あの撮影から数日。司書室でゆっくりお茶を啜りながら本を読んでいると、にこが飛び込んでくる。
「友実!」
「あのさ、にこ。いくら顔パス出来るからってノックもなしに」
「それどころじゃないのよ!」
「それどころじゃなくないの。まったく」
今日はいたから良いものの、私がいない時だったらどうするんだよ。
「取り敢えず座って。今お茶淹れるから」
「あ、うん、ありがとう。ってそうじゃなくて!」
「話は聞くから落ち着きなって」
「そ、そうね。友実の言う通りだわ」
お茶を淹れ、にこの前に置き正面に座る。
「それで? 話って何よ」
「そうだった。ラブライブよ、ラブライブ!」
「ラブライブだって!? それ本当!?」
「さすが友実ね。ラブライブを知ってるなんて」
「まぁね。ところでにこに聞きたい事があるんだけど」
「何?」
「ラブライブって、何?」
「知らなかったんかい!」
いやだって、ねぇ? 私スクールアイドルじゃないし、そういったサイトは見ないんだから知らないって。
「いい? スクールアイドルの甲子園、それがラブライブ。エントリーしたグループの中から、このスクールアイドルランキング上位二十位までがライブに出場、No. ワンを決める大会なの。噂には聞いていたけどついに始まるなんてね」
「詰まる所、スクールアイドルの大会って認識で大丈夫?」
「まぁ、そうね。そんな所」
なるほど、大会か……なおさら私に関係ないね。
「ところで今μ'sは何位なの?」
「え……と、ちょっと待ってね」
にこが慌てたように携帯を操作する。二十位以内って何組中なんだろ? 場合によってはキツイんじゃないか?
「あったあった。これよ」
「どれどれ。五十六位か……あと少しだね」
「……そうね」
おい今の間はなんだ。目を逸らすな。こっちを見ようか。
「それで?」
「いや〜参加するとか考えてなくて」
「でも穂乃果だと「優勝目指して頑張ろう!」とか言いそうだけど、穂乃果達にはこの事伝えたの?」
「い、今から行こうと思ってたのよ」
「そう。いってらっしゃい」
司書室から走って出て行くにこを、手を振って送り出す。あ、松田先生に止められて怒られてる。私に救援の視線を送るも、ごめんねにこ、私も図書館内で走ってたら怒る方なんだ。
「良いの? にこちゃんを助けなくて」
「あ、遥さん。ちゃんと受け付けやってますか?」
「失礼な。私だって受け付けくらいできらぁ」
それは何より。その調子で委員長業務も頑張って下さい。
「そうじゃなくて。にこちゃん、良いの?あのままで」
「図書室内を走っていましたので、私は松田先生側ですよ」
「そっか。何て言うか割り切ってるもんだね」
「いえ、私は公私を混合させてないだけですよ」
「それを割り切れてるって言うんじゃないのかな〜」
遥さんも面白い事を言う。これでも割り切りは悪い方だよ、私は。
「ほら遥さん。仕事が溜まってますよ」
「え? でも受け付けには人がいないよ?」
「返却本が溜まってますよ?」
「友実の鬼ぃぃぃ」
はいはい。図書室ではお静かにね。
「あ、私はもう帰りますね」
「え! 手伝ってくれないの!?」
「今日私当番ではないですし」
それにそろそろ期末試験が近いからね、家に帰って勉強しないと。順位が上がった分だけお小遣いが増えるからね、ウチは。本を買う為に頑張るよ。
☆☆☆
「お姉ちゃん、ご飯だよ〜」
「……ん? あぁもうそんな時間か。うん今行くよ」
集中してると時間が経つの早いね。家に帰ってから今までだから、えーっと、二時間半くらいか。結構やったな。
「勉強どう?」
「うん。相変わらず数学以外は順調」
「数学って。やっぱり親娘って似るものなのね」
食卓に着き、ご飯を食べ始めるとお母さんがいきなり聞いてきた。いや、まぁ期末は来週だからね、気になるのも仕方ない……のかな?
て言うかやっぱりって事はお母さんも苦手なんだ。お母さんに教えて貰おうと思ったのになぁ。
「友香はどうなの? 友香もそろそろでしょ?」
「う、うん。まぁ私はぼちぼちだよ」
「大丈夫なの? 友香も今年受験生でしょ?」
「そういえば友香ってどこ受けるの?」
「さ、さぁね〜」
気になり隣で食べてる友香に聞くも、はぐらかされてしまった。
「お母さん知ってる?」
「え? まぁね。このままじゃちょっと遠くの方になりそうだけど」
「ほら、やっぱり友香も勉強しないとじゃん?」
お母さんの言葉に友香を見ると、二人して苦い顔。どうしたんだろ?
「友実、あなた学校とかで「鈍い」とか言われない?」
「? 言われた事ないけど」
「……そう」
なんで今そんな事言うんだろ?
「まぁ分からないなら良いわよ。その内分かるから」
「は〜い」
まぁ、そこまでして聞きたい訳じゃないし、その内分かるなら別に知りたいって訳じゃないからいいや。
「ごちそうさまでした。それじゃあ勉強の続きしてくるね」
「頑張り過ぎないようにね」
「分かってるって」
ちゃんと合間に読書の時間作るから。
次の日の放課後。にこ含むアイドル研究部の全員に呼び出された。
「どうしたんですか? 揃いも揃って暗い顔して」
「あぁ友実。来たのね」
「まぁ呼ばれましたので」
むしろ呼ばれない限りここに来る用事はないんじゃなかろうか。あ、生徒会の用事でも来る事があるか。まぁ何はともあれ、私がここに来るのは珍しい。学校で私に用がある時は大抵図書室に来るからね。
「それで、なぜ私が呼ばれたのですか?」
「だってお姉ちゃんって成績良いんでしょ?」
ちょっと待とう、どこからその話が出た。私は成績は良くない。何度も言ってる気がするが、私の成績は中の上、良くて上の下だ。しかも得点の大体を文系で賄っていて理数系は平均よりちょい下辺りだ。
「因みに聞きますが、教えて欲しい科目は……?」
「穂乃果とにこ先輩は数学、凛が英語です」
「すいません。お力にはなれそうにないです。失礼しました」
海未から科目を聞かされた瞬間綺麗にお辞儀してそのまま部室を出る。
さて帰って勉強勉強っと……背後に嫌な予感!?
何やら嫌な予感がしたのでその場にしゃがみ込む。その時髪に何か当たる感触がしたので、しゃがんだまま上を見上げると二つの手があった。しかも高さ的に私の胸の位置。
「友実っち、やるやん」
「これはこれは東條さん。こんな所で会うなんて奇遇ですね。それではさようなら。ごきげんよう」
取り敢えず出した答えは逃走一択。理由? わしわしされかけたら誰だって逃げるでしょ!?
「ちょい待ちぃ」
「くっ……なんでしょう?」
「なんでくっ殺展開みたいな感じで言うん?」
そりゃあ逃げようとした所を捕まれられたらねぇ?
「……それでなんでしょうか?」
「いやぁなんで友実っち数学はともかく、英語を教えへんのかなぁ、と思ってね」
……聞き耳立ててたのかよ。
「英語を教わりたい星空さんは一年生なので、三年生の私が教えるより同学年の西木野さん、小泉さんが教えるのが適任だと思ったまでです」
「ふぅん、なるほど。あ、そうそう、それとは関係なしにテストまで生徒会の業務はお休みやから」
「はい。分かりました」
取り敢えずこれで放課後は図書室ないし、家での勉強に集中出来るって事か。
「……あの東条さん?」
「所でな友実っち。ウチ思うんよ」
なんだろう。さっきと同じくらいの嫌な予感が……
「勉強って人に教えると理解が捗るって」
「た、確かにそのような考え方もありますが」
「と、言う訳で。友実っちも参加しよ? 勉強会」
嫌だぁぁ!! 私の読書タイムがぁ……音楽流しながらベッドにダイブする楽しさがぁ……椅子ごとひっくり返って転げ回るハプニングがぁ……最後のはいらないな。うん
となんやかんやしてる内に気付けばアイドル研究部の部室の中にいた。ホワッツ?
【妹ラジオ】
亜「友香、頑張って! あと少しだよ!」
友「どうしよう緊張してきた。ここまで来た事なかったからなぁ」
雪「……」
亜「あと、あと一段で完成だよ!」
友「落ち着け私。大丈夫。下段のバランスは絶好調。行ける!」
雪「……ねぇ、もう始まってるよ?」
友「なんだって!? ……あ」
亜「あ〜。トランプタワー崩れちゃったね」
友「うぅ……雪歩のバカー」
雪「いやなんでよ。始まってる事に動揺して崩したの友香じゃん」
亜「ま、まぁまぁ。それより始まってるでしょ?」
友「そうだったそうだった。じゃ、いつもの行こっか」
雪「え!? いつもの!?」
友「せ〜のっ」
「「妹ラジ!」」
雪「い、妹ラジ……? て、それ何!?」
友「何っていつもの掛け声……?」
雪「なんで疑問系なのかな」
亜「そ、そんな事より振り替えらない?」
友「そ、そうだね。振り替えろう!」
雪「あ、話逸らした」
亜「友実さんってそんなに数学ダメなの?」
友「ダメ……みたいだね」
雪「意外だよね〜。友実姉ってそういった苦手なものはサッサと克服しそうなイメージなのに」
友「それは違うよ。お姉ちゃんって苦手なものは偶に触る程度にしか触らないよ」
亜「へぇ〜意外だね」
雪「そこはお姉ちゃんと同じなんだ……」
友「ま、ともかく今回はここまで!」
亜「次はお姉ちゃんの誕生日の日に投稿ですよ!」
雪「それじゃあ」
『またね!』