Be mine   作:翔和

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第2話 沖縄初日

 那覇空港に無事到着し達也と合流した俺たちは新しい別荘に向かった。

 久々の家族旅行、俺はおまけだがあの男は参加していないらしい。

 愛をお金で買えると思っているのかこの新しい別荘だけを深夜さんの為に買ったのだ。

 

 「いらっしゃいませ、奥様。悠真君、深雪さん、達也君も良く来たわね。」

 

 別荘に着くといろいろと準備するために一日早く来ていた桜井さんが出迎えてくれた。

 そして深雪が散歩に行くと言い出したので俺と達也も一緒に散歩に出た。

 達也はガーディアンとして深雪の後ろを離れて歩き、俺は深雪の横を並んで歩いた。

 

 深雪もそうだがこの日焼けしない体はよく目立つと思う。

 深雪は出かける前に日焼け止めを塗って貰っていたので今は日差しを気にせず風を感じている。

 

 空港から別荘に行く間もそうだったが深雪は達也を意識してきている。

 今も考えないようにしていたのに考えてしまったのだろう。足元に視線を固定したまま少し早歩きになっていた。

 

 前から来ている男に気づいた俺が深雪を止めるように動くより早く達也が動いた。

 達也に腕を引かれ、後ろへ倒れこみそうになった深雪にその前から来た男はぶつかった。

 達也のように深雪だけに強い想いを持っているわけではないが、それでも男たちに対して腹が立った。

 深雪は恐怖からか動けそうになかったが達也が深雪と男たちの間に立ったので俺は深雪の腕を掴み下がらせた。

 

 「大丈夫?」

 

 深雪に声をかけるが呆然としているので耳には届いてないのだろう。

 

 「達也、こっちは大丈夫だから俺の分もお願い。」

 

 達也はそれに答えることなく走って向かってきた男の拳を両手で受け止めた。

 そして、本気になった大男は腕を引いて左右の拳を胸の前に構えた。

 そこからは早かった。

 男が拳を繰り出す前に達也の拳が男の胸を突き、男は崩れ落ちた。

 後ろにいた二人の男も立ち竦んだまま動かない。

 達也はこちらを振り返ると俺たちを帰るように促した。

 

 別荘に帰ると桜井さんが心配していたが俺や達也がいたということもありすぐに安心したような表情になった。

 深雪は何かを言おうとしたが達也が部屋に帰っていくのを見て少し泣きそうだった。

 シャワーに行ったのはそのためだろう。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 その晩にはパーティーに呼ばれた。

 深雪は不機嫌であまり行きたくなさそうだったが、それでも断れない相手なので行くしかない。

 

 パーティー会場に着くと達也は壁際で待機し俺と深雪だけが中に進んだ。

 

 「よく来てくれたね、悠真君、深雪ちゃんも。」

 

 「ご無沙汰しております、叔父上。」

 

 「本日はお招きいただきありがとうございます。」

 

 出迎えてくれた黒羽家当主である黒羽 貢に挨拶をして勧められるままに奥に入った。

 奥では当然子供である亜夜子と文弥が待っていた。

 

 「亜夜子さん、文弥くん、二人ともお元気?」

 

 俺たちは二人に挨拶をして叔父上の子供自慢を聞いた。

 少しすると文弥がソワソワしだして深雪に達也のことを聞き始めた。

 

 叔父上は良くも悪くも四葉の人間だ。

 達也を当然のように使用人として扱うが彼の子供はまだそのようには振る舞えなかった。

 

 深雪から達也の居場所を聞き出した二人はそのまま走っていってしまった。

 そして叔父上はと言えば苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

 叔父上が歩きだしたので俺と深雪もその後に続いた。

 

 「こらこら、文弥、亜夜子。達也君の仕事の邪魔をしてはいけないよ。」

 

 完璧な作り笑いで言う叔父上に文弥と亜夜子は黒羽のパーティーだから大丈夫だと言った。

 叔父上は自分の子供が道具に好意を向けるのが許せないのだ。

 俺が四葉の最有力次期当主候補とは言え、文弥が当主候補であることには変わりがない。

 

 叔父上が困り顔になっている所に思わぬ助け舟が入った。

 

 「黒羽さん、外を見回ってきますので中をお願いしてもよろしいですか。」

 

 「おぉ、構わんとも。行ってきてくれたまえ。」

 

 大袈裟に驚いて見せて、殊更に兄さんを称賛した。

 けれどもそれに反対の声が上がった。

 

 「僕たち明日には静岡に帰るんです。だからたくさんお話しようと思っていたのに。」

 

 「達也さん、文弥もこう言っていますのですぐに帰ってきてくださいね。」

 

 「分かった。一回りしたら戻ってくるよ。」

 

 そして俺と深雪に顔を向けた。

 

 「ではお嬢様、行って参りますので。悠真様も。」

 

 「あぁ。」

 

 軽く頷くと達也は頭を下げ外回りを見に行った。

 坊ちゃんと呼ばれるのは嫌だったので、人目があるところでは様をつけて呼んでもらうようにしている。

 

 「二人も悠真君や達也君のように落ち着いてくれたらいいのだが。・・・すまない、今のは忘れてくれ。」

 

 思わず漏れたその言葉に目を見開いた。

 この人が達也のことを口にしたこともそうだが、俺と同列に並べて褒めたこと自体が奇跡に近かった。

 忘れて欲しかったようなので聞き取れなかったことにした。

 

 「何か仰いましたか、叔父上?」

 

 「いや、何でもないよ。」

 

 フッと笑う叔父上。

 俺は達也が戻ってくるのを楽しみにしている二人と話す深雪を見ていた。

 

 

 

 

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