あの戦いの後の沖縄での6日間は平穏無事の一言に尽きた。
深雪は深夜さんから全てを聞き、達也のことを普通の兄妹以上に慕うようになった。
深夜さんもそのことに関して特に言ってくることもなく普通に過ごしていた。
唯一あったことと言えば、桜井さんの説教を受けたことぐらいだろう。
でも、まぁ、帰ってきた瞬間に倒れ2日間も眠っていたのだから仕方がないとも思う。
そして沖縄から帰ってきた今はと言えば、実家、四葉本家に戻り真夜のもとを訪れていた。
「ただいま、母さん。お元気そうでなにより。」
「悠真さんこそ。貴方が倒れたと聞いた時はどうしてやろうかと思ったわ。」
この言い方は相手にではなく悠真にだろう。
普通なら怪我をする原因となった相手だろうが、直前にした無事に全員で帰ってくるという約束をした以上、その言葉が意味するのは、約束したのに怪我なんてしてどうしてやろうか、というところだろう。
その言葉に少し顔を引きつらせ苦笑を漏らす。
「すみません。ですが全員無事に帰ってきたので勘弁してください。」
「ふふ、どうしようかしら。」
楽しそうに真夜は笑う。
でも本当に勘弁してほしい。
全員無事に帰ってくるという約束はきちんと守っているのだから。
「冗談よ。ところで達也さんのこと何か分かったかしら?」
「達也に残っている兄妹愛は姉さんだけだと思ってましたが、俺や他の人にも少しは向けられるらしいです。」
「そうなの。良かったわね、悠真さん。」
まるで自分のことのように嬉しそうに真夜は笑う。
「ところで母さん。今日の本題は何ですか?」
「えぇ、そうね。―――」
真夜さんが話し始めようとしたところで扉がノックされ、葉山さんが入ってきた。
「奥様、悠真様、お客様がおいでです。お連れしてもよろしいですか。」
「えぇ、構わないわ。」
葉山さんはお辞儀をすると部屋を出ていった。
お客さんなら席を外すのが普通だが、先に来ているところに真夜が呼び入れたのだから同席しても問題はない相手なのだろう。
「話はお客さんが来てからするわ。」
真夜がこう言うということは今から来るのは悠真が知っている、または関わりのある人の可能性が高い。
その上でこれからの四葉に利を齎す人ということか。
誰だろうかと考えているうちに、再びノックの音が聞こえた。
扉の方を見ると先ほどの執事、葉山さんが扉を開けており、その扉からは沖縄でお世話になった風間大尉が入ってきた。
「ようこそお越しくださいました、風間少佐。」
「本日はお時間を頂きありがとうございます。」
形通りのあいさつをしてソファーに腰を下ろした。
悠真たちの前にはそれぞれ白磁のティーカップが置かれる。
「早速ですが、先日の沖縄での一件から新しく独立魔装大隊が作られました。そしてそこに司波達也君と悠真君を特尉として入って貰いたいと思い本日は訪れました。」
沖縄にいたころから達也は気に入られていたのでその可能性は考えていたが、自分にも来るとは思っていなかった。
母さんの方を見ると黙って聞いている。
「・・・用件は分かったわ。悠真さんはどう思う。」
「申し出はありがたいですが自分はお断りさせていただきます。達也の方に関しては達也の意思と条件次第になると思います。」
「そう、では悠真さん後の話は貴方に任せます。結果を後で葉山さんにでも伝えてください。」
「よろしいのですか?」
「構わないわ。次の当主は貴方ですもの。悠真さんのしたいようにしてください。」
「分かりました。では、失礼します。」
悠真は風間さんと一緒に部屋を出た。
部屋を出てからしばらく歩いて、風間さんに話しかけた。
「風間さん、少佐になられたのですね。おめでとうございます。」
「ありがとう。・・・ところで断った理由を聞いてもいいか。」
「俺の立場と達也と深雪の為です。・・・少し待っていてください。」
風間さんを応接室に連れて行き、目的の部屋の前目で行くと扉をノックした。
「達也。」
すぐに扉は開けられ兄さんが出てきた。
「風間さんが達也に用があってきてるからついて来て。」
用件を伝えると達也はすぐに準備して出てきた。
達也と一緒に風間さんの居る応接室に行き、風間さんの向かい側に並んで座った。
風間さんから達也に説明をしてもらい達也の答えを待つ。
「良いのか、悠真?」
「良いよ。入る場合は条件をつけさしてもらうけれどこれは達也に不都合はないと思うよ。」
達也はまだ少し悩んでいるみたいだったけれどしばらく考えて決心したみたいだ。
「風間少佐、自分は入らせてもらいます。」
「そうか。・・・それで条件は?」
「深雪のガーディアンの仕事を優先させること。達也は偽名を名乗り情報を保護すること、それと四葉が不利になることをしないこと。でどうですか。」
四葉の次期当主として四葉を護れるように、そして達也と深雪に少しでも自由があるように条件を考えた。
「了解した。ではここで失礼させてもらう。」
風間さんは見送りを断り、帰っていった。