「でさぁ、ウィンがまたドジして……。あの部屋にいた女の子のスカートがみんな風で捲れちゃってね」
「ふーん。俺もその場に居合わせたかったなぁ」
治療が終わった後、ダルクとライナはファミレスで食事を取っていた。
ダルクは社会人、ライナは学生、立場が違うからこそ日常の話のタネは中々に多い。
「でもダルクとアバンスはいい時期に就職したよね。私らは就職難しいかも……」
「難易度だけで考えるなよ。結局は落ち着くべきところに落ち着くさ」
「そうは言うけどさぁ、正確な未来なんて見える訳が無し……。占いなら得意なんだけどねぇ」
「先行き不安もまた生のうち。適度に動けば、ちゃんと窪みに収まるよ」
「達観してるなぁ」
フライドポテトを齧りながら、悟った風にダルクは言う。
ライナはダルクの人生哲学というものは、それなりに正解だと思っている。
この幼馴染みは存外タフで強かなのだ。
「そういえばさ、ダルクってA・O・Jのどこの部署で仕事してるの?」
「ッ!?」
別段深い意味もなくライナはダルクに尋ねる。
もちろん、ダルクは特務部の『ゼロ』に所属している。
所属しているのだが……実は、『ゼロ』という組織自体、表向きには存在しないはずの組織なのだ。
やっていることは、ギャングの抗争の調停や取り締まり、そしてお伽話扱いされている『No.』の回収。
あまり表に出せない仕事内容の上に、構成メンバーもいつどこで恨みを買っているかわからない。その関係者に危険が及ぶ可能性を加味し、構成員の身元は厳重に保護され、守秘義務もある。
……が。
(こいつめっちゃ勘がいいんだよなぁ)
女の勘は鋭い。
ダルクも仕事の上で何人もの女性と知り合ったが、下手な誤魔化しがきいた試しがない、下手に誤魔化せば、疑われるだろう。
「……あー、と、ちょっと言えないとこ」
「え?言っちゃダメなとこ!?」
言えないことを正直に話す。
100点とは言えないが、悪くない回答だろう。
「ひょっとして、去年ほとんど帰って来なかったのも……。なんか危ないコトとかしてない?」
危ないコトだらけです、と言いそうになるが、ダルクは気合いで変な汗と口を止める。
「まぁ荒事なんて滅多にないし、大丈夫さ。残業多いだけ」
「……ふぅん……」
一応は納得してくれたようなのか、ライナは紅茶を煽ると、小さく相槌を打つ。
「さて、仕事の話は終わり。ライナ、服買いに行こう。いつものお礼にプレゼントさせてくれ」
「いいの?遠慮しないよ?」
「今更遠慮なんかする間柄じゃないだろ?この前ウチで酔っ払った時もベッドの上で……」
「はいストーップ。やめて、恥ずかしいからやめて」
「ぎゃああああああ!やめて!グリグリは痛いからやめて!」
言わすまいと光の速さでダルクの後ろに回り込み、ギリギリと締め上げる。
ライナが恥ずかしさで頬を染めているところを見ると、微笑ましい関係だ。
「ありがとね、ダルク。こんなに買ってもらっちゃって」
「いいんだよ、日頃のお礼さ」
ブティックで買い物を済ませ、ダルクは大きめの紙袋を抱える。
収入は多くても、支出はそう多くないため、身の丈に合わない金額を使ういい機会だ。
「さて……映画でも観て帰ろうか。ライナ、なんか観たいのあるか?」
「うーん……あ、DVDが観たい。ちょっと前のやつなんだけど」
「はいよ、じゃあウチで観るか。酒も肴も用意してあるし」
二人は、ブティックから車で数分のDVDショップに移動する。
それなりに大きな店舗なので、余程マイナーな作品でない限り、品切れということは無いだろう。
「じゃ、観たいの探しといてくれ。俺もなんか見繕ってくる」
「はーい」
ライナと別れ、ダルクは輸入DVDのコーナーに向かう。
……ダルクは、こう思う。
何回観ても、ラ◯ュタはいい、と。
子供の頃から、人間界の有名映画であるラピ◯タは、年1回はテレビで上映されていた。
血と硝酸に汚れた手でも、ラピュタを観れば童心に帰れる気がする。
そう、◯ピュタが観たい。
ダルクはジ◯リ映画のコーナーからラピュ◯を発見し、手を伸ばした。
だが、その手の先には、鱗肌の感触があった。
「……あんさん、手ェ離し。そのDVDはワシが先に取ったんや」
鱗肌の持ち主は特徴的な言葉でそう言い放つと、乱雑にDVDケースを抜き取る。
「アァン?テメェ何乱暴に扱ってんだゴラァ」
「あっ……」
だが、ダルクはその扱いに言いがかりをつけ、DVDを丁寧にスり取る。
「「…………」」
……互いにやってしまったら、もう謝るという選択肢は無い。
DVDを手に持ったまま、ガンのつけあいに入る。
鱗肌の持ち主は竜人種、トカゲから進化し、産まれ持った鋭い眼光がダルクを睨む。
対して、人間種のダルクも負けてはいない。仕事で培った凄味を効かせた視線が竜人を突き刺す。
どちらもガンのつけあい程度では引かないと見るや、拳に力を込める。
…………だが、お忘れでは無いだろうが、ここは精霊界。
拳より、カードの方が決定力が強い世界だ。
当然、2人が取り出すのはディスクとデッキ。
さぁ、決闘を始めよう。
「「決闘!!」」
イグナイトは安くて強いなぁ(ユニコーン使いながら)