沖縄旅行7日目。
突如、全ての情報機器から警報が鳴り始めた。
警報の発信元は国防軍、つまり外国からの攻撃ということだ。
桜井さんも焦りを隠せず、深夜さんも緊張している。深雪は現実味がないのか落ち着いている。
「奥様、恩納空軍基地の風間大尉より、基地内のシェルターに避難してはどうか、とのお申し出でを頂きました。」
その言葉に深雪が驚きの声を上げた。
そしてその後すぐに桜井さんが深夜さんに電話を渡した。
相手は四葉家当主であり深夜さんの双子の妹である四葉真夜、悠真の母その人である。
深夜さんはしばらく話した後、こちらに電話を渡してきた。
「悠真さん、真夜があなたに話があるらしいわ。」
深夜さんから受け取り電話に出る。
「お久しぶりです、母さん。」
『えぇ、お久しぶり。・・・基地のシェルターに避難することになりました。悠真さん、姉さんを宜しく。それと皆無事に帰ってくるのよ。』
「分かっています。・・・では、失礼します。」
電話が切れると桜井さんに渡した。
深夜さんからどうするかは聞いたらしく皆はすでに準備をしていた。
外に出るとこないだ知り合った国防軍のジョセフ上等兵が待っていた。
◇ ◇ ◇
軍のシェルターに案内されて暫くしてから何か嫌なものを感じた。
それとほぼ同時に達也と桜井さんが立ち上がり扉の方を見た。
「桜井さんも聞こえましたか。」
「じゃあ、やっぱり銃声・・・・!」
「それも拳銃ではなく、フルオートの、おそらくアサルトライフルです。」
達也と桜井さんは警戒を強め、魔法が使えるかどうかを確かめていた。
悠真は深夜さんと深雪を守るために深雪を深夜さんの近くに連れてきた。
そして自分自身でも部屋の中では魔法が使えることを確認していると不意に、知らない男が声をかけてきた。
男は魔法師なら人間に奉仕するのが当然の義務だと言い出し、しまいにはその為に作られた『もの』などと魔法師に向かって暴言を吐き出した。
桜井さんも反論し、達也も追い詰めるように事実を述べていたがそれを収集したのは深夜さんだった。
深夜さんは達也に向かって外を見てくるように命令したが、達也は離れていては深雪を守れないと難色を示した。
その時に深雪のことを『深雪』と呼び深夜さんの怒りに触れた。
やっぱり仲の良い兄妹になるのは難しいのかもしれない。
達也が外に出て暫くすると銃声と共にいくつかの足音が近づいてきた。
「失礼します!空挺第二中隊の金城一等兵であります!」
ドアの向こうから届いた声は味方を示すものだが嫌な感じは強まるばかりでなくならない。
深雪と桜井さんは明らかに安心した気配だが、全く安心できない。
開かれたドアの向こうにいたのは「レフト・ブラッド」の若い兵士四人だった。
「皆さんを地下シェルターにご案内します。ついてきてください。」
予想されたセリフだがマシンガンを抱えているからか、直感からか信用は出来ない。
桜井さんも達也が外に出ているからと言ったが、彼らは難色を示した。
「では、あちらの方々だけ連れて行ってくださいな。息子を見捨てていくわけには参りませんので。」
四葉家を知らない者にとっては息子を思う良い親だが、知っている者がこの言葉を鵜呑みにするわけがない。
四人の兵隊さんたちは険しい表情で顔を見合わせ小声で相談を始めた。
「達也君でしたら合流するのも難しくはないと思いますが?」
その隙に桜井さんが小声で深夜さんに話しかけた。
それに対して深夜さんは達也を心配したのではなく、あの人らを信用できないという直感だと答えた。
「同意見です。あの人たちが来てから嫌な気配が強まったので。」
そう言うと深雪も桜井さんも再び緊張感を出した。
四人が話し合いを終えたのはちょうどその時だった。
「・・・お連れの方は責任を持って我々がご案内しますので、ご一緒について来てください。」
無理やりにでも連れて行こうという気配が強まった。
けれどもそんなときに横から一等兵を呼ぶ声が上がった。
桧垣上等兵だ。
一等兵は声のした方に向かってマシンガンを発射した。
これで決まりった。この場にいる軍は敵だ。
一等兵の仲間が室内に銃口を向ける。
桜井さんが起動式を展開しようとしたが、頭の中でガラスを引っ掻いたような「騒音」が魔法式の構築を妨害する。
四人の内の一人がアンティナイトによるキャスト・ジャミングをしていた。
鋭敏すぎるサイオン感受性を持っている深夜さんは、若い頃の無理も祟ってサイオン波に対する抵抗力が低下している。
キャスト・ジャミングを止めようと魔法式を構築しようとするが上手くいかず、そうこうしているうちに銃撃の音が止むと共にキャスト・ジャミングのサイオン波も弱まった。
その隙に姉さんが精神凍結魔法「コキュートス」をアンティナイトをはめた兵士に向かって実行した。
その相手は動きを止めたがマシンガンが全て止まったわけではない。
振動系減速魔法
ここまでの工程を一気にやって漸く一息つけた。
そんな中でマシンガンが使えないと判断した一人が持っていたナイフを手に握り深雪に向かって走ってきた。
油断していたため咄嗟に魔法が使えず深雪の前に出るしかなかった。
刺された場所が熱を持ち痛む。
目がかすんでいく中で、桜井さんが男を取り押さえたのだけは確認できた。
意識を失う最後深雪が達也を呼ぶのが聞こえた気がした。