唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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お姫様だっこ

「専用機持ちは織斑、白崎、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では八人グールプになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では別れろ」

 

ちーちゃんが言い終わると同時に俺たち男子に二クラス分の女子が詰め寄ってくる。

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

「わかんないところ教えて〜」

「デュノア君の操縦技術をみたいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね?同じグループにいれて!」

「白崎君、手取り足取り教えて!」

「あっ、ずるい!私も私も!」

 

……なんというか、予想通りの繁盛ぶりだな。俺たちはどうしていいかわからず苦笑いをこぼすだけ。

その状況を見かねたのか、あるいは自らの浅慮に嫌気がさしたのか、ちーちゃんは面倒くさそうに額を指で押さえながら低い声で告げる。

「この馬鹿者どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!」

鶴の一声っていうのかな、それまでわらわらと群がっていた女子達は、蜘蛛の子を散らすがごとく移動して、それぞれの専用機持ちグループは二分とかからず出来上がった。

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

ふうっとため息を漏らすちーちゃん。それにバレないようにしながら、各班の女子はぼそぼそとおしゃべりしていた。

「……やったぁ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ……」

「……白崎君と同じだっ。ラッキー……」

「……うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。はぁ……」

「……凰さん、よろしくね。あとで織斑君のお話聞かせてよっ……」

「……デュノア君!わからないことがあったら何でも聞いてね!ちなみに私はフリーだよ!……」

「……………」

 

やっぱりというか唯一おしゃべりがないのが例の軍人転校生ボーデヴィッヒさんの班だ。

張り詰めた雰囲気。人とのコミュニケーションを拒むオーラ。生徒たちへの軽視を込めた冷たい眼差し。さっきから一度も開くことのない口。

さしもの十代乙女もこれだけの鉄壁城塞には話しかけようがないみたいだな。みんなちょっとうつむき加減で押し黙ってるし。……ああ、可哀想に……。

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は『打鉄』が三機、『リヴァイヴ』が三機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

 

山田先生がいつもより三倍──いや、五倍はしっかりしている。さっきの模擬戦で自信を取り戻したのかな?その姿は堂々としたもので眼鏡を外せばそれだけで『仕事の出来るオンナ』に見える。

そんなことよりも唯依ちゃんのISスーツ姿の方が重要だ。

(しかし、何度見ても唯依ちゃんのISスーツはいい!)

「白崎君、ISの操縦おしえてっ」

「ああーん、このIS重ーい。私箸より重いもの持ったことなーい」

「実戦訓練の基本はツーマンセルよね。じゃあ白崎君、組みましょう」

「ねえねえ、その専用機って自分で作ったの?いいなー、うらやましいなー」

 

唯依ちゃんのISスーツ姿を堪能しようとするがそれより早く同じ班の女子に取り囲まれる。一応俺が班長なので、適当にあしらうこともできないのがやっかいだ。

「えーと……」

『班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッテングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』

 

ISのオープンチャンネルで山田先生が連絡してくる。班長である以上やらないとまずいし、やらないとちーちゃんに何されるかわからない。

「それじゃあ出席番号順にISの装着・起動、そのあと歩行まぇやろう。最初の子は──」

「はーいっ!」

 

ものすごく元気な返事だな。

「出席番号二番!蒼井雫!手芸部!趣味はお人形作りだよ!」

「よろしくね、蒼井さん」

「こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」

 

腰を折って深く礼をすると、そのまま右手を出してくる。

「ああっ、ずるい!」

「私も!」

「第一印象から決めてました!」

 

そして唯依ちゃん以外の他の女子も一列に並び、同じようにお辞儀して頭を下げたまま右手を突き出してくる。

「どういう状況かよくわからないんだが──」

 

スパーン!

「「「いったああっっ!」」」

 

見事なハモりの悲鳴が聞こえ見てみるとデュノア班女子一同の前に修羅が立っている。

「やる気があってなによりだ。それならば私が直接見てやろう。最初は誰だ?」

「あ、いえ、その……」

「私たちはデュノア君でいいかな〜……なんて」

「せ、先生のお手を煩わせるわけには……」

「なに、遠慮するな。将来有望なやつらには相応のレベルの訓練が必要だろう。……ああ、出席番号順ではじめるか」

 

左敬礼。君たちことは忘れない。

そんなデュノア班女子の惨状をみて飛び火を恐れた白崎班女子は流れるような動きで列を解散、今は蒼井さんがISの外部コンソールを開いてステータスを確認している。ちなみにうちの班の訓練機は打鉄だ。

「じゃ、はじめよっか。蒼井さん、ISの搭乗経験は授業だけ?」

「うん。そうだよ」

「それじゃ、装着して起動までやってみよう。時間をはみ出すと放課後居残りだし」

「そ、それはまずいわね!よし、真面目にやろう!」

 

今までは真面目じゃなかったの?と聴きたくなる発言だけど、あえてスルーしよう。

一人目は装着、起動、歩行と問題なく進んだ。

問題は二人目の時に発生した。

「いや、あのさ、コクピットに届かないんだけど……」

「しまった。忘れてた……」

 

訓練機なんて使ったことないから忘れたが装着解除時には絶対にしゃがまないといけない。立ったままISの装着解除をすると、ISが立ったままの状態になるからだ。

「仕方ない。倉持さん、だっこすることになるけどいい?」

「う、うん!勿論!」

「じゃあ、しっかり掴まっててね」

 

倉持さんをお姫様だっこする。

「ひゃあっ!!」

 

──待て、ちょっと待て。普通のお姫様だっこだぞ?変なところは触ってないぞ?

「し、白崎君っていつもこういうことしてるの?」

 

うーん、どうだろ。唯依ちゃん相手にならしてるかもしれない。

「ちゃんと掴まっててね。危ないから」

「う、うん……」

 

遠慮がちに俺の首へ腕を回す倉持さんを確認してから、俺はゆっくりと上昇する。と言っても高さは一メートルちょっとなのでたいしたことはない。

ただISは基本的に展開状態のものを装着する場合、背中から乗るようにして体を預けるのでこの高さは少々危ない。

俺は倉持さんが落ちないように気を遣いながら打鉄のコクピットへ運ぶ。

「じゃ、背中を預けるようにゆっくり入って。そうそう、上手」

「そ、そう?」

 

まだ、体を離していないので密着状態での会話になってしまう。倉持さん、お願いだから顔を赤らめないでください。俺のお姫様が嫉妬しちゃうので。

「じゃあ、離すよ」

「え!?え、ええと……」

「?なんかまずい?」

「まずいっていうか、その、もったいないっていうか……」

 

そんなやりとりをしてると周囲の班から声が上がった。

「あああっ!な、何してるのよ!」

「ズルイ!私もされたい!」

「どうして!どうして私の出席番号が十二番だったの!?私をこの名字にしたご先祖様を末代まで恨むわ!」

末代までって、どんだけ恨んでんるんだよ……。

「と、とりあえず、大丈夫だから白崎君は戻って。このままだと私後で何されるかわかんないし……」

「わかったよ」

 

多分、女の子だけのアレだろう。

「じゃあ起動してみて」

 

俺に促されて起動シークエンスをはじめる。開いたままだった装甲が閉じて操縦者をロックすると静かな起動音と共に打鉄が姿勢を直した。

 

「じゃあ次は──」

 

 

そんな感じで二人目の実習も順調に終わり、あとは装着解除だけだ。今度はしゃがんでするように言おう。

「それじゃあ装着解除して。あ、しゃがんで解除してね──ってなんで立ったまま解除しちゃうんだよ」

 

言い終わる前に二人目の女子は何を思ったか立ったままの状態で装着解除する。

「いや、まあ、他の女子に視線が強制力を持っていて……」

「いや、わからなくもないけどさ……」

 

ちなみに他の女子というのはもちろん同じ班の女子のことで、その視線は猛烈に『自分だけいい目を見ていいと思ってるの?』というものだ。正直、ちょーこわい。

「ほう。IS起動中に余所見とはたいしたものだな。その余裕を買ってお前にはグラウンド二十周をくれてやろう。どうだ、嬉しいだろう?」

「あ、ありがとうございますぅ……」

 

鬼だ。人の皮を被った鬼がいる。

「まあ、仕方ないか。次は誰?」

 

周囲を見渡しながら次の子を探す。

「私です」

「あっ、唯依ちゃんか。唯依ちゃんをお姫様だっこできるなんて倉持さんに感謝だね」

 

後で、スイーツでもご馳走しよう。

「じゃあ、早速失礼して」

「へ、変なところは触らないでくださいね?」

 

うぐっ!?何故、バレんだ!?

「だ、大丈夫だよ……」

「その割に顔がにやけてますが?」

 

そうですよ、触ろうとしましたよ!だって唯依ちゃんをお姫様だっこする機会なんてあんまりないんだもん!いいじゃん、ちょっとくらい!

「どこならオッケーですか?」

「ぜ、全部ダメです!」

 

ちぇっ!仕方ない。今回は諦めよう。

「それじゃ、抱えるね」

 

ゆっくりと唯依ちゃんを持ち上げる。おお、すげー軽い。胸の膨らみ込みでこの重さとは!しかし、唯依ちゃんのおっぱいがこんなに近くにあるなんて、しあわせ〜。

「な、何を言ってるんですか!」

「え!?まさか、声に出てた!?」

「出てました。無意識に口からそんな言葉が出るなんて普段、何を考えているんですか!」

 

えーと、唯依ちゃんことかな?

「まあ、それよりも。ほら、着いたからISに移って。俺的にはずっとこうしてたいけどちーちゃんに叩かれるのは嫌だからね」

「仕方ないですね。わかりました」

 

仕方なく、本当に仕方なく唯依ちゃんを降ろす。ああ、心地よい重みが……。

「それじゃ、起動と歩行やでやってみようか」

「はい」

 

適当な会話をしつつ、唯依ちゃんは打鉄を起動して歩行へと状態を移す。さすがいうかその作業には一切の無駄がなかった。

「よし、これで終了だね」

「はい、ありがとうございました」

 

お礼を言って唯依ちゃんはISスーツから降りる。無論、立ったままで。

「はぁ……。わかったよ、全員運ぶよ」

 

そんな感じで結局、全員をISまで運んだ。

 

 

 

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