顔を真っ赤にしている山田先生は放置して、そろそろ部屋に行きますか
「えーと、0313は……。ここだな」
部屋番号を確認してドアに鍵を差し込む。うん?開いてるな。
ガチャっと部屋に入るとまず、目に入ったのは大きなベッドではなく人の裸体。
「へ?」
「え?」
美しく均整のとれた肢体に、脱ぎかけの制服というあられもない姿の唯依ちゃんがいた。
「っ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴と同時に部屋を飛び出す。や、やばい。何がやばいって唯依ちゃんのあんな姿を見ちゃったことがだ!
「ぅ……」
鼻血がぼたぼたと垂れてくる。くっ、止まってくれ!
「……なになに?」
「あっ、白崎くんだ」
「えー、あそこって白崎くんの部屋なんだ!いい情報ゲット〜!」
まずい、ひじょうにまずい。さっきの唯依ちゃんに加えてこのラフな格好の女子勢はまずい!
「ゆ、唯依ちゃん!謝るから、謝るからとりあえず部屋に入れて!」
しーん……。
しばらく沈黙が続き、扉が開く。あっ、鼻血止まったな。
「……入ってください」
「あ、ありがとう」
トーンが低い……これは、怒ってるな。
「こ、今回は鍵を閉めなかった私にも非はあります。ただし次回からはノックをしてください」
「それは、分かったけど同じ部屋なのはいいの?」
そう、問題はこれだ。高校生の男女が同居というのは色々まずい。
「それは、私から申し出ましたので問題はありません」
「へぇ〜、そうなんだ」
うん?私から申し出た?つまり、唯依ちゃんが俺と同居を望んだ?それってつまり!
「唯依ちゃんにイタズラし放題!?」
「……嫌いになりますよ?」
「すみません、調子に乗りました」
「そ、その、そういうことは……もう少し……ごにょごょ」
最後の方がよく聞き取れなかったけど気にしない方がいいかな?嫌われたら悲しいし。
「とりあえず、線引きをしようか。さすがにそれは必要だろうし」
「そうですね」
翌朝5:00に起きる。日課のランニングをする為だ。男なら体は鍛えておいた方がいいし、なにより唯依ちゃんも貧弱は嫌いって昔に言ってたからな。
「じゃ、行ってくる」
まだ、寝息を立てている唯依ちゃんの寝顔を惜しみながら部屋を出る。
IS学園は敷地が広いのがいいよな。それに景色もいい。走っていて困ることは疲労よりも景色に飽きることだ。その点、この学園はそれがないから助かる。
そして、ランニングを終えた俺はシャワーを浴びて制服に着替えて唯依ちゃんと食堂で朝食を食べている。やっぱり、朝は和食だな。
「美味しいね、唯依ちゃん」
「はい」
「でも、やっぱり 和食を食べてると栴納さんや唯依ちゃんの料理と比べちゃうよ。最近、食べてないもんなぁ、肉じゃが」
「そ、そんなに、食べたいなら今夜──」
「あっ、白崎くんだ。隣いいかな?」
「うん?」
見ると、朝食のトレーを持った女子が三名、俺の反応を待っていた。
「ああ、いいよ。みんなで食べた方が美味しいね。ねっ、唯依ちゃん?」
「ふんっ!」
あれ?不機嫌になってる?そういえば、さっき何かを言いかけてたような……。
「いつまで食べている!食事は迅速に効率よく取れ!遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」
ちーちゃん、この学園のグラウンド一周何キロか知ってて言ってるの?五キロだよ、五キロ。っと、俺も早く食べなくては。
「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して……」
今日も分かりきったことを授業で習う。うーん、今更聞いてもな感じなんだけどな……。まあ、弟くんはグロッキーだけど。すると、山田先生の説明に対して女子が体の中をいじられてるみたいで怖いと質問する。
「そんなに難しく考えることはありませんよ。そうですね、例えばみなさんはブラジャーしていますよね。あれは、サポートこそすれ、それで人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと形崩れしてしまいますが──」
……ふと、俺と弟くんに目が合う。すると山田先生はボッと赤くなった。
「え、えっと、いや、その、織斑君たちはしていませんよね。わ、わからないですよね、この例え。あは、ははは……」
ふむ。わからないが興味はある。特に唯依ちゃんのブラには。そういえば昨日見たのは白だったな。
「ぐふふふ」
ドゴッ!と頭に拳が落ちてくる。かなり、痛い。
「ち……織斑先生、痛いです」
「授業中に気持ち悪い笑いをこぼすからだ」
しまった。無意識に漏れてか……。
キーンコーンカーンコーン。
「あっ。えっと、次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」
この学園では実技、特別科目以外は基本担任が授業を持つ。休み時間十五分のたびにいちいち、職員室まで戻る先生たちは、なんというかご苦労様だ。
「ねえねえ、白崎くんさあ!」
「はいはーい、質問しつもーん!」
「今日のお昼はヒマ?」
昨日とは違い、女子が詰め掛けてくる。
「えーと──」
「…………」
遠くで唯依ちゃんが見ているがどことなく不機嫌そうだ。
(昼にでも聞いてみるかな)
そう思いながら女子の質問に答えていくとお馴染みのパアンッ!という音が聞こえる。
「休み時間は終わりだ。散れ」
どうやら、ちーちゃんの個人情報をバラそうとした弟くんが叩かれたようだ。
「ところで織斑、お前のISだが準備に時間がかかる」
「へ?」
「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
へぇー、弟くんに専用機か。大方、データ収集目的だろう。
「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」
「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」
「ああ〜。いいなぁ……。私も早く専用機が欲しいなぁ」
女子が騒ぐ意味がわからないと言った顔をしてるな。
「教科書六ページ。音読しろ」
「え、えーと……『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にある※1IS約467機、その全ては篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士並びに白崎博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし、博士らはコアを一定数以上作ることを拒絶しており……※1これは篠ノ之博士が開発した数であり、白崎博士が開発したコアについては不明の為正確な数はわかっていない。』……」
「つまりそういうことだ。本来ならIS専用機は国家あるいは企業に属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的に専用機が用意されることになった。理解できたか?」
「な、なんとなく……」
そうか、コア作ったこと報告してなかったな。
「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?それに白崎博士って……」
あれ?自己紹介で言わなかったけ?
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ。それに白崎博士というのはそこにいる白崎のことだ」
「ええええーっ!す、すごい!このクラス有名人の身内がふたりに、しかもコア開発者まで!」
もしかして、信じてなかったの?ちょっとショックだよ。
「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才なの!?」
「篠ノ之さんも天才だったりする!?今度IS操縦教えてよっ」
「白崎くんって、本当にISコア作れるの!?」
「白崎くん、私の専用機作ってよ!」
授業中だというのに、女子がわらわらと集まる。おい、弟くん。何を面白い光景みたいに見てる。
「今は作る気はな──」
「あの人は関係ない!」
突然の大声。見ると箒ちゃんみたいだ。
「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」
そう言って、窓の外に顔を向ける。やっぱり、上手くはいってないのか。
「さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令」
「は、はいっ!」
山田先生も箒ちゃんが気になる様子だったが、そこはやはりプロの教師。ちゃんと授業を始める。