今日の予定は深夜さんと桜井さんが琉球舞踊公演に行き達也と悠真、そして深雪が恩納基地の見学に行くことになった。
第三者の前では普通の兄妹のように振る舞うことを言われ達也と深雪は動揺していた。
悠真は基本いつも通り他人に対しては達也たちと兄弟のように接していたので特に驚かなかった。
空軍基地に着くと防衛陸軍兵器開発部の真田と言う人が出迎えてくれた。
達也は自己紹介を聞いて驚いていた。
陸軍だということ、階級が中尉ということにだ。
もちろんそのことについては達也と同様に驚いたが、普段から隙につながらないようにとこういう場面ではポーカーフェイスを心掛けているので顔には出ていないはずだ。
「その理由は本官の専門が少々特殊で人材が不足しているからですよ。案内を下士官に任せなかったのは・・・・・・君たちに期待しているからですね。」
真田中尉は人好きのする笑みを浮かべたがそれは達也にとっても悠真にとっても身構えるものだった。
そして案内されたのは天井の高い体育館のような場所だった。
ビル五階建てくらいありそうな高さの天井からロープを上っては飛び降りるを繰り返す。
建物の中では風間大尉が待っていた。
風間大尉は悠真たちに軍に興味があるかを聞いてきたが達也が問題ない程度に答えた。
そしていくつかの話をしているうちにロープのぼりに参加してはどうかという話しになり達也が断ったので俺がやらせてもらうことにした。
達也ほどではないとはいえこれでも鍛えている方だ。
魔法に関してはここにいる誰よりも出来る自信がある。
一つのロープの前に立ち手の力で昇り始めた。
そしてのぼりきるとロープから手を離し加速系減速魔法を使い床に降りる寸前で重力操作魔法を使い自分にかかる重力を軽くして床に静かに降り立った。
先ほどまでざわめきがあったはずなのにどうしたんだろうと周りを見渡すと何故かみんなこっちを見ていて、次の瞬間には五月蠅いほどの拍手と歓声が上がった。
悠真が意味が分からず呆けていると真田さんが説明してくれた。
「君が一発目から何の躊躇いもなしに飛び降りたことと君の魔法が綺麗だったからだよ。」
普段の一、二割程度の力しか出していないので褒められる理由は分からなかった。
歓声が終わるのと同時にロープの訓練は終わり、次は組手の訓練になった。
深雪の顔には退屈だというのが出ていてそれに気づいた達也は組手に参加することにした。
達也は立て続けに三人を相手にしたが疲れている様子はなかった。
最後の相手は魔法も使っていたが
そのあと対戦相手であった桧垣ジョセフ上等兵と達也は親しくなった。
そして風間大尉に誘われるまま5人でコーヒーブレイクになった。
話は達也の無系統魔法からCADの話になり達也は真田さんが作ったCADを試さないかと誘われていた。
案内された部屋に行くと達也は真田さんの話を聞いて分かりにくいが楽しそうにCADを見ていた。
そんな達也を見てか深雪の身体が震え、体調が悪いと言うので椅子に腰を下ろしたところで悠真は深雪の傍によって深雪だけに聞こえる声で言う。
「安心して、深雪。達也は深雪のことしか見えてないから。心配する必要は何処にもないよ。」
「悠真兄さん?」
きっと今の深雪には意味は分からないだろうけれど、それでも少しでも安心してほしいと声をかけた。
それから達也は真田さんから二丁の拳銃型CADを貰い、俺たちは帰宅した。
◇ ◇ ◇
初日から波乱万丈だったこの旅行も4日目には落ち着きを取り戻した。
それからの二日間は桜井さんが見つけてくれた珍しい紙の魔法書を読んだり、魔法の練習をしたり、達也が真田さんから貰ったCADを弄るのを見に行ったりした。
普段から調整をしてもらっているので達也がCADを弄れるのは分かっていたが何回見てもすごいと思う。
自分の部屋で休んでいると隣の達也の部屋から深雪の大きな声が聞こえた。
深雪が自分の部屋に戻ったのを確認して達也の部屋に行くと扉は開いていて達也は静かに扉を見ていた。
「どうした?深雪の声が聞こえたけれど。」
「・・・深雪、と呼んでほしいと言われただけだ。」
「そう、良かったね。」
達也の言葉に驚いたけれども安心もした。
深雪が達也のことを見るようになり、もしかしたらもうすぐ深雪も達也のことを知るようになるのかもしれない。
そうなればこれまでとは違う仲のいい兄妹になれるかもしれない。
そんな希望が生まれた気がした。