東方物部録   作:COM7M

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飛鳥時代の恋愛が手紙のやり取りから始まる? ふ~ん(無関心)




シンプルイズベスト?

ここは物部氏の本家である我が家。いくら思考放棄してメトロノームごっこをしていた我にでもそれは分かる。ならば目の前にいる彼女は我の幻覚なのかと思い、何度も瞬きするが彼女の姿が消える事は無い。

我が今どんな表情をしているのかは近くに鏡が無いので分からんが、ただ神子様がクスリと笑みを浮かべる程はおかしなものだったらしい。笑みを浮かべた神子様は我の頭に軽く手を置いた後、よっと声を漏らして隣に座られた。

えっ…えっ!?な、何故神子様がここに居られるのだ!幻覚ではないのは今頭を撫でられた感触で分かったが、何故彼女がここに居るのかは検討も付かぬ。宮に瞬間移動したのかと思ったが、周りの景色はいつもの我が家である。

 

「そこまで驚かなくても。私も外出ぐらいしますよ」

 

「み、神子様!?もも、申し訳ありませぬ。突然の事態に頭がついていかず」

 

慌てて庭へと出していた足を戻して胡坐を掻くと、深々と頭を下げた。神子様からはなるべくは頭を下げないで欲しいと言われているのだが、挨拶の一礼はしなければ我の気が収まらん。改めて顔を上げると神子様の整った顔を眺めながら、首を小さく傾けた。意図は伝わったようで、我が質問を口にする前に神子様が答えてくれた。

 

「今日はたまたまこちらに来ることになったので、是非布都に会おうと思いましてね。周りの目は少し変わってしまいますが、あなたも私ならそのような関係と思われても問題ないでしょう?」

 

「ぬぁっ!?」

 

澄ました顔をしながらサラリととんでもない発言をされ、天皇の息子と物部の娘という堅苦しい空気が一気に壊れた。この時代の男性が女性の家へ来る事はかなり大事だったりする。なにしろこの時代の結婚は男性が女性の家へ三日連続で通い、一緒に餅を食べるだけでよい。神子様がどのような考えで我が家に来たのかは分からないが、傍から見れば我と神子様が恋仲と思われてもおかしくない。いや、ただでさえ我は神子様と多く会談しておる。実際にそう思われているのだろう。

その事に気が付いた刹那、目を尖らせて辺りを見渡した。すると近くの扉が数センチだけ開いており、そこから父上と母上が覗き込んでいた。反対側にある扉からは同様にいつも世話してくれいる召使の女と、同僚の召使の姿も見えた。神子様は既に気づいていたらしく、我と目があっても動揺する様子はなかった。

 

「……神子様。我の部屋へ案内します」

 

「おお、大胆ですね」

 

「違いまする!」

 

我は自分でも分かるほど顔が真っ赤だと言うのに、神子様の纏う余裕のある雰囲気が崩れる事はない。その事がどうもムカムカし、少し強引に神子様の手を引っ張った。近くの部屋からは母上や召使の黄色い声が聞こえてきたがあえて無視する。もし万が一、我と神子様がそのような関係にあろうともたかが子供の恋愛ではないかと、大人げない保護者達を心の中できつい言葉で返した。

神子様を我の部屋にお連れすると、全ての扉を念入りに閉めた。それがむしろ周りの反応を大きくしてしまうのだが、冷静さを失っていた今の我にはそこまで頭が回らなかった。

 

「ここが布都の部屋ですか。確かに、布都のいい香りがします」

 

「は、恥ずかしいですからそのような台詞は止めて頂きたい…」

 

何故こんなにも神子様の言葉に弱いのかは自分でも理解できない。そこ等の者に同じ事を言われても平然と返すだけだが、神子様の口から紡がれる言葉はいつも我に強い影響を与える。

 

「ふふっ、やっぱり布都は可愛いね」

 

「あ、あのですなぁ…。ハァ…、もういいです」

 

もはや何を言っても口で勝てる気がしないので、軽く口を尖らせてそっぽを向いた。

 

「あら、少々からかい過ぎてしまいましたか。布都に嫌われるのは嫌なのでこのくらいにして置きましょうか」

 

「まったく…。それでわざわざ我が家に来たと言うことは何かおありですか?」

 

「いえ、だから言ったじゃないですか、たまたまだと。ここに来たのは本当に布都の顔が見たかったからですよ。いけませんか?」

 

「い、いえ…。嬉しい限りでございまする」

 

うぅっ…今のは完全に天然の言葉であったな…。神子様も他意があった訳では無いのじゃ。ここは落ち着け。

意識的な口説き文句もかなり心に来るが、無意識的な口説き文句はそれ以上に破壊力がある。比較的神子様の言葉に慣れた我でなかったら危ういであろう。いや、神子様を慕っている我だからこそ、ここまで彼女の言葉に弱いのかもしれぬ。いくら神子様が魅力的であろうと、万人が皆我の様に神子様を慕っている訳では無い。

 

「因みにその用事というのはこれですよ」

 

そう言って神子様は腰に掲げている一つの棒をポンポンと叩くと、黄金に輝く装飾が付けられた細長い金属はチャリと音を立てた。そこでようやく我は神子様の腰にぶら下がっていたものの存在に気づき、それが紛れも無く剣を収める鞘のものであると理解した。しかし我が持っている剣とそれは天と地程の差があるほど豪華で派手であった。

 

「……それ、戦えるのですか?」

 

「なにぉう、これでも有名な鍛冶師に打たせた立派な剣ですよ。まあ観賞用ですが」

 

少女らしい可愛いトーンで、柄に太陽を連想させる装飾が付いている腰の剣を軽く抜いた。

 

「やっぱり実戦向きの剣ではないのですね。ですが実戦用の剣であっても、我の手が届く範囲では神子様が剣を振るい、戦う事はさせませぬが」

 

「えっ?」

 

少々キザっぽく言ったのが効いたのか、珍しく神子様は素の声と共に目を開いた。その頬は赤くなったと言われればそう見えなくもない。だが我がからかう前にポーカーフェイスを作ったのか、赤くなった頬と共に表情が戻る。相も変わらず中々奥底を見せてくれぬ方だ。

 

「嬉しですね。ですが仮にも私は男であなたは女。私があなたを守らなければ、周りからは少々情けなく見えてしまいます」

 

「もう少し体力つけないと説得力がありませぬぞ?」

 

「うっ…痛いところ突きますね~」

 

どうやらあれから走り込みはやっていないようで未だに体力には自信が無い様だ。これには言い返せないのか苦笑いを上げる。

なら何故剣を買ったのかと聞けば先と同じ観賞用と返って来るであろう。実際はどこぞの毘沙門天代理の様に威厳を見せるためのものであろうが、観賞用と称しても問題なかろう。

まあその剣が観賞用であろうと実戦向きのものであろうと今は関係なかった。それよりもその剣の見た目が、原作で見たことのある七星剣そのものである事が気になった。七星剣は簡潔に言えば宝刀と呼ばれるほどに有名な剣で、現代では国宝にまで認定されておったか。そんな重要な七星剣と予測した物からは、特にこれといった力や雰囲気を感じられんかった。

我が現世からそのままタイムスリップしているのならいざ知らず、ここは異能の力が存在する東方世界の飛鳥時代。後に宝刀と呼ばれるほどの七星剣なら何かしらの力を感じられても良いはずだが。

 

「やはりこの剣が気になりますか?中々よい形状でしょう」

 

「へっ?ええ、そうでございますな。そこらの政治家が持っても刀に持たされている感じになりましょうが、神子様の美しさなら見栄え負けしませぬぞ。ただ少々…いえ、なんでもございませぬ…」

 

「私は気にしません。どうぞ言って下さい」

 

「では失礼ながら。その剣は見た目の割にはこれと言った力を感じられなく、少々見た目負けしているように見えまして。我が家にも宝刀があるので何となくそれの持つ力が分かるのですが」

 

持ち主としては決して愉快な言葉ではなかったであろうが、神子様は怒る事無くなるほどと小さく頷いた。器量の大きさにまたも彼女に感心した。

 

「確かにこの剣は見てくれだけのものですから、実際に宝刀を目にしている布都からすればそう見えるでしょう。ですが仮にも一級の鍛冶師が作り上げた一級品です。その剣を見た目負けしていると言わせるほどのその宝剣、是非とも見てみたいですね」

 

うむむ…面倒な事になってしまったな。いくら天皇の息子だからと言って世間的には仏教徒である神子様にあの剣を見せてよいものなのか。その辺りの宗教的価値観は未だによう分からん。

だがまあ仮に怒られても大したことではないであろう。今までも神道以外の者も目にしたことはあるであろうし。

 

「やっぱり難しいですかね?」

 

「いえ、大丈夫です。ご案内しますぞ」

 

我が家にあるその宝剣は石上神宮(いそのかみじんぐう)と呼ばれる神社に置かれているものだが、我が生まれてからは敷地内に建てられた分社に大切に祭られてあった。何故剣の分社と我の出生が関係あるかと言うと、我の名がその剣の名から頂いたもので、その剣を我の近くに置いておく事で健康な子供に育つように願掛けするだったか。どのような発想から来たものかは分からぬが、兎に角我の為にわざわざここに祭られているものであった。無論石上神宮で儀式が行われる時や、毎月決められた日に剣を一度石上神宮に戻して日頃の感謝を込めて祭り上げた。

いくら物部氏の本家であろうとも宝剣である物を個人的な理由で持ち出すことに当初は反対されていたらしいが、どうやら有名な占い師が占った結果、我が10になるまでの間はこの家に置いておくべきだとの事で周りの反対はごく一部を除いて無くなったらしい。

その剣の名は布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)。都の文字の呼び方は違うものの、我の名がこの剣から頂いたのは明白である。

 

「これが本物の宝刀ですか…」

 

大きめの分社の中に祭られていた一本の剣が視界に入った刹那、言葉にするには余りにも難解な心を震わせる衝撃が走る。毎日礼拝している我でさえこの感覚には未だ慣れぬ。初めて見た神子様の衝撃は今の我よりずっと大きいであろう。

 

「布都御魂剣、この剣の名です」

 

「布都の名の由来、ですか」

 

「はい。タケミカヅチはこれを用いて葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定したと言われております」

 

通常の刀とは逆の方に湾曲している通称内反りになっている剣、いや、形状からするに刀と呼んだ方がいいかもしれぬ。日本刀とはまた少し異なる部分があるが、この独特な湾曲はまさに刀だ。

神子様の唾を飲み込む音が聞こえる。その気持ちは凄く良く分かりますぞ。我も初めて布都御魂剣を見た時は、少々大げさだが気絶しそうになるほどであった。

 

「なるほど、確かに私の剣が見た目負けしていると思う訳です。まさか布都の家にこんなものが祭られているとは」

 

「我が家に置いておくのはあと四年弱の間ですが」

 

「え?」

 

神子様の疑問に答え、布都御魂剣がここに来るまでの経緯を話した。すると神子様は感心半分呆れ半分と言った溜息を吐いた。前者は単純にこの剣の価値に対する関心で、後者は我が両親の親馬鹿っぷりに対するものであろう。我も初めて経緯を聞いたときは、分家の者への申し訳なさで一杯であった。

 

それから暫く神子様は魅入られたように布都御魂剣を眺めておられており、その間ずっと神子様の傍に付き添っていた。

そして我の部屋に戻るやいなや、布都御魂剣への感想をひたすら述べておられた。確かに布都御魂剣は御神体になるほどの宝剣であるが、毎日目にしている我にとっては有難い物ではあるが、新鮮な物ではない。故に神子様の話は少々退屈なものであったが、それでも少女の様に純粋な笑みを浮かべる神子様を眺められたのはとてもラッキーだった。

一通り感想を述べ終えたようで、手元に置かれていた水をゴクゴクと飲まれた。

 

「ありがとうございます布都。おかげで良いものが見られました」

 

「神子様に喜んで頂けたのならなによりですぞ」

 

「一度でいいからあの剣を手にしてみたいものですね~。この剣も気に入っていますが、あの剣の力には敵いません」

 

「ふふっ、普段他者を引き寄せている神子様にそこまで言わせるとは。流石我等物部氏の宝剣と言うべきでございますか」

 

「まったくです」

 

我もまた神子様と同じで布都御魂剣を使って戦いたい者の一人だった。あの剣が布都(ふつ)と呼ばれているのは剣を振るった時に鳴る音から来ているらしい。父上から聞いた話によると、ただ剣を振るうだけでは普通の剣と何ら変わらんらしいが、布都(ふつ)と特徴的な音を鳴らした時、固い岩石を紙のように斬れる程の切れ味を発揮するらしい。

 

「おっと、感動ですっかり忘れていました」

 

何か我に伝えるべき事を思い出したようだ。

 

「私が来る前に何やら奇妙な歌を歌っていましたが、悩み事があるのですか?」

 

「は、恥ずかしいところを見られましたな…」

 

神子様が神出鬼没に現れた所為ですっかりと忘れておったが、随分と奇怪な行動を神子様に見られてしまったのであった。その事を思い出すと途端に恥ずかしくなってきた。

会話と己の心境を切り替える為に一度わざとらしく咳払いをすると、我は奇妙な歌を歌っていた経緯について説明した。

一週間前から神道を学び始めたこと、どうやら神道を使うには魂を震わせる必要があるとのこと、考えすぎていた頭を整理する為に日頃の鍛錬を再開したらまた新たな難題が出たこと。

それを神子様は面白おかしく聞いており、時折クスクスと笑いながら聞かれた。我からすれば笑い話では無いのだが、神子様曰く布都が難しく考える事自体がおかしい様だ。原作のアホな布都ならともかく、原作より遥かに賢い我に言うとは誠に遺憾である。しかし話を折る訳にもいかないので、あえてそこには触れずに最後まで悩みを話した。

 

「なるほど、布都の悩みは確かに分かりました。剣の戦い方に関しては私は何も言えませんが、神道に関しては少し手伝うことができるかもしれませんね」

 

「えっ!?ほ、本当ですか!?」

 

何故神子様が神道について手助けできるのかは分からぬが、神子様の手助け程心強いものがなかった。気が付けば頭より先に体が動いていたようで、神子様の顔の前まで自分のそれを近づけていた。

話しにくいのか神子様は反り気味になりながら口を開く。

 

「詳しい事は私にも分かりませんが、要するに魂を震わせればよいのでしょう?ならば――」

 

言葉が途切れると共に、突如我の手が掴まれて神子様の元へ引き寄せられた。元々前のめりしていた所為でバランスが不安定で抵抗も出来ず、気が付けば我は神子様に抱き寄せられる形になっていた。

急すぎる神子様の行動に声すら出ず、何故このような事をされるのかと問いただそうとする暇も無く、神子様の右手が腰に、左手が頭に回されてギュッと抱きしめられた。

 

「――~~ッ!?」

 

「どうです布都?魂、震えませんか?」

 

そこでようやく神子様の意図に気付くことができた。不測の事態を作り上げる事で我の魂を揺さぶろうとしてくれたのであろう。だが震えるのは魂では無く我の心臓であった。バクバクと自分でも分かるほどの鼓動を鳴らしており、今にも意識が飛びそうだ。

神子様の優しい香りが鼻腔をくすぐり、少しひんやりした体温がまた心地よかったが、この状況でそれ等を堪能する余裕は我にはなかった。唇をギュッと噛み締めて、声にならない喜びの悲鳴上がりそうな口を何とか押えるので一杯一杯である。

 

「ぎゅ~」

 

わざとらしく声にして抱き寄せる力を強める神子様。

普段大人びた口調をされているのにこんな時だけ子供っぽい口調にするのは余りに卑怯であった。普段神子様のカリスマにドキマギされているが、今は年相応の愛らしさに心打たれてしまう。

ドクンドクンと心臓がより一層強く鼓動するのが分かる。これ以上神子様に触れていたら胸がはち切れそうな程だ。

そんな我の心臓の状況をいざ知らず、神子様は動く

 

「み、神子様…?」

 

神子様は少し離れると、左手が我の顎を軽く押さえて固定する。視界は颯然とした神子様で一杯で他のものは何一つとして入らなかった。徐々に徐々に近づいてくる神子様の顔。まるで誘われるかのように瞼が勝手に閉じて唇を強調するように顔を前に出した。

な、何をしておるのだ。我はあくまで神子様を尊敬と言う形でお慕いしているだけであって、恋愛的感情は持ち合わせていないし、そもそも神子様は女で我も女。そう分かっている筈なのに何故体は言うことを聞かないのだ。このままだと神子様と口づけを交わしてしまう。それは駄目だ、こんな意味もよく分からず初めての口づけを交わすわけにはいかない。だが神子様の体を突き飛ばすことはおろか、そっぽを向くこともできない。

ああもし、もし我と神子様の間に壁があったのなら、神子様への数多の感情が忠誠心に混ざり合う複雑な感情を整理することができるかもしれないのに。

その時だった。バチッと小さい音が鳴り、唇が軽く弾かれた。

 

「えっ?」

 

パチッと目を開くと、僅か数センチしかない我と神子様の間に赤く光る薄い壁が存在していた。

パニックになっていた頭でもそれが何なのかはすぐに分かった。結界だ。結界が我と神子様の口づけを邪魔した、してくれたのだ。

神子様はこれが結界だと分からなかったのか、暫くの間目をパチクリさせていた。

 

「布都、ひょっとしてこれが結界――」

 

「何をしているのですか布都!?」

 

神子様の声を遮るように、突如ヒステリックな女性の声が部屋に響いた。それと同時に木製の扉が大きく開かれる。

振り向いて音の発生源を確認すると、そこには母上が男らしく堂々と立っておられた。母上の後ろには父上と召使の者達もいた。

ま、まさか今のやり取りをみみっ、見られた…?

 

「もー、あと少しではありませんか!何故この状況で結界を生み出したのですか!」

 

「あ、阿佐よ…」

 

「えっと、すいません尾興さん、阿佐さん。まだ幼い娘さんを誑かす?形になって」

 

「豊聡耳様は気にしないで下さい。布都、こんなに良い殿方の口づけを断るとは何事ですか。いいですか布都。確かに私は豊聡耳様と今日お会いしたばかりですが、この間あなたから散々聞かされて彼の良さは知っています。そんなあなたはてっきり彼に恋していいると思っていたのにまさかあろうことかこの時に結界を作り出すとは」

 

み、見られた?きっと凄い変な顔をしていただろう。リンゴのように真っ赤になっていただろう。その顔をみ、見られた?

 

「はっはは…」

 

「は?」

 

「は?」

 

 

頬がピクピクと痙攣し、声が擦れているのが自分でも分かった。ゆっくりと立ち上がりながら部屋の入り口に立つ皆をキッと睨み付ける。

 

「は、母上も父上もみんなだいっきらいじゃー!」

 

 

 

そこからの事は覚えておらんかった。気が付けば我は神子様の胸の中で目が覚め、神子様が悪乗りが過ぎたと何度も謝っていた。神子様を断れなかった我にも責任があったのでさほど怒らなかったが、神子様はギリギリのところで止めるつもりだったらしく、我の忠誠心を踏みにじったとかなり反省しておられた。

そこまで重く考えないで下さいと我は笑顔で伝えた。あそこまで来たらそのまま口づけをしてしまっても、寸前のところで止めても、相手が神子様ならばもう良いかと心のどこかで思っていたからか、我ながら寛大な返事ができた。

神子様も分かって下さったのか、感謝の言葉と共に優しく頭を撫でて下さった。

 

因みに我が眠っていたのは、無意識の内に強力な結界を生み出して覗き見ていた皆を弾き飛ばして気絶させ、急な力の使用によって一気に疲労が溜まったからだそうだ。

色々と恥ずかしい思いをしたものの、何とか神道の扉を開くことが出来た。その扉を開くきっかけを作って下さった神子様に今度は我の方から抱き付いた。優しく受け止めてくれた神子様は、耳元でそっと美しい音色を奏でる。

 

「布都、おめでとう。無事神道の扉を開けたようですね」

 

「はいっ!」

 

 




タマリマセンワー

阿佐さんが恋愛にノリノリキャラになってしまいましタワー
あくまで神子様も布都ちゃんも恋愛感情は持っていまセンワー
ぼちぼち屠自古を出したいデスワー
この作品は百合が強いデスワー


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