「友実ちゃーん。こっちにゃー!」
「星空さん。女の子が大きな声を出すものじゃないですよ」
「は、は〜い」
「はい、よろしいです」
あ、今仮面被ってるのは場所が校門前だからだよ。それにしても放課後なのに凛は元気だな。
「では行きましょうか」
「うん!」
凛は元気に頷くと腕に抱き着いてきた。ことりといいμ'sメンバーは腕に抱き着くの好きだな。まあ良いけど。
さて、そろそろ離れたし良いかな。
「凛。待ち合わせたの良いけど、どこに行きたい?」
「凛はプラネタリウムに行きたいにゃ!」
「ん、了解。それにしても昨日は驚いたよ。図書室に来たと思ったら明日出掛けようって」
「ご、ごめんなさい」
「いやいや、別に怒ってないよ。ただ驚いただけだから」
シュンとしている凛の頭を撫でる。やっぱりサラサラしてるな。
なでなでなでなでなでなでなでなで
「にゃー!」
「ゴロゴロ」
「にゃ、にゃあ」
可愛いな。持ち帰って飼いたい……お母さんに猫飼う事相談してみようかな…….
「あ、あの友実ちゃん。そろそろやめて欲しいにゃ〜」
「そうだね。いつまでもノンビリしてても時間勿体無いしね」
多分この後もどこかに出掛けんだろうし、プラネタリウムは一回の上映に十五分掛かるからタイミングが悪いと待つんだよね。
「さ、早くいっくにゃー!」
「ちょ、走って行くの!?」
「楽しい事は急げ、にゃ!」
「それを言うなら、善は急げ、だから!」
て言うか、凛走る早い……ダメだ。もう歩こう。幸い私も凛もプラネタリウムの場所は知ってるから向こうで落ち合えるでしょう。
と、一人のんびり歩いてると
「あ、戻って来た」
目に薄っすらと泪を浮かべて凛が戻ってきた。元気だなぁ。
「友実ちゃん酷いにゃ! なんで凛だけ先に行かせるの!?」
「え、いや、凛の体力に私がついていける訳ないでしょ」
「で、でも〜」
「はいはい。ほら泣かないの」
泣きそうになった凛をそっと抱き締める。意外とこれをやると泣き止む人が多いんだよね。小さい時の穂乃果達然り、友香しかり。
案の定凛は気持ち良さそうに胸に頬を摺り寄せる。うん可愛い。
「よしよし」
「うぅ……もう凛だけ先に行かせない?」
「それを言うなら、私を置いていかない様にしてね」
「うん」
凛の頭を撫でながら言い聞かせるように言うと、凛は素直に頷く。
「さ、一緒に歩いて行こう」
「うん!」
凛は元気良く頷くと、先程同様腕に飛び付いて肩に頭を預けてくる。
「凛ってお姉ちゃんいる?」
「お姉ちゃんなら友実ちゃんがいるにゃ」
「いやそうじゃなくて。家にいるの?」
「……一人お姉ちゃんがいるけど、いつも苛めてくるんだもん」
苛めてくるってどんな感じだ? 言ってる感じからして暴力や陰湿な感じではないだろう。
「因みにどんな事されてるか、聞いても良いかな?」
してる事によってはちょっと同じ姉として注意させてもらおう。
「うん……凛が女の子っぽい服装してるといつも意外そうな顔で見てくるの」
……うん? それってもしかして
「ねぇそれってさ。苛めてるんじゃなくて、ただ凛が滅多に女の子っぽい服装しないから嬉しがってるんじゃないの?」
「そ、そんな事無いよ! だって小学生の時だって凛にスカートとか履かせようとするし」
名前も知らぬ凛のお姉さん、ご愁傷様です。あなたの妹への愛情はどうやら間違った方へと曲がってしまったようです。
「じゃあさ、もし、このあと私が凛ちゃんにスカートやらワンピースやらをプレゼントしたら、凛ちゃんどうする?」
「え!? それは……友実ちゃんが凛の為にプレゼントしてくれたから嬉しいけど……」
貰うには貰うけどたぶん履く事はないだろう、か。う~ん思ったより凛ちゃんの抱えてる闇は深いな。まぁ別に私がどうにかしなくてもきっと真姫や花陽達がどうにかするでしょ。μ'sとして関わっててなおクラスメイトと私よりも親密な関係だろうし。
「そっか。じゃあ湿っぽい話はこれで終わりにして、プラネタリウムを楽しもっか!」
気付けばプラネタリウム前に着いていた私達。元気にはしゃぐ凛を横に、受け付けに行って二人分の券を買う。その時にチラリと上映時間を見たら、タイミングの悪い事に数分前に始まってるみたい。
「運が悪いのか、タイミングが悪いのか……」
取り敢えずロビーに置かれてる恐竜の全身骨格を眺めている凛の所に行こっと。
「にゃ〜……」
「凛って恐竜好きなの?」
「ううん。でもよく穂乃果ちゃんから聞かされてるから、少し興味が湧いてきたんだ〜」
あ〜。確かに穂乃果は恐竜詳しいからね。偶に聞かされますよ、えぇ。
「あ、そうだ凛ちゃん。はいチケット」
「ありがとうにゃ! あ、お金、出すよ」
「いいのいいの。このくらいはお姉さんに任せなさいな」
「そ、そう? じゃあ」
うむ。別にチケット代はそんなに高くなかったからね。問題はこのあとの十数分をどう過ごすか、なんだよなぁ。
「凛、時間まで何して暇潰ししてる?」
「ふっふっふ、友実ちゃん。否、友実お姉ちゃん。ここに来ての時間潰しは決まってるんだよ」
顎に手を当てる凛。サスペンスもののドラマでよく見る探偵が取るポーズって、実際に目の前でやられるとなんかイラッとする。
「にゃにゃにゃにゃ!? いきなり何するの!」
「いや、なんかイラッとしたから」
「酷いにゃ〜」
涙目の凛を宥めつつ、櫛で髪を整える。うんバッチリ。
「ほぇ〜。前にもやって貰った事あるけど、友実ちゃんって髪整えるの早いよね」
「そう? まぁ他人の髪だから鏡見ながらやるよりかは早いし、凛の髪ってサラサラしてるからやりやすいんだよ」
まぁ髪が長い私より、短い凛の方が整えやすいってのもあるけどね。
「私もショートにしてみようかなぁ……」
「えー! 友実ちゃん切っちゃうの?」
え、なんで凛は残念そうな顔をするの?
「凛、友実ちゃんの髪結構好きだよ?」
「そ、そう? じゃあ切るのやめよっかな」
にしても単純だな、私。まぁ元々切るつもりなかったけど、それでも褒めて貰えると嬉しいな。
「それで凛」
「あ、友実ちゃんの顔赤いひゃ〜」
「それで凛、どこで時間潰すの?」
「ほほのひはへはほへふひゃ〜」
ちょっと何言ってるか分からない。それにしても凛って頬も柔らかいな。
「うにゃー!」
「あっ……」
「友実ちゃんいくら言っても止めてくれないんだもん! 酷いにゃ!」
「だ、だって。凛の頬予想以上に柔らかいし……なんか可愛いんだもん!」
「か、からかわないで欲しいにゃ」
う〜ん。別にからかってる訳ではないんだけどなぁ。
「と、とにかく、時間を潰すなら良い所があるにゃ!」
「て言ってもあと十分弱だからそんな遠くには行けないよ?」
「だいじょーぶ!」
凛に連れられやって来たのは図書館。図書館と言うには少し小さく、音ノ木の図書室よりも小さいかな?
「ここなら友実ちゃん暇しないでしょ?」
「まぁ確かに暇しないだろうけど……」
凛は良いのだろうか? ここって他にも体を動かす体験型常設展示コーナーがあるからそっちのが良いんじゃなかろうか?
「あ、見て見て友実ちゃん。星の本だって!」
本を手にこちらに向かってくる凛を見て特に問題ないと判断。
「凛。図書館では静かに、だよ」
「は、は〜い」
それにしても星の本か。これからプラネタリウム見るし、凛は星が好きなんだなぁ。まぁ好きな物事を前にした時のテンションの上りようは分からんでもないが。
「ねぇねぇ、友実ちゃんこの星座知ってる?」
「凛、バカにしないでもらえる? 夏の大三角形くらいは知ってるよ」
「だよね! 夏の大三角形ってデネブ、ベガ、ペテルギウスの三つの星から出来てるんだよね!」
「凛、それ冬の大三角形と混ざってるから。夏の大三角形はデネブ、ベガ、アルタイルだよ。因みに冬の大三角形はシリウス、プロキオン、ペテルギウスね」
て言うかアルタイルを間違えるって珍しいと言うかなんと言うか。この前友香に聞いたらデネブをデブって言ってた。デネブが何をしたって言うんだ。
「あちゃー、凛とした事が。そう言えばさ、夏と冬は聞くけど春と秋はそう言うのないの?」
「あるよ。アークトゥルス、スピカ、デネボラで春の大三角形。アルフェラッツ、シェアト、マルカブ、アルゲニブから出来てるペガスス座の胴体部分の秋の四辺」
「ほぇ〜、そんなにあるんだ〜。て言うか友実ちゃんよく知ってるね」
まったくだ。なんでこんな事を知って……あぁ思い出した。先週友香に聞かれて調べたんだった。
「友実ちゃんも星好きなの?」
「え? あーうん。どちらかと言うと好きな方だよ」
何か悩み事とかあったら見上げたりするし、偶に見上げると綺麗だったりするんだよね
「凛も星好きなんだね」
「うん! 希ちゃんにね「せっかく星空凛って言うくらいだから、星を好きにならんとね」って言われてから調べたら、気付いたら好きになってたにゃ」
「そっか。希が、ね」
そういや希は南十字星が好きって言ってたな。どこまで行ってきたんだろ?
「希ちゃんはペンギンさん達と見たんだって。羨ましいにゃ〜」
まさかの南極でしたよ。え? て言うか希って南極に行った事あるの!? そこに驚きなんだけど!
「あ、そろそろ時間にゃ!」
「あ、ほんとだ。じゃあ行こっか」
凛に言われ時計を見ると、確かにそろそろ交代の時間だ。取り敢えず読んでた本を棚に戻し、職員の人に一礼してから図書館を出る。
「早く早く〜!」
「凛、急がなくてもプラネタリウムは逃げないから。もう少し落ち着きなって」
凛に手を引かれプラネタリウム内に入り、後ろの方の席に座る。気のせいかもしれないけど、プラネタリウムって後ろの席の方がよく見えるんだよね。
会場が暗くなり、スタッフのナレーションが始まる。
それから十五分の間は私と凛、二人とも喋る事なく映し出された星を眺めていた。
「綺麗だったね!」
「そうだね。また来たいね」
「うん。ぜ〜ったいに来ようね!」
「分かった。分かったきらそんなに腕を振らないで痛いから」
元気なのは良いんだけど、手を掴んだまま振り回すのは勘弁願いたい。
「さて凛。次はどこに行く?」
「え?」
「いや「え?」じゃなくて、今日は凛の誕生日なんだからなんか買ってあげるよ」
「ほ、ほんと!」
「まぁせっかくだしね」
さてさて何を買いに行こうかしらん?
「じゃあ凛のオススメの場所に行きたいにゃ!」
ん? オススメ?
☆☆☆
「ごちそうさまでした!」
「ご、ごちそうさまでした」
思いの外量がありました。え? もちろんラーメンだよ。晩ご飯代わりのラーメン。暫くラーメンはいいかな。
「さてと。それじゃあ凛。買い物に行こうか」
「うっ……誤魔化せれなかったにゃ」
こらこら聞こえてるぞ〜。ていうかなんで誤魔化そうとしたんだよ。
「い、いいよ。プレゼントなんて」
「なんで?」
「だって友実ちゃん。そう言って凛に女の子っぽい服買う気でしょ?」
あーはい、理解しましたよ。あれでしょ? 「私が可愛い服買ったらどうする?」って話のやつが尾を引いてるだけでしょ。
「違う違う。でも参ったな。凛が欲しい物がないとなると……あ」
「どうしたの?」
「凛、ちょっと私の用事に付き合ってくれる?」
「? 別にいいよ?」
フッフッフ。良い事を思い付いたよ。さぁ目指すはゲーセン!
「と、言うわけでやって来ましたはμ'sがやく来るゲームセンターです」
「そんな事よりダンスゲームやろうよ、ダンスゲーム!」
「そんな勝負が分かりきってるゲームは後でやるとして、私がここに来た理由はこっち」
「クレーンゲーム?」
「Yes!」
そう、私がここに来た目的はクレーンゲーム。しかも長年続いた人気作品「タレ猫」の新しいぬいぐるみが置いてある最新版。
「でもこれって難しいって聞いたよ?」
「凛。なめてもらっちゃー困るね。私の妹は廃ゲーマーの十一歩手前だよ」
「ボケが渋滞をおこしてるにゃ」
まぁ見てなさいって。なんとか一野口さんで取れると良いな。あ、両替して来ないと。
「よし、レッツプレイ!」
「無理しないでね?」
凛の応援を背に私はクレーンゲームの前に立つ。友香からはクレーンゲームには様々なテクニックがあるのは聞いてたけど、全て聞き流してたから問題があり過ぎてむしろ問題ない。
取り敢えず始めるか。
「一回で取れると良いな〜♪ たぶん無理だよね〜♪ それは違うよ!」
「今の歌と最後の台詞は何!?」
「あ、アームが下がっていく。いけるかな?」
「凛の事は無視かにゃ?」
無視なんてする訳ないじゃんまったく。まぁ何はともあれ見事にクレーンゲームワンプレイでぬいぐるみゲット出来ましたよ。
「はい凛。私からの誕生日プレゼント」
「え? でもこれ二つ……」
「そ、二つともプレゼントだよ」
運の良い事にワンプレイで二つも取れた。いや〜良かった良かった。店側からしてみればやられた感じだろうけどね。
「……」
「凛?」
渡されたぬいぐるみをジッと見つめる凛。もしかして持ってたりいらなかった?
「友実ちゃんに一個あげるにゃ」
「いいの?」
「もちろん! 取ってくれたお礼!」
「嬉しい事言ってくれるねぇ」
そういう事ならありがたく頂くよ。
「これでお揃いだね!」
「そうだね」
「ペアルックだね!」
「そうd……それは違う!」
ペアルックじゃないだろ。いや、合ってるのか……? でもペアルックって男女でやるもんじゃないのか? ……まぁどっちでもいいか。
「ま、何はともあれ凛。誕生日おめでとう」