個人的にはいろはが好きなのでいろはをヒロインにしていきたいと思います。
1話はいろはす後半から出ます。
原作を意識して書いているわけではないので、矛盾していたりするかもしれません。
よろしくお願いします。
かさかさと擦れる紙。
紅茶を静かに啜る音。
時々聞こえるどこからか遠い廊下を歩く人の足音。
奉仕部、と書かれたその部屋にはそんな静かな日常が流れる。
最初は面倒なことになったものだと思っていたが、まあ、今は平塚先生にも感謝している。
いやでも結構酷いこともされたしな。ファーストブリットとか。あれは死ぬかと思った。
っていうか平塚先生のネタが古い。どうせやられるならデンプシーロールとかいいよね。
なんでだろうねあれ。ああいうの見ちゃうとやってみたくなるよね。
俺ってまだ中二病?
えっ、嘘、材木座と一緒?嫌だわー。
昨日、ピーカブースタイルでデンプシーの練習してたらいつの間にか小町に見られてたし。
またなんかやってるよ〜このごみぃちゃん。って蔑むような目で。
人によってはご褒美なんだけどなぁ。
なんか用があったはずなのになにも言わず戻っちゃったし。
…ちょっと恥ずかしかったなお兄ちゃん。ノックして欲しかった。
やっぱりノックは大事だね。うん。
俺がひとり静かに悶えていると廊下からこつこつと足音が近づいてくるのがわかった。おそらくは平塚先生だろう。
というかここへ来るのは基本、平塚先生か依頼者、それと生徒会長の一色くらいなのだ。
平塚先生が来ると大概面倒な案件持ってくるから嫌なんだよな。どこのふうせんかずら?
そしてふうせんかずらは勢いよくドアを開けた。
「今日は静かだな。そうか、一色がいないからか」
「平塚先生、ノックはした方がいいと思います。社会人としては」
「平塚先生、比企谷君に言われるということは相当なことだと自覚した方がいいと思いますよ」
「確かに。ヒッキーに言われるとちょっとイラっとするよね。イラっと」
なぜかさらと俺が貶されている。そしてこんな会話に慣れてしまった俺は病気かな。また一句でも読もうかな。
戸塚可愛いかったな。
そして由比ヶ浜はなんで同じこと2回も言うかな?強調しなくてよかったよね?
「そうだな。あの比企谷に言われるのはまずいな。人として。これからは私もノックをするとしよう」
「そんなことは置いておくとして、平塚先生、なにかご用ですか?」
そんなことって、相変わらず酷いですね雪ノ下さん。
「いや、ただ様子を見に来ただけだ。私もこの部の顧問だしな」
「先生、ここ来る暇あったらお見合いとかした方がいいんじゃ」
「比企谷、最近コークスクリューブローを覚えてな」
「すみませんでした。ハートブレイクショットは勘弁してください」
平塚先生が一瞬リーゼントのおっさんに見えたわ。
俺、リカルドじゃないからね。
エルボーブロックを覚えなきゃ俺が死ぬなこれ。
なんとか謝り倒して平塚先生にはお帰り頂いた。
なんか社畜みたいで嫌だな。働きたくないな。社畜ってほんと哀れだよな。やっぱ働いたら負けだな。うん。
「でも確かに、いろはちゃんいないと静かだよね」
「そうね。一色さんも結構ここに馴染んでいるようではあるし」
要約すると一色がいなくて寂しい、ってことだろう。かなり遠回しな言い方だが。可愛いなゆきのん。
「そうだゆきのん。いろはちゃんにティーカッププレゼントしようよ」
「そうね。一色さん、どんなものが好みなのかしら」
「今度買いに行こう」
「ええ、そうね」
女子ってそういうプレゼントとか好きだよな。
まあ俺ほどのぼっちにもなるとそんなものとはほとんど縁がないがな。
「ゆきのん明日って予定ある?」
「いえ、特にはないわ」
「じゃあ明日に千葉に行こう。ヒッキーも明日千葉に集合ね。時間後でメールしとく」
…
「え、俺も行くの?ってか俺には予定聞かないんだな、相変わらず」
「ヒッキー絶対暇じゃん」
絶対とまで言われるとは。
由比ヶ浜の今度は明日らしい。急過ぎるでしょ。
その後の予定をきゃっきゃうふふしながら(ガハマさんが)決め、そのまま解散になった。
ほんとあのふたりはくっついている。ゆるゆりだな。
ご注文はゆきのんですか?
だらだらと歩きながら階段を降り、玄関へと向かう途中、生徒会室の灯りがぽつんとしているのが見えた。
普段の俺なら真っ直ぐ小町の待つ家に帰るのだが、なんとなく生徒会室のドアをノックしてしまった。
「どうぞ〜」
「一色、調子はどうだ」
「せんぱいどうしたんですか?せんぱいからここに来るなんて珍しいですね。明日は猛暑になりそうです」
「いや、今冬だし。沖縄だって猛暑じゃないぞ」
こんなことで天変地異扱いされたくはない。
べ、別にあざとい後輩のことが気になったわけではないんだからな。
「っは、もしかして頑張っている後輩に声をかけて私の好感度上げて告白しようとしてましたか?ごめんなさい。もっと好感度上げてから告白してください。今はまだ無理です。ごめんなさい」
「俺は何度お前に振られればいいんだ…」
振られ続けて何千里なんですかね。
「っていうか、もう下校時刻だぞ」
「ほんとですね。今日はもう終わりにします」
「ん。じゃあな」
「せんぱい、待っててくれてもいいじゃないですか?」
なんでそうなるの、待つ理由なくね?はちまんまじ意味わかんないんだけど。
「もう、せっかく可愛い後輩がいるんですから一緒に帰らなきゃ損ですよ」
「あざといな」
「せんぱい酷いです」
その後は生徒会室の戸締まりを手伝い、鍵を返して一色を駅まで送ることになった。
一色は相変わらずあの言葉で脅すから困る。
俺としては安易に口に出してほしくない。
俺の求めているものはそんなに軽いものではないし、届かないとわかっていても手を出して掴もうとする。
そんなものは欺瞞だとわかっていながら、目の前のものを信じようとしている。
雪ノ下陽乃は俺の足掻きを見てどう思っているのだろうか。
綺麗で黒い瞳のうちで、滑稽だとあざ笑っているのだろうか。
考えることがやめられない。考えずにはいられない。
自分が傷つくとわかっていても、その思考は変わらない。
ただの行き過ぎた自意識過剰。こんな性格だから人も信用できないし、信頼できる人も周りにはいなかった。
どうしたら、手に入れることが出来るのだろか。
「お待たせですせんぱい」
「ああ」
「せんぱい、なんか機嫌悪くないですか?」
また態度に出てしまった。切り替えないと。
これじゃまた小町に口聞いてもらえなくなる。
「そうじゃねーよ。ただ単にこんな寒い日にわざわざあざとい後輩を送らないといけないのかと思ってな」
「いいじゃないですか。可愛い後輩と一緒帰れるんですから。むしろ感謝してほしいまであります」
「あざとい」
頬を膨らませ腰に手を当て、私、怒ってますアピールをしている。
「…あざとくない方が可愛いと思うんだけとな」
「ふぇっ、せんぱいなに言ってるんですか。急に褒めたりして。っは、もしかして私のこと褒めて自分のこと好きにさせて告白させようとしてますか、ごめんなさい私告白する気はないのでせんぱいから告白してきてくださいごめんなさい」
長い。よくわからんラップだったが振られたということだけはわかった。
ラップを言っている間にマフラーが乱れたのかマフラーを整え直している。
顔はほんのり赤く、ラップで息が上がったようだ。
よく噛まずに言えました。
「じゃあせんぱい、ここで」
「ああ。じゃあな」
「また月曜日です」
あざと可愛く手を振る一色はやはりどこか小町に似ていて、手のかかる後輩だ。
その後輩のために明日はプレゼントを買いに行かないといけない。
だらだらしていたかったのになぁ。
一色、どんなのが好きなのかな。
ちょっと書き足しました。