「やぁ、ヒバリちゃん。今日のミッション終わったらさ・・・あれ?ヒバリちゃんは?」
「ヒバリさんならさっき、ブラッドの皆さんと一緒にサバイバルミッションに出発したところです。」
「何!?くっそ~教官先生め~、俺を出し抜くとは・・・・。」
「それでタツミさん。ミッションの受注しますか?」
「・・・・・いや今日は遠慮しとくわ・・・。邪魔したねフランちゃん・・・。」
がっくりと肩を落とし、トボトボと去っていくタツミ。
その後ろで、何事もなかったように黙々と仕事を続けるフラン。
ここはフェンリル極東支部のエントランス。
螺旋の樹崩壊後、ラケル博士の企みである終末捕食を防ぎ聖域が生まれるもアラガミの脅威は去っておらず、極東支部は変わらず忙しい日々を送っていた。
(タツミさんももう少しやる気を出して欲しいですね。)
フランが思っていると、落ち込んでたはずのタツミの明るい声が聞こえてきた。
(・・・?ミッションリタイアでもあったのでしょうか?)
しかし、そこにいたのは見慣れない2人の姿だった。
1人はやや背の高い青年で、周りに好印象を与える笑顔でいる。
もう1人はスタイルの良い女性で、堂々とした態度でいる。
そんな2人組がタツミと話しているのだ。
「よう!久しぶりだな~、こっちにはいつ?」
「ついさっき戻りました。これから博士に報告です。」
「どのくらいの間極東にいるんだ?」
「2週間程度の予定だ。タツミそろそろいいか?」
「あぁはい、どうぞどうぞ。また後でな~。」
「ははは・・・。お疲れ様です。」
するとタツミと話していた相手はまっすぐフランの方に向かってきた。
「えっと・・・すみません。新しいオペレーターの方ですか?」
「ええ、何か御用でしょうか?」
「じゃあサカキ博士に取り次いでもらえますか?」
「まずお名前を聞かせてもらえますか?」
「あぁっと・・すみません、クレイドル所属の神薙ユウと雨宮ツバキ教官、欧州遠征から一時帰還しました。」
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ここは支部長室。
そこには極東支部支部長のペイラー・サカキとさっきの2人、計3人の姿があった。
「まずはお帰り。無事に帰還できて何よりだ。」
「今回はアラガミの襲撃もなく、帰ってこれました。」
「そういえば行きの時に、アラガミから襲撃を受けキュウビを発見したんだったね。いや~懐かしいね。」
「支部長、ユウも疲れていると思うのでその辺に。」
「おぉ、ごめんごめん、それじゃあ簡潔に話そう。
今回の一時帰還の目的は、君達が手に入れた欧州の情報を教えて欲しいのが一つ。そして極東で起きた事を君達に教える、つまりは情報の共有だ。」
「極東での事は欧州でも噂になってましたよ。」
「まぁ詳しいことは明日に回そう。今日はこの後メディカルチェック受けてもらうんだけど、まだ準備が出来てないんだ。久しぶりの極東だろ?ゆっくりするといい。」
「分かりました。失礼します。」
「すまないがユウ、もう一つ目的がある。」
出て行こうとする青年――ユウ――の背中を女性――ツバキ――の声が止める
「?聞いてたのはその2つだけだったんですけど・・・。」
「実は欧州を出発した後に連絡が入ってな、『今後感応種とは世界中で戦う可能性がある。その為にもブラッドアーツを習得し研究する必要がある。』という本部からの命令が来た。本部から直接出されたこともあって無視することは出来なくてな。」
「一応本部に『極東支部でも研究しています。』といった内容のメールを出したんだけど、信用されてないのか返されちゃってね。」
「え!?でもブラッドアーツってそんな簡単に習得できるものなんですか?」
「その点については大丈夫だ。ちゃんと前例がある。」
「というわけでブラッドアーツの習得も追加されたがやってくれるな?」
(・・・逃げ道がない・・・。)
「わ、分かりました。頑張ります・・・。」
「よろしい。ではゆっくりするといい。」
「おや?ツバキ君もゆっくりしてきていいんだよ?」
「支部長。遠征中にリッカ、ヒバリの両名から苦情がきています。」
「リ、リッカ君とヒバリ君からかい?」
「なんでも仕事をしてくれないとか。」
「い、いやそんなことは── ユウ君からも何か言ってくれないかい?」
「失礼しました!」(バタンッ
「ユウ君!!」
逃げるように部屋を出て行ったユウ、その後には悲壮感に包まれるサカキの姿があった。
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出撃ゲートから3人の姿が現れた。
彼らは極東支部第一部隊のメンバーで、無事にミッションを終えてきたところだ。
「第一部隊ただいま戻りました~。」
「隊長、この後の反省会は──」
「闇の眷属は敗れ去った!!今回のミッションもパーフェクトだ!」
「あぁもう、エミールうるさい!!今回もアイテムのほとんど持ってこないで、何がパーフェクトよ!!」
「何を言う!正々堂々戦い、正々堂々勝つ!これが騎士道というものだ!!」
「戦闘不能になりかけて何が騎士道よ、無意味に回復柱も使っちゃって!」
「あれは『皆もダメージを受けていただろう』と思って使ったまでのこと、これも騎士道精神において──」
「ダメージを受けてたのはアンタだけよ!」
「あぁあぁ、2人とも落ち着いて!ごめんフランさん、手続きしてくれる?」
いつものようにエミールとエリナが言い合いしている中、隊長であるコウタがミッションが終了したことを告げるとフランの様子がおかしい。
「えっ?あ、はい。おかえりなさいコウタ隊長。」
「?どうかしたの、ボーっとしてたみたいだけど。」
「いえ、実は──」
「あれ?コウタ?」
「ユウ!?なんでここに!?」
「一時帰還の命令がでてね。それよりオペレーターさんと話していたんじゃないの?」
「え?いやまぁそうなんだけど、久しぶりに会ったのに反応がそんなあっさりって・・・」
「いえ大丈夫です。話の内容はたぶん分かっていただけたかと。」
そこでコウタは思い至ったように頷いた。
「あぁなるほど。つまりユウに会ってびっくりしたわけだ。」
「はい・・・。情報で見たのと実際に見たのとでは、その・・・全然違いましたので。気を悪くされたのならすいません。」
「アハハ、いいよ別に。他の支部でも同じような事を言われたから。」
「NORNの書き方だとユウは『とんでもない化け物』みたいになっているからな。」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。初めまして、オペレーターのフラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュと申します。フランと呼んで下さい。」
「ご丁寧にありがとうございます。改めまして神薙ユウです。これから少しの間よろしくお願いします。」
「隊長~。エミール放っておいて反省会しましょうよ~。あれ?その人誰です?」
「待てエリナ!まだ話は終わってないぞ!」
言い合いに飽きたのかそれとも音を上げたのかエリナが疲れた声を出しながら戻ってきた。
「お、ちょうどいい紹介するよ。こいつ俺と同期で元第一部隊隊長の神薙ユウ。名前くらいは知ってるだろ?」
「おお!貴殿があの『極東にその人あり』と言われた神薙ユウ殿か!僕はエミール・フォン・シュトラスブルク、あの栄えあるシュトラスブルク家の一人だ!」
「う、うん、こちらこそよろしく。」
「そしてこちらが──、ん?どうしたエリナ。急に元気がなくなったが。」
「う、うるさい。えっと・・・私はエリナ。・・・よろしく。」
「おいエリナ!フルネームで名乗らないばかりか──」
「あーっもう、うるさい!ほら隊長!反省会しましょう、反省会!」
「え?・・・あ、よし分かった!じゃあなユウ、後でゆっくり話そうぜ。」
「何!?名乗りをしないまま去るなど、騎士道に反する!!それは断じてあってはならないのだあぁぁぁぁ──」
居心地の悪そうなエリナ、襟首をつかまれたまま引きずられるエミール、そしてエリナの考えを感じ取ったコウタはそのままラウンジに向かった。
唐突なことに動揺したままのユウと、エリナの態度を不振に思うフラン。
「えっと、あの二人が今の第一部隊の隊員?」
「はい、エミールさんに初めて会う人は驚くと思いますけどいい人ですよ。」
「うん、そんな感じだね。あとエリナの態度が気になるんだけど、あんな感じなの?」
「いえ、エリナさんはもっと明るい方なんですがどうしたんでしょうか・・・」
(・・・・あの子どこかで・・・)
微妙な空気になりながらもフランと別れ、やつれたサカキ博士のメディカルチェックを受け、帰還一日目は幕を閉じた。