やはり俺は浮遊城にいること自体が間違っている(凍結中) 作:毛利 綾斗
私が書く文って鬱々してますかね?
51層からある話を聞くようになった。
年寄りのNPCの何人かがお伽話を語る時があり、それは決まって同じ話なのである。
その話とは悪いことをすると死神に楽しそうに殺されるのだ。
だが今回は少し違う。
この話は47層を攻略本用にマップの端から端まで探索している時に入った森小屋で聞いた話だ。
『昔々、どこかの森の深くに4人の兄弟が住んでおったそうな.......。
「兄さん、ゴメンね。本当なら木こりは僕の仕事なのに......」
「風邪引いてるんだからしょうがないだろ。それにお前はいつも頑張ってくれてるんだし、病気の時くらいゆっくりしてろ」
そう言って立ち上がり、斧を担いで部屋から出て行く一番上の兄さん。街では大工の仕事をしているらしい。
他にも優しく家事をこなしてくれる姉さんに、少し冷たいけど頭が良く、街で稼いで来てくれる兄さんがいる。
僕はと言うと毎日少しずつ生活に必要な木を集めては冬に備えて蓄えている。
といっても僕が集めるのは一番上の兄さんが切り倒した木を薪にして運ぶだけだ。
そんな僕が病気で寝込んでいたある日の夜、扉を叩く音が聞こえ目がさめる。
何事かと思い自分の部屋から出ると、1人を兄さんたちがとり囲んでいる。
どうしたの?と尋ねると一番上の兄さんが
「一晩泊めて欲しいそうだ。だが空いてる部屋もないし無理だろう」
と。それに続き
「そうですね。ここはしかたありませんが」
と姉さんが。
一番下の兄さんは話は終わったと踵を返そうとした時
「僕の部屋でもいいならいいよ。
でも風邪引いてるしそれでもいいのなら」
と口から言葉が出ていた。
兄さんたちに囲まれているときにも思ったがかなり小さく、夜遅くに追い出すことはできなかったんだと思う。
となりに立つと僕よりも小さく中性的な顔だち。声からして男の子だとは思うけど一緒に寝るのは不味かったかな?
その日の夜はやけに静かだった。
聞こえてくるのは僕の隣に寝ている子の寝息と胸が微かに上下することによる衣摺れの音だけだった。
次第に眠くなって来た僕は軽かったはずの瞼が重たく感じそのまま身をまかせる。
どれだけの時間が過ぎたのだろうか?
突然聞こえて来た唸り声に目を覚ます。
音からしてすぐ近く、多分だけど家の周りにいるんだろう。
そう思いながら隣を見るといるはずの子がいない。
驚いて部屋から飛び出すと玄関が微かに開き冷たい光に照らされる。
「兄さん!姉さん!あの子が居ないんだ!」
誰の声もしない。
どうして誰もいないの.....
もしかして、と扉に駆け寄り、飛び出す。
自身よりも大きな鎌を持った子とその周りに3匹、いや3人が立っている。
「もしかして僕のせいで殺人鬼が.....」
僕のせいで兄さんや姉さんが死んでしまう。
そんな恐怖に駆られた僕は駆けよろうにも固まってしまう。
兄さん達の目は赤く染まり、口をキッと結びながらも端からは液体を垂らしている。その姿はまるで獣のようだ。
固まった次の瞬間、姉さんの首が吹き飛びその場に崩れ落ちる。
兄さん2人が鎌を持った子に襲いかかろうと体勢を低くした瞬間
「兄さん!それに君ももうやめてくれ!」
と叫ぶ。
突然の声に驚いた素振りを見せる子に一番上の兄さんは飛びかかり、もう1人の兄さんは僕の方に駆け寄って来た。
その時に僕は気が付いてしまった。
兄さんたちは僕の知っている兄さんたちではないことに。
兄さんたちの目には躊躇いなどなく、僕と彼を本当に殺しに来ていて、僕の声に驚いた彼の方がよっぽど人間らしい。
僕のたった3人の家族は獣になってしまったということに。
迫り来る兄さんの赤い目に覚悟を決めて目を閉じる。
あと1秒もしないうちに僕はこの世から立ち去ることになるだろう。
..........。
いつまでたっても来ない一撃に驚き目を開けると、目の前に彼の目があった。
彼は鎌を持っていない。
「君は私を恨む権利がある」
そんな顔をしないでくれよ。君の仕事なんだろう。君は結果的に僕を助けてくれたんだろう。悪いのは僕の兄さんたちだったんだろう。
「ありがとう。これ以上の罪を負う前に止めてくれて」
彼はその言葉を聞くと苦しさで満ちた顔を少し緩める。
そのまま彼は腰につけていた光源に手を伸ばす。
それは青い炎を灯したランタンで彼は兄さんたちだった物を集めるとランタンの火を移す。
「君の家族は人を殺していた。何回も何回も。次第に罪の意識も薄れていった。それはもう人じゃない」
そのまま突き刺していた鎌を回収すると
「私についておいで。君たちはまだやり直せるから」
すると大きい炎から3つの火が浮かび上がりユラユラと揺れながら彼の後ろを追っていき消える。
そして残された僕は、再びあの子に会えるように待ち続けている。
彼が忘れていったランタンに火を灯しながら、僕の終わりを見届けて貰うために...。
』