幾つものドア開けていけば、その1つはきっと夏に通じているはず。
そんな夏への扉を探し続けている猫の物語を、昔、読んだことがある。
その猫の気持ちが今の俺には少しだけわかる。
日差しが次第に強くなって、空気が乾いて。
太陽が地球に降りてくる気配。
夏が近づいていると感じるだけで、ワクワクしてくる。
まして、今年の夏は何かが起こりそうな予感。
…………夏休みまで、あと1週間。
PiPiPiPi……
目を開けると、そこは俺の部屋。
カーテン越しでも、朝強い日差しは部屋を明るく照らし出す。
耕「ふわぁ…………っと」
大きく伸びをして目覚ましを止め、ベッドから抜け出す。
カーテンを開けると一瞬、目の前が真っ白になるほどの強烈な太陽。
今日も暑くなりそうだ。
顔洗って制服に着替えて、最近お気に入りの整髪料でパパッと髪の毛を整える。
家から学校まではチャリを飛ばしてちょうど15分。
始業ベルのにで20分前に家を出れば、ギリギリ間に合う。
もちろん目覚ましだっての時間に合わせてある。
鏡の前で、もう一度念入りにチェックして…………よし、髪もオッケー。
服のボタンもちゃんと止まってるし、と。
ガチャ
母「あんと、まだいたの?」
ノックもなしに母親の顔がひょいと覗いて、呆れたように口を出した。
母「髪なんかいくらいじったって、変わりやしないんだから。たいした顔でもないくせに…………」
自分で産んでおいて、無責任なこと言う母親だ。
母様追っ払うと同時に、ちょうどタイムリミットのアラームが鳴り出して…………。
うん、我ながらタイミングは完璧だ
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
庭に回って、ガタガタと自転車を出していると…………。
?「こーちゃん、待ってぇ!」
隣の魚屋の『魚政』から幼なじみのあいが飛び出してきた。
寝坊したらしく髪の毛についた寝癖を必死に手で押さえている。
息を切らせてパタパタと俺の方に走ってくるのだ…………。
しかし…………それにしても…………遅い。
ホントに走っているのか?っと疑いたくなるほど、足が遅い。
それても、懸命に俺に向かって駆けてくる。
ッバタン!
っあ、転んだ!
えらい。泣かずに一人で起き上がった。…………半泣きだけど。
制服の汚れを慌てて払ってまた駆け寄ってくる。
待ってたら、こっちまで遅刻しそうだ。
仕方がない。
俺が見捨てたら、あいは完璧に遅刻だ。
それにこれは毎日恒例の朝の行事みたいなもんだった。
ようやく俺のそばまで駆け寄って来たあいは、ハエハアと肩で息をしながら、ニッコリと笑って見せる。
あい「おはよう、こーちゃん」
耕「急に走ると、また貧血起こすぞ」
足が遅い「大丈夫だもん、朝から鉄分いっぱいの青いお魚、ちゃんと食べてきたもん」
だから遅刻するんじゃないのかと、ツッコミたい気持ちを、俺はグットら押さえた。
あいはスカートの裾をたくし上げて、俺の自転車の後をよいしょ、と、乗っかる。
あい「しゅっぱぁ~つ!!」
耕「はいはい……」
あいを後に乗っけて俺は朝の町に走り出した。