「雪穂、亜里沙おはよう」
「あ、友香おはよう」
「挨拶してる場合じゃないよ? 急がないと遅刻しちゃうじゃん!」
「まったまた〜雪穂ったら冗談が過ぎるって……」
雪穂の冗談を笑い飛ばしながら腕時計を確認すると、確かに時間に余裕は無かった。
「誰のせいでこんな時間に!?」
「友香のせいだよ!」
「そんな事より二人とも早く行こう?」
亜里沙の言葉に私達は急いで学校に向かう。あ、自己紹介がまだでしたね。知ってると思いますが、私東野友香です。
今回はスピンオフと言う事で私の中学校生活を少しだけ見せたいと思います。本当にちょっとですよ? 決して着替えシーンとかは見せませんからね?
「友香〜早く早く〜!」
おっと、亜里沙が校門の向こうで跳ねながら呼んでいるのでもう行きますね。
「ごめんね〜今行く〜」
「まったく、ボーッとして何考えてたの?」
「今日の一時間目って何だったっけ?」
「確か数学だよ」
ヤバ、宿題持ってきたっけ……その前に宿題終わってたっけ?
慌てて鞄の中を探ると数学のノートが出て来た。
「友香、もしかして宿題やってないの?」
「まさか。さすがに終わってるはずだよ」
「はずって……もしやってなくても手伝わなからね。亜里沙も見せちゃダメだよ?」
「う〜ん。でも雪穂。それは少し可哀想だよ」
「良いの。二日前に確認した時「大丈夫! ちゃんと終わらせてみせるよ!」って言ってたんだから」
「ちょっと雪穂、なんで宿題やってない事前提で話してるのよ!」
「え、終わってるの?」
うわ、その心からの意外そうな顔が心にだいぶ来るんだけど……まぁ昨日お姉ちゃんにお願いして教えながらやったから大丈夫……多分。いやーお姉ちゃんが数学苦手って本当だったんだね。昨夜実感したよ、うん。
そんな事を話しながら教室に入り、クラスメイトに挨拶する。
「あ、ねぇねぇ友香ちゃん。知ってる?」
「何を?」
席に着いて教科書やノートを引き出しに移していると、隣の席の多田川恵子、通称恵ちゃんが身を乗り出して聞いてくる。
正直言うと、何を知ってるのかを言わないで聞いてくるのはおかしいと思う。だって内容が分からないと知ってるものも分からないでしょ。
「お姉ちゃん達の通ってる学校に三大美女って呼ばれてる人達がいるんだってさ」
「三大美女?」
それが自称なのか通称なのかで大分その人達の印象が変わるけど、てか誰なんだろう?
「惠ちゃんはその人達の事知ってるの?」
「うん。何でも三人の内一人が亜里沙ちゃんのお姉ちゃんらしいよ」
「ふーん」
まぁ惠ちゃん一個上のお姉ちゃんが音ノ木坂らしいからそこから情報が来てんだろうなぁ。あれ? 私お姉ちゃんからそういった話聞かないんだけど……
「ねぇ残りの二人って二年生とかなの?」
「ううん。なんでも生徒会の人達らしくてね。一人は胸が大きいおさげの先輩で、もう一人は正に大和撫子! な感じの人らしいよ」
「大和撫子……?」
大和撫子と聞いて真っ先に思い浮かんだのは三人いる幼馴染みのお姉さんの一人、園田海未さん。あの人は初心だし、黒髪を伸ばしているし、話し方や家も大和撫子っぽいけど、確か生徒会には所属してなかった気がする。
因みに私と雪穂、亜里沙の三人でいる時は雪穂が一番海未さんに近い。亜里沙はことりさんかな? て事は私は……穂乃果さん!? そう言えば何回か雪穂に「お姉ちゃんみたい……」って言われるけど、あれって褒め言葉じゃなかったんだ……
おっと話が斜め上に行っちゃったね。で、何の話だったっけ? そうそう三大美女の残り二人だったね。
「名前とか分からないの?」
「う〜ん…学年が三人とも三年生って事しか。あ、あと大和撫子さんにはファンクラブがあるみたいだよ」
「ファンクラブ……」
なんだろう……その単語最近どっかで聞いたような……
「もしかして……」
「どうしたの?」
「うん、ちょっとね」
そう言えばいつだったかお姉ちゃんが頭を抱えてそんなような事を呟いてたな……いやでも、ねぇ?
「もしかしてだけどさ。その大和撫子さんの方って図書委員会と兼任してたり、する?」
「え、どうだろう? でも何かと掛け持ちしてるって言ってたな……」
これお姉ちゃんじゃない? 多分お姉ちゃんだよね。でも、見た目は確かにそう見えなくもないけど、あの話し方で「正に大和撫子!」ってなるのかな?
「友香なんか妙に詳しくない?」
「そ、そうかな。ほら、私のお姉ちゃんも図書委員だからさ」
「そう言えばそうだったね」
良かった。なんとか誤魔化せた。ちょっと後で雪穂に確認してみよう。
☆☆☆
「雪穂。友香。お弁当食べよう」
「そうだね。せっかく晴れてるし、屋上で食べようよ」
「また友香はそうやって思い付きで言って……」
「雪穂、私からもお願い!」
亜里沙も一緒になってお願いすると、雪穂はしょうがないといった様子で頷いた。本当にことりさんと海未さんにそっくりだね。
「さ、早く行こ。時間なくなっちゃうよ」
嬉しそうに笑って手を引っ張る亜里沙を見て、私達は顔を見合わせて笑ってしまう。多分お互いに意味の分からない笑いなんだろうけど、思わず笑わずにはいられなかった。
「あ、そう言えば二人とも音ノ木坂三大美女って知ってる?」
一頻り笑った後、屋上でお昼を広げてから聞くも、亜里沙はキョトンとしており知らなさそう。この子、姉がその内の一人って事も知らなさそうだな……雪穂は雪穂でなにやら苦笑い。
「あー友香。多分それ……いややっぱなんでもない」
「雪穂今なに言いかけたの?」
「教えてよ雪穂〜」
雪穂め何か穂乃果さんから聞いてるんだね? それから仕方ない。あの方法を取らせて貰うよ!
「亜里沙亜里沙」
「何?」
「あのね……」
私と亜里沙のお願いをそっぽ向く事で拒否した雪穂を見て、私は本当のお願いの仕方を亜里沙に耳打ちする。これを二人でやれば雪穂だって。ふふふ
「いくよ? せーの」
「「おねがぁい」」
「ことりさんの真似をするんじゃない!」
「いったい!」
ことりさんの様に胸の前で手を軽く握って目を潤ませて言ったら間髪入れずにデコピンされる。これがまた痛いんだよね。
「て言うか、二人ともそんなに気になるならお姉ちゃん達に聞けば良いじゃん」
「そうだね」
「う〜んお姉ちゃんは話してくれるのかな……」
お姉ちゃんそういう事に疎そうだからなぁ。知ってるかすら怪しいよね。当の本人なら、耳に入らないようにされてるだろうから尚更だよね。
結局その日の帰宅後、お姉ちゃんに聞いたらお姉ちゃんが三大美女の一人という事が判明した。