巻き込まれた図書委員   作:名前はまだ無い♪

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今回はオマケもあります


episode.8「伝伝伝」

 あれから数日、穂乃果達に変わった事は特に見当たらない。敢えてあげるとしたら、あの穂乃果が毎朝キチンと起きて朝練に行けてるくらいのものかな?

 

「お~い友実~」

「なんですか遥さん。と言うより遥さんが図書室にいるなんて珍しいですね」

「失礼だぞ、友実。これでも私は委員長なんだからな?」

 

 委員長の自覚があるならもっと真面目に働いてくれはしませんかねぇ? してくれそうにないんだよなぁ。

 

「それは失礼しました。ですがどうしてここに?」

「いや、だから。私も図書委員なんだけど」

「それは知ってますよ。仕事以外で遥さんが来るのは茶飯事だとして、今日も暇潰しですか?」

 

 ぶっちゃけその可能性が一番高いんだよね。だって仕事をしないで有名な遥さんだし。

 

「友実、今何か失礼な事考えなかった?」

「……いえ、考えていませんでしたよ?」

「今の間はなにさ」

「なんでもないですよ~」

 

 さてと、仕事仕事。今日は生徒会の仕事も無いし、お母さんから手伝いとかも頼まれていない。本当なら帰って未読の本を消化したい所だけど、委員会が優先かな。

 

「っと。少し失礼します。少しお電話を」

「はいは~い。どうぞ~」

 

 遥さんとカウンターで話していると突然携帯が鳴った。遥さんに一言断って廊下に出る。画面には「東條希」と表示されていた。なぜに東條さん?

 

「はい東野です」

『あ、東野さん? 今どこにいるん?』

「図書室前ですけど……生徒会の仕事ですか?」

『そうなんやけど、今抜けれそう?』

 

 東條さんの言葉に一瞬チラリと図書室を見る。中では遥さんと他の役員の2人が暇そうに欠伸を漏らしていた。

 

「大丈夫ですよ」

『ほな今から生徒会室に来て貰ってもええ?』

「分かりました。少しお待ち下さい」

 

 電話を切り遥さんに生徒会室に行く事を伝えると、手を振って「早よ行き〜」と送り出してくれた。取り敢えずもう一人の役員の子には後でお礼をしよう。

 

「お疲れ様です」

「東野さん急に悪いわね」

「いえ大丈夫でしたよ」

 

 入室一番絢瀬さんに謝られた。実際暇してたから別に良いんだけど……

 

「えっと、それでお仕事というのは……?」

「ちょっと行って欲しい所があって」

「行って欲しい所、ですか?」

 

 絢瀬さんに渡された紙には校内のとある部屋の名前が書かれていた。

 

「ここに行けばよろしいんですか?」

「ええ、少し書類に不備があってね。それが今日締め切りの書類なのよ。でも私と希は手が離せないし」

「だから東野さんにお願い出来たらな〜と思ってん」

「……分かりました。それでは行ってきますね」

 

 そろそろ話しておきたいと思っていたし、ちょうど良かった。二人に一礼し生徒会室を出てから先程指示された教室に向かう。向かった場所、そこは……

 

「ここがアイドル研究部……」

 

 そう先程渡された書類の部活動名には、穂乃果達が部活申請した時に確認した「アイドル研究部」と書かれていたのだ。

 

「礼儀としてノックから、かな?」

 

 コンコン、とノックするも返事はない。う〜ん居留守かな? それなら根競べと行こうではないか! 勝負だこの部室の主、矢澤にこさん!

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン

 

「さっきからうるさぁい!」

 

 あ、やっと出て来た。さすがの私もノックする手が痛くなって来たからこの勝負は引き分けか。取り敢えず

 

「どうもこうして話すのは初めましてですね。私あなたと同じクラスの」

「東野友実でしょ」

「ご存知なのですか?」

 

 一二年生に有名なのは知ってたが、まさか矢澤さんまで知っているなんて

 

「そりゃあ生徒会の三大美女で有名だし、何よりクラスメイトなんだから知らないとおかしいでしょ?」

「……確かにその通りですよね」

 

 ごめん矢澤さん。私あの日絢瀬さん達に言われるまであなたがクラスメイトだって知らなかったの。

 その事で少し罪悪感を覚えて返すまでに少し間が出来たのは仕方のない事。だから疑わしい目でこっちを見ないで下さいお願いします。

 

「それで少しお時間よろしいでしょうか?」

「……ちょっと待ってなさい」

 

 それだけ言うと矢澤さんは扉を閉める。少ししてから中からドタバタと騒がしい音が扉越しに聞こえてくる。そして静かになったと思ったら矢澤さんが再び扉を開ける。

 

「お、お待たせ」

「あ、はい」

 

 矢澤さんに続いて中に入ると、中はアイドルグッズで溢れていた。

 

「……凄い…ですね」

 

 あまりの凄さに一瞬素の口調になってしまった。

 

「でしょ。これ全部私が持ち込んだものよ」

「という事は全て私物……なおさら凄いですよ」

 

 壁には人気のスクールアイドル「A-RISE」や最近人気が上がって来ている「midnight cat's」昔からある「Blue dock」他にも名前は知らないまでも見たことのある顔や聞いた事のあるCDが多くあった。

 

「これは……?」

「あぁそれは伝説のアイドル伝説DVD全巻BOXよ」

「伝説……?」

「そうよ。あまりの希少価値に伝説の伝説の伝説、略して「伝伝伝」と言われてるのよ」

 

 首を捻る私に矢澤さんは熱く語り始める。それから数分で分かった事はその希少価値の高い「伝伝伝」を矢澤さんは3つ保持してる事と、スクールアイドルが好きでアイドルを目指している事。

 

「って違います違います。この書類のここ、書き漏らしがありましたのでその要件で来たんでした」

「え、と……これで良い?」

 

 矢澤さんに紙を渡して漏れている部分を指摘するとサッサと書き、紙を返してくる。

 

「……はい、これで大丈夫です」

「まさかこのにこが書き漏らしするなんてね」

「人は失敗する生き物ですからね」

 

 溜め息を漏らす矢澤さん。私は壁際の棚に行き雑誌を手に取りペラペラとページを捲る。

 

「ってあなた私を無視してるでしょ!?」

「いえ、私の身近にスクールアイドルが多いので少し理解を深めようかと思いまして」

「へぇ身近にねぇ。誰とかある?」

 

 誰とかって事は多分グループ名だろう。そう言えばお母さん達のグループ名は知らないな、今夜にでも聞いてみよう。

 

「二つあるんですけど、片方のグループ名は分からないんですよね」

「身近な人達なのにグループ名を知らないの?」

 

 いやまぁ、疑問に思うのはごもっともですけど、知らないものは知らないし。むしろあの時はお母さんがスクールアイドルやってた事の方が衝撃だった訳だし。

 

「ちょっと意外な出来事でしたので」

「そう。因みにメンバーの名前とか言える?」

 

 ……お母さんの旧名ってなんだっけ?

 

「えと、下の名前しか知らないのですけど、友子と裕美香です」

「友子と裕美香……? もしかして三人組の「Suono」の事?」

「Suonoって確かイタリア語で「音」って意味ですよね?」

「そうなの?」

 

 て言うか三人組って事はお母さんと穂乃果のお母さん、他に一人いるって事だよね?

 

「あの、その「Suono」について教えて下さい!」

「う〜ん、にこも教えたい気持ちは山々なんだけどね〜。なにせ10年以上も前のグループだからそんなに知られてないのよ。逆にあなたは良くそのメンバーを知ってたわね」

「偶々人伝に聞いたので」

 

 言えない。実はそのスクールアイドルがお母さんとその知り合い達だなんて口が裂けても言えない。

 

「で、もう一つは?」

「……え?」

「さっき二つあるって言ってたじゃない。一つは「Suono」、もう一つのグループは何?」

 

 なんだろう。この「昔のグループを出して来るにはもう一つも有名どころなのでは?」といった感じの期待の篭った目。

 

「み、「μ's」です」

「……今、なんて?」

「「μ's」、ギリシャ神話に出てくる九人の女神をモチーフとして名付けられたと思われる、この学院のスクールアイドルグループです」

 

 話していく内に矢澤さんの顔が怖くなっていくのが分かる。

 

「そう」

「はい。まだ無名ですけど、きっと……」

「私はあれをスクールアイドルとして認めないわ」

「……彼女達を知ってるんですか?」

 

 矢澤さんの言い方だと穂乃果達の事を知っている。知っていて嫌っているのだろう。だからこそのこの質問

 

「少し見かけただけよ。校門前でビラを配ってたのをね」

「あぁ、あれですか」

 

 衣装が出来た翌朝、穂乃果の家のポストに一枚のCDが入ってたらしい。その日から朝は神田明神で練習、昼は授業、六時間目が終わってからビラ配り、その後学校の閉まるギリギリの時間まで屋上で練習といったサイクルで穂乃果達は過ごしてるらしい。

 矢澤さんが見たのはビラ配りの時だろう。

 

「それにしてもあなた凄いわね」

「何がですか?」

「そのキャラ作り、完璧に近いじゃない」

 

 なぜバレたし! え、なにかボロ出した? まさかそんなはずない。何年このキャラを演じてきたと思ってるんだ。音ノ木に入ってからだから大体二年ちょっとだぞ! あれ、意外と短い……ま、まぁそれは置いといて。取り敢えず惚けておこう。

 

「あの、そのキャラ作りと言うのは……?」

「この数分話しただけであなたに何か違和感を覚えたのよ」

「違和感、ですか」

 

 まぁ演じてる以上何かしらの違和感は覚えるのは当然だよね。でも初対面、しかも数分話しただけで見抜かれたのは初めての経験だよ。因みに何人かの人にはバレかけてると思う。

 

「本当のあなたの話し方って今の大和撫子風のとは反対なんじゃない?」

「……ハァ」

 

 ここまで見抜かれてるならもう隠す必要ないかな。元々このキャラを演じてたのだって高校デビュー的な意味合いが強かっただけだし。え? それにしては長過ぎ? 知らんよ。

 

「バレてるなら仕方ないね」

「そう。それがあなたの本当の話し方なのね」

「そうだよ。じゃあ改めまして、東野友実です」

「矢澤にこよ。それにしても大分変わったわね」

 

 そうかな。自分の中じゃそんなに変わった感じしないけど。

 

「そうそう矢澤さん」

「なに?」

「私の演技を初対面で見抜いたのはあなたが初めて。違和感を覚えたって事は矢澤さんの目が鋭いのか、それとも矢澤さんも演技をする時があるのか……」

 

 まっすぐ矢澤さんの目を見て言うと、矢澤さんもジッとこちらを見てくる。しばらく見つめ合ってると矢澤さんが溜め息を吐いた。

 

「えぇそうよ。私もアイドルを目指してる以上ある程度の演技はするわ。だから分かったのかもね」

「へぇ矢澤さんの演技も見てみたいなぁ」

 

 チラッと見ながら言うと矢澤さんはとても迷った表情をしていた。まるで目玉焼きに塩胡椒をかけるか、醤油をかけるか迷ってるみたいに。あるいは風呂上がりに牛乳を飲むか、フルーツオレを飲むか迷ってるみたいに。

 

「し、仕方ないわねぇ、特別に見せてあげるわよ。こっちだけ見てそっちが見ないんじゃ不公平だし」

 

 そう言うとクルリと回転し、こちらに背を向ける。それから振り返ったと思ったら

 

「にっこにっこにー。あなたのハートににこにこにー。笑顔を届ける矢澤にこにこー。にこにーって呼んでラブにこっ!」

 

 両手の中指と薬指だけを折って残りは伸ばした手のポーズ、矢澤さんの名前から取ってにこにーポーズと名付けよう!

 

「どう?」

「にこにーは凄いね。とってもあざとかったよ!」

「あざとい言うな!」

「でもあざとかったし」

 

 他にも幾つかパターンを持ってるのだろうか?

 

「にこにーはそのキャラ何年やってるの?」

「結構長い事やってるわよ。それこそ音ノ木坂に入る前から」

「ふ〜ん……もしかしてにこにー妹とかいる?」

 

 なんとなく思った事を聞いてみると肩をピクリと震わせた。あ、これ当たったやつだ。

 

「なんでそう思うの?」

「私も妹いるからさ、なんとなくそう思っただけ。っとそうだそろそろ私生徒会室に戻らないと! じゃあね矢澤さんまた今度話そうね!」

「そうね、またいつでもいらっしゃい。放課後は大体ここにいるから」

「私は大体図書室か生徒会室にいるから。あ、言い忘れてたけど、私がキャラ作ってるのは」

「分かってるわよ。皆には言わないでおくわ」

 

 おぉ、矢澤さん良い人! あ、呼び方を戻した理由は流れで「にこにー」呼んでたけど、よく考えるとちょっと恥ずかしいからだよ。

 

「ありがとうね。それじゃあまた!」

「えぇまた」

 

 こうしてアイドル研究部の部室を出て行き、生徒会室に戻る為に廊下を歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「矢澤さーん! 書類忘れたー!」

「ちょっとふざけんじゃないわよ!?」

 

 再び友実はアイドル研究部に駆け込んだのだった。

 

 




【音ノ木チャンネル】
友「えーと、取り敢えず皆さんこんにちは。司会進行のはずの東野友実です」
穂「やっほー! 高坂穂乃果です!」
友「穂乃果は元気だね〜」
穂「むしろお姉ちゃんすこしテンション低くない?」
友「さていきなり始まったこのコーナー。なにを話して何をするのか、目的は一体なんなのか。その全てが謎の【音ノ木チャンネル】始まったキッカケは些細な事だった」
穂「もう一つの作品でも書いてて需要があるらしいからお試しで書いてみたんだって」
友「もちろんお試しなので必要ないと思った方は感想欄でおっしゃって下さいな」
穂「向こうの【音ノ木チャンネル】と同じ事をするならここで話す事は大体その回のメタいところだよね!」
友「ちなみに時間軸も曖昧だから、知ってる事も知らなかったり、知らない事も知ってたりするから下手するとこんがらがるかもね!」
穂「今までこっちでやらなかった理由はオリキャラがお姉ちゃん一人だったからなんだって」
友「まぁそうでしょうねぇ。向こうじゃオリ主が三人とかふざけた事してるし。まぁ? 向こうの【音ノ木チャンネル】に出た時は楽しかったけど」
穂「え! お姉ちゃん向こうの【音ノ木チャンネル】に出たの!? 良いなぁ〜羨ましいなぁ〜」
友「はいはい。じゃあそろそろ締めるよ」
穂「は〜い」
友「それじゃあ、せーのっ」

『バイバーイ』

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