今回は唯依姫から冬夜へと想いを告げる話となります。いつもとは違う感じですが楽しんで頂ければ幸いです。
会議から一週間ほど経ちその日はやって来た。
二月一五日。
そう、バレンタインだ。この日のために入念に準備をして、チョコも納得のいくものを用意した唯依は冬夜をある場所へと呼び出していた。
「(今年は、冬夜と再会できた年であり沢山の出来事があった年だからこそ、私にとっても冬夜にとっても特別なものに……)」
唯依はその胸に冬夜への想いとチョコを抱きながら冬夜を待つ。
二月だというの鮮やかな山吹色の花が咲き誇り、彩られている公園。
この公園こそが冬夜が篁家に来る以前、まだ◯◯冬夜だった頃に唯依と出会い初めて言葉を交わした、白崎冬夜という人間と篁唯依という人間の道が交差した場所だ。
「(確か、最初の言葉は……)」
何年時間が経とうが老いて死んでしまおうがあの瞬間を忘れることなどないと絶対の自信を持っている。
「お待たせ、唯依ちゃん」
伝えた時間よりも少し早くに来てくれた冬夜は、いつもと同じく今こそが最高に幸せな瞬間なんだという顔をしている。
唯依もそんな冬夜の顔を見て、より一層胸の中の冬夜への想いが強まる。
「冬夜。この場所を覚えていますか?」
「勿論。唯依ちゃんと初めて出会った場所を俺が忘れるわけないだろ? この場所であったことは、死んだとしても忘れないよ」
冬夜もあの瞬間のことを大事に思っていると確認できた唯依は冬夜へと歩み寄る。
「今年は沢山のことがありましたね。まずは、冬夜に再会できました」
「そして、色んな出来事に巻き込まれた年かな」
冬夜の息遣いがわかる距離まで近づいた唯依は、高まっていく心拍と赤く染まった頬に恥ずかしさを感じながら、自身の気持ちを精一杯込めたチョコを渡す。
「あの時、この場所から私と冬夜の関係は始まりました。だから、関係を変えるのもこの場所だと私は思っています。もう私は冬夜に守ってもらうだけの子供ではないつもりです。これからは私と冬夜、同じ立場として扱って下さい。そうじゃないと私は冬夜の、そ、その……」
本当に伝えるべき言葉というのは重いもので、相手をどんなに想っていようがすんなりとは口から出ない。
それは、唯依も同じで『恋人と胸を張って名乗れじゃないですか』という言葉が出てこない。
そんな唯依を冬夜は優しく包み込む。
「焦らなくていいよ。俺はずっと待ってるから」
いつもこうだ。白崎冬夜は篁唯依の決断を優しさと愛情でもって鈍らせる。
だからこそ、唯依はあえて冬夜の抱擁を解く。
「ま、待ってください。私はまだあなたの抱擁を受けることができません」
深呼吸をして、鈍った決断を改めて唯依は冬夜へと想いを今度こそ告げる。
「私、篁唯依は白崎冬夜を愛しています。あの日あの時から私はあなたのことを思い続けています。これはそんな気持ちを少しでも表せればと思い作りました。受けってください」
思い告げるのと同時にチョコを手渡した唯依は、冬夜の頬へと口づけをした。