唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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改めてよろしく

「それで結局、VTシステムって何なんですか?」

「うん?ああ、正式名称ヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きをトレースするシステムで、IS条約で国家・組織・企業において研究・開発・使用が禁止されてるシステム」

 

学食でカツ丼を食べながら唯依ちゃんに説明する。

「なぜ、そんなものが?」

「さあ?」

 

本当はわかってるけど唯依ちゃんを巻き込みたくないから教えない。

「……優勝……チャンス……消え……」

「交際……無効……」

「……うわああああんっ!」

 

バタバタバターっと数十名が泣きながら走り去っていった。まあ、今回は仕方ないよ。

「どうしたんでしょうか?」

「女の子は複雑なんだよ」

「?」

 

首を傾げる唯依ちゃんをおかずにカツ丼を食べる。うん、あと十杯はいけるな。

「そんなことだろうと思ったわ!」

 

どげしっ!!!

「ぐはぁっ!」

 

いきなりの奇声に振り返ると弟くんに箒ちゃんの正拳が決まっていた。

「ふん!」

 

さらに追い討ちのみぞおち蹴り。

おっ、パンツ見えた。箒ちゃんは白か。今日の唯依ちゃんのパンツは何色──ドゴッ!

「げぼらばあっ!?」

 

スカートをめくろうとした瞬間、頭に衝撃が走る。

「なにをしているんですか!」

 

唯依ちゃんにかかと落としをされた。でも、ちらっと薄ピンクが見えたので満足。

「うぉぉお……」

 

満足だが、かなり痛い。

「あ、白崎君に織斑君とデュノア君。ここにいましたか。……って、どうしたんですか?」

「山田先生、冬夜の自業自得ですのでお気になさらず」

「は、はい?それよりも、朗報です!」

 

グッと山田先生が両手を握りしめてガッツポーズ。その豊満な胸が揺れる。

「なんとですね!ついについに今日から男子の大浴場使用が解禁です!」

「おお!そうなんですか!?てっきり来月からになるものとばかり」

「それがですねー。今日は大浴場のボイラー点検があったので、もともと生徒たちが使えない日なんです。でも、点検自体はもう終わったので、それなら男子三人に使ってもらおうって計らいなんですよー」

 

久しぶりに大浴場というのもいいかもしれないな。唯依ちゃんが付いてこないのが残念だけど。が、しかし──

「ありがとうございます、山田先生!」

「お気づかい、感謝します。でも、今日は遠慮しておきます」

「え?冬夜兄ぃは入いらないのか?」

「ええー、折角なのにもったいないですよ?」

「そうなんですが、私用がありまして」

「そうなんですか?なら、仕方ないですね。織斑君とデュノア君はしっかりと楽しんできてくださいね」

「はい!」

「唯依ちゃんは先に戻ってて。俺は後からもどるから」

 

そう言って、俺はIS学園の屋上へと移動する。

「ここなら、誰もいないか」

 

携帯を取り出してある番号にコールする。

『も、もすもす?終日(ひねもす)?』

 

電話口からのよくわからない声につい電話を切ろうとしてしまう。

『わー、待って待って!』

「束ちゃん……」

『はーい、ふーくんのアイドル・篠ノ之束ここに参上っ!それで、一体どうしたのかな、ふーくん』

「束ちゃんは今回の件には関わってないよね?」

『今回、今回──はて?』

 

おそらく首を傾げているのだろう。そして、本当に知らないようだ。

「VTシステムだよ」

『ああ。あれ?うふふ、ふーくん。あんな不細工なシロモノ、この私が作ると思うかな?私は完璧にして十全な君だけのアイドル篠ノ之束だよ?すなわち、君が嫌いなものなんて作らない』

「……………」

『任せといてよ。あれを作った研究所は消しておくから。……ああ、言わなくてもわかっていると思うけど、死亡者はゼロにするよ。赤子の手をひねるより簡単──ていうかふーくん、束さんとの赤子はいつかな?かな?」

 

うふふ、と笑いを付け加えて束ちゃんはつらつらと話す言葉を一度句切る。

「考えとくよ。じゃあ、邪魔したね」

『いやいや、邪魔だなんてとんでもない。私の時間はとふーくんのためならいつでもどこでも二四時間フルオープン、コンビニなんか目じゃないね。五○六○喜んで!」

「……またね」

 

電話を切る。

「考えてみれば長い付き合いだよね」

 

唯依ちゃんよりも長いなと思いながら部屋へと戻る。

 

 

翌日、朝のホームルームにはデュノアさんの姿がなかった。弟くんに聞いたら『先に行ってて』だそうだ。ちなみにボーデヴィッヒさんの姿もない。たぶん、昨日の負傷で休んでるんだろ。

「み、みなさん、おはようございます……」

 

教室に入ってきた山田先生はなぜだかふらふらしている。朝食の目玉焼きが半熟じゃなくてテンションが上がらなかったのか?

「織斑君に白崎君、何を考えているのかはわかりませんが、私を子供扱いしようとしたいるのはわかりますよ。先生、起こります。はぁ……」

 

ずいぶんとお疲れのご様子。まあ、すいません。

「今日は、ですね……みなさんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと……」

 

ほう……。

「じゃあ、入ってください」

「失礼します」

 

この声はやっぱり──

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

ぺこり、スカート姿のデュノアさんが礼をする。俺以外のクラス全員がぽかんとしたまま、ぺこりと頭を下げ返す。

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです。はぁぁ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業がはじまります……」

 

なるほど山田先生の憂いはそれか。

「え?デュノア君って女……?」

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「って、織斑君、同室だから知らないってことは──」

「ちょっと待って!昨日って確か、織斑君とデュノア君が大浴場使ったわよね!?」

 

ざわ……ざわ……!教室が一斉に喧騒に包まれ、あっという間に溢れかえる。

「知ってたんですか?」

「うん。知ってたから昨日は大浴場に入らなかったんだ」

 

バシーン!教室のドアが蹴破られたかのような勢いで開く。

「一夏ぁっ!!!」

 

清流の方角、凰鈴音。その顔は烈火の如く怒り一色。おお、これが中国四千年の歴史か!

「死ね!!!」

 

ISアーマー展開、それと同時に両肩の衝撃砲がフルパワーで解放される。

あー、弟くんしんだな。

明日の朝刊の一面はこれで決まりだろう。

『哀れ高校一年生男子、同学年女子に殺害される。死体は原形をとどめておらず、クラスメイトは口々に悲しみの声を漏らす』

「ミンチでした」「トマトケチャップでした」「地面に落ちた柿でした」「あるいはイチジクでした」「破裂した缶コーラでした」「バカのシチューが出来上がりました」

最後は俺だ。

ズドドドドオンッ!

「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」

 

鈴ちゃんは怒りのあまり肩で息をしている。

「……………」

 

間一髪、ボーデヴィッヒさんがAICで衝撃砲を相殺したようだ。

「助かったぜ、サンキュ。……っていうかお前のISもう直ったのか?すげえな」

「……コアはかろうじて無事だったからな。予備パーツで組み直した」

「へー。そうなん──むぐっ!?」

 

わおっ!情熱的なキスだね。ちなみに俺のファーストキスは……今はいいか。

「!?!?!?!?」

 

全員があんぐりとする。

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

「……嫁?婿じゃなくて?」

 

この状況でそのツッコミ。お兄さん、君を尊敬しそうだよ。

「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」

 

その人は日本に対してかなりの偏見をお持ちのようで。

「あ、あっ、あ……!」

 

俺シーラネ。

「アンタねええええっ!!!」

「待て!俺は悪くない!どちらかというと被害者サイドだ!」

 

女の子とキスして被害者サイドとか、弟くんサイテー

「アンタが悪いに決まってんでしょうが!全部!絶対!アンタが悪い!」

 

ビシュンッ──!

教室の後ろ側出口から逃げようとした弟くんの鼻先をレーザーがかすめる。

「ああら、一夏さん?どこかにおでかけですか?わたくし、実はどうしてもお話しなくてはならないことがありまして。ええ、突然ですが急を要しますの。おほほほほ……」

 

血管マークを浮かせたオルコットさんはISを展開する。そして弟くんは窓からの逃走を試みる。

ダンッ!

が、それも目の前の日本刀に阻止される。

「……一夏、貴様どういうつもりか説明してもらおうか」

「待て待て待て!説明を求めたいのは俺の方で──おわあっ!?」

 

聞く耳持たんとばかりの鋭い斬撃。宛先のない逃亡のすえ弟くんが辿り着いたのは……

「にこっ」

 

デュノアさん(殺戮天使)のもとだった。

「に、にこっ」

「一夏って他の女の子前でキスしちゃうんだね。僕、びっくりしたな」

「あのー……シャルロット?俺はされたんであって、したわけではないし、そしてなぜISを起動させているのか」

「なんでだろうね」

 

パンッ!と軽く火薬の弾ける音が響いて左腕の盾がパージされる。そこにあるのは六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレール・スケール)》。通称『盾殺し(シールド・ピアース)

「は、はは、ははは……」

 

ドカアアアアアンッ!!!

 

その日のホームルームは轟音と爆音、そして絶え間ない衝撃でクラスが文字通り揺れた。

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