唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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学年別トーナメント開始

六月も最終週に入り、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色へと変わる。その慌ただしさはよそうを遥かに超える。

俺も各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々からようやく逃げ切り更衣室へと入る。

「あ゛〜」

「ど、どうしたんだよ、冬夜兄ぃ?」

「各国政府(以下略 から逃げてきた。唯依ちゃん成分が不足して死にそうだ」

「なんだよ、その唯依ちゃん成分って」

 

なに?唯依ちゃん成分を知らないだと?てか、お前が唯依ちゃんって呼ぶな。

「唯依ちゃん成分とは、唯依ちゃんから発せられる癒し成分であり、効能は疲労回復など多岐にわたる超高性能物質だ」

「そ、そうか……」

「興味なさそうだね。さしずめ弟くんはボーデヴィッヒさんとの対戦が気になって仕方ないみたいだね」

「まあ、な」

 

手早くISスーツに着替える。

「冬夜と篁さんが一年の部、Aブロック一回戦一組目なんだよね?」

「ああ。唯依ちゃんに格好いいところ見せてくる」

「ふふ、頑張ってね」

 

 

 

「唯依ちゃん、代表候補生は俺が相手するからもう一方をお願い」

「ええ、わかっています」

 

俺と唯依ちゃんの相手はアメリカの代表候補生『エミリア・ブランケット』さんと三組の女子だ。それぞれの機体は俺が『F18E/F スーパーホーネット』、ブランケットさんがラファール、唯依ちゃんと三組の子が打鉄だ。

「あなたが強いというのは聞いているわ。でも、私も代表候補生。勝たせてもらうわ!」

「お互いにいい勝負をしよう」

 

試合開始まであと五秒。四、三、二、一──開始。

「くらえぇぇ!」

 

試合開始と同時にブランケットさんがミサイルポッド《ストームハリケーン》からミサイルを一斉射してくる。

「甘いよ」

 

全方位から迫り来るミサイルを両手、左右兵装担架に装備した《AMWS-21》で撃ち落とす。

「これくらいで倒せるなんて思ってないよっ!」

 

爆炎の中から現れたブランケットさんのショートソードを突撃砲で受け止める。

「もう一人は任せたからね!」

「う、うん!」

 

ブランケットさんはそのまま俺と唯依ちゃんを分断する。なるほど、そういう作戦か。

「ふふ」

「何がおかしいの?」

「いや、君は相方が唯依ちゃんを倒せると思ってるみたいだけど唯依ちゃんの近接戦闘の凄さはハンパじゃないからね」

「ふん。それならあの子もなかなか強いんだから!」

 

そのまま俺も戦闘にはいる。さて、楽しませてもらおうか。

「はっ!」

 

回し蹴りをかわしながら120mm滑空砲を撃ち込む。

「きゃあっ!」

「驚いてる暇はないよ」

 

体勢を崩したブランケットさんに36mm弾の弾幕をお見舞いする。

「くぅっ!」

 

ブランケットさんはなんとか弾幕から逃げ出し、手榴弾を投げてくる。

「映画とかで見てやってみたかったんだよね、これ」

「え……?」

 

投げられた手榴弾を爆発前に蹴り返す。

「うそ……」

 

そのまま手榴弾はブランケットさんを巻き込んで爆発する。

 

『勝者、白崎・篁チーム』

 

アナウンスが勝負の終わりを告げる。気づかないうちに唯依ちゃんも相手を倒してたみたい。しかし、無傷ってさすがだなぁ。

「どう?格好良かった?」

「冬夜、お疲れ様です」

 

華麗にスルーされた……。

 

 

試合を終えて弟くんたちと話すために更衣室へと向かう。

「あっ。冬夜兄ぃ、お疲れ」

「冬夜、お疲れ様」

「ありがとう。そっちは次だよね?」

「ああ。ラウラと箒のペアだ」

 

珍しい組み合わせだな。

「まあ、頑張ってこいよ」

「おう!」

「うん!」

 

話し終えた俺は唯依ちゃんと合流して弟くんたちの試合を観戦する。

「どっちもやる気満々だね」

「そうですね」

 

モニターの中の弟くんとボーデヴィッヒさんを見ながら感想をもらす。

『一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ』

『そりゃあなによりだ。こっちも同じ気持ちだぜ』

『『叩きのめす』』

 

試合開始と同時に弟くんが瞬時加速で突っ込む。さすがに無策ではないだろうし何をするか楽しみだ。

『おおおっ!』

『ふん……』

 

ボーデヴィッヒさんが右手を突き出し弟くんの動きが止まる。

『開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな』

『……そりゃどうも。以心伝心で何よりだ』

『ならば私が次にどうするかもわかるだろう』

 

ガキン!と巨大なリボルバーの回転音が轟く。ボーデヴィッヒさんも一夏に気を取られすぎだな。

『させないよ』

 

弟くんな背後からデュノアさんが現れ、六十一口径アサルトカノン《ガルム》の爆発弾(バースト)による射撃を浴びせる。

『ちっ……!』

 

デュノアさんによって射撃をずらされたボーデヴィッヒさんはデュノアさんの追撃から間合いを取る。

『逃がさない!』

 

デュノアさんの十八番『高速切替(ラピッド・スイッチ)』で追撃しようとする。

『私を忘れてもらっては困る!』

 

箒ちゃんが打鉄の実体シールドで射撃を防ぎながらデュノアさんへと斬りかかる。

『それじゃあ俺も忘れられないようにしないとな!』

 

弟くんがデュノアさんの背中へと瞬時加速し、ぶつかる瞬間、くるりとデュノアさんが宙返りする。おお、中々のコンビネーションだ。

 

 

 

そんな感じで試合が進み、箒ちゃんが撃墜されて二対一の状況になり、次第にボーデヴィッヒさんが押され始める。

『この距離なら、外さない』

 

盾の装甲がはじけ飛び、中からロマン武器が露出する。六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》。通称──

『『盾殺し(シールド・ピアース)……!』

 

とっつきである。

『『おおおっ!』』

 

ふたりの声が重なる。パイルバンカーは単純な兵器だが、それ故に攻撃力は最強レベルだ。防げなければまずい。

『!!!』

 

ボーデヴィッヒさんはその目を集中して止めようとするが失敗した。

ズガンッ!!!

『ぐううっ……!』

 

絶対防御が発動し、エネルギー残量をごっそり奪われる。しかも《灰色の鱗殻》はリボルバー式で連発可能なので

ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!

続けざまに三発を撃ち込まれ、ボーデヴィッヒさんの体が大きく傾く。

そして、IS強制解除の兆候が見え始めた瞬間、異変が起きた。

『ああああああっ!!!!』

 

突然、ボーデヴィッヒさんが身を裂かんばかりの絶叫を発する。と同時にシュヴァルツェア・レーゲンから激しい電撃が放たれ、デュノアさんが吹き飛ばされた。

『ぐっ!一体何が……。──!?」

『なっ!?』

 

弟くんたちが驚くのも無理はない。ISは形状を変えることはあるがあの様な変化は絶対にしない(・・・・・・)

『なんだよ、あれは……』

 

そして、変化はやがておさまりそれは俺や弟くんにとって許容しがたい姿に変化した。

「くそが……!」

「と、冬夜、あれは一体何なんですか!?」

「VTシステムだよ」

「VTシステム……?」

「説明はあと。とりあえず唯依ちゃんは避難して」

「ええ、そうしますが、冬夜はどうするつもりですか?」

 

決まっている。あんなものを放置なんて出来るわけがないっ!あれはちーちゃんだけのものだ!

「破壊する。あれを破壊する」

「破壊するって、ボーデヴィッヒさんはどうするつもりなんですか?」

「もちろん助ける。聞かなきゃいけないこともあるし」

 

どこのバカが作ったかとかな。

『冬夜兄ぃ、ここは俺に任せてくれないか?』

「弟くん?」

『俺が『やらなきゃいけない』んじゃないんだよ。これは『俺がやりたいからやる』んだ。他の誰かがどうだとか、知るか。大体、ここで引いちまったらそれはもう俺じゃねえよ。織斑一夏じゃない』

「わかった。そこまで言うのなら任せるよ。ただ──」

『ああ、わかってる。絶対に勝つ。ここまで啖呵を切って飛び出すんだ。負けたら男じゃねえよ』

「なら、負けたら明日から弟くんは女子の制服で登校だな」

『うっ……!い、いいぜ?なにせ負けないからな!』

 

あの目をした弟くんなら任せても大丈夫だな。

「弟くん、白式を一極限定にしろ。それで、一回くらいなら零落白夜が使えるはずだ」

『おう、わかった』

 

先ほどまでの戦闘でシールドエネルギーはほとんど残ってないだろう。一極限定にしても一発が限界だ。

『武器と右腕だけか』

「充分だろ?」

『ああ』

 

防御なし。当たれば即死、良くて重傷。けれど一撃を食らわせるだけのお膳立てを白式はしてくれた。後は──弟くん次第。

『い、一夏っ!』

 

それまで傍観していた箒ちゃんがはじかれたかのように口を開いた。その目は弟くんだけを見つめ、真剣そのものだ。

『死ぬな……。絶対に死ぬな!』

『なにを心配してるんだよ、バカ』

『ばっバカとはなんだ!私はお前が──』

『信じろ』

『え?』

『俺を信じろよ、箒。心配も祈りも不必要だ。ただ、信じて待っていてくれ。必ず勝って帰ってくる』

 

それは──誰かのために強くありたい、という願い。

『じゃあ、行ってくる』

『あ、ああ!勝ってこい、一夏!』

『じゃあ、行くぜ偽物野郎』

 

握られた《雪片弐型》が刀身を開く。

『零落白夜──発動』

 

ヴン……と小さく反応し、全てのエネルギーを消し去る絶対無効の刃が現れる。そして、それは変化していき、零落白夜の刃が細く鋭くなっていく。やがてそれは鍛え上げられた日本人の魂──日本刀の形になる。

弟くんはちーちゃんに習い、箒ちゃんに学んだ、『一閃二断の構え』をとる。

『……………』

 

黒いISが刀を振り下ろす。それはちーちゃんと同じ速く鋭い袈裟斬り。されど、意志の込もらぬ虚なもの。ならばそれは──

『ただの真似事だ』

 

ギンッ!腰から抜き放って横一閃、相手の刀を弾く。そしてすぐさま頭上に構え、縦にまっすぐ相手を断ち斬る。

これこそが一閃二断の構え。俺がちーちゃんに初めて負けた技だ。

『き、ぎ……ガ……』

 

ジジッ……と紫電が走り、食いISが二つに割れる。そして、ボーデヴィッヒさんが現れる。

「……まぁ、──」

 

弟くんのつぶやきは聞こえるなかったがとりあえずは閉幕だ。

 

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