これ次どうすんだよ?
どうなんの?
ということでデートの次の日の話です。
「こんにちは、由比ヶ浜さん、比企谷君」
ドアを開けると雪ノ下の淹れた紅茶の香りがした。
「うす」
「ゆきのんやっはろー」
「紅茶、いかがかしら?」
優しく微笑みかける雪ノ下。
「ゆきのんありがとー」
元気よく返事し、明るい花を咲かせる由比ヶ浜。
「俺もいいか?」
「ええ、もちろんよ」
このふたりが俺の求める本物なんだと思っていた。
いや、今もそう思っている。
ただ、本物は、他にもあったのかもしれない。
ないと思っていて、周りを見渡すこともしなかった。
ただ目の前のものだけを見ていた。
でも、実際にはただの勘違いなのかもしれない。
一色が昨日、俺にしたことの意味はなんだったのだろうか。
ずっと考えたが、どうなんだろう。
一色のカップを見つめても、答えは出ない。
パンダのパンさんの湯呑みから湯気が消えたあたりでもうひとりはやって来た。
「お疲れ様でーす」
「こんにちは、一色さん」
「やっはろーいろはちゃん」
「おう」
昨日の今日でやはりなんとなく気まずい。
だが一色はいつもそんなに変わらないように見える。
やはり俺の勘違いだったようだ。
そう思うとなんだか気が楽になってきた。
そうだよな。一色に限ってそんなわけはない。
一色が好きなのは葉山なのだ。
俺であるはずがないし、もしそうだったとしたら一色を病院に連れて行かないといけないまである。
「みなさんこんにちはでーす。土曜日はありがとうございました」
「一色さんが喜んでくれてよかったわ。一色さん、紅茶はいかが?」
「いただきまーす」
一色にプレゼントしたカップを丁寧に取り出し、紅茶を淹れる。
雪ノ下が俺の湯呑みが空なことに気づき、おかわりを聞いてきた。
「比企谷君は猫舌だから、飲むのが遅くておかわりのタイミングに困るわ」
「ヒッキーいつも遅いもんね。かまくら?だっけ、ヒッキーもかまくらに似てるんじゃない?」
「まあ確かに俺も小町も猫舌だが…ペットに似るってのはなんか嫌だな」
ペットが飼い主に似るのはわかるが、飼い主がペットに似るってのはなんか立場逆転してない?
なに?そんなに俺って下なの?
雪ノ下が猫を飼い始めたらその猫に似そうだけどな。
本格的に猫ノ下だな。
「そう言えば小町さんはどうしたのかしら?今日は生徒会はないのでしょう」
「今日はクラスの友達とカラオケに行くって言ってましたよ。ほんとはこっちに来たがってましたけど」
「まあ小町は俺と違ってコミュ力高いしな。友達がいるなら大切にした方がいいと思う。兄的に。
…まあてきとーにつるんでハブられたりしなければいい。
小町を泣かしたら許さん」
小町を泣かしていいのは俺だけだ。
小町の泣き顔はたまらないからなぁ。
どこの名瀬博臣だよ。
「せんぱいはやっぱり変態シスコンですね」
一色はやれやれといった感じで俺を変態呼ばわりした。
シスコンはいいが変態は納得いかん。
ふと昨日のことを思い出し、そして一色と目が合ってしまった。
すぐに一色は目を離したため、とくに気まずくはならなかったが、雪ノ下と由比ヶ浜になにか気づかれたかもしれない。
いや、別に特別なにかあったと言うかそこまでではない。
はず。
どうしよう。
やっぱりせんぱいにほっぺにチューなんてするんじゃなかった。
どうせするなら唇に…ってそういう問題じゃない。
頑張って奉仕部来たけどあんまりせんぱいと話せない。
しかも一瞬せんぱいと目が合っちゃった。
雪ノ下先輩と結衣先輩ならすぐに異変に気づいちゃうから気をつけないと。
「ねぇ、いろはちゃんとヒッキー、なにかあったの?」
「なにかってなんですかー?」
やばい。速攻で気づかれた。
「比企谷君、あなたついに犯罪を…」
「いや、別に犯罪とかしてないから。しかもなんですぐ俺がなんかしたってなるんだよ」
雪ノ下先輩はせんぱいに対していつもひどいですよね。
まあ面白いんですけど。
ここは誤魔化すのも含めて悪ノリしちゃいます。
せんぱいごめんね。てへぺろ☆
「そ、そうなんです。あの後、せんぱいに襲われそうに…」
「由比ヶ浜さん、この人を通報してもらえるかしら?」
「わかった。えっと…いちいちきゅ、と」
「由比ヶ浜さん、それは救急車よ」
わざとらしく泣き真似してみせるとふたりともちゃんとノッてくれました。
せんぱいはどこでもアウェーなんですね。
「みんな俺に対して酷くない?あと、一色は嘘の供述をするな。だから冤罪は消えないんだ。
それでも僕はやってない」
なんか懐かしい映画の名前出てきました。
というかそれじゃフラグ立ってますよ。
「せんぱい、それだと冤罪で捕まっちゃいますよ」
「大丈夫よ比企谷君。私が証言台に立ってあげるから」
「おう、雪ノ下が証言してくれるなら安心だな」
「事実を包み隠さず話すわ。比企谷君の不利になるように」
「敵なのかよ…」
いつも思うんですけど、せんぱいをいじるときの雪ノ下先輩が輝いているんですよね。
まあわからなくはないですけど。
せんぱいをいじめるのは楽しそうですしね。
「じゃあ私がヒッキーの弁護士やるね!」
「…勝てる気がしないな」
「ヒッキー酷すぎ!」
弁護士なら雪ノ下先輩が安泰ですよね。
スーツきてメガネかけて論破してそうです。
雪ノ下先輩かっこいい。
「では私が検察役でいいかしら?」
「なんで雪ノ下はノリノリなんだよ…」
「私裁判官したいでーす。フフフッ。せんぱい、覚悟して下さい。懲役50年は堅いです」
なんなら私の家に服役してくれても構わないですけど。
「理不尽過ぎるだろ…」
せんぱいも流石にげんなりですね。
せんぱいをからかってると昨日のこともなんかあまり気にならなくなってきました。
「でもメリットもあるなぁ。働かなくていいし、一応飯は出るし…」
「あなたすごい捻くれた思考回路をしているわね」
「まあヒッキーだしね。しょうがないよ」
「今日はもう帰りましょうか。ちょっと疲れてしまったし」
「ああ、そうだな。主に俺の心が疲れたけどな」
「あら、ごめんなさい。あなたに心があったことをすっかり忘れていたわ」
「そのちょっといい笑顔やめろ。全然申し訳ないっていう気持ちがなかったぞ」
雪ノ下先輩はさらっとSですね。
やっぱりこの3人は面白いです。
ちょっと焼けちゃいます。
雪ノ下先輩がせんぱいをひとしきりいじめた後、みんなで戸締りをして雪ノ下先輩と結衣先輩は鍵を返しに行った。
私も帰ろうとすると、結衣先輩がパタパタと走ってきて私の耳元で囁いた。
「私だって負けないから」
他の作者のssでも似たような場面を読んでいて、被ったりしたらいけないなと意識して書きました。
感想やご意見等ありましたら是非お寄せ下さい。
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大事なことなので2回言ったとかそういうわけではありません。
でわでわー。