「あ、あり得ませんわ。わたくしとブルー・ティアーズがここまで圧倒されるなんて」
戦闘開始四分。既に、ビットは俺の直接射撃と可動兵装担架からの射撃で六基すべてが破壊されている。
「どうする?続けるのなら良いし、辞めるのならそれでも良いよ?」
これ以上やっても無駄だし。何より、唯依ちゃんに謝らないとまずい。
「まだ、武器はありましてよ。《インターセプター》!」
へぇ、射撃一辺倒の機体だと思ったらちゃんと近接武器もあるんだ。でも、明らかに慣れていない。そんなのを実践で使うのは命取りだよ。
「自ら銃を捨てた!?」
突撃砲を捨て、《CIWS-1A 近接戦闘短刀》を装備する。
「終わりだよ」
オルコットさんのショートブレードを弾き、トドメをさす。
『試合終了。勝者──白崎 冬夜』
「ふう、オルコットさん。お疲れ様。なかなか、いい勝負だったよ。いや〜、これでまだ成長段階とは末恐ろしいよ」
「負けたわたくしを馬鹿にしに来たんですの?」
「そんなことはしないさ。俺も弟くんも。君は少し、弟くんから学ぶといいよ」
それだけ言い残して唯依ちゃんの待つピットへ向かう。俺、カッコ良かったぜ☆
そして、今は弟くんとオルコットさん戦い中だが、俺はそんなことより唯依ちゃんの機嫌を直さなければ!
「唯依ちゃん!」
「なんですか、最低男さん」
グハッ!冬夜は一万の精神的ダメージを受けた。くっ、リレイズだ!
リレイズ無効の攻撃ですので不可能です。
ならゾンビでも……って!そんな場合じゃないよ!
「えと、怒ってるよね?」
「怒っていません。最低男さんに怒るなんてバカバカしいじゃないですか」
それ、めっちゃ怒ってますよね!?
「唯依ちゃん、許して!なんでもしますから!」
「……今なんと?」
「えと、だから許してと」
「その後です」
「なんでもしますから?」
「本当ですか?」
もしかして許してくれるの!?
「うん、なんでもするよ!」
「で、では、次の休みにデ……お出かけしてくれたら許します」
「それは、デートと言うのでは?」
「ち、違います!お出かけかけです。そうです、お出かけです。冬夜みたいな最低男とデートする女の子なんているはずないです」
ふふ、照れてる唯依ちゃん。
「じゃあ、今度の日曜日にね」
「お、遅れないでくださいね」
「うん!」
ふふ、唯依ちゃんとデート。楽しみだなぁ。
そして、オルコットさんvs弟くんの試合は弟くんの自滅で終了した。はは、『俺も、俺の家族を守る。とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!(キリッ』だって。m9(^Д^)プギャーwww
「冬夜兄ぃ、せめて心の中だけにしてくれ……」
「あっ。心の声、漏れてた?ごめんごめん。あまりにあれだったから」
うなだれている弟くんの頭にパアンッ!とお馴染みの音が響く。仕方ないな、ちーちゃんの名前を守るどころか辱めたんだから。ん?漢字間違い?大丈夫、これで合ってる。
「さっさと準備しろ、馬鹿者共」
あれ?俺も含まれてるの?
「じゃあ、弟くん、お先に。『77式戦術歩行戦闘機 撃震』五割展開」
『F-4 ファントム』の格闘戦仕様である撃震を展開する。え?名前の由来?震電の震と攻撃の撃を雅に組み合わせた造語だよ。カッコいいだろ?
「来い、白式」
弟くんも展開し終わる。そして、お互いに──弟くんはちーちゃんの《雪片》の後継型である《雪片弍型》、俺は《74式近接戦闘長刀》を──構える。
「さっきと名前が変わってないか?」
「違う機体だもの。そりゃ、違うさ」
「へ?それって──」
「そんなことより、弟くん。わざわざ、君に合わせて剣で勝負しようと言うんだ。最善を尽くしなよ」
「言われなくてもわかってるぜ!」
勢いよく突っ込んでくると同時に剣を振るってくるがまだまだ甘い。
(何か、考えてるな……)
「そんな攻撃は躱してください、反撃してくださいと言ってるようなもんだよ?」
弟くんの剣を受け流しそのまま回転蹴りを加えて吹き飛ばす。
「なっ!?」
「はぁ、弟くんは小細工を労せるほど器用じゃないだろ?苦手なことをするなんて、弟くんは俺との実力差がわかってるのかい?」
「それじゃあ、どうしろって言うんだよ」
「簡単さ。圧倒的な実力差のある相手に小細工を労するのは無駄なことだよ。なら、一撃に全力をかければいい。そもそも、君は俺に初撃を当て得ることからなんだから」
少し考えるような顔をした後、何かを決心した顔に代わる。ふふ、いい顔だね。
「それじゃあ行くぞ、冬夜兄ぃ!」
「来い!」
雪片の刀身が光を帯びる。あれがちーちゃんの奥の手、零落白夜か。ふっ、面白い!こちらも示現流の構えである『蜻蛉の構え』をとる。
「おおおおっ!」
「はあぁぁぁ!」
ガギィンッ!!
雪片弍型と長刀がぶつかり火花を散らす。今のはなかなか良かったよ、弟くん。でも!
「まだ、甘い!」
長刀に力を込めて押し、弟くんをアリーナの壁まで吹き飛ばす。
「ガッ!」
そして、その瞬間ビーッとブザーが鳴り響く。
『試合終了。操縦者気絶の為、勝者──白崎 冬夜』
「よくもまあ、持ち上げてくれたものだ。それでこの結果か、大馬鹿者」
試合がすべて終わり、弟くんは馬鹿者から大馬鹿者になっていた。すごく不名誉なランクアップだね。ダウンじゃないのがちーちゃんらしい。
「武器の特性を考えずに使うからああなるのだ。身をもってわかっただろう。明日からは訓練に励め。暇があれはまたISを起動しろ。いいな」
「……はい」
素直に頷く弟くん。まあ、頷くしかないよな。しかし、今思い出しても……ププッ。
「えっと、ISは今待機状態になってますけど、織斑くんが呼び出せばすぐに展開できます。ただし、規則があるのでちゃんと読んでおいてくださいね。はい、これ」
そう言えばあったな。IS起動におけるルールブックという名の電話帳。
「何にしても今日はこれでおしまいだ。帰って休め」
敬う気持ちのない命令だった。
「冬夜、帰りましょう」
唯依ちゃんの優しさが身に沁みます。ちーちゃんにも見習ってもらいたい。
「うん」
唯依ちゃんと肩を並べて寮へと帰る。こうして肩を並べて歩くっていいよね、夫婦みたいで。
「格好よかったです」
「え?」
今、唯依ちゃんの口からすごく嬉しい言葉が飛び出した気がする。実際は聞こえたんだけど、もう一回聞くためにわざと聞こえなかったふりをする。
「だから、今日の試合のことですよ。格好よかったです」
唯依ちゃんに褒められた!これだけで、我々は十年はやれる!何がかはわからないけど。
「そ、そう?ありがとう」
「勝利を祝して今日は肉じゃがにしたいと思います」
「マジで?」
「はい、嫌で──」
「イヤッッホォォォオオォオウ!」
唯依ちゃんの肉じゃが♩唯依ちゃんの肉じゃが♩
「そうですか、そんなに嬉しいですか」
「うん!」
鼻歌交じりにご機嫌な唯依ちゃんと部屋へと戻っていく。