を上げてはいかん。一気に冷や汗が出てきて体がカクカクと僅かに震える。深く考えておらんかったが、この時代の天皇は文字通り神。もし神の怒りに触れてしまえば、その場で処刑も考えられる。その事に気付いてしまい、ますます体の震えが強くなってしまう。

 

「二人とも面を上げよ。それと布都よ、震えずともよい。幼きながら見事の挨拶に驚いておったのだ」

 

「あ、ありがとうございまする」

 

まさか褒められるとは思いもしなかったので、慌てて一旦上げた顔をもう一度深々と下げる。チラリとだけ視界に入ったが、用明天皇は優しそうな顔立ちをされたお方だった。

 

「話は聞いておるぞ。五歳でありながら随分と難解な書物を読んでおるとか」

 

「は、はい。ですがやはり難しくもあり、身の丈にあった書物を先日父に頼んだところでございます」

 

「よ、よさんか布都」

 

天皇に対して嘘は吐いてはならぬと先日の出来事の事を話したのだが、やはり天皇の前ではしたないのか父上が慌てる。父上の反応を見て我もハッと気づき、これまた頭を下げようとしたのだが、天皇は気にしておられん様子。

 

「よい、気にするな。だが書物が好きならば丁度よい。今息子が書物庫におる。よければ相手をしてやってくれ。そこの者が案内してくれよう」

 

「わ、わたくしでよろしければ是非」

 

用明天皇に会えた事はとても誇れることで嬉しいのじゃが、それよりもプレッシャーが重すぎて、さっさとここから逃げたかった。馬鹿の一つ覚えの様にまた深々と頭を下げると、天皇の視界の外に出るまで座ったまま移動して、そこから立ち上がる。

 

「布都様、こちらでございます」

 

「は、はぁ……」

 

早くもヘトヘトでもう家に帰って寝たかったが、それでは父上の顔に泥を塗ってしまうのでそうもいかない。しかしやる気が出ない。疲れたのもあるが、天皇は息子の相手をしてくれと仰られた。我の望んでおる用明天皇の子供の神子は女性だ。となるとやはりこの世界には神子がいないのか、それとも史実じゃと我の方が年上ゆえまだ産まれておらんのか。どちらにせよ我はさほどの期待をせず、とりあえず父上のお顔を立てるため最低限頑張ろうと思っておった。

 

だが我の予想は良い方に外れてくれた。書物庫に到着すると小間使いは、立派な椅子に座り机に広げた書物を読んでいる一人の少年に我を紹介した。少年は大層美しい顔立ちをしており、その肌は透き通るように美しくも決して病的な白さではなく、まるで家宝の如く手入れされているようだ。平べったい顔立ちの日本人とは思えぬ高い鼻に、チェリーのような唇、目はパッチリと開き可愛らしくもあるが、その瞳には並々ならぬ強さが確かに宿っておる。そして極めつけはその薄い茶の髪が、まるで獣の耳の様にピョコっと跳ねておる。まだ幼くはあるが、その姿はまぎれもなく我の知っている豊聡耳神子の幼いそれだった。

我の望んでいた者に会えてとても嬉しかったが、ますます目の前の神子の性別が気になった。用明天皇は確かに息子と仰られたし、着ておる服も男子のもの。確かに顔立ちは美しいものの中性的で、美男子と言われたら納得してしまいそうだ。

 

「ああ、あなたが物部家の。私は豊聡耳神子」

 

「へっ?あ、お初にお目にかかります。物部布都と申します」

 

神子に会えた感動はあったもののその性別が分からずに放心してしまっており、少々挨拶が遅れてしまったが、気にしておられん様子。我等の挨拶を確認した小間使いの男は一礼すると、書物庫から出て行った。いきなり神子と二人っきりになるのは嬉しくない、というよりも緊張で頭がどうかなりそうなのだが、小間使いが我の心境を察してくれるわけはない。

シーンと気まずい空気が生まれ、神子は早くも興味を失くしたのかまた本に視線を下ろす。むぅ…我の知っておる神子は気さくな人物だと思っておったが存外冷たいのじゃのう。何とか話題を作ろうと、無礼と分かっておったが神子が読んでおる書物をチラリと見る。細かいところは違うものの、書かれておる内容は以前家で読んだ書物と同じだった。

 

「神子様は唐の文化に興味がおありなのですか?」

 

書物の内容は中国、この時代では唐の政治体制について書かれたものだった。その事を何気なく聞くと神子は驚きの声を小さく漏らして机の上に広げられた書物から視線を反らし、我の顔を見る。

 

「この書物の内容が分かるのですか?」

 

我と近い年頃の豪族の子供の知力がどれ程かは分からんが、少なくとも今神子が読んでおる書物は子供が読むものではない。

 

「はい。我…私の家にも唐の書物がありますので読んでおりまする」

 

すると神子は何度か瞬きをする。やはり見た目は美男子よりも美少女と言った方がしっくり来る。

 

「あなた、まだ五つでしょう?」

 

「神子様も六つではありませぬか」

 

そう言われると神子は上手く返せないのか、そうですねと静かに頷いた。ポーカーフェイスを装っておられるが、その口元は確かに緩んでおった。

神子は前世の記憶を持った我とは違い、本物の天才なのだろう。六歳でありながら難解な書物を読み解く才は本物。しかしそれ故、同年代の子と話が合うものが居らぬのかもしれん、いや、居らぬのだろう。当たり前である。普通どこの六歳児がこのような書物を読めるというのか。

 

「よければあなたの話、聞かせてもらえますか?」

 

「話、と申しますと?」

 

「そうですね。なら家にある書物について」

 

「畏まりました」

 

それから我は今まで呼んだ書物について色々と話した。後に十の声を同時に聞くと伝説になるだけあり、六つの子供とは思えぬほど聞き上手で、ついついあれやこれやと話したくなる不思議な感じであった。我は楽しくなってその一時間の間ほぼ話続け、口の止まらぬ我を神子は時折クスクスと笑った。一通り話し終えた一時間後には喉がカラカラになってしまい、神子が外にいる小間使いに命じて水を持ってきてくれた。

 

「ぷはぁー。お水感謝します」

 

「いえ、気にしないで下さい。ですが本当に驚きました。最初は親からの受け売りかと思っていましたが、しっかりと自らの意見を持って話している。布都の様な女子は初めてです」

 

それはこちらも同じである。原作知識から神子が天才だとは知っておったが、六つの時からここまで頭がよく、価値観や見方が既に大人と変わらないとは予想できぬ。実は話の途中でタイミングを見計らってさり気無く神子の性別を聞こうとしたのだが、その隙が見つけられんかった。

だが話題が逸れた今なら聞けるかもしれん。

 

「お褒め頂き光栄でございまする…。では、次は神子様の番ですぞ」

 

「え?」

 

「我の話を聞いて下さったのです。今度はその逆。未熟ではありますが我でよければ、神子様の話やお悩みを聞かせて欲しいのです」

 

すると神子は少々困った表情になり、口籠ってしまわれた。やはりどんなに賢くともまだまだ子供、その反応だと打ち明けにくい悩みがあると言っておるようなものだ。因みに我の一人称が戻っておるが、神子がそのままでいいと言ってくださった。

我は机越しに座っておられる神子を真剣な眼差して見つめておると、神子は暫く悩んだ後に、不安げな表情でゆっくりと口を開いた。

 

「私はその…実は…」

 

「失礼いたします」

 

神子が言いかけたその時、外で待機していた小間使いが扉を開けて入ってきた。神子はすぐさま表情を天皇の息子のものへと戻し、我は内心舌打ちしながら小間使いの方を見ると、小間使いだけでなく父上が一緒に居られた。父上は神子に一礼して挨拶をすると、我の手を掴んだ。

 

「布都、そろそろ時間だ。帰るぞ」

 

「分かりました…。すみませぬ神子様。お話はまた今度でもよろしいでしょうか?」

 

「はい、あなたの話はとても面白かったです。是非またいらしてください」

 

神子は笑顔で返してくれたが、それは我慢して作っていた様に見えた。振り向いて神子を見つめると、小さく手を振ってくれたので、我も笑顔を作って手を振った。

 

帰り道も、家に帰ってからもずっと我は神子の事を考えておった。彼、いや、彼女は性別を偽っておるのは間違いないだろう。幼い年の男女は身体的特徴の差が余りないとはいえ、やはり顔立ち、声、体の細さから男子とは言いにくい。男尊女卑の時代の所為かは分からないが、何の因果かそう教育を受けたのだろう。本当の自分を出せず、賢いが故に同い年の子供と話が合わない。天才ゆえの悩みと言ったらそこまでなのかもしれないが、彼女は彼女なりの苦しみを味わっている。

可哀想だと思った。だがそれ以上に、不思議な魅力を持った少女だと感じた。どこかただならぬ力を感じさせ、理屈ではないこの人に付いていきたいと思える雰囲気。それをカリスマと呼ぶのだろうか、それとも我が物部布都である為、彼女に他人とは違う特別な感情を抱いたのであろうか。だがどんな理由であれ、やはり我はあの方に付いていきたいと思った。

 

「また今度、是非会いに行きますぞ」

 

そう呟いて、我は書物を読み始める。神子様と会うまでに少しでも知識をつける為に。

 




追記)布都が正座をする描写を書いていたのですが、正座は江戸時代の参勤交代の時に広まったもののようなので、正座を胡坐に変えました。また、飛鳥時代では天皇の事は、天皇と呼ばずに大王、陛下と呼ぶみたいなので、その辺りについても付け加えております。知識不足で申し訳ありません。


史実と違うのは、用明天皇の即位。
布都の元ネタである物部守屋が聖徳太子よりも年上ですが、今回は逆にして更に年を近くしております。

神子は男子として育てられている設定にしました。

ツッコミところは色々ありますが、よければ感想をお願いします。

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