東方吸血鬼転生   作:肥満猫

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 処女作で拙い文章ですが、よろしくお願いします。
 7月12日投稿、7月12日に、一人称を三人称に変えました。主人公の性格だと一人称はあまりよくないと判断し、急遽三人称にしようと思いました。突然の変更をして、申し訳ありません。


第一話『人間をやめる』

 一人の若い男性は、光に包まれた謎の空間に目を覚ます。

 男は身体をお越し、周りを確認するが、見えるのは真っ白な空間、加えて言うなら小さな光の粒が空中に浮いていることくらいか。

 

(……意味がわからない)

 

「目が覚めたかね? 荒倉(あらくら) 鬼道(きとう)くん」

 

 先ほどまで確かに、誰もいなかったのを確認したのにも関わらず、そこには、腰の折れ曲がった禿頭の老人が立っていた。

 彼は突然現れた老人に驚いたが、それよりも、自分の名を知っているという事が気になった。

 

「なぜ俺の名を知っている」

「それは実に簡単なことじゃ。ワシが神だからじゃ」

 

 胸を張る目の前の老人(神)に、鬼道は怪訝な眼差しを向ける。

 すると、老人は疑われたのが心外だというように、大げさに嘆くふりをする。

 

「なんと、ワシが神だと信用してくれんのか? では、仕方ない。お主がワシの言葉を信用してもらうために、お主の事を話そうじゃないか」

「なるほど、確かに俺にしか知らない事を知ってるなら、アンタが神だと信用できるな」

「うむ、では、そうじゃな~……お主はこの前、片思いしていた女性に結婚報告されて家に帰って全力で泣いてたの~実に可哀想であったな、うむ」

「なっ!?」

 

 この事実は家族は勿論、友人にも伝えていないことだ。鬼道にとって数少ない黒歴史の一つ。

 

(……穴があったら入りたい)

 

「ほっほっほ、これでワシが神だと信じてくれるかの?」

「あぁ、信じるからもうその黒歴史は話に出さないでくれ。頼むから……」

 

 鬼道がかなり切実な頼みをしていると感じ取った神は、苦笑いをしながら頷く。

 

「あいわかった。話の続きじゃが、お主はなぜこんな空間にいるかの説明をするかの」

「ん? そういえば、なんでだ?」

 

 神が説明する前に、鬼道は反射的に声をだす。

 

 彼は今更だが気づく。なぜこんな謎の空間にいるのか。

 鬼道は思い出す。確か、自室のベッドで疲れた身体を休めていたはずだが。

 なのに目を覚ましたらこの空間にいたわけだ。

 鬼道が首を傾げていると、神は目を細め、白く長い顎鬚を撫でながら話す。

 

「お主にある提案を持ちかけるために呼んだんじゃよ」

「提案?」

「そう、提案じゃ。お主、日頃から何かと刺激を求めておるじゃろ?」

「まぁ、それはそうだが……」

 

 神が言うように、鬼道は刺激のない毎日に厭いていた。平和であることはいいことだが、平和すぎるのも難儀なものだ。

 

「そんなお主にほどよく刺激がありそれなりに平和な世界で生活してみんか? という提案じゃ」

「そんな都合のいい世界があるのか?」

 

 あまりにも都合が良すぎる。

 つい疑ってしまうのも仕方のない話だ。

 そんな彼に、神は気にした様子もなく言う。

 

「それがあるんじゃよ。そんな都合のいい世界が」

「どんなところだ?」

「そうじゃのう。まず、その世界はお主の住んでいた日本にあっての。ただ、そこには強力な結界が張られ、外界から隔絶されておっての。外界の者は意図的に入ることが出来んのじゃ」

 

 まさかの事実に、彼は驚きを隠せない。日本にそんな場所があるなんて……と。

 結界とか、アニメか漫画かよ、と思うのはきっと鬼道だけじゃないはずだ。

 彼が唖然としているのを見て、神は笑みを作る。

 

「驚くのも無理はない。普通の者は知らずに一生を過ごすからの。お主がこの事実を知ったのだって奇跡に等しい。と、まぁそれは置いといての、話の続きじゃが、まず、その世界は日本の時代で言えば、明治時代と大差はないはずじゃ。現代っ子のお主にはちと過ごしにくいかも知れんがの」

「いや、確かに俺はパソコンやテレビは使うが、無くてもそこまで困るほどじゃない」

「ほう? 現代の若者にしては珍しいのう」

 

 関心関心、と、頷きながら言う目の前の神は、説明を続ける。

 

「そこではの、人間以外に、妖怪が存在しておるんじゃよ」

「妖怪? 妖怪って、あの、鬼とか天狗とかあの?」

「そうじゃ。その認識であっておる。妖怪は人間を襲い、人間は妖怪に抵抗する。まぁ、大半の人間は妖怪に対して為す術もなくやられるがの」

 

 笑みを浮かべて話す神は、それからも様々な説明をご丁寧にもしてくれた。

 

 要約するとこのようになる。

 

 1・人間には安全を確保された人里存在している。

 2・妖怪は低級以外、つまり理性のある者は好んで人を襲わない(襲う場合もある)

 3・鬼道はその世界で“妖怪”として暮らしてほしいとの事だ。

 

 3の理由は単にその方が面白くなりそうという理由らしい。なんとも勝手な事だ。

 普通、人間ではない別の生き物になると言われたら断るのだが、鬼道は違う。

 人間ではなくなる事に、そこまで忌避感はないのだ。彼は。

 

 それは何故か? 

 

(俺は別に人間であることに執着していない。ただ、それだけ。そういう考えをしている俺は、きっと“普通”じゃないのかも知れないな)

 

 心の中で自嘲する鬼道は、気を取り直すように、頭を何度か振り、質問をする。

 

「それで? 妖怪って、具体的にどんなのだ? 冗談でも変なのは嫌だからな」

「うむ、では、吸血鬼はどうじゃ? 妖怪としての実力は上位じゃ」

「吸血鬼、確かに弱くはないだろうが、弱点が多すぎる種族だぞ?」

「なに、そこはワシが与える能力『ありとあらゆる事象を無かった事にする程度の能力』を使えば平気じゃ」

 

 神の自信満々な様子に、彼は苦笑を零す。

 

 その能力が本当なら、吸血鬼としての弱点は全てなかった事にできる。それはあまりにズルい(チート)なのではなかろうか?

 

「能力の方は意識するか言葉にすれば発動するからの、あっちの世界に行ったら是非とも使ってくれ」

「俺が行くのはもう決まっているのか?」

「なんじゃ? それでは行きたくないのかの?」

 

 神の言葉に、鬼道は一度目を瞑り、思考する。

 

(このままこの話をなかった事にするのは簡単だ。ただ、一言「いかない」と言えばいいだけなのだから。だが、そうなると、また平和で退屈な日常に戻ることになる。このチャンスは恐らくもう二度とこないだろう。なら、答えは決まっている)

 

「行くに決まっている」

「不満を言った後にそんなドヤ顔で言うことでもないじゃろ」

「うぐっ」

 

 神の的確な言葉に、彼は気まずげに視線を横に向ける。

 

 神は彼のそんな様子に微笑むと、口を開く。

 

「よし、それじゃあそろそろその世界にお主を送るかの」

「わかった。覚悟はできている」

「……そんな身構える事もないぞ。それと、あっちの世界に行く時に身体の構造を変えるからの。容姿は……ワシがカッコイイと思う感じにするから楽しみにしておくといいぞ」

「は?」

 

 神は最後に、不安要素しかない言葉を残し、彼は意識を失う。

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 彼は目を開けたら暗い森の中にいた。森独特の土臭さと葉の臭いが鼻孔をくすぐり、風になびく葉の音は、どこか不気味だ。

 

 鬼道は仰向けに倒れていた身体を起こし、空や周りの景色を確認する。

 

「……不気味だ」

 

 思わず口に出してしまう程に、森の中は不気味だった。

 鳥類の鳴き声が暗闇の森に響き、風によって揺れる草や木々、空は月が顔を出しているが、その光は弱く、地上は闇に支配されている。

 

 これは大人でも怖がる。幸いなのは彼の目が夜目が聞くということだ。

 

 溜め息を吐きながらも、彼は立ち上がり、自分の身体を確かめる。

 

 服は黒の長ズボンに黒い靴、上は白のワイシャツに黒いスーツ、黒いネクタイ……どこの執事だ。

 どっからどう見ても執事だ。それに細かいことに、手にもちゃんと白い手袋がある。

 身体は細身だが筋肉質で、背も高い。だいたい百九十手前くらいはあるだろう。

 

 彼は新しくなった自分の身体は顔以外確認し終え。

 現状の確認も終えた彼は、なんとなしに歩き出す。

 

 目的もないが、ここで留まるわけにもいかないからだ。

 

 

 

 

 

 ――――吸血鬼移動中――――

 

 

 

 

 

 森の中をグングン進んでいると、彼の目の前に馬鹿でかい洋館が見えた。それも壁の色が全て紅いという如何にも怪しい洋館だ。

 どうせこれから歩いても人が住む所まで着くかもわからないんだ。なら、ここに泊まらせてもらうのもいいかと、彼は考えた。

 

(かなり怪しいけどな)

 

 鬼道は苦い顔をしながら紅い洋館に向かって足を動かす。

 すると、門が見える。

 その門を壁にして、立ちながら居眠りするという芸当を見せる美女がいた。

 

 淡い緑色を主体としたチャイナドレスを着込み。緑色の帽子の中央には星マークが飾られている。

 赤く伸ばされた髪は腰まで届き、整った顔立ちは、月並みな言葉だが――美しい――

 

 闇夜に淡い光に照らされた彼女は、艶めかしく男がその場にいれば思わず凝視してしまうほどだ。

 かく言う鬼道もこの美女に目を釘付けにされていた。

 

 だが、寝ているところ申し訳ないが、とりあえず起きてもらわなければ話も出来るはずもなく、彼は動く。

 

 美女の近くにより、彼は声を掛ける。

 

「すまないが、おきてくれないか?」

「んっ……すーー……」

 

 少し身じろぐが、それだけ、気持ちよさそうな顔で彼女は眠りに入ってしまう。

 鬼道は困ったように立ち尽くす。

 

(これは思ったよりも熟睡しているな。声で無理なら、肩を叩いて起こす他ないか)

 

 仕方ないと、彼は心の中で言い訳をして、本当はあまり褒められる事じゃないが、肩を叩いて起こす事を決めた。

 

 鬼道は意を決して、彼女の肩に触れた瞬間、目にも留まらぬ早さで彼の腹に向かって、彼女は拳を叩きつけてくる。

 

「ッ!?」

 

 間一髪、空いた手で受け止めるが、それだけでは終わらず、そのまま彼の首目掛けて回し蹴りが繰り出される。

 

(クソっ! なんなんだ!?)

 

 彼は内心同様しながらも、反射的に手を一旦離し、身体を屈んで躱しす。そのまま後ろへと飛んで距離を離す事に成功する。

 

「……あれだけ動いて寝ているのか」

 

 鬼道は呆れたような声を出す。流石にあれだけ動けば起きているだろうと思ったが、彼女の目は未だに瞑られ、口からはだらしなく涎が出ていた。

 寝ながら急所を狙うとは、恐ろしい女である。

 

 さて、どうしたものか……と、悩む彼に目の前の美女は、寝ながら戦う意思を見せるように構えを魅せた。

 なぜ眠っているのに動けるのか。呆れと共に賞賛を送りたい気持ちを抱く鬼道。

 目の前に立ちふさがる女性に、彼は眉間に皺を寄せて考えていると、門が開く。

 

「美鈴、もう休んでいいわよって、あら? お客様かしら?」

 

 門から現れたのは、銀色の髪をボブカットで、もみあげ辺りに三つ編みを結っている女性。何よりも目に飛び込んできて驚いたのは、その服装。

 鬼道が黒い執事服なら、この銀髪の女性は青と白を基調にしたメイド服、それも膝丈の短い男的にグッとくるメイドである。

 

 とりあえず、ダメ元であのメイドに、この無意味な戦いを止めてもらうように頼んでみる事にした鬼道は、口を開ける。

 

「すまないが、そこのメイド。この女性を止めてはくれないか?」

「それは構わないけど、でもその前に質問、貴方はこの洋館に害をなそうとしたの?」

 

 青色の目を細めて問う彼女に、彼は気持ち的には焦りながら、だが表面では無表情に答える。

 

「いや、そんな事はしようとも考えたこともない。断じて」

「そう……美鈴、いい加減起きなさい」

 

 細めていた目を元に戻すと、彼女はその言葉と共に、美鈴と言われた中国風の服を着る女性の頭に向かって、チョップする。

 

「あいたっ! って、咲夜さん!?」

「また寝ていたでしょ? 明日の朝ごはんは抜きよ」

「そんなぁ~~!!」

 

 この世の終わりみたいな声を出す美鈴と言われた女性は、メイド服を着た、咲夜と言ったか、彼女に縋りついている。

 

 それにしても、鬼道が触れようとした時は瞬時に反応したのに、あのメイドには無反応とは、寝ていながらも敵か味方か判断していたのか。

 今はとても情けない状態の彼女に、彼は内心で関心する。

 

「それで? 何用でここに来たのかしら?」

 

 腰に縋りつく美鈴を引っぺがすと、何事もなかったのように問いかけてくるメイドに、彼も下で涙声で言い訳する彼女を無視することにした。

 

「この洋館に泊まらせてほしいと思ってるんだが、いいだろうか?」

「それは私が判断することではないわ。お嬢様に許可を貰えれば、大丈夫よ。ついてきて、お嬢様がいる所へ案内するわ」

 

 その言葉を残して、彼女は後ろに振り向き、先へと進む。

 クールな女性だ。それに比べて……。

 

「あぁ待ってくださいよ~! さ~く~や~さーん!!」

 

 美鈴とやらは、何もしなければ美人だが、動くと残念美人であった。

 

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