唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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二学期
専用機(仮)


「でやあああああっ!!」

 

ガギィンッ! と鋭く重い金属音を響かせ、弟くんと鈴ちゃんは刃を交えて対峙する。

九月三日。二学期初の実戦訓練は一組二組の合同ではじまった。

「くっ……!」

「逃がさないわよ、一夏!」

 

クラス代表同士ということで始まったバトルは、最初こそ弟くんが押していたものの時代に鈴ちゃんが巻き返しはじめていた。

その理由は単純にして明快。第二形態へと移行した白式の、さらに加速した燃費の悪さである。

「最初にシールドを使いすぎたわね!」

「まだまだぁっ!」

 

そう言って刀を振るう弟くんだが、その《雪片弐型》もすでに『零落白夜』の輝きはなく、通常の物理刀になっている。

距離が開けば左腕の多機能武装腕(アームド・アーム)《雪羅》による荷電粒子砲を放てるはずだったが、それもすでにエネルギー切れだ。

「無駄よ! この甲龍は燃費と安定性を第一に設計された実戦モデルなんだから! ──衝撃砲!」

 

ズドドンッ、と連射性の高い砲撃を近距離で受け、距離が開く。

そしてその瞬間を見逃さないように、鈴ちゃんは連結状態の《双天牙月》を投擲する。

「ぐぅっ!」

 

弟くんは何とか受けきったものの、視界から鈴ちゃんを見失う。すぐにISハイパーセンサーの位置情報補足がくるがすでに遅い。

「たあああっ!!」

 

弟くんの真下、足首を掴んだ鈴ちゃんはそのまま力任せに地面へと弟くんを投げ飛ばす。

「もらい!」

「!?」

 

そして、鈴ちゃんは逆さまの格好のまま、衝撃砲の連射を浴びせる。

それが十発ほど直撃したあたりで、試合終了のアラームが鳴り響いた。

──もちろん、弟くんの負けである。

 

 

 

 

「これであたしの二連勝ね。ほれほれ、なんか奢りなさいよ」

「ぐう……」

 

前半戦、後半戦ともに弟くんの敗北で幕を閉じた実戦訓練。その後片付けを終えた、俺たちはいつもの面子で学食に来ていた。

俺は唯依ちゃんの綺麗な食事姿に和みながら昼食を食べる。

ちなみにメニューはサバ味噌煮定食。昔基地のPXで食べたものには惜しくも届かないがそれでもIS学園学食のおばちゃんもいい腕だと認めざるをえまい。

そして、知らぬ間に女子の料理談義に花が咲いていき、俺たちにも話が回ってくる。

「冬夜は、どんなお菓子が好きなの?」

「俺は、和菓子全般だな。特に京都の和菓子はいい」

「京都の和菓子かぁ。冬夜兄ぃは渋いなぁ」

「そんなことより問題はお前のISだ」

「はぁ……。そうなんだよなぁ、なんでパワーアップしたのに負けるんだ……」

「単純に燃費の悪さだろ。ただでさえシールドエネルギーを削る武器なのにそれが二つに増えたんだからなおさらだ」

「うーん……」

 

まあ、それ以外にも背部ウイングスラスターの大型化など、問題点は山積みだが。

「ま、まあ、アレだな! そんな問題も私と組めば解決だな!」

 

確かに箒ちゃんの紅椿は、同時運用を前提に設計されただけあって相性抜群だな。『絢爛舞踏』を使いこなせれば。

「何を難しそうな顔をしているか。お前は私の嫁だろう。故に私と組め」

 

あ〜あ、また始まったよ。一夏LOVER'sは放っておいて唯依ちゃんに伝えるべきことを伝えるかな。

「唯依ちゃん、専用機が完成したから今日の放課後は開けといてね?」

「はい、わかりました」

 

さて、例のアレも用意しとかないとな。放課後が楽しみだぜ、グフフ。

 

 

 

 

「……遅刻の言い訳は以上か?」

 

午後の授業、(弟くん)(ちーちゃん)に睨まれていた。

「いや、あの……あのですね? だから、見知らぬ女生徒が──」

「では、その女子の名前を言ってみろ」

「だ、だから! 初対面ですってば!」

「ほう。お前は初対面の女子との会話を優先して、授業に遅れたのか」

「ち、違っ──」

 

弟くん、死んだな。

「デュノア、ラピッド・スイッチの実演をしろ。的はそこの馬鹿者で構わん」

 

アーメン。

「それじゃあ織斑先生、実演をはじめます」

「おう」

「あ、あの、シャル……ロット、さん?」

「なにかな、織斑くん?」

 

頭に血管マークまで浮かんであれば完全に怒ってるな。

「はじめるよ、リヴァイヴ」

「ま、待っ──」

バラララララッ!!

弟くんの言葉は銃声にかき消されていった。

 

 

 

 

 

放課後。

「良いよっ! その恥ずかしそうな顔もっとちょうだい!」

「と、撮らないで下さい!」

 

パシャパシャパシャ。

貸し切ったアリーナにはシャッター音が響いていた。

「唯依ちゃんと訓練用強化装備の組み合わせがこれほどとはっ!」

 

唯依ちゃんのperfect bodyとピチピチすけすけの強化装備とかまじヤバいっす!

「今日は専用機の訓練じゃなくて撮影会に変更しようよ」

「も、もう! そんなこと言うなら普通のISスーツに着替えますからね!」

「っ!? それはダメ!」

「なら、真面目にやってください!」

 

くっ……仕方あるまい。ここは俺のISに搭載している超高画質カメラでの撮影だけにしておくか。

「……わかったよ。それじゃあ、これが唯依ちゃんの専用機である──『瑞鶴』だよ!」

 

ちーちゃんに頼んで貸切にしてもらったアリーナに運んでおいたコンテナを開くとその中に綺麗な山吹色をした重装甲の機体が正座していた。

「これが私の……」

「厳密には(仮)なんだけどね」

「仮ってどういうことですか?」

「本当の唯依ちゃんの専用機は俺の持ってる戦術機の中でも最強の格闘戦機である『武御雷』なんだけど、そいつはピーキー過ぎるし戦術機に慣れてない唯依ちゃんには危ないからまずはこの『瑞鶴』で戦術機に慣れてもらいます」

 

武御雷は俺でさえも使いこなすのにはかなりかかった程のじゃじゃ馬だしな。いきなり唯依ちゃんが使ったら危ないし。

「まずは機体を装着してみようか。全身装甲だけど普通のISと装着自体は変わりないよ」

「はい」

 

さて、唯依ちゃんが装着しているうちにデータを取る準備をしておくかな。一応、唯依ちゃんのデータは入力済みだけどデータと実際の動きで誤差が出るしね。

「出来ましたけど、全身装甲というのはやっぱり違和感がありますね」

「そう? なら、五割展開くらいにしてみると良いよ。それなら通常のISと変わりない装甲量だから」

「えーと、あっ。これですね」

 

機体が一瞬光ると、瑞鶴の装甲が半分程度に減る。

「確かにこれなら今までのISと同じ感じですね」

「それじゃあ、軽く飛んでみようか。腰についてる跳躍ユニットで飛べるから」

「は、はい」

 

………………

…………

……

そんな感じでしばらく機体制動の訓練をした後、格闘戦時のデータ取得のために唯依ちゃんと打ち合うことになった。

「えーと、本当にいいの? 俺が武御雷使っても」

「はい。自分が乗る機体がどれほどのものなのか直に体験しておきたいんです」

 

うーん……瑞鶴と武御雷じゃ差がありすぎる気がするんだけどなぁ。C型かF型で迷うけど唯依ちゃんの望み通りにF型でいくか。

「それじゃ、かかっておいで」

「はい。遠慮なく行かせてもらいますっ!」

 

ガギィンッ!!

二本の長刀がぶつかり、金属音が響く。

「なかなかやるね。でも!」

 

唯依ちゃんの長刀を受け流し、滑らせるように左へと斬り払う。

「くっ……」

 

唯依ちゃんは、なんとか躱そうするけど装甲重視の瑞鶴では、機動力の高い武御雷の攻撃を躱しきることは出来ず、切っ先が掠る。

「(それでも、掠る程度にとどめるとはね。やっぱり唯依ちゃんの格闘センスには目を見張るものがあるな)」

「今度はこちらからいきます。はぁっ!」

 

跳躍ユニットで加速することによって重みを増した一太刀か……。

「でも、動きが遅い!」

 

唯依ちゃんの一撃を体を半回転させて躱し、喉元に長刀を添える。

「ま、参りました」

「いや、びっくりしたよ。初めて戦術機を操縦して、ここまで武御雷と戦えるなんて」

「お世辞はいいですよ。冬夜が全力ではなかったのはわかりましたし、全然相手になってませんでしたね。それに機体の方も今の私では扱いきれないことが身にしみました」

 

確かに、機体性能的にはそうかもしれないけれど、操縦者の技能的にはそこまで差はないと思うよ?

「それでも、弟くんよりかは全然強いよ。さて、これからは瑞鶴を使いこなせるようになったら機体データを『武御雷』にアップデートするので慣熟訓練に励んでください」

「はいっ!」

 

さてと、それじゃあ今から俺は今日の唯依ちゃんの写真を整理していきますかね。これで、また俺の『唯依ちゃん秘蔵写真集』が潤うぞ〜。

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