「ねぇ友香って再来週の土曜日暇?」
「まぁ暇って言えば暇だよ」
雪穂に予定を聞かれるも、再来週の予定なんてまだ何も入ってないから一日暇だけどさ。
「じゃあちょっとお出かけしよっ!」
「良いよ~偶には息抜きしないといけないもんね」
私が頷くのを見て喜ぶ亜里沙と雪穂。休日に出掛けるだけなのに、大袈裟だなぁ……にしても再来週の土曜日、何か大事な事があった気がするんだけど、なんだっけ……?
そう思ってたのがつい昨日のよう。いや、実際に昨日の事なんだけどね? そして今、目の前には私と雪穂に両手を合わせてお願いしている亜里沙がいる。
「二人ともお願い! 今日ウチに来てくれない?」
「良いよ~」
「まぁ私も今日用事ないから行くよ」
亜里沙がお姉さんと二人暮らしなのは聞いていたから私は即答する。もしかして亜里沙のお姉ちゃん、今日は帰りが遅いのかな? これはお泊り展開かな? ちなみに今は下校途中です。
「ま、そんなのは関係ないけどね~」
「一体何を考えてるのよ」
ジト目で私を見る雪穂。その向こうには金髪ポニーテールの音ノ木坂の制服を着た人がいた。リボンの色がお姉ちゃんと一緒だから三年かな? あれ? あの人どこかで……そう言えば亜里沙の苗字って……
「もしかして絢瀬絵里さんですか?」
「えぇ、そうだけど」
やっぱりか! お姉ちゃんからそれとなく話を聞いてたからすぐに分かったよ。
「初めまして! 私東野友香と言います。いつも姉がお世話になってます!」
「東野……? もしかして友実さんの妹さん?」
「はい。何かと粗相を働く姉だと思いますが、これからもよろしくしてください」
お姉ちゃん、言葉遣いがあれだからなぁ。中学の時とかそれで男の娘疑惑が浮上してたらしいし。なんて事を考えながら絢瀬さんを見ると、驚いた表情のあとに苦笑いをした。
「そんな、粗相なんて。友実さんには大分助けられているのよ。何かとサポートしてもらっているし」
今絵里さん何て言った? あの家では本ばかり読んでいるお姉ちゃんが絵里さんの役に立ってる……だと……!? あ、でもお姉ちゃん書記って言ってたから議事録関連で助けてるのかな?
「お姉ちゃん、それよりもなんで二人を呼んだの?」
「そうだった。三人には今度やるオープンキャンパスでのスピーチを聞いて欲しいの」
成る程。つまりスピーチの感想を言えばいいのかな。
そして始まる絵里さんのスピーチ。正直に言うとつまらない。内容は音ノ木坂の歴史についてとかなんだけど、なんでか内容があまり頭に入って来ない。そう感じてるのは私だけじゃないみたいで、隣の雪穂は夢の世界へ、その向こうの亜里沙は膨れている。
「……た」
「?」
隣の雪穂を眺めていたら、どんどん仰け反っていき、声を漏らす。私と亜里沙は顔を見合わせる。
まさか、寝言?
「体重増えた!?」
何を言ってるんだこの子は。て言うかどんな夢を見たのか、私、気になります! いや、ふざけてる場合じゃないね。雪穂の寝言で部屋に静けさが訪れた。アニメやマンガとかでよく見る光景になぜか喜びの感情があった事は
此処だけの話。
「……あ、すいません」
「ゴメンね。退屈だった?」
絵里さんが申し訳なさそうに聞いてくる。雪穂はそれを否定しながら立ち上がる。
「そんな事ないですよ! 後半すごく引き込まれましたし!」
あぁ雪穂。墓穴を掘るってこう言う事を言うんだね。て言うか今の雪穂は人前に出られない、いや、出させる訳にはいかないね。主に雪穂のために
「雪穂、たぶんまだ中盤……それに軽く涎も……」
寝ていたから本当に軽くだけど、涎が垂れてるんだよね。
私に指摘された雪穂は絵里さんに苦笑いを送ると、ポケットからハンカチを取り出し拭く。そんな雪穂をよそに、絵里さんは私達にも感想を求めてくる。亜里沙と目配せしてどちらが先に言うかを決める。
「亜里沙はあまり面白くなかったわ。お姉ちゃんなんでこんな話してるの?」
「学校を廃校にしたくないからよ」
亜里沙の質問にそう答える絵里さん。でもそれって……
「私も音ノ木坂は無くなって欲しくないけど、でも……これがお姉ちゃんのやりたい事?」
結局亜里沙のその一言でその日は解散。亜里沙に玄関まで見送ってもらってから、雪穂と二人で帰り道を歩く。
「ねぇ。友香はあのスピーチどう感じた?」
「私? 私はつまらなかったかな。なんか内容もそうだけど表情かな~」
「表情?」
「例えば、雪穂だったら「穂むら」の名物ほむまんを紹介する時どうする?」
私の質問に雪穂は少し考えた後、笑顔でほむまんの美味しさや食感、味などをつらつらと述べる。
「こんな感じかな?」
「さすが和菓子屋の娘だね。帰りに買って帰ろうかな~」
「まいどあり~」
その後、穂むらに寄って帰宅したらお母さんに怒られた。そう言えば帰りが遅くなるって連絡入れ忘れてたや。
そして夕食後。私はお姉ちゃんの部屋をノックした。
「お姉ちゃん。入るよ?」
『う~ん』
この生返事、読書中かぁ……入って大丈夫かな……
「も、もしも~し」
「どうしたの? 勉強教えてって感じでもないし」
中に入るとお姉ちゃんはベッドの上でやっぱり本を読んでいた。
「うん、ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「ちょっと待ってね」
お姉ちゃんはそれだけ言うと、読んでいたページに栞を挟むと座り直して、私に隣に座るように隣を手で示す。
「それで? 聞きたい事って?」
「今日ね、亜里沙の家に行って来たの」
「あぁだから遅くなったのか」
納得のいったように頷くお姉ちゃん。あれ? この様子だと亜里沙のお姉ちゃんが絵里さんだって知ってるのかな? まぁそれは後で聞くとして。
「お姉ちゃんはさ、音ノ木坂を廃校から守りたい?」
「これまた唐突な質問だね」
「いいから、答えて」
私が真剣な事が伝わったのか、それまで笑って対応してくれていたお姉ちゃんも真剣な表情になる。
「そうだね。守りたいか否かで答えるとしたら守りたいよね」
「……なんで?」
「そりゃあ今いる後輩達や今頑張ってる穂乃果達の為。って言いたいけど、そんな大層なもんじゃないと思うんだ」
「どういう事?」
私の質問に腕を組んでう~んと考えるお姉ちゃん。私は答えが来るまで黙ってお姉ちゃんを見つめる。
「まぁ簡単な理由を述べるとしたら、私が音ノ木坂に無くなって欲しくないから。かな」
「それってお姉ちゃんが生徒会役員だから? 他の生徒達の見本にならないといけないから?」
「今日はずいぶんグイグイ来るね……そうだな。それもあるかも知れないけど、大きな理由としては違うかな」
「大きな、理由?」
なんだろう。気になるけど、お姉ちゃんのこの様子だと答えてくれそうにないか。
「そ。私の大切な場所、だからかなぁ。それで? 友香は今日何があったの?」
「……実はね」
少し迷った挙句、今日亜里沙の家で起こった出来事を全部話した。もちろん私のその時の気持ちも。
「そっか。そんな事が」
「うん。私どうして良いか分からなくて」
「大丈夫。お姉ちゃんに任せときなって」
「で、でも」
これは私が勝手に悩んでお姉ちゃんに話した事。お姉ちゃんが関わらなくても誰も何も言わないのに。
「友香は安心して音ノ木を受ける準備をしてなって」
「っ! お姉ちゃん知ったの?」
「いや。何となくね。進路の話をしてる時とか、今日の晩御飯の時に音ノ木の方を見てたからね」
え、私そんな事してたんだ。まったく気付かなかった……
「さ、友香もう寝な。時間も遅いし」
お姉ちゃんに言われ時計を見ると、短針が10と11の間にあった。
「うん。でもその前に一つお願いしていい?」
「なに?」
「その、昔みたいに頭、撫でて欲しいな」
お姉ちゃんは私の頼み事に頷いてギュッと抱いてから頭を撫でてくれた。あぁやっぱりお姉ちゃんにこうして貰うと落ち着くなぁ。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
お姉ちゃんに手を振って自分の部屋に戻り布団に潜り込む。
【妹ラジオ】
友「今回はスピンオフ第二弾だったね!」
亜「雪穂はあの時何の夢を見ていたの?」
雪「ひ、秘密! そんな事より、作者からメッセージ預かってるんだけど」
友「雪穂! それを読むのはまだ早いよ! イギリスにはこんな諺があるんだよ。「収穫が早すぎた木の実はじっと熟れるのを待て」って」
亜「そんな諺どこの国にもないよー!」
友「あれ? なかったっけ?」
雪「それを言うなら「果報は寝て待て」じゃないの?」
友「おぉ、それかぁ」
亜「どうでもいい事言うとね、このあとがき、作者さんが一度メモ帳に書いてから打ち込んでるんだけど」
雪「うん? その話がどうしたの?」
友「いつも投稿前に考える作者が珍しいね」
亜「なんでも「果報は寝て待て」を「果宝は寝て侍て」って書いたらしいよ」
「「……」」
雪「ま、まぁ果報と家宝ってややこしいもんね」
友「そ、それに侍と待ても似てるしね」
亜「ちゃんと勉強しないとダメですよ?」
友「亜里沙が怖いんだけどー!」
雪「友香落ち着いて。深呼吸だよ。吸って―、吐いて―」
友「スー、ハー」
雪「吸って―、吐いて―」
友「スー、ハー」
亜「吸って、吸って~限界まで吸ったら作者からのメッセージをお願い」
友「スー、スー……え!? メッセージ!? なんだっけ?」
雪「もー! 二人がふざけてるから時間が無くなっちゃったじゃん!」
友「それは違うよ! ふざけてたのは雪穂もじゃん!」
雪「それ違う作品だから! あ~このままじゃお兄ちゃん達に怒られちゃう!」
亜「で、でもあっちはきっとちゃんと内容を伝えてると思うから大丈夫だよ!」
友「そうだと良いね……」
雪「う~ん、一応簡潔にだけどやっておこうかな。亜里沙、作者からのメッセージを一言で!」
亜「作者の活動報告を見てね!」
友「それじゃあ!」
『バイバーイ!』