やはり俺は浮遊城にいること自体が間違っている(凍結中)   作:毛利 綾斗

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たくさんのコメントありがとうございます。
皆様のお蔭でモチベーションも下がらずに頑張れています。
それでは少し短めになってはいますが『どうやらアハトのチート化は止まらない』をどうぞ。


どうやらアハトのチート化は止まらない

俺は今25層に向かっていた。

噂(盗み聞きじゃ無いよ)で恐ろしくキレのいい刀使いがいるときいたからだ。

刀をメインとして使う俺にとって刀の使い方を見ておくのはプラスになると思い久しぶりに下層に降りる。

噂と言うのは

 

 

『知ってるか?25層に刀の達人がいるらしいぜ』

 

 

『知ってるよ。しかもSAOで1、2を争うほどの女だってよ』

 

 

『でも話しかけても何も返してこないらしいよね』

 

 

『もしかしたらNPCなのかもなー』

 

.................

 

 

はーい、今完全に盗み聞きだと思ったやつ。怒らないから手をあげなさい。

.........大丈夫だ。俺も盗み聞きにしか思えん。

 

 

誰が来ようが反応しないと言うのは、こちらも見て技術を盗みたいだけだからちょうどいい。

そう思いながら俺は噂となっている25層の奥深くへ向かった。

25層の最奥、そこは森を抜けた先にある少し広けた場所なのだが森にいるmobに見つかりやすい構造になっていて次から次へとmobが向かってくる様になっている。

良質なmobに囲まれる為この層が最前線だった時1パーティーが壊滅に追い込まれることもあった。

攻略本を読んでいたのにも関わらず自力を過信したバカ集団で突っ込んでいったらしい。

 

まあそのお蔭で誰も近づかなくなったこの場所をレベリング場所として使っていたという思い出もある。

その時に多数のmobに囲まれた様に〈両手剣〉を使う様になったのは懐かしい。

 

そんな場所で長い黒髪を揺らし次から次へと向かってくる敵を綺麗に軽やかに捌いていく女の姿があった。

それはダンスを踊っている様にも見えるくらい無駄な動きがなく、それでいて要所要所で急所に攻撃など、見ていて為になる光景が見られた。

そして刀の性能なのだろう、微かだがスタン性能が付いていてソードスキルを使わなくても囲まれずに戦える様になっている。まあスタンと言ってもほんの数瞬時動きが止まるだけなのだが.........。

それで危なげなく戦えるという事はかなりなレベルのわけで......。会議で見たことがない雰囲気だし準攻略組のトップなのだろうと思考を終わらせる。

 

遠すぎてここからは顔が見えないが段々と動きが鈍くなってきている事から疲れてきているのだろう。そんな事を考えていたらなにかに躓いて倒れ込んだ。

スタンによって集団リンチ状態にはすぐにはならないだろう。だがここで見捨てて死なれると後味が悪い。そう思い俺は〈刀〉を握ると走り出した。

 

10秒後射程圏内に入った敵の首をめがけて居合斬りを繰り出す。首に一本の線が入ったと思うと首がズレ始めポリゴン片と化す。

そんな調子でmobを掃除していると途中から女も起き上がり狩り始めた。

そうなれば話は早い。ものの1分足らずで辺りのmobはいなくなった。

俺は立ち去ろうと思い背を向けて歩き出そうとした瞬間、

 

 

「待ちなさい、比企谷君」

 

 

そんなどこか懐かしい高圧的な声でこの世界で呼ばれるはずがない名前が呼ばれた。振り返ると少し顔を赤らめた雪ノ下がいた。

 

 

「.......どうしてお前がいるんだ、雪ノ下」

 

 

どうしても気になった俺はそう聞いてしまう。

 

 

「.......この世界に来た理由?貴方に話す必要性が感じられないわね」

 

 

雪ノ下は話したくないみたいだ。

 

 

「じゃあその武器は誰が作ったんだ?」

 

 

「私の行きつけのスミスよ。ちょうどメンテをお願いするつもりだったし一緒に来るかしら?」

 

 

「.......ああ、頼めるか?」

 

 

「はぁ、質問に質問で返すなって教わらなかったのかしら。まあいいわ、行きましょう」

 

 

そう言って雪ノ下は歩き始めた。

その後ろ姿を追いながら俺は考えていた。

この世界に雪ノ下に一色がいる。もしかしたらそれ以外の奴もきているかもしれない.........。

そしてもうこの世界から退場しているかもしれない........。

早くクリアしないとダメだな、待っている小町の為に、そして囚われているこいつらの為にも。

 

 

「もう着いたわ.........って一体何を考えてたの?」

 

 

「ん、ちょっとな」

 

 

俺が連れてこられたのは25層にある小さな家?だった。そのまま雪ノ下は扉を開け開けて入っていく。

 

 

「リズベット武具店へようこそ!......て、なんだ〜、ユキさんか〜。今日もメンテですよね」

 

 

 

「お客に対してその態度はやめなさいっていつも言ってるでしょ。それはそうと紹介したい男がいるのよ、入っていいわよ」

 

 

 

「エッ!ユキさんの口から男を紹介するだなんて。結婚でもするんですか?」

 

 

 

「冗談はやめて頂戴。貴方も知っている人よ」

 

 

入っていいと言われたのに入れない雰囲気作るの止めてもらえませんかね。

つか知っている?ああ、俺の名前は悪名として知られてるからそういうことなのかもな。

 

 

「.............うす」

 

 

俺は軽く頭を下げてから入る。

リズベットと呼ばれていた女子は俺を見ると雪ノ下を掴んで奥に入っていった。

リズベットが俺を見る目はリア充どものように見下した目でも見定めるような目でもなかった。

それに何処かで見たことがあったような........。

まあ気のせいだろ。

 

 

 

 

「取り乱してすみませんでした。えーっとユキさんの武器のメンテは終わったよ。それでご用件は何でしょうか?」

 

 

「武器作成を頼みたい。アイテムはこのインゴットだ」

 

 

「武器作成?周りに一杯あるのにどうして?.....まあいいわ。貴方のメイン武器はなんなの?」

 

 

「俺のメイン武器は〈刀〉だ。でも何を作って欲しいとかじゃないんだ。ただこのインゴットを武器にして欲しい」

 

 

「ちょ、貴方それは一体どういう意味かしら」

 

 

私の紹介した鍛冶屋の実力が信用できないの?

そういう意味も含めた雪ノ下の言葉。俺は説明を付け加える。

 

 

「俺はこのインゴットを鍛えてくれる鍛冶屋にまだ出会えていないんだ。だがこいつの〈刀〉を見てもしかしたらと思ってな。見てくれ」

 

 

そう言ってリズベットにインゴットを渡す。

彼女は彼女でインゴットを確認すると驚きの声を上げた。

 

 

「何よこのインゴット。マスタースミスまで行かないと扱えないわ。それにマスタースミスだったとしても辛いわね。33層で手に入る『煉獄の炎』と、『神をも鍛えし槌』っていうアイテムが必要ね。ただ後者に至ってはどこにあるのかすらわからないわ」

 

 

「じゃあマスタースミスはまだ誰もなっていないのか。大変なんだな」

 

 

「何よ、その言い方。戦闘スキルよりも上げるのが大変なのよ」

 

 

「そうなのか。俺は3個ほどカンストしてるしもう1つも2、3日でカンストするだろうからな」

 

 

というと2人が同時に「「は?」」という声を上げる。

なんだよ、その可愛そうなものを見る目は。

 

 

「貴方は一体何をカンストして、何がカンスト間近なのかしら?」

 

 

おいおい、他人のスキル詮索はマナー違反だろ。と言ってはぐらかす事すら出来ない程に真っ直ぐな瞳。冗談も言えないな。

 

 

「投擲、曲刀、短剣がカンストだな。んで刀、両手剣が800程度。カンスト間近が料理で985だ」

 

 

そう言って俺の可視させたスキル欄を見せると2人は開いた口が塞がらないようだった。

 

 

「料理スキルがカンスト間近..........」

 

 

「非戦闘系で更に料理スキルですよ........」

 

 

バタンッ

 

 

いきなりドアが勢いよく開いたと思うとそこには見覚えのある顔が...........基あざとい笑顔を浮かべる後輩の姿があった。

 

 

「せんぱーい。探したんですよ!。あと雪ノ下先輩もお久しぶりです」

 

 

げっと言う声が出てしまう。

それに此奴は現実の名前を出しやがったし少しお仕置きが必要だろう。

 

 

「ゲームの中で現実の名前は禁止だろうが。たくお前って奴は」

 

 

「何を言ってるんですか。ここに居るのは全員同じ高校のしかも顔見知りじゃないですか」

 

 

そう言ってゴミを見るような目で俺を見る一色。少し懲らしめるつもりが形勢が逆転したようだ。

つか全員が顔見知りだって.......。

ってことはリズベットも知っているってことか..........。

 

 

「あっ」

 

 

「今思い出しましたね、せんぱい。そうです、私の友達の里香ですよ」

 

 

思い出した。一色の生徒会長選で手伝ってくれていた唯一の女の子だ。

思い出した、思い出したからそのジト目をやめてくれ。

 

 

「ってことはリズベットが此奴に連絡したのか。もう俺帰るからマスタースミスになったら連絡入れてくれ」

 

 

「ちょっと待ってください。せんぱいも新しい武器早く欲しいですよね?」

 

 

「まあ、早いことは悪くないな。時間には限りもあるし」

 

 

ここで俺は失言に気がついた。だって一色の目がピカって怪しい光を灯したんだもん。

 

 

「そこで提案なんですが鍛治スキルを上げるには高レベルなインゴットを扱う方がいいんですよ。だからパーティー組みましょうよ」

 

 

「ちょっと待て、なんでそうなる。今の話でなんで俺がパーティーを組むことになるんだよ」

 

 

だから察しが悪いなみたいな目で俺を見るなって。

 

 

「高層、其れこそ最前線で取れるインゴットを扱い続ければ早くスキルが上がるのはわかりましたよね。そしてレベルの高いインゴットは鍛治スキルをとっていないとドロップしないんです。ですから私とせんぱいと里香で行けば里香も安全でインゴットも集まり、せんぱいも早く武器が完成するってことですよ。わかりましたか」

 

 

わかった、わかったからクズを見る様な目で見ないでくれ。

 

 

「でも俺一人でもリズベットを守りながら進めるぞ。なんでお前を連れて行かなきゃならんのだ」

 

 

「里香の保身です。里香も可愛いですからね。せんぱいに襲われないように先輩を見張る意味でもついていきます」

 

 

「そういう事なら私もこの男の飼い主の1人として同伴する必要があるわね」

 

 

今まで空気だった雪ノ下が会話に参加すると同時に俺が空気となってどんどん会話が進んでいく。

でも八幡気付いちゃった、物から生き物までグレードアップしてる。

やったね八幡後少しで人間になれるよ。

リズベットは店を昼間までは休みにする事を決め、毎日午前中は最前線でインゴット集めをする事になってしまった。

ただ唯一の救いはリズベットの鍛治スキルがカンストするまでのパーティーという事、そして現在の鍛治スキルが900だったということだろう。

明日からインゴット集めのダンジョン攻略が始まる。


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