遊戯王 Spirit Code   作:久那月

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08 そして舞台は幕を開ける

「アバンス!」

 

黒い霧が、林に流れる風と共に溶けていく。

 

アバンスと守り人を囲んでいたドームはもはや形も無い。

 

「……ふぃー。疲れた……。おう、ダルク無事か」

「こっちのセリフだ。……ま、お前が負けるなんて考えちゃいないが」

「そいつはどうも。……っと」

 

 

アバンスは手元にカードの感触を感じる。

 

チラ見すると、それは黒いカード枠にエクシーズモンスター。

 

「これが、今回の『No.』か」

「ああ、中々に手強かったぞ。4100が4体並んで結構危なかった」

「なにそれこわい」

 

 

 

 

 

 

 

「これが今回の調査の収穫です。封印されていた『No.』が1枚、エンデュミオン北西部の林で発見しました」

 

4枚重ねのスリーブに収納したカードを、レポートとともにハストルに提出する。

 

ハストルは感嘆したように息を吐くと、カードをアバンスに手渡した。

 

「ご苦労だった。このカードは君達が使いたまえ、次の活躍を期待する」

 

矢継ぎ早に告げながら、身体を黄色い衣の中に隠し、身なりを整えている。

 

「……出張ですか、ハストルさん」

「ああ、少し上に挨拶してくるだけさ。……おっと、時間が無い。明日にでもゆっくり話を聞かせてくれ。ではな」

 

そう返し、風の神性は空気に溶け、消えてしまった。

 

後に残るのは、ダルクとアバンス以外に誰もいないオフィス。

 

2徹で任務から帰還。

残されたのは2人。

 

「ふむ、業務終了ってことでいいんかね、これは」

「……じゃないか?書き置きも無い、誰もいない。おまけに定時」

 

 

誰にも文句は言われないよな、とこっそり早足でオフィスを後にする二人なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

京東ウォーターフロント、都市部に呼び出されたハストルは、待ち合わせた場所で待機していた。

 

『あの男』に呼び出されたからか、どうも胃が痛い。

 

しばらくして、数人の黒服を連れた男がハストルの前に姿を現わす。

 

「やぁ、久しぶりだなハストル。わざわざこんな極東に呼び出してすまない」

 

呼び出した張本人である男は、上物のダークスーツに身を包み、整えられたブラウンの髪、柔和に微笑む銀色の瞳でハストルを出迎えた。

 

「ああ、随分久しぶりだ。長官殿」

「肩書きで呼ぶのはよしてくれ。仕事以外での知人にそう呼ばれると肩が凝る」

 

長官と呼ばれた男はシッシッ、と取り巻き達を手で追い払い、嘆息したように肩を回す。

 

「まぁ、外で立ち話もなんだ、酒でもどうだ?」

「……折角遠路遥々極東の島国まで来たんだ、つまらない店では無いだろうな?」

「もちろん。特上の蜂蜜酒とパインサラダをご馳走しよう」

「おいばかやめろ」

 

 

 

「マスター、彼に蜂蜜酒。私にはいつものを」

「かしこまりました」

 

ダンディズム溢れる声のマスターが、二人の前に中身の入ったグラスを置く。

 

「下戸は相変わらずのようだな、アランレイヴ。……いや、混沌帝龍と呼んだ方がいいか?」

 

懐かしい名だ、とでも言うような目で、アランレイヴはグラスに注がれた烏龍茶を煽る。

 

「……ハストル、例の件は首尾が上々のようでなによりだ。今日もまた、新たに回収できたようだな」

「……既に耳に入っていたか。『ゼロ』の『No.』捜索は機密情報の特務だと言うのに」

「子飼いの情報屋は優秀でね。……そもそも、『ゼロ』は私の直轄組織だ。私は部下の活動を知る義務がある」

「最もだ。……本題に入らせてもらう。今日私を呼び出した要件とは何だ?ただ世間話をするためではあるまい」

 

カラン、と静かなラウンジに氷の砕ける音が響く。

アランレイヴは空になったグラスをカウンターに置くと、口を開く。

 

「……お前には話しておこうと思ってな。私の計画を」

「……計画?」

 

「私は、『スピリットコード』に辿り着き、書き換える。そのための計画だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

時計が鳴る音だけが、自室に響く。

エンデュミオンの住宅街の一軒家に住むダルクは、月の光を眺めながらベッドに横たわっていた。

 

「なぁ、クリアウィング」

『どうした、ダルク』

 

ダルクは誰もいない部屋でその名を呼ぶと、1体の半透明な竜が言葉を返す。

 

「5年前のあの事故。アレは、なんだったんだ?」

『前にも話したと思うが、『スピリットコード』に至る為の実験。……それ以外は我も知らぬ』

 

ダルクはその"事故"で失った腕に目をやる。

その時の僅かな記憶の欠片が思い浮かんでは、消えていく。

 

『我はそれを不幸な事故とは思うまい。本来『スピリットコード』とは真理そのもの。我等真理の守護龍ですらも触れるべきでは無い存在。だがダルク、お前は……』

 

「俺は、それを手に入れる。その真理とやらの先にある何かを、この手に掴む!」

 

 

 




さあ、ようやく物語が動き始めます。

新しい用語が出過ぎてわけわからんとかもあるかと思いますが、後々に謎が明かされていきますので、今後もよろしくお願いします。
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