「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」
「おめでと〜!」
ぱん、ぱんぱーん。クラッカーが乱射され重い顔をした弟くんの頭に紙テープが乗る。
ちなみに今は夕食後の自由時間。場所は寮の食堂、一組のメンバーは全員揃っていた。各自飲み物を手にやいのやいのと盛り上がっている。
「唯依ちゃん、楽しいね」
「ええ、みなでこうして楽しむのはとても良いと思います」
それにしてもみんな、さすがは花の高校生。すごく楽しそうだ。まあ、約一名ほどあそこで憂鬱な顔をしてるけど。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」
「ほんとほんと」
「ラッキーだよねー。同じクラスになれて」
「ほんとほんと」
弟くんは本当に人気者だな。二組の女子までいるじゃないか。
「はいはーい、新聞部でーす。話題の男子新入生達に特別インタビューをしに来ました〜!」
オーと一同盛り上がる。インタビューかぁ、なんて答えよう。
「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」
なんとも画数の多い名前だ。えーと、一、二……。おお、三十五画もある。
「ではではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」
無邪気な子供のように瞳を輝かせて弟くんにボイスレコーダーを向ける。
「えーと……」
悩んでるね。大方、期待を裏切るわけにもいかないとかその辺かな?
「まあ、なんというか、がんばります」
「えー。もっといいコメントちょうだいよ〜。俺に触れるとヤケドするぜ、とか!」
なんで、黛先輩はそんな古いの知ってるんだ?
「自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的!」
弟くん、引くわー。イケメンなの含めて引くわー。
「じゃあまあ、適当にねつ造しておくからいいとして」
ぜひ、めちゃめちゃくさい台詞にしてやってください。
「ああ、セシリアちゃんもコメントちょうだい」
「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」
とか言いつつも満更でもない感じだね。すぐ近くに控えてたし。髪のセットが気合い入ってるのは写真対策?
「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり──」
「ああ、長そうだからいいや。写真だけちょうだい」
「さ、最後まで聞きなさい!」
「いいよ、適当にねつ造しておくから。よし、織斑君に惚れたからってことにしよう」
「なっ、な、ななっ……!?」
ありゃりゃ、見破られちゃったね。
「何を馬鹿なことを」
「え、そうかなー?」
「そ、そうですわ!何をもって馬鹿としているのかしら!?」
……ほんと、その鈍感ぶりはどうかと思う。
「だ、大体あなたは──」
「はいはい、それじゃ最後はISのコアを作れる知能に代表候補生を圧倒する実力を持つ謎の男、白崎君!」
謎の男……。なんか、かっこいい。
「それほどの実力を持ちながらなぜ、辞退したんですか?そこら辺を詳しく教えて」
「やるべきことがあったからです」
「その、やるべきこととは?」
隣にいた唯依ちゃんをぐいっと引き寄せて宣言する。
「な、何をっ──」
「唯依ちゃんと一緒にいたいからです。クラス代表になってしまうと何かと忙しくて、唯依ちゃんとの時間が減ってしまうので」
唯依ちゃんの顔がボンッと一気に赤くなる。
「ということは白崎君はこの唯依ちゃんって子が好きってことかな?」
「好きじゃありません。大好きなんです!」
「と、冬夜っ!?」
「おお!さすがは男の子!唯依ちゃんは、この告白について何かありますか?」
「っ………わ、私も……冬夜のことは……べ、別に嫌いでは……ないです」
真っ赤になって俺の裾を掴んで俯きながら答える唯依ちゃん、超可愛い。
「この際ですから、素直に告白してみれば如何です?」
「えっ!あ、あの……」
「さあさあ!」
「わ、私も、冬夜のこと好……やっぱり、無理です!は、恥ずかしすぎます!」
「おお、どうやら相思相愛に模様。うん、リア充爆発しろ!」
はは、お断りします。
「それじゃ、最後に写真撮るからね。注目の専用機持ちのスペシャルショット!あっ。セシリアちゃん、織斑君と握手してもらえるといいかも」
「そ、そうですか……。そう、ですわね」
オルコットさんにチャンス到来。頑張れ!
「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃもちろん」
「でしたら今すぐ着替えて──」
「時間かかるからダメ。はい、さっさと並ぶ」
黛先輩が二人の手を引いて、そのまま握手まで持って行く。少し強引だけど、それくらいでいいと思う。
「…………」
「? なんだよ?」
「べ、別に、何でもありませんわ」
「…………」
「……なんだよ、箒」
「何でもない」
「それじゃあ撮るよー。35×51÷21は〜?」
「え?えっと……2?」
「違う。74・375だ」
「おっ、白崎くん正解ー」
パシャッとシャッターが切られる。……って。全員写真に入ってるし。因みに唯依ちゃんはこっそり俺の隣に来てた。
「唯依ちゃん」
「な、何ですか?」
「ツーショット、頼む?」
「あっ!い、いえ、別にそんなつもりは──」
「ふふ」
結局、この『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は十時過ぎまで続いた。ちなみに、あとでこっそり唯依ちゃんとのツーショットを撮ってもらったのは内緒だ。唯依ちゃんがすごく嬉しそうだったのはもっと内緒だ。そして、今は部屋へと帰りベッドで寝転がっている。
「今日は楽しかったね」
「ええ、とても楽しかったです」
「写真も撮ってもらえたしね」
「あ、あれは別にそんなんじゃ──」
「 そう?俺は嬉しかったよ?唯依ちゃんとのツーショット」
「……冬夜はズルいです。私ばっかり恥ずかしい思いを」
「俺も結構恥ずかしいんだよ?でも、唯依ちゃんのこと大好きだから」
「ふ、ふん!もう寝ます!」
「うん、おやすみ」
あけて翌朝。教室は転校生の話題で持ちきりだった。
「白崎くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」
「中国の代表候補生だっけ?」
「そう、でもこの時期にってちょっと変じゃない?」
「そうかな?」
ふむ、謎の女転校生か……。私、気になります。
「朝から不潔です」
「なんでさ!」
「どうせ、冬夜のことです。容姿が良いかどうかなどを気にしていたんでしょう?」
た、確かに少しは気にしたけどさ!
「不潔はないよー。昨日の唯依ちゃんはすっごい可愛かったのに〜。今日はツンデレ?」
「誰がですか!んん、昨夜は少しはしゃぎ過ぎたので反省中です」
「ええ〜」
「何か?」
「なんにも〜」
「なら、いいです」
「──その情報、古いよ」
唯依ちゃんとの会話を楽しんでいると教室の入り口から聞き慣れない声が聞こえる。おっ?噂をすればなんとやら。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれている。ポーズを決めるのが流行ってるの?
「鈴……?お前、鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
口ぶりからして弟くんの知り合いかな?てか、弟くんの周りって俺ほどじゃないにしろ、女の子のレベル高過ぎじゃね?
「何格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」
「んなっ……!?なんてこと言うのよ、アンタは!」
どうやら、さっきまでのはキャラ作りしてたみたい。あっ、ちーちゃんだ。早くどかないと……。
「おい」
「なによ!?」
バシンッ!言わんこっちゃない。本日も出席簿打撃は強烈みたいだな。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」
「す、すみません……」
さっきまでの威勢は何処へやら。100%ビビり切っちゃってるよ。
「またあとで来るからね!逃げないでよ、一夏!」
「さっさと戻れ」
「は、はいっ!」
そう言い残して二組へ向かって猛ダッシュ。
「なんだか、賑やかな子が来たね」
「ええ、元気な子でしたね」
そして、今日も一日ISの訓練と学習が始まった。