やはり俺は浮遊城にいること自体が間違っている(凍結中)   作:毛利 綾斗

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友人を訪ねるべく東京に行くのですが、上野、浅草辺りのオススメスポットって何処なんでしょうね......?
その次は京都へ花見も兼ねてふらりと行こうと計画してるんですよね.....。
っと勉学の為更新が遅れてしまいました。貯めもあまり無いのでこれからも亀更新となるかと思いますが、楽しみにしてくださっている方(希望的発言)の期待を裏切らないよう頑張っていきたいと思います。
また暇つぶしに読んだだけだという方、それでも本当にありがたいです。

本当に更新が遅れた事を謝罪させていただきます


新たな武器、現る

 

彼が死んだ.......。

そんなことある筈が無いと言いたい。でも彼の心臓目掛けて伸びた尾と何かが砕けるような音、それに俯いている私の視界の中で微かに散らつく青いポリゴン片。

私は下げた頭を上げることができなかった。

今の私に見えているものはゆらゆらと揺れ次第に濡れていく地面だけだった。

 

 

 

ポリゴン片の中、俺の視界にウィンドウが現れる。LAによって手に入れたのは『エリュシデータ』という魔剣クラスの片手剣。持ち合わせの武器が無い今、武器を手に入れたのはとてもありがたい事だと思う。が、重すぎるのだ。

後の仕事はアクティベートだけなのだ、それからリズベットの所で武器を頼めばいい。

 

この魔剣はキリトにでも渡せばいいか。あいつなら使いこなせそうだしな。

 

全てのウィンドウを閉じ終わる頃にはポリゴン片は消え去っていた。

 

やっと終わった。

 

そう思って一息つき、気を緩めた瞬間に正面からの衝撃を受け宙を舞う。

カッコ悪く背中からダイブした俺は自分の出した「グエ」という音に恥ずかしさを覚えながらも首を上げて腹の上にいるモノを確認する。

 

 

「先輩、私先輩が死んじゃうかと思いました。それが凄い怖くて、私の中にポッカリ穴が開く気がして」

 

 

そこには一色がいた。

そして最近増えてきた彼女のあざとさが皆無の言葉を聞き何も言えなくなる。

やはり俺は格好悪い、こんなときにかける言葉の一つもまともに思い浮かばない。

俺はただ一言しか発せなかった。

 

「悪かった」

 

 

「そうですよ、先輩が悪いんです。でも先輩1人に任せてしまった私も、その.....悪いんです。ですから私、決めましたよ。私ずっと先輩の隣に」

 

 

一色の言葉は俺の背中にタックルしてきた何かによって遮られる。

ちょっと皆さん、俺はラグビーやアメフトの練習で使う人の形をした重りじゃ無いんですよ。あんまり突っ込んでこられるとタダでさえゼロに近い体力持って行かれるんでやめでください。割とマジで。

 

 

「......よかった.......貴方が無事で本当に....よかったよぉ.....」

 

 

この声からして雪ノ下だろう。

この世界では汗や涙は流れない。なのになぜだろう。背中の顔を埋められているであろう場所が心なしか温かい液体で湿っていくような気がするのだ。

前方には一色、後方は雪ノ下、目のやり場に困った俺は仕方なく天井を見続けている。

1人で立ち、俺の前を歩き続けていた、俺の行く道と正反対を示し続けていた彼女。この世界に入る前は俺の理想と時折見せる彼女の本当の姿に幻滅していたこともあった。そしてそんな自分を俺は嫌いだった。

でも今は雪ノ下のこんな姿を見ても幻滅するどころか嬉しく思う。この変化が良いものなのか悪いものなのかはわからない。

ただ今だけはこの感情に身を任したいと思ってしまったのだ。

 

 

「先輩、私を膝枕してください」

 

 

そう言って俺の膝に頭を置き、撫でることを催促する一色。

前言撤回。ボス部屋の真ん中で他の攻略組がいるのにこんな恥ずかしい事耐えられん。

俺は自分の筋力パラメータをフルに活用し立ち上がったのだった。

 

 

 

それから一息つき、キリトに強制的に武器を贈る。

最初こそ遠慮していたが『エリュシデータ』のバケモノじみたステータスと自分の好きな見た目だったためか次第に遠慮は無くなり、最後には

 

 

「俺の筋力パラメータでも扱えない得物に出会うなんて思いもしてなかったぜ。アハトありがとうな。

でもいいのか?俺も何かトレードするよ」

 

 

と言っていた。

俺は辞退し、俺では扱えん。だからお前が使ってやってくれ、というと満面の笑みを返してくれた。

 

 

その後アスナに黒い炎に蝕まれた奴らを固めた所まで連れて行ってもらう。

そこには座り込んでいる攻略組が34人。あの後炎によって5人も死んでしまったのか。俺は無言で十字を切る。

生存確認を終わらせると51層に行ってアクティベートを済ます。それから俺は宿を取り眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

『カーディナルの10の意思の9個全てが彼に力を貸すとは思いませんでした。誰かが力を貸すとは思っていましたがまさか9人全員とは。そして彼らが作った新しい11個目のユニークスキル『死神』ですか。きっと彼ならこの負の感情が満ち溢れる世界を変えられるかもしれない。この世界で一番の負の感情を抱えながら関わる人の負の感情を拭っていく彼なら。私はそんな微かな可能性に心を躍らせます。.........心を踊らせる?システムである私が?そんなことをあるはずが無い。取り敢えず今日はここまでにしましょう』

 

 

...............

 

 

 

 

 

「アハト、出来るわ。武器を作れるのよ!」

 

 

手持ちのまともな武器が『狼牙』しかなく、正直話にならないため俺はリズベットの所に来て武器を調達しようとしていたのだった。アクティベートをするために51層に上がった俺は武器が無い事を戦闘になってから気づき、そこからは俊敏パラメータをフルで逃げたという過去がある。その事を笑い話として話した俺は俺を知っているもの全員に説教されたという過去があるのはご愛嬌だろう。

再びあのインゴットを見ていたリズベットが叫ぶ。

 

 

「本当か?ちょうどいい頼む」

 

 

「じゃあその『狼牙』をかして。この子も必要なの」

 

 

「わかった。あとコレなんだが......こいつも使えないか?」

 

 

俺が『狼牙』と共に出したのは、あの『マザードラゴン』の鱗。俺が投擲に使った3枚だけはポリゴン片になることなく残ったのだ。

 

 

「試してみるわ。任せて、絶対に気にいるものを作ってあげる」

 

 

そう言って彼女は俺から『狼牙』と鱗を受け取るとウィンドウを開く。真剣な表情で何かを呟くと『神をも鍛えし槌』を振るう。

一体何発目だろう。少なくとも既に100発は超えている。それでも姿は変わらずに鉱石のままである。200、........300、........と続いた時辺りには光が広がり、光が消えると共に新しい形状の武器が現れる。

現れたのは鎌の部分と柄が漆黒、柄のさきの短剣が純白の武器だった。

 

 

「アハト、できたわ。これがあの鉱石を使って唯一出来た武器の『大鎌』よ。銘は『バーンブレッター』、まあ開拓者ってところね。

それにしてもこんなに時間が掛かるとは思わなかったわ」

 

 

「おお、お疲れ。

『大鎌』?そんな武器があったのか。つうか俺『大鎌』なんか使えないぞ。何かの条件武器か?」

 

 

「そんなことどうでもいいわ。取り敢えず持って見なさいよ!」

 

 

リズベットから無理やり渡された物は冷え切っていた、が更に手に張り付くのでは無いかと思う位冷たくなる。

俺の目の前にアイコンが一つ現れる。

 

 

 

《スキル『死神』を発動しますか?》

 

 

 

俺はここで初めて自分に新しいスキルが増えていたことに気づく。そしてリズベットに気づかれないように《YES》を選択する。

 

 

「まさか見知らぬ新しい武器になるとはな。あとこの刀と短剣、両手剣を頼む」

 

 

鍛冶スキルがカンストする前からいい鍛治をすると思ってはいたがカンストした以後、彼女の腕は収まることなくさらなる上達を見せている。今では70層まで使えるだろうという武器を置く凄腕の店となっている。

 

 

 

「わかりました。ねぇアハト、手持ちの武器全部壊れちゃったんだよね。私、あの子たちの後を継げる子を作れてるかな?」

 

 

彼女はずっと俺の武器を見てくれていた。俺の次に、いや、俺よりも俺の武器に詳しいのは確実にあいつだ。彼奴は自分の鍛えた武器以上に俺の武器を大切に思っていると前に言っていた。そんなあいつに俺がかける言葉.........。

 

 

「..........さあな。まあ、あれだ。そうやってお前の成長の糧になれたんならいいんじゃねぇの」

 

 

やはり俺が贈る言葉は酷く曖昧で抽象的で意味を持つのかも自分ですら分からない。

 

 

「そっか。私、あの子達に胸を張れるような鍛治師になる」

 

 

そんな俺の言葉で何か覚悟ができる此奴を含めた彼奴らを俺は純粋にすごいと思う。だがそういう奴らは自分一人でもその結論にたどり着く。俺はただ相手に悪影響を及ぼすだけだ。だから輝かしい未来があるあいつらは俺と一緒に居てはいけない人種だとも思う。俺はあいつらに幸せになって欲しい。

ただ同時に俺は憧れ、側に居たいとも思ってしまう。

過去に諦めて、捨ててしまった筈の未来への希望にまた縋りそうになるのだ。

あいつらといれば俺にも輝かしい未来がくるのでは無いかという希望に。

どちらの感情も肯定も出来なければ否定できない、あの日雪ノ下に言った

 

 

『過去の自分を肯定してやれよ』

 

 

雪ノ下は不変に否定的だったが変化することに対しては肯定的だった。俺はどうだ、過去の自分もそして今の自分も肯定できない。望むことと諦めること、俺はちょうどその真ん中で停滞している。

相反する感情が俺を雁字搦めにするのだ。

思考の渦に飲み込まれた俺はどんどんと深みにはまっていく。

 

 

 

俺は今何処か真っ暗な空間にプカプカと浮いている。

遠くで何かが聞こえる。

そこまで認識した途端、真っ暗だった空間に色が入る。

辺り一面には大小様々な画面が、何所か懐かしくそれでいて嫌な感じがする。次第に音が大きくなっていく。

気づくと俺は目を閉じている。それでもだんだんと大きくなっていく途切れ途切れの音が意味を持ち始める。

 

『.......て...のこ....』

 

『ていう.....ろ、あつ.....よね』

 

『私、貴方のそういうところが嫌いだわ』

 

 

俺が黒歴史として決して思い出そうとせず、それでも覚え続けた記憶がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい!雪ノ下先輩。せんぱいが目を覚ましました!」

 

ドタドタと走りながら雪ノ下の名前を呼ぶ一色の声。

俺の体に纏わりつくシャツ。この世界では汗をかかない筈なのに細かく再現されている感覚に魘されていた事に気付いた。ただ夢は思い出せない。駄目だ、切り替えよう。

そういえばこっちでは一色のあざといの全然見てないな。あざとい方が流しやすいんだよなぁ、時々勘違いしそうになってその度に自分を戒めなきゃいかんから素っぽいのを出すのはやめてもらいたい。

 

 

「比企谷君!貴方大丈夫なの?篠田さんからいきなり倒れたって聞いてしんp......だからいそい......」

 

 

自分で言って撃沈する雪ノ下。こっちには雪ノ下を拘束するものは少ない。だからこそ50層のボス部屋みたいな事も見られるようになってきたし少しずつだがお嬢様な雰囲気も抜けてきている。「前は凛としていて綺麗だと思ったがギャップができて可愛いんだよな。まあギャップがなくたって今の雪ノ下は十分に魅力的なんだが」

 

 

気がつくと目の前には苦笑いの篠田、顔を真っ赤にしている雪ノ下、そして物凄い良い笑顔の一色がいる。

詰んだ、そう思い飛び起きると店から出ようとする。

ドアノブまであと1m、俺は急に前に進めなくなり転びそうになったために止まる。後ろを見ると一色が俺の服を掴んでいる。たったそれだけの事だった........??なんで俺並かそれ以上で動けんのこいつ。しかも俺を止めるってどうやって??完全に俺の方が速さも上だろ??

 

 

「せーんぱーい。今から私と楽しい楽しいお話しをしましょうよ。ね、良いですよね??」

 

 

さっきから一切変わる事のない一色のすごい良い笑顔。本来ならば女子から笑顔を向けられれば何か裏がある、勘違いするなと言い聞かせてきた俺だったが、今回は勘違いではないと自信があった。

一色がマジで怒っていてお話しという名の拷問が待ち受けているという事が。




次回『やはり俺が女子と2人で行動するのは間違っている』楽しみに待っていただけると幸いです

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