唯依ちゃん好きのIS学園記   作:ニーベルングの指輪

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試合開始

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

 

休み時間、早速俺たちの所に来たオルコットさんは、腰に手を当ててそう言った。やっぱり貴族だね。そのポーズ、様になってるよ。

「そ、それで、白崎さん……」

「なに?」

「わたくしは嫌われても構いません。ですが、どうか祖国のことは……」

 

ああ、やっぱりそうなるか。俺がコアを作れるとわかると決まって、みんな下手に出る。

「オルコットさんのこともイギリスのことも嫌ってなんかないよ。ただ、正々堂々と勝負がしたいだけだよ」

「そ、そうですか。ありがとうございますわ。まあ、織斑さんとの勝負は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね」

「? なんで?」

「このわたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの」

「へー」

「……馬鹿にしていますの?」

「いや、すげーなと思っただけだけだど。どうすげーのかはわからないが」

 

弟くん、それを世間では馬鹿にしてると言うと思うよ?

「それを一般的に馬鹿にしてると言うでしょう!?」

 

ババン!両手で机を叩く。ほら、オルコットさんも同じこと言ってるし。

「……こほん。さっき授業でも言っていたでしょう。世界でISは約467機。つまり、その中でも専用機を持つものは全人類六十億超の中でもエリート中のエリートなのですわ」

「そうなのか」

「そうですわ」

「人類って六十億超えてたのか……」

「因みに正しくは七十億超えらしい」

「そこは重要ではないでしょう!?」

 

ババン!オルコットさん、机を何回も叩くのは淑女的にダメなんじゃ……。

「あなた!本当に馬鹿にしてますの!?」

「いやそんなことはない」

 

すげー棒読みだな、おい。

「だったらなぜ棒読みなのかしら……?」

 

ほら、オルコットが血管が浮きそうになってるじゃないか。

「ま、まあ。どちらにしてもこのクラスで代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであるということをお忘れなく。では、白崎さん」

 

あの、貴族がドレスを着た時にやるスカートの端を持ってするお辞儀をされる。うーん、さすがはオルコットさん。モデルみたいだった。

「唯依ちゃん」

「なんですか?」

「お昼、唯依ちゃんと食べたいから一緒に行かない?」

「し、仕方ないですね。少し、待っててください」

「了解だよ」

 

少し、頬を赤く染めながら返事してくれる。うん、可愛い。

そして、唯依ちゃんと一緒に食堂へ行き、日替わり定食を受け取る。

「それで、どうなんですか?」

 

焼き鯖をほぐしていると唯依ちゃんから質問がくる。

「なにが?」

「来週の勝負です。あれだけ啖呵を切ったのだから勝てるんですよね?」

 

ああ、そのことか。オルコットさんには悪いけど、どうやったら勝負になるかに本気で悩んでる。

「多分、問題ないよ」

「そうですか」

 

そこで会話が終わり黙々と食べる。元々、唯依ちゃんの家では静かに食べるのが普通だったので苦にはならない。

「ねえ。君が噂のコでしょ?」

 

いきなり、隣から女子に話しかけられる。リボンの色からして三年生みたいだな。爽やかな印象の短い金髪。スポーツ少女特有の魅力が漂っている。

「おそらく」

 

返事をすると、先輩は実に自然な動きで隣に席かける。そして、ふくよかな胸を強調するよな感じで胸の下で腕を組む。

「ISコアを作れるって、ほんと?」

「ええ、まあ……」

 

なるほど、いつものやつか……。

「私にISについて教えてくれない?勿論、ふ・た・り・き・り・で」

 

言いながらずずいお身を寄せてくる先輩。可愛いとは思うけどさ、こういう露骨な色仕掛けって萎えるよ。って、唯依ちゃんがかなり不機嫌になってる!?

「あの──」

「先輩、あなたはすごく魅力的かもしれませんが、僕はあんまりそういうのは好きじゃないです。やめてもらえます?」

「っ!?そ、そう。ごめんね」

 

先輩はバツが悪そうに離れていく。

「ふぅ、困るよね。ああいうの」

「……随分と顔がにやけていましたけど?」

「そ、そう?」

「そう見えました。ふんっ!」

 

あらら、怒らせちゃった。結局、聞きたかったことも聞けなかったし……。

 

 

 

「はあはあ……」

「ふぅ……」

 

時は放課後、場所は第二剣道場。ギャラリーはなく、その場には床に倒れこむ俺とちーちゃん。

「安心した。腕は鈍ってないようだな」

「そう?」

 

手合わせを初めて三十分。お互いの竹刀が折れたのをきっかけに手合わせを終える。

「まったく、授業が終わってすぐに話があるというから来てみれば」

「はは、ごめんね。オルコットさんと戦うのに鈍ってると失礼じゃん?ISって、どうしても体の延長だから生身の性能に左右されるし」

「それは、そうだな。しかし、お前の示現流は相変わらずの威力だな。私の手が痺れるなんてそうそうないことだぞ?」

「はは、ちーちゃんの篠ノ之流剣術も凄いよ」

 

お互いの剣術を褒め合いながら、息を整えていく。

(まあ、この調子なら大丈夫だろ)

 

 

 

そして、迎える月曜。オルコットさんとの対決の日。戦順は弟くんのISが届いていないのでオルコットさんvs俺、オルコットさんvs弟くん、俺vs弟くんの順番になった。強化装備に着替えた俺は唯依ちゃんに言うべきことを伝える。

「ねえ、唯依ちゃん」

「なんですか?」

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」

「っ!?だ、誰とですか!?」

 

えっ?まさか、唯依ちゃんって死亡フラグ知らない人?あっ、でもネットとかしないから知らないか。って、ことは……やっちまったぁぁぁぁ!!

「誰なんですか!私はそんなこと、聞いて……ませんよぅ……うぅ……」

「あ、あのね、唯依ちゃん。今のは死亡フラグって言ってね。出撃前にこういうこと言うと死ぬって言うジンクスがネタになったいわゆるお約束ってやつで!」

「私から、説明しておいてやるから早くしろ馬鹿者」

 

パアンッ!いつもよりも、痛い。

「わ、わかりましたよ。……『戦術歩行戦闘機(TSF)』起動。『F-4 ファントム』五割展開」

 

量子変換されていた装甲が俺の体に合わせて出現する。まあ、『F-4 ファントム』の五割展開がちょうど良いだろ。

「随分と懐かしい機体だな」

「他のは強すぎますからね」

「さっさと、行ってこい」

「はいはい」

 

ピット・ゲートに進む。跳躍ユニットを起動して飛び。

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

オルコットさんがふふんと鼻を鳴らす。また腰に手を当ててる。気に入ってるの?そのポーズ。そして、ハイパーセンサーからオルコットさんのIS、『ブルー・ティアーズ(蒼い雫)』の情報が送られてくる。情報通り、やはり特徴的なのは背部のフィン・アーマーだ。確か、ビット兵器だったな。

「一つ、良いかしら?」

「なに?」

「あなたのそのISスーツはなんですの?」

 

やっぱり、このスーツ(強化装備)は気になるよね。

「僕の機体に合わせた特別製。色々機能が付いてなんと、お値段……幾らだろ?」

「知りませんわ!……最後のチャンスを差し上げます」

「チャンス?」

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、開発者として惨めな姿を晒したくなければここで申して出てください」

 

──警戒、敵IS操縦者が射撃モードに移行。セーフティの解除を確認。

「そんなに、やる気満々でなにを言ってるんだか」

「そう?残念ですわ。それなら──」

『あのー、すいません。少し良いですか?』

 

突然の通信にお互い、ずっこけかける。

「なんですか、山田先生」

『篁さんが一言、言いたいそうなので』

 

おっ!もしかして応援!?

『冬夜、先ほどの言葉の意味を説明していただきました』

「良かった。誤解は解けたんだね」

『ええ、ですから自身で建てたフラグですのできっちりと回収してください。オルコットさん、そこの女の気持ちを弄ぶ最低男を倒してください』

 

えーと、誤解は解けたんだよね?でも、悪化してるよね?なんでさ……。

「ええ、勿論。わたくしが勝ちますわ。それでは、気を取り直して!」

 

──警告!敵IS射撃体制に移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填。

 

「お別れですわ!」

「そっちがね」

「きゃあっ!?」

 

オルコットさんの主兵装である六七口径特殊レーザーライフル《スターライトmkⅢ》を発射される前に《WS-16 突撃砲》の三六ミリ弾を撃ち込み、破壊する。

「くっ!踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

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