Be mine   作:翔和

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第3話 襲撃

 パーティーの次の日、朝起きて準備をして裏庭に行った。

 そこには既に達也がいて体術の型をしていた。

 そして俺が来たことに気づいた達也は動きを止めて振り返った。

 

 「早いね・・・深雪はまだ起きてないのに。」

 

 「これは日課だからな。それに日頃の習慣はどうにもならないよ。」

 

 話をしながら軽く準備運動をした。

 そしてある程度準備ができたところで達也との組手を始めた。

 暫くすると深雪が見ていることに気づいた。それと同時に達也も動きを止めたので組手は終了だ。

 乱れた息を整えているとカーテンがしまる音がした。

 

 「深雪も素直になればいいのに。」

 

 ポツリと漏らした声は聞こえなかったのか、達也は不思議そうな顔をしていた。

 

 「何でもないよ。」

 

 自分の気持ちに気づいていない深雪も、それに気づいてない達也も見ている側からしたら分かりやすいけれど二人の問題なので今はどうにでもできない。

 けれどもこの旅行中に何かしらの変化があればいいのにと思う。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 朝食はいつも通り桜井さんが用意してくれた。

 他ならぬ桜井さん自身が「自動機器で調理されたものは味気ない」という人だから特に事情がない限りは桜井さんの手作りだ。

 

 「今日のご予定は決めていらっしゃいますか?」

 

 食後の紅茶を飲んでいるときに桜井さんが尋ねた。

 それに対して深夜さんが日が傾いてからセーリングをと言ったので4時からの予定は決まった。

 そして予定がないならばビーチに行けば良いという桜井さんのアイデアで俺たちの午前中の予定が決まった。

 桜井さんに連れられ深雪が出ていくとき微かに達也が笑った。

 

 濡れてもい服に着替え、さっそくビーチにやってきた。

 達也は早速深雪のためにシートとパラソルを用意し、そのシートの上に深雪がうつ伏せに寝っ転がった。

 達也はその横に座り込んだので俺は達也の横に座って持ってきていた本を読み始めた。

 

 暫くして達也が動いたと思ったので見たら、達也は深雪にチュニックをかけてあげていた。

 そこで安心したのか深雪が寝たのを確認して、俺は口をひらいた。

 

 「優しいな、深雪には。」

 

 達也は何も答えなかった。

 返事を期待していたわけではなかったのでそのままにしていると喧噪が近づいてきた。

 

 「どうする?」

 

 深雪を起こして逃げるか、さっさとこの喧嘩を終わらせるか、そう言う意味で聞くと達也は立ち上がった。

 その意図をくみ取り深雪の周りに硬化魔法で壁を作り外の音が届かないようにした。

 

 そうしている間にも近くにいる人たちは片付けを終わらせ逃げていった。

 達也の横に出ると騒がしい連中を片付けるために動き始めた。

 

 暫くすると相手が逃げ出していき、辺りは静まり返った。

 かなり騒がしかったが深雪が起きた気配はないので良しとする。

 魔法を解いて最初にいた場所に何事もなかったかのように座り本を読み始めると深雪が目を覚ました。

 

 深雪は特に何かに気づくことなく波打ち際に行った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 別荘に帰りお昼を食べ、達也の部屋にいると桜井さんが入ってきた。

 

 「達也君も悠真君もどうして怪我をしているのですか。」

 

 いきなりだったため何のことかと思えば先ほどのビーチでの件だった。怪我をして放っておいたのがばれたのだ。

 達也の後ろから来る相手を数人相手にしただけなので俺自身はそこまで酷い怪我を負っていないから放っておいたのだが、達也のはひどいらしい。

 

 「深雪さんの為とはいえ、他人の喧嘩に巻き込まれる必要なんてなかったんです。」

 

 「反省します。」

 

 「本当に、反省してくださいよ。融通を効かせることも覚えてください。」

 

 桜井さんは肩を落とし溜息を吐いて、踵を返した。

 そして部屋から出る直前に立ち止りこちらを見た。

 

 「悠真君も、そこまで酷い怪我ではありませんが、体は大切にしてください。」

 

 「はい。」

 

 今回は心配かけたと思ったので素直に返事をした。

 桜井さんはまた溜息を吐き、今度こそ部屋から出ていった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 桜井さんが用意したクルーザーは6人乗りの電動モーター付き帆走船だった。

 俺たち5人と舵を取る人でちょうど定員だ。

 奥から順に達也、深雪、俺。

 その向かい側の深雪の前に深夜さん、そしてその横に桜井さんの順で座っている。

 

 まもなくしてクルーザーは出発した。

 東の海上に低気圧があるが台風になる心配はないということだった。

 穏やかな海で気持ちのいい風を楽しんでいたが、そんな時間はすぐに終わりを迎えた。

 

 通信機器が不調を訴え、沖の方からは潜水艦が近づいてきているようだ。

 

 「――――魚雷が接近しています。お嬢様、前へ。悠真様は、」

 

 「一つ捕獲する。」

 

 CADを構え目標がいる辺りを見る。

 まずは振動系減速魔法、凍炎(フレイム・フリーズ)で魚雷の推進装置を黙らせる。

 そして領域魔法、減速領域(ディセラレイション・ゾーン)で減速させた。

 これで漸く魚雷は動きを止めた。

 こうしている間に達也はもう一つの魚雷を分解して沈めていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 捕まえた魚雷を持って帰り、一休みしていたところ国防軍の風間(かざま)玄信(はるのぶ)大尉が事情聴取に来た。

 ほとんどの質問は桜井さんが答えていたが、こちらを疑うような質問に桜井さんもイラついてきていた。

 

 「――――君たちも何か気づいたこと無かったか。」

 

 刺々しい雰囲気を和らげるためか、風間大尉は俺たちに話を聞いてきた。

 それに対して達也が目的の推測と魚雷の種類を答えた。

 そして予想通りそれに対しての根拠を聞いてきた。

 

 「風間大尉、その根拠となるものをお持ちしますので少し待っていただけますか。」

 

 風間大尉に対して席を離れる許可を取り、部屋に置いてある魚雷を取りに行った。

 そして部屋から帰ってきても話が進んでいる訳はなく、重い空気の中先ほど手に入れた魚雷を渡した。

 それによって達也が言ったことが正しいと分かり、大尉は立ち上がり敬礼した。

 

 「本日はありがとうございました。ご協力、感謝します。」

 

 大尉の見送りは俺と達也と深雪の3人でやった。

 昨日の大男、「レフト・ブラッド」の一人である桧垣ジョセフ上等兵の謝罪を達也は受け入れた。

 

 「司波達也君と悠真君、だったか?自分は恩納基地で空挺魔法師部隊の教官を兼務している。都合がついたら是非、基地を訪ねてくれ。きっと、興味を持ってくれると思う。」

 

 風間大尉はそう言い残して、車に乗り込み去っていった。

 

 

 

 

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