昨晩のどっちが俺と結婚するかという唯依ちゃんと亦菲の喧嘩のせいで三人揃って栴納さんにこってりと絞られた翌日。
俺は、今日だけは二度寝しようかと考えていた。
「その“今日だけは”が積み重なっていくんです。早く起きてください」
儚くも俺の二度寝計画は女神によって阻止された。
「唯依ちゃんがおはようのチューしてくれたら起きるかも」
「なっ!? あ、朝から何を言ってるんですか!」
「なら、二度寝します」
少しごねてみよう。もしかしたら女神の口づけを頂けるかもしれないし。
「あ、あの、ほんとに……その、チューしないと起きてくれないんですか……?」
「イエス」
返事をすると唯依ちゃんが顔を真っ赤しながら俺の布団へと寄ってくる。
まさか、マジでしてくれるのか!?
「ん、んー……」
目を閉じているがわかる、わかるぞ。近寄ってくる香りは唯依ちゃんの髪の香り。つまり、唯依ちゃんの顔が、唇が近づいてきている!
「(さあ、早く!!)」
「寝ているトウヤにキスだなんてね。その先は何をする気よ、この淫乱娘」
「っ!?」
俺は続きありでも全然、おっけぃ! むしろwelcomeだぜ!
「ち、違います! これは、冬夜から頼まれただけで! そ、その早く起きてくださいね!」
ああ、我が麗しの女神が遠ざかっていく……。
「ちょっとぉ、もう少しで朝一キッスが手に入ったのに」
「私もしたいけど我慢してるんだから。あと、早く起きないと次は大尉の携帯から国際電話で中佐からのモーニングコールが来るわよ?」
「よし、素晴らしい目覚めだね。さあ、今日も一日、元気に過ごそう」
朝からラトロワ中佐の
「ほんと、よくあの中佐にあんなことして生きてるわね」
「あはは……。その話は、またの機会に、ね」
正直若気のいたりにするにはやりすぎたと思ってます、はい。
「それで、今日はどうするの?」
「特に予定はないかな」
「なら、プールに行きましょ!」
「良いけど、どうして?」
「仕事が忙しくて今年はまだ水着、着れてないのよ。この若い体をトウヤに見せてあげたくて」
プールにはまだ行ってないし丁度良いかも。
「オッケー」
side???
「全く、トウヤも付き合い悪いわよねぇ。出発する直前になって急用が出来たなんて」
「冬夜にも都合があるんですからあまり責めないであげましょう」
「そうですよ。トウヤお兄ちゃんはああ見えても結構多忙な身の上なんですから」
ええ、ですから折角冬夜に見てもらうために密かに体型維持に励んでいた私の努力が無駄になって怒ってるとかありませんから。
「というか大尉……」
「なんですか、中尉」
「その格好は……」
ああ、亦菲さん……。確かにそれは私も指摘すべきだとは思いましたが敢えて無視していたというのに……。
「えーと、何か変ですか? 確かに先ほどから周りの人の視線が変ではありますが……」
ターシャさんの格好はIS学園の指定水着と同じもの、つまりはスク水です。
確かに、私たちも授業では着ますがさすがにプライベートでは着ませんよ?
そして、ターシャさんは年齢よりも幼い顔をしていています。そこに『お兄ちゃん』なんてセリフを言ってしまうとロリコンでなくても男性の気を引いてしまうでしょう。冬夜曰く、『(唯依ちゃんの)スク水は世界遺産』だそうですし。
「いや、大尉が気にしてないなら別にいいわ。さて! 冬夜がいないのは残念だけどたまには女だけ楽しむのもアリだと私は思うのよ」
「ええ、そうですね」
「冬夜に土産話が出来るくらい楽しみましょう!」
「「「おおー!!!」」」
それから私たち三人はウォータースライダーなどプールにある施設を一通り、楽しんだあと遅めの昼食をとっていました。
「いやぁ、遊んだわねぇ」
「中尉は少しはしゃぎ過ぎです」
「ふふ、いいじゃないですか」
「そうよ。いくら軍人っていっても花も恥じらう乙女なのよ?」
「カワイ子ちゃん。なら、俺らと青春しない?」
はぁ。人が折角楽しんでいたというのに台無しです。
「遠慮します」
「私も遠慮しとくわ」
「ええ、そうですね」
「そんなこと言わずにさぁ。俺らと楽しもうぜ」
そう言ってナンパ男は私の肩に手を置きました。
「触れないで下さい!」
こういう輩は不愉快極まります。
「そんな、キョヒることないじゃんかよー。俺傷ついちゃったなぁー」
「あはは」
ナンパ男が下卑た目を私に向けた瞬間、崔さんが笑い出しました。
「……何笑ってるんだよ」
「いや、ゴメンゴメン。言ってることが可笑しすぎて」
「なに、ちょっと可愛いからってムカつくな」
「ああ、ナマイキな子にはお仕置きが必要だ……な?」
ナンパ男の手が崔さんに触れかけた瞬間、男は倒されていました。
「は?」
「え? なにが起こったんだよ……」
「情けないわね。トウヤならこれくらい軽く受け流すわよ?」
「ナンパ男さんたち。私たち軍人とあなた方とでは、戦力的に違いがありすぎますので撤退することを進言します」
「いでっ! いでで! わ、分かった! 俺らが悪かった!」
笑顔で撤退を進めておきながら関節技を決めるなんて。ターシャさん、見かけによらず怖い方なんですね……。
「助けていただきありがとうございます」
「ああ、気にしなくていいわよ。私たち軍人は本来は守るのが仕事なんだから」
「それに軍人じゃなくても友人を助けるのに理由はいりませんから」
怖い方かもと思ってしまった自分が恥ずかしいです。この方たちは怖い方ではなくすごく優しい方たちです。
「さて、そろそろ帰りますか」
「そうですね。最後はアレでしたけど結構楽しみましたね」
「ふふふ、二人とも甘いわね。このプールにはなんと! 本格温泉が付いているのよ!」
「「な、なんですってー!」」
そして、三人で温泉を楽しんだあと帰路についた時──
「目標を発見。これより捕獲します」
「──え? うっ!?」
黒服にサングラスをかけた男たちにスタンガンを当てられて身動きがとれなくりました。
「やっぱり、来たわね!」
「中尉! こんな街中でISの起動はマズイです! 素手での制圧をお願いします」
「わかってるわよ!」
黒服たちは崔さんたちが動くより先に威嚇射撃と煙幕で視界を遮って私を車に押し込んで逃走を始めました。
「護衛がいるとは聞いてたが、あんな役立たずとは舐められたもんだな」
「いいじゃないか。仕事は楽に越したことはない」
「まったくだ。さて、お嬢ちゃん。大人しくしててくれよ。俺たちも女を殴りたくはねぇからな」
「…………」
そう言って男たちは私の体を拘束していきます。
「そうそうそのまま大人しくしててくれればしばらくは無事でいられるからな」