唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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人類は鼻血なんかに負けないっ!

チュンチュン……。

日課のランニングを終えて部屋に戻った俺は未だベッドで寝息を立てているお姫様の寝顔を見る。この時間は至福の時である。

「すぅ……すぅ……」

 

唯依ちゃんと同室だからこその特権。なにものにも変えがたい時間だ。だから、ほっぺたを触ってしまうのも仕方ない。

ぷにぷに。

「ん……」

 

おおっ!今の録音しておくべきだった。

「ん……。あさでしゅか……」

 

寝ぼけているのかろれつの回っていない唯依ちゃん。

「とうや……?」

「おはよう」

「わ〜、とうやだ〜」

「っ!?」

 

なんと、そのまま抱きついてきてくれた!なんという幸福!

「ふふふ」

「って、俺汗かいてるからストップ」

「いいにおいですよ〜?」

 

なにこの可愛い女の子。しかし、ここは紳士として寝ぼけている女の子には優しくだ。

「寝ぼけてないで顔を洗っておいで。今日の朝は俺が作るから」

「はーい」

 

よく耐えた俺。褒美をつかわそう。

 

 

「私、寝ぼけて変なこと言いませんでしたよね!?」

「うん、大丈夫だったよ」

 

何度目かわからないやりとりをしながら教室へと向かう。

「うう〜。なんで今日に限って寝ぼけて……」

 

ぎゅん!

ん?なんで、廊下でISの飛行音が聞こえるんだ?

「到着っ!」

「おわっ!?」

 

なにごとか思ったらシャルロットに引っ張れて二人が飛翔してきた。

「おう、ご苦労なことだ」

 

ああ。朝から鬼に見つかったみたい。

「本学園はISの操縦者育成のために設立された教育機関だ。そのためどこの国にも属さず、故にあらゆる外的権力の影響を受けない。がしかし──」

 

すぱぁんっ!今日も痛そうだな、出席簿アタック。

「敷地内でも許可されていないIS展開は禁止されている。意味はわかるな?」

「は、はい……。すみません……」

「デュノアと織斑は放課後教室を掃除しておけ。二回目は反省文提出と特別教育室での生活をさせるのでそのつもりでな」

「「はい」」

 

二人揃って意気消沈、その後着席。朝から鬼を怒らせても益はない。

キーンコーンカーンコーン。空気の読めないチャイムが鳴ってSHRがはじまる。

「今日は通常授業の日だったな。IS学園生とはいえお前たちも扱いは高校生だ。赤点など取ってくれるなよ」

 

そう、面倒くさいことにIS学園では一般教科も履修する。中間テストはないが、期末テストがある。ここで赤点を取れば夏休みは連日補習となるわけだが、まあ問題はない。

「それと、来週からはじまる校外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。三日間だが学園を離れることになる。自由時間では羽目を外しすぎないように」

 

そう。七月頭の校外学習──すなわち、臨海学校なのだ。三日間の日程のうち、初日は丸々自由時間。もちろんそこは海なので唯依ちゃんの水着見放題、愛で放題。先週からテンション上がりっぱなしで、最高に『ハイ!』ってやつだ!

「ではSHRを終わる。各人、今日もしっかりと勉学に励めよ」

「あの、織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」

 

クラスのしっかり者こと鷹月静寐さんのもっともな質問だ。大方、視察だろう。

「山田先生は校外学習の現地視察に行っているので今日は不在だ。なので山田先生の仕事は私が今日一日代わりに担当する」

「ええっ、山ちゃん一足先に海に行ってるんですか!?いいな〜!」

「ずるい!私にも一声かけてくれればいいのに!」

「あー、泳いでるのかなー。泳いでるんだろうなー」

 

さすがは咲き乱れる十代女子、話題があれば一気に賑わう。それを鬱陶しそうにしながら、ちーちゃんは言葉を続ける。

「あー、いちいち騒ぐな。鬱陶しい。山田先生は仕事で行っているんだ。遊びではない」

 

はーい、と揃った返事をする一組女子。相変わらずのチームワークだ。

 

 

週末の日曜日。俺は唯依ちゃんと臨海学校の準備もあり、街に繰り出した。

「よく晴れてますね」

「そうだね」

 

ちなみに唯依ちゃんの服装は夏らしい清涼感のある服装でこれがまた似合ってて超絶可愛い。ポニーテールにくくった髪から見えるうなじも素晴らしい!

「どうしたんですか?」

「目の前の超絶可愛い女の子を見て楽しんでる」

「っ………」

 

その照れた反応もいいっ!

「そ、そろそろ行きますよ」

「ちょっと、待って」

 

先に行こうとする唯依ちゃんを呼び止める。

「な、なんですか?」

「はぐれたらいけないから手、繋ごう?」

「し、仕方ないですね。と、冬夜が迷子になったら困りますからねっ」

 

しぶしぶ感を出しつつも顔を真っ赤にして手を繋いでくれる。

「さ、さあ、行きますよ」

 

唯依ちゃんと手を繋ぎながらショッピングモール『レゾナンス』二階の水着売り場へと向かう。

「冬夜はどんな水着を買うんですか?」

「あー、そっちは考えてなかった。まあ、適当に選ぶよ」

「そっち?」

「うん。昨日の夜、遅くまで起きたのは知ってるよね?」

「はい。何をしていたんですか?」

 

よくぞ聞いてくれました!

「実は昨日の夜、五時間ほどかけて唯依ちゃんに似合う水着を吟味していました!」

「……は?」

「いやー、今年の水着はどれも唯依ちゃんに似合うから選びぬくのに時間がかかちゃったよ」

 

まあ、そのおかげで唯依ちゃんの魅力をパーフェクトに表現できる水着が見つかりましたよ!

「そんなことで夜更かしてたんですか?」

「そんなことじゃないよ!唯依ちゃんの水着を吟味することは国防以上に重大な案件なんだよ!?」

「はぁ……。ま、まあ、冬夜がそこまでして選んでくれた水着に興味がないわけではないですから、着てみようと思います」

 

なんとか、ことの重大さを理解してくれた唯依ちゃんと水着屋に入り、お目当ての水着を見つける。

「こ、これですか?」

「It's that so. 試着できるそうだから、してみてよ」

「し、しかし、これは……」

「絶対に似合うから、お願いっ!」

「わ、わかりました」

 

水着をもって試着室に入った唯依ちゃんを待つ。

「着てみましたが、これは……」

 

恥ずかしながら、試着室から出てくる。そこにいたのは山吹色のビキニを身にまとい、頬を染めた唯依ちゃんだった。

「ど、どうですか?」

「ぶほぉっ!?」

 

あ、あまりの可愛さに鼻血が止まりませんっ!

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「せ、せめて、人類の言語で喋ってください!」

「唯依ちゃんの水着姿を見れて、我が生涯に一片の悔いなし。がくっ」

「冬夜!?」

「お客様ーーーっ!」

 

白崎冬夜、死亡。死亡原因、鼻血による失血死。否──

「こんなところで死ねるか!!!」

「きゃあっ!?」

 

俺は、唯依ちゃんは可愛かったと……人類にとって至宝だったと伝えなければならいんだ……!人間をなめるよ、鼻血がっ!!!

「ふぅ、復活」

「一体、どうしたんですか?」

「気にしないで。持病の『唯依ちゃん好き好き病』の発作が出ただけだから」

「なんなんですか、それは!?」

 

 

「海っ!見えたぁっ!」

 

トンネルを抜けたバスの中でクラスの女子が声を上げる。

臨海学校初日、天候にも恵まれて無事快晴。陽光を反射する海面は穏やかで、心地よさそうな潮風にゆっくりと揺らいでいた。

「海を見るとやっぱりテンションあがるなぁ」

「そうですね。今年はまだ、行ってませんでしたし」

 

バスで隣の席になったのは唯依ちゃん。

「久しぶりに遠泳でもしてみますか?」

「でも、あの水着だと泳ぎにくいんじゃない?」

「大丈夫です。もう一着、遠泳用に競泳水着を持ってきています」

 

唯依ちゃんの競泳水着……これは、撮らねばなるまいっ!

「撮影会はいつですか?」

「そんなものは、ありません」

「そんな……。じゃあ、俺はこの臨海学校を楽しめば良いんだ……」

「……そ、その、冬夜が見たければ私はいつでも……」

「うん?なにか、言った?」

「い、いえ!なにも!」

 

唯依ちゃんの声を聞き逃すなんてなんたる不覚!

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

 

ちーちゃんの言葉で全員がさっとそれに従う。さすがの指揮能力である。

言葉通りほどなくしてバスは目的地である旅館前に到着。四台のバスからIS学園一年生がわらわらと出てきて整列した。

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

「「「よろしくおねがいしまーす」」」

 

ちーちゃんの言葉の後、全員で挨拶する。この旅館には毎年お世話になっているらしく、着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

歳は三十くらいだろうか、どことなく栴納さんに近い雰囲気が漂っている。

「あら、こちらが噂の……?」

 

ふと、俺たちと目があった女将さんがちーちゃんに尋ねる。

「ええ、まあ。今年は男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

「いえいえ、そんな。それにいい男の子達じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

「感じがするだけですよ。挨拶をしろ、馬鹿者共」

 

ぐいっと頭を押さえられる。いや、そんなことされなくても挨拶くらいするってば。

「白崎冬夜です。よろしくお願いします」

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲景子です」

 

そう言って女将さんはまた丁寧なお辞儀をする。その動きは先ほどとおなじく気品のあるもので、こういうのに弱い俺としてはすこし緊張してしまう。

「不出来の弟と幼なじみでご迷惑をおかけします」

「あらあら。織斑先生ったら、ずいぶんと厳しいんですね」

「いつも手を焼かされていますので」

 

いや、そんなこともないでしょ。

「それじゃあみなさん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は旅館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」

 

女子一同ははーいと返事をするとすぐさま旅館の中へと向かう。俺もとりあえずは荷物を置こう。

ちなみに初日は終日自由時間。食事は旅館の食堂で各自とるように言われている。

「ね、ね、ねー。おりむ〜、さきさき〜」

 

こ、この呼び方は間違いなくのほほんさんだ。振り向くと、例によって異様に遅い移動速度でこっちに向かってきていた。眠たそうな顔は、たぶん素。

「おりむー達って部屋どこ〜?一覧に書いてなかったー。遊びに行くから教えて〜」

 

その言葉で周りにいた女子が一斉に聞き耳を立てるのがわかった。

「いや、俺も知らないな。冬夜兄ぃは知ってるか?」

「知らないかな」

 

ちなみに女子と寝泊まりさせるわけにも行かないということで、俺たちの部屋はどこか別の部屋が用意されるらしいというのも山田先生がそう言ってただけで明確には聞かされていないからだ。

「織斑に白崎、お前たちの部屋はこっちだ。ついてこい」

 

おっとちーちゃんのお呼びだ。

「えーっと、織斑先生。俺たちの部屋ってどこになるんでしょうか?」

「黙ってついてこい」

 

いきなりの言論封殺ですか。それにしてもこの旅館、ほんとすごいな。キレイだし広いし。

「ここだ」

「え?ここって……」

 

ドアに張られた紙は『教員室』と書かれいる。なんでさ……。

「最初は個室という話だったんだが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押しかける並びに、篁の部屋へ押しいる馬鹿がいるだろうという話になってだな」

 

それなら、最初から同じ部屋なら問題ないのでは?

「結果、私と同室になったわけだ。これなら、どちらもおいそれと近づかないだろう」

「ぐぬぬ……」

「そりゃまあ、そうだろうけど……」

 

唯依ちゃんのためなら鬼も怖くないがさすがに死ぬのは困る。

「一応言っておくが、あくまで私は教員だということを忘れるな」

「はい、織斑先生」

「はいはい、わかってますよ」

「それでいい」

 

そうして部屋の中に入る許可が下りた。中はふたり部屋らしいが広々としていて三人でも問題なさそうだ。

「一応、大浴場も使えるが男のお前たちは時間交代だ。本来ならば男女別になっているが何せ一学年全員だからな。お前たち二人のために残りの全員が窮屈な思いをするのはおかしいだろう。よって、一部の時間のみ使用可能だ。深夜、早朝に入りたければ部屋の方を使え」

「わかりました」

 

しかし、家族と幼なじみだけだというのに職務に忠実とはまったくちーちゃんらしい。

「さて、今日は一日自由時間だ。荷物も置いたし、好きにしろ」

「えっと、織斑先生は?」

「私は他の先生との連絡なり確認なり色々とある。しかしまあ──」

 

ごほん、と咳払いをするちーちゃん。

「軽く泳ぐくらいはするとしよう。どこかの弟がわざわざ選んでくれたものだしな」

 

ほうほう、それはそれは。

「織斑先生、ちょっとよろしいですかー?」

 

この声は山田先生だな。

「ええ、どうぞ」

 

その返事を聞いて山田先生がドアを開ける。そうするとちょうど入り口から直線上に立っていた俺たちと目があった。

「わあっ!」

「いや、そんなに驚かなくても……」

 

どうも教員同士の確認のために来たようだった。

「ご、ごめんなさい。ついつい忘れてしまいました。織斑君たちは織斑先生のお部屋でしたね」

「山田先生。確かこれはあなたが提案したことだったはずだが?」

「は、はいぃっ。そうです、はいっ。ごめんなさい!」

 

ちーちゃんのじろりとした視線を受けた山田先生は蛇に睨まれた蛙だった。

「さて織斑と白崎、私たちはこれから仕事だ。どこへでも遊びに行ってこい」

「はい。それじゃあ冬夜兄ぃ、さっそく海にでも行くか」

「ああ、そうだな」

「羽目を外し過ぎんようにな」

 

ちーちゃんの注意にもう一度ちゃんと返事をして俺たちは部屋を出る。

さあ、行かん。いざ海へ!

 

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