~暮羽side~
……荷物は纏め終わった
あいつらにこの家を明け渡して、この通帳も渡す
学費やそれ以外の物を払っても一生困らない程度の金は振り込んである
無くなったとしても、あいつらは社会人になっている
自分で金を稼いで幸せな家庭を築いてくれる
帰るのは、明日
……蓮樹達転生者には別れを言おう
で、こいつらの事は才賀と翔一に任せよう。あいつらなら大丈夫だ
蓮樹は……フェイトと幸せになって言っておくか
……さて、あいつらを呼び出すか
場所は……そうだな。公園でいいか
携帯を取りだし、メールを打ち、送信する
そのまま玄関で靴を履いて無言で外に出る
この景色を見るのも今日、明日が最後……か
たったの四、五年だったが……楽しかったな
フェイトが庭に埋まってたり、リニスを助けたり、天我とマジで戦ったり、アリシアを蘇生させたり、はやてと会ったり、散々なクリスマスイブを過ごしたり、ユーリを助けたり……
ほんと、どんだけ濃い時間だったんだよ……
……気が付いたら待ち合わせ場所……か
あいつらを待つか
~蓮樹side~
「見付からない……ッ!!」
魔法で探してるが、全く見付からず、内心は凄いイライラしていた
壁があったら穴が開くまで殴っていただろう
そんな中、携帯に着信があった
暮羽だった
海鳴の公園に一人で来い。それだけだったが、頼もしく思えた
何か方法がある。だから連絡してくれたのだろう
「ユーノ!ありがと!!」
「へ?蓮樹!?」
ユーノに礼を言って転移を連続して発動し、海鳴まで一気に転移する
けど、それだけでも数分かかってる
家の中庭に転移し終わり、そのままダッシュで海鳴の公園まで走る
途中から息が切れていたけど、気にしなかった
公園に着くと、既に暮羽、翔一、才賀が揃っていた
「はぁ……はぁ……お待たせ」
少し息を整えて、暮羽を見る
「で、話があるんだろ?何なんだ?」
翔一が暮羽に聞いた
「あぁ……今から話すこと、誰にも言うなよ」
雰囲気が少し想像していたのと違った
いやいや、なのはちゃんを治せるのなら、そこは喜んで話すところでしょ
何でこんな湿っぽい雰囲気なのさ
「俺……明日に元の世界に帰る」
暮羽の口から出たのは、この場では全く想像できなかった言葉だった
「……へ?何の冗談?今日はエイプリルフールじゃないんだよ?」
思わず聞き返してしまった
冗談であってくれ。そう願って
「言ってるだろ……明日、俺は俺の世界……東方projectの世界に帰る」
冗談ではなかった
そう理解すると、無意識に暮羽の襟首を掴んでいた
「じゃあなのはちゃんはどうするのさ!マテリアル達もそう!!ほったらかしにする気!!?」
「うるせぇ!!俺だって帰りたくねぇんだよ!!」
暮羽が怒りをむき出しに叫んだ
「でもなぁ、帰らなきゃなんねぇんだよ!!あっちには仲間も居る!!一人娘だって居るんだよ!!」
暮羽が僕の手を振り払いながら叫んだ
「ここを逃したら俺は帰れねぇ!!だから、帰るんだよ!!」
「だとしても!!残されるなのはちゃんやマテリアル達は……」
「蓮樹、そこまでにしておけ」
何とか留まるように説得しようとしたけど、肩を翔一に叩かれてそこから先の言葉は出なかった
「こいつだって悩んだんだ。本人の意見を尊重しよう」
「けど!!」
「蓮樹!!」
僕は何も言えなかった
僕だって暮羽が帰るのだったら笑って送り出したい
けど、タイミングって物がある
だから、僕は納得できなかった
「翔一、才賀。ディアーチェ達は頼んだ」
そう言うと、暮羽は翔一に通帳、才賀に合鍵を渡した
「……いいんだな」
「……すまない」
「……お前の決めた事だ。俺達には何も口出しは出来ない」
翔一と才賀は其々で受け取った物をポケットにしまった
「確かに、受け取った」
「あぁ……それと、蓮樹。フェイトと、幸せにな」
「……」
何も言えなかった
何時もは笑って否定するのに、その言葉すら出なかった
「じゃあな……お前ら。楽しかったぜ」
そう言うと、暮羽は踵を返した
「……頑張れよ」
暮羽はそう言うと、公演から出ていった
途中で、暮羽の背が伸びた
あれが暮羽の本当の姿なんだろう
暮羽はそのまま、小さくなり、見えなくなった
「……僕たちに……どうしろって言うんだよ……」
「でも、俺達はあいつに頼りすぎていた。色んな場面で、あいつは俺達を助けてくれた」
「俺と高町達の仲もなんとかしてくれた……でも、頼りきってちゃいけない。本当は居ない人間なんだ……あいつは」
そこから、僕たちは何も言わず、各々の家に帰った
確かに、僕たちは暮羽に頼りきっていた
ジュエルシードの時も、闇の書の時も、マテリアルの時も
暮羽が先陣をきってくれた
何度も、暮羽が居なければやられていた場面だってあった
でも、こんな時に帰るなんて、納得できない
……暮羽の帰還を何とかしてくれる人物……
水姫ちゃん……は無理だろう。彼女も暮羽と共にここに来た人物だし
だとすると……止めれるのは一人だけ
この世界での元々の主人公の……
僕は震える手で電話を掛けた
彼女は、出てくれた
「お願いだ……暮羽を……止めてくれ……」
余りに身勝手だった
暮羽の決心を踏み潰すかもしれない
けど、まだ、僕たちには暮羽が必要なんだ……
だから……
~暮羽side~
翌日……帰還の日になった
マテリアル達にも何も言わなかった
翔一達が上手く言ってくれるだろう……
今の姿はあっちの世界に戻して、服装も最初にここに来たときと同じにしてある
そして、手の中には俺達を元の世界に戻してくれると言ってくれた毛玉
「……ねぇ、本当に帰るの?」
「……今じゃなきゃ、帰れねぇんだよ……」
必要な物は持った。これでもう大丈夫だ
「じゃあ、俺達を……」
「待って!!!」
毛玉に頼もうとしたときだった。後ろから聞き覚えのあり、ここに居る筈の無い人物の声が聞こえた
驚きのあまり、振り返ってしまった
「なのは……?」
そこに居たのはなのはだった
だが、車椅子に乗って、まだ辛そうだった
けれど、今は何時もの姿ではない。何とかやり過ごすんだ
じゃないと、感傷に浸って帰れなくなる
「人違いじゃないか?」
「確かに背が伸びてるけど……間違える筈無い」
なのはは車輪をゆっくりと前に押し出してこっちに近付いてくる
「……止めろ……」
なのはは尚も接近してくる
見たくない。だから、背中を見せた
頼むから来ないでくれ……帰れなくなっちまう……
だが、なのはは俺の腰辺りに抱きついてきた
「お願い……行かないで……行っちゃダメ……」
「……行かなきゃならないんだよ……」
「ダメ……」
なのはの手を振りほどきたかった。が、出来なかった
腰辺りが冷たい
「足だって動かなくていい……魔法だって使えなくていい……だから、お願い。行かないで」
気が付いたら、俺も泣いていた
手の中から毛玉を落としてしまう
「……そんな最終兵器使われたら……」
涙は止まらなかった
「帰れねぇだろうが…………」
帰れる筈無い。こんな時になのはの声を聞いてしまったら。帰れるわけがない
「暮羽くん……?」
手を振りほどいて、振り返り、なのはを抱き締める
「……へ?」
そして、胸の辺りと足を少し触る
「……どうにかなる物だな……」
一瞬で、破れかぶれの情報操作をした。結果は、成功
リンカーコアの傷も、足も、ちゃんと治った
足は少しリハビリをしたらちゃんと動くだろう
「行かない……?」
「行けるわけが無いだろ……」
みっともなく、涙は止まることを知らなかった
「うん……」
「今は帰らない……」
もう毛玉も幻想郷に帰っていってしまった
「でも……お前達が寿命で死んだら、帰らせてもらう」
「じ、じゃあ……」
「もう暫く……好き勝手させてもらう……」
ったく……俺って、ほんと甘ちゃんだよ……
女の涙は……ほんと、どんな者よりも強いな……
「……ねぇ、もうちょっとだけ、抱き締めて?」
「あぁ……」
俺は、背を昨日までの状態に戻した
それが、俺の、ここに残るという証明だった
俺の涙は、なのはから離れるまで止まらなかった
~水姫side~
「はぁ……帰るのか帰らないのか……どっちかにしてよね……」
と、二人から離れた場所でポツリと呟いてみる
でも、帰らなくてホッとしているボクも、胸の中に居る
「……女の涙……か。ボクも使ってみようかな」
ボクは暮羽達をその場において、離れた
……今日はヤケ食い!!!甘いもの沢山食べて気をまぎらわしてやる!!!
暮羽は絶対にボクの物にしてやる!!!
~蓮樹side~
「作戦成功っと」
「お前なぁ……高町は怪我人だぞ?それに、暮羽の決心を無駄にしたんだぞ?」
「だが、そのお陰でまだあいつに頼れる。それに、俺達にはまだあいつが必要だ。違うか?」
「……ったく、その通りだよ。くそったれ」
女の涙は神すら倒す……か
「で、早くしないと高町の幻影がバレるんじゃないか?」
「へ?幻影なんて出したの?」
「いやいや、蓮樹が出したろ?」
「いや、才賀が……」
…………
僕たちは顔を見合わせ、暮羽の方とは逆方向に駆け出した
『俺、し~らね♪』
今、僕たちが出来る、最大限の現実逃避だった
~暮羽side~
それから、時が流れた
なのは達は沢山の事件を解決し、寿命でその生涯に幕を閉じた
ヴォルケンリッター達もはやてが死ぬと同時に、夜天の書に戻り、二度と動かぬロストロギアとなった
え?なのは達が死ぬ間に何があったか?それは言えないな
誰が誰と結婚したか……それも秘密だ
だが、悲しいものだ。気が付いたら俺と水姫しか居ない
幻想郷でも、霊夢や魔理沙、早苗ももしかしたら死んでるかもしれないし、生きてるかもしれない
俺は数十年前から姿は変わらない。高校生程度の外見で止まっている
水姫も小学生の頃と全く大差ない
「……帰ろっか」
「……そうだな」
なのはの墓の前で手を合わせ、別れの挨拶をする
「じゃあな。なのは。暇だったら映姫様に我が儘言ってこっちに来い」
なのはの愛機。もうその役割を終え、動かなくなったレイジングハートを墓の上に置き、それだけを伝えると、俺はその場で立ち、墓を離れた
そして、誰も居ない公園で毛玉に話しかける
「頼む」
その一言だけ伝えた
毛玉はそれを聞き届け、能力を発動させる
目の前が光に染まっていく
これで、本当にこの世界とはお別れだ
『またね』
なのはの声が聞こえた
気のせいかもしれない……が、俺には分かる。後ろになのはが居る
俺は振り返る
「またな」
一瞬見えたなのはの霊は泣きながら微笑んでいた
俺も、泣きながら笑った
こうして、俺の異世界でのたった一世紀にも満たない物語は幕を下ろした
なのはに四年生の頃に渡された手袋。それは平安時代になった今でもちゃんと持っている
他にも写真やあいつらからの贈り物は全て捨てずに取ってある
そして、時は平安。俺は陰陽師としてそれなりに活躍していた
俺は、手紙を書いた。なのは達宛に
内容は……秘密だ
「暮羽、何かいてるの?」
一緒に連れてきたルーミアが俺に聞いてくる
「昔の友人達への手紙さ……」
俺は、その手紙を紙飛行機にして、窓の外に投げた
「なのは、アリサ、すずか、フェイト、アリシア、はやて、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、アインス、蓮樹、翔一、才賀、クロノ、ユーノ……俺はお前らの事、永遠に忘れない……絶対に……絶対にだ」
紙飛行機は風にのって、空高く、舞った
「……さて!今日の依頼だ!気合い入れて行くぞ!!」
窓から離れ、依頼を終わらせるために部屋から出る
『頑張ってね、暮羽くん』
不意に聞こえた声に一瞬、微笑む
「あぁ、頑張ってくるよ」
振り返らず、歩いた
さぁ、忙しい依頼の始まりだ
Magical girl lyrical Nanoha Story of the god of the dimension
The end……
To be continue……?
さて、これにてこの小説は終わりです
僕の小説の中では四つ目に終わった作品です
暮羽が帰る直前までの出来事は秘密です
もしかしたら暮羽がなのはと結婚したかも知れませんし、翔一がまさかのフェイトと結婚したかも知れませんし、才賀がハーレム築けたかもしれません
それは、また別のお話……
それだは、九ヶ月間、ありがとうございました
ps
まだ終わらんよ……