昼休み開始早々に、箒ちゃんとオルコットさんに文句を言われている弟くんを放置して唯依ちゃんとお昼を食べる。ちなみに今日は唯依ちゃん手作りのお弁当。
「どうしたんですか?そんなに嬉しそうな顔をして」
「そりゃ嬉しいさ。なんたって唯依ちゃん手作りのお弁当だもの。これで嬉しくない男がいたらそれはホモだね」
「ふふ、大げさですよ」
「いやいや、そんなことないよ」
「それはそうと篠ノ之さんにオルコットさん、いったいどうしたんでしょうか」
「午前中の授業?まあ、確かに珍しかったね」
普段マジメな二人は午前中だけで山田先生に注意五回、ちーちゃんに三回叩かれている。
「まあ、多分というかあの転入生だろうね」
「また彼がらみとは。もしかして織斑くんは節操なしなんですか?」
「うーん、あれは節操なしというより天然たらし的なものだと思うよ」
本人に自覚は全くないし。
放課後、第二アリーナ。珍しく唯依ちゃんからIS操縦を教えて欲しいと頼まれた。近くあるのはクラス代表戦だから焦って実機訓練しなくてもいいのに。まあ、唯依ちゃんとの時間だからむしろばっちこいなんだけど。
「でも、急にIS操縦を教えて欲しいってどうしたの?」
「私は冬夜と組むことが多いでしょうから今のうちから慣れておいた方がお互いに良いかと思いまして」
なるへそ。確かによっぽどのことでない限り唯依ちゃん以外と組むつもりないし。
「それじゃ、今日は軽く飛行制動をやろうか。動くとこに慣れてないとコンビネーションも何もないからね」
「はい」
「まずは…………」
二時間ほどの訓練だったけど唯依ちゃんはやっぱり凄い。基本的な飛行制動はすぐにマスターしちゃうんだから。これなら、『
「この辺で終わろうか、日も暮れてきたし」
「そうですね、では私はシャワーを浴びてきますので後ほど」
「うん、俺もそうする」
シャワーを浴び終えて自室へ向かっていると弟くんの部屋から怒鳴り声が響く。
「最っっっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ!犬に噛まれて死ね!」
すると、例の転校生が飛び出してきた。なんだか、目元が光ってる。
「えと、凰さんだっけ?泣いてるみたいだけど大丈夫?」
「あんたは、一夏のクラスの……」
「弟くんと何かあったの?」
「うわぁぁぁん!」
「えっ!ちょ、ちょっと、どうしたのさ!?」
とりあえず、泣きじゃくる凰さんを自販機前のイスまで連れて行く。
「それで、一体どうしたの?」
「は、恥ずかしいところ見せちゃったわね」
「いいよ、気にしなくて。誰にも言わないし。大体の察しはつくけどやっぱり弟くん関連?」
「うん。一夏に昔、約束したこと覚えてるか聞いたら変な勘違いしててそれで……」
珍しいな、弟くんが女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて。
「差し支えなければ教えてくれる?」
「そ、その、『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』っていう約束……」
俗に言う『私の味噌汁を毎日、飲んでくれますか?』という日本古来からの告白の酢豚版?
「えーと、それってもしかしなくても……」
「う、うん……」
この子なりに頑張ったんだろうけど今回は相手が悪いとしか言いようがない。なんせ、相手はあの『この世全ての鈍感』なんだから。
「あのバカの代わりに謝るよ、ごめんね。多分、これで気付かないのは弟くんだけだ」
「いいよ、あんたが謝らなくても。んー!あんたに話して少しスッキリした。馬鹿一夏はクラス対抗戦でボコボコにしてやるんだから!」
よかった、元気が出たみたい。やっぱり女の子には笑ってもらいたいもんね。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「あっ。ちょっと、待ちなさいよ」
「なに?」
「名前、教えてよ。あんたの」
「白崎 冬夜だよ」
「それじゃ、冬夜おやすみ」
「おやすみ、凰さん」
「鈴でいいわ」
「鈴ちゃん、おやすみ」
そうして鈴ちゃんと分かれて部屋に帰ると何故かふくれた唯依ちゃんが出迎えてくれる。
「随分と遅かったですね」
「二組の鈴ちゃんと少し喋ってんだよ」
「ええ、知ってます。それは別にいいです。女の子を慰めてたんですから。問題はそこじゃありません」
女の子と話してたことじゃないとすると唯依ちゃんが怒ってる理由が思いつかいない。
「私は冬夜に名前で呼んでもらうのにすごく時間がかかりましたし最初は渋られました。それなのにあの子に頼まれればすぐに名前で呼ぶんですね!」
「えと、つまり唯依ちゃんは俺が鈴ちゃんを名前で呼んでから怒ってるの?」
「別に怒ってません。冬夜と一緒に部屋まで帰ろうとしたら、女の子と仲良く話しててあまつさえ名前で呼び合ってたなんて知りません」
えと、つまり拗ねてる?
「ごめんね?別に唯依ちゃんの名前を呼ぶのが嫌だったわけじゃないんだよ。子供の時だったから女の子の名前を呼ぶのが妙に照れくさかったんだよ、好きな子ならなおさらね」
「す、好きな子ならなおさらですか?」
「うん。何せ、俺は唯依ちゃん一筋だから」
自分の気持ちを言い切ると唯依ちゃんは隠れるように布団に入ってしまう。
「そ、そうですか。……その、ごめんなさい。つまらないことで腹を立ててしまって」
「ううん、俺の方こそごめんね」
「きょ、今日はもう寝ましょう」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
翌日、生徒玄関前廊下に大きく張り出された紙があった。表題は『クラス
「こういうのを運命の悪戯って言うのかな」