遊戯王 Spirit Code   作:久那月

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09 精霊休日誌 AM

 

 

「……ん……朝、か……」

 

ダルクはカーテンから差し込む光で目を覚ます。

 

壁掛け時計を見ると午前8時17分。

いつもなら寝過ごしたどころか、遅刻するような時間だが。

 

「……いいや。もうちょい寝よ」

 

もう一度、微睡みの中に落ちていく。

折角の休日だ。こんな時間に起きずとも、誰も文句は言うまい。

 

……とでも思っていたのか?

 

ブオオオオオォォォォォォン!!

 

『ダルクー!入っていい?無言は肯定と受け取るから入るよー!』

 

部屋の扉の外から掃除機の爆音が鳴る。その音でダルクの眠気は吹っ飛んでしまった。

 

「ダルク、起きてー!朝ごはん冷めちゃうよー!」

「…………」

 

外から聞こえる女性の声。

うるさいのが来た。

こんな時は寝たフリを決め込むのが一番である。

 

「起ーきーろー!」

 

奴は更に掃除機の出力を上げやがるのだが、無視を決め込むダルク。

 

「……仕方ないなぁ」

 

ようやく諦めてくれたか、と狸寝入りを決め込みながら内心ホッとするダルク。

 

だが、奴は驚くべき行動に出た。

 

なんと、掃除機のノズルをダルクの脚の間に突っ込んだのだ。

頑なに目を閉じるダルクには、情報は入らない。

 

この後に起こった事はない想像に難く無いだろう。

 

ダルクの悲痛な叫びがご近所に聞こえたのは確かである。

 

 

 

 

 

「ぐおあああぁぁ……。ライナお前マジでそこまでやるかよ……。俺のグスタフマックスのORUが減ったぞコラ」

 

箸で器用に魚の切り身から骨を抜きながら、股間を抑えて白髪の女性、ライナに話しかける。

 

「良かったじゃん。無駄なORUが減って。それと、ご飯食べてる時に下品な事言わない」

「はいはい」

「はい、は1回」

「はーい」

 

親子か、ともいえるやり取りをしているが、断じて違う。同い年のお隣さん同士だ。

 

「ダルク、今日予定ある?」

「あー、腕の調子が悪いからエリアルさんとこ行くつもりだけど。その後は特に考えていない」

「そっか。じゃあそれが終わったらどこか遊びに行かない?ランチ奢るからさ」

「どっか連れてってやるから飯は奢らせろ。女に出させるのは俺の信条に反する」

「わーい。あ、掃除の続きして来るから、お皿洗っといてね」

「へーい」

 

パタパタとスリッパを浮かせながら掃除機片手にライナがテーブルを離れる。

 

「……ハァ、世話になってばっかだなぁ」

 

いくら家が隣の幼馴染みと言えども、普通ここまではしないだろう。

 

去年ほぼ一年、仕事の研修で家を空けた時も時折家を掃除してくれたのも彼女だ。

 

遣る瀬無さやら何やらが、ダルクの心を締め付ける。

 

「俺ってば、こんな性格だったかな、マジで」

 

朝食を一気に流し込み、テーブルに突っ伏した。

ちょっと胸焼けしそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ハメるよ」

「ど、どうぞ!」

 

「セリフだけ聞くと如何わしく思えるのは俺だけだろうか」

 

所変わって、アバンスの家の離れの診療所。

ダルクの掛かり付け医であるエリアルがダルクの腕を治療していた。

 

機械仕掛けの義手は生体電流を読み取り、魔力で動かす仕組みのため、医学、魔法学共に精通した者でなければ修理も調整も難しい。

 

「アバンス、固定したね?」

「抜かりない」

「クロハ、覚悟はいいね?」

「ばっちこい」

「せーの」

 

ガチンッ!!

 

「あでっ!」

 

一度外して内部まで調べてメンテナンスの後、もう一度しっかり神経まで接続。

 

歯医者で剥き出しの歯神経に麻酔無しで触られるのと同じような感覚だろう。

 

「……義肢の何が嫌かって、この痛みだよなぁ……」

 

義手をつけてもう5年程経つが、未だに神経の痛みには慣れない。

無理矢理身体を機械に置き換えると言うのだから、当然と言えば当然なのだが。

 

「義手は嫌?だったらこの、『ホムンクルス療法』でも試してみない?もしかしたら元の腕が生えてくるかもよ?」

「なんかさらに持ってかれそうな気がするんでやめときます」

「正解だ。動物実験やったら炭クズになった」

「おいィ!?」

 

アバンスがさらっと告げた恐怖の実験結果にダルクは驚愕する。

 

「……まぁ、腕一本全部持ってかれなくて良かったですよ。義肢部分が小さい方が伝導効率いいんでしょ?」

「そりゃ、伝達ラグとか考えたらね。はい、治療終了。お代は……300ドラクマだよ」

「ちぇ、ボるなぁ……」

「身体で払うも可」

「部位欠損しそうなんで現金で」

 

財布から料金分の紙幣を出し、エリアルに渡す。

 

「あはは、そんなことしないってー。純粋にクロハが欲しいだけだよぉ?ほら、お姉さんの胸に飛び込んで来てー!」

「飛び込んだ上で追加料金取られないなら」

「バレちゃった」

 

てへぺろ、と舌を出すエリアル。

いくら長命の精霊とはいえ、10代前半程の容姿では、悪戯っ子が開き直ったようにしか見えない。

 

まぁ、可愛いから許すのだが。

 

「んじゃ、俺はそろそろお暇させてもらいます。午後から出る予定があるんですよ」

「お大事にー」

 

 

 

 

 

 

 

「姉ちゃん、まだダルクを婿入りさせようと思ってんの?」

「えー?いいじゃん、クロハはリチュアに入っても申し分無い魔法使いだし」

「俺は姉ちゃんが交際する相手にはきちんと面接するからな。エイミィも心配してんだよ」

「親友も義弟も過保護過ぎるよぉ……」

 

常日頃生脚に膝上のスカートという

防御力の低い服装。

無意識寄りの行動原理。

二十歳も半ばというのに、一向に歳を食わない長命故の幼い容姿。

 

無防備さをカバーするが故の過保護は致し方無いだろう。

 

「この三重苦を同じような属性持ってるダルクに任せるのが不安なんだよなぁ……」

 

最早父親的思考になっているアバンスであった。

 

 

 

 

 

 

 




エリアルさん書くの楽しい。

ラッキースケベを上手く書けたらいいな。

1ドラクマ=150円くらいだと思ってください。
ユダが貰った銀貨って日本円でいくらくらいなんだろ。
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