ピットから出た俺はアリーナのロックされた扉前に立っている。
「さてと、始めるか」
『F-14 トムキャット』の電子戦使用である『F-14 AN3 マインドシーカー』を展開してIS学園のアリーナのシステムにハッキングを仕掛ける。
「…………」
さすがはIS学園のシステムだな。めちゃめちゃ固い。
「でも、後少しで……」
ハッキングが完了し観戦席のロックを解除する。
「ちーちゃん、扉のロックを解除したから避難誘導よろしく」
『いつの間に……。了解だ』
扉が開くと同時に大勢の生徒が飛び出してくるが、かなりパニッくっている。
『全員焦らずに避難しろ』
ちーちゃんの声が響くと全員が多少の落ち着きを取り戻す。さすがだね。
「えーと、唯依ちゃんは……」
人混みの中をセンサーを使い、唯依ちゃんを探し出す。
「いたいた。唯依ちゃん、大丈夫?」
「と、冬夜?」
「うん、君の冬夜だよ」
「一体、何が起こってるんですか?」
「後で説明してあげるから、とりあえず避難しようか」
口調は普段通りでもかすかに震える唯依ちゃんを抱きしめてピットまで戻る。
「どうですか、状況は?」
「何とか、なりそうだ」
モニターを見るとちょうど零落白夜の一撃で敵ISの腕を切り落としたところだった。
『……狙いは?』
『完璧ですわ!』
刹那、客席からブルー・ティアーズの四機同時狙撃により敵ISが打ち抜かれる。
「終わったな」
その言葉通り、ボンッ!と小さな爆発を起こして敵ISは地上に落下する。
「これで、終わっ──」
「敵ISが再起動!?織斑くん!」
山田先生の悲鳴のような声が聞こえモニターを見ると撃墜されたはずの敵ISの左腕が
「一夏っ!」
次の瞬間、迫り来るビームに弟くんはためらいなく突っ込み敵ISを切り裂いていた。
IS学園の地下五メートル。ここはレベル4権限を持つ関係者しか入れないらしい。俺は今回、特別に入ることを許可された。ちーちゃんと俺は何度もアリーナでの戦闘映像を繰り返し見ている。
「…………」
薄暗い室内でディスプレイに照らされたちーちゃんの顔はひどく冷たいものだった。
「織斑先生、白崎くん?」
ディスプレイに割り込みでウインドウが開く。ドアのカメラから送られてきたそれには、ブック型端末を持った山田先生が映っていた。
「どうぞ」
許可をもらってドアが開くと、山田先生はいつもより幾分きびきびした動作で入室した。
「あのISの解析結果が出ましたよ」
「無人機だったんじゃないんですか?」
「ええ。あれは──無人機です」
世界中で開発が進むISの、そのまだ完成していない技術。
「どのような方法で動いていたかは不明です。織斑くんの最後の攻撃で機能中枢が焼き切れていました。修復も、おそらく無理かと」
だろうな、
「コアはどうだった?」
「……それが、登録されていないコアでした」
「そうか」
やっぱりな。ちーちゃんもやはりな、と確信じみた発言を続ける。
「お二人は何か心当たりがあるんですか?」
「いや、ない。今はまだ──な」
「ええ、今のところは──ですけど」
そう言ってちーちゃんと俺はディスプレイの映像に視線を戻す。その顔は生徒や教師の顔ではなく、戦士の顔に近かっただろう。
一通り、解析を終えて部屋に戻ったのは日にちが変わってからだ。
「お帰りなさい」
「まだ、起きての?」
いつも規則正しい生活をしてる唯依ちゃんには珍しい夜更かしだ。
「どうしたの?」
「冬夜を待っていました」
「それは嬉しいけど……」
「それはそうと、今日は少し冷えますね」
そうかな、大分暖かい日だと思うけど。
「なので、今日は手を繋いで寝ましょう」
「へ?」
「か、風邪を引いてはいけないからであって、別にた、他意はないですよ」
なるほど、そういうことか。
「わかったよ。とりあえず、シャワー浴びてくるから待ってて」
「は、はい」
そして、シャワーを浴び終えた俺はベッドを二つ繋げて唯依ちゃんと手を繋いで横になる。
「大丈夫?」
「はい……」
どんなに、心の強い女の子でもあんなのを見たら少しは怖いよね。いくらISがスポーツ用だと言ってもその正体は現行最強の兵器なんだから。
「唯依ちゃんは大丈夫だよ。俺が付いてるから」
「はい」
「今度は唯依ちゃんの前から勝手にいなくならないから安心して」
「信じてますよ」
そうして、お互いに手を握りあって眠った。