辿り着いたのは敵が橋頭堡に選んだ場所であり、最後に敵が交戦した地点だ。
敵艦隊がいるであろう方をみて距離を確かめる。
そして今まで使っていたCADとは別の特化型CADを取り出し敵艦に向けた。
照準を合わせ引き金を引こうとしたところで呼び止められた。
「悠真!!」
その声は意外にも大きく驚き、安堵した。
自分に対してそこまで強く思っていってくれたことに驚き、達也がここにいるということに安堵した。
振り返って達也を見ると以前基地で真田さんに見せて貰っていた術式組込型の武装デバイスを手にしていた。
「・・・達也、あの魔法を使うのか。」
達也があれをするならば自分がやる必要はない。
もしもの時は使うしかないができ得る限りは隠し通したい。
達也はそれを知っているから止めたのだろう。
「あぁ、だから、悠真は基地に、「戻らないよ。」・・・」
言葉をかぶせられた達也は口を閉じた。
「あれをやるならその間無防備になる。・・・だからその間敵の攻撃をすべて俺が防ぐ。言ったよね、家族を守るのは俺の役目だって。」
ここには覚悟をしてきたのだ。
今まで秘密にしてきた力を使ってでも大切な物を守ろうと。
その覚悟が伝わったのか達也は取り敢えず納得してくれた。
◇ ◇ ◇
達也は現在試し打ちをしている。
飛距離は20キロというところだ。
そこまで相手が来るのを待つとなるとこちらも相手の射程距離範囲内に入ってしまう。
「悠真、大丈夫か?」
「大丈夫、俺を誰だと思ってるの。四葉悠真だよ。」
茶化すように四葉を強調して言えば達也も笑ってくれたが流石に敵艦が近づいてきている中でこれ以上の無駄話は出来なかった。
敵艦が射程範囲内に入ったからだ。
達也は仮想領域魔法を発動し、続けて4回、引き金を引いた。
敵艦は既に試射を済ませている。
次にこちらに向かって来るのは弾道を修正した砲撃だ。
達也の射撃より低い弾道で打ち込まれた爆弾は、達也の銃弾が届くより早くこちらに届く。
先ほどまで降ろしていたCADを構え、魔法式を構築し、引き金を引く。
減速魔法・重力操作魔法〔落葉〕
対象となったものは負の方向に加速することで減速し何十倍にもなった重力に従って落ちる。
そしてそれは海へと落下した。
その魔法を数キロメートル先で次々に発動しているのだ。
けれども数が数なのでいくつかはそこを潜り抜け迫ってきた。
「〔
別のCADを取り出す時間が無かったので〔神速〕を使い処理速度を速め発動した。
威力自体はそこまで高くないが、その無形の衝撃波が当たった爆弾はその場で爆発した。
100メートル先での爆発の爆風と金属の欠片がこちらに届く。
他の爆弾も処理しなければいけないので爆風までは防げない。
古式魔法師と魔工師の二人は対物干渉力はそこまで高くないだろう。
・・・どうしようか。
「援護します。」
そんな風に悩んでいるときに予想もしてなかった人が来た。
この場面にてこんなに安心できる人は他にいないだろう。
「桜井さん、このまま障壁をお願いしてもいいですか?俺は今まで通り爆弾の処理をします。」
「分かりました。・・・無理はしないでくださいね。」
「はい。桜井さんもですよ。俺が守るべき家族の一人なんですから。」
爆弾を処理しながら笑って答えた。
少しでも安心して無茶をしないように。
それからも何回かは爆風や金属が飛んだが桜井さんはそれらを全て防いでくれた。
障壁はまったく揺らぐことがなかった。
さすがは桜井さんだ。
そして漸く終わりの時が来た。
「―――――〔
銃弾がエネルギーに分解され、水平線の向こうに閃光が生じた。
西の水平線が眩く輝き、爆音が轟く。
誘爆する間もなく、全ての燃料と爆薬が一斉に爆ぜた。
そして砲撃が途絶え、不気味な音が響く。
「津波だ!退避!」
風間さんが叫ぶのと同時に真田さんが桜井さんが乗ってきたバイクに跨った。
タンデムシートには達也が乗っている。
俺と桜井さんは飛ぶように駆ける風間さんの横を走っていた。
「風間さん、桜井さんを連れて先に行ってください。」
「悠真君はどうするつもりだ。」
「津波を止めます。その後追いかけますので。」
言うが勝ちとばかりに返事を聞かずに来た道を少し戻った。
後ろからはバイクが走る音がするのできっと桜井さんも行ってくれたはずだ。
そして前から来る津波を見て振動系広域減速魔法〔ニブルヘイム〕を発動した。
白い冷気の霧が周囲に広がり、海を波ごと凍らせた。
次に加速と移動魔法を使い、今でき得る限り最速で走った。
それまでに魔法を使いすぎたのと〔神速〕を使って全力で走り帰ったためその後倒れてしまい、後日、桜井さんによる説教があったのは言うまでもない。