それではどうぞ!
「ねぇ、君図書委員かい?だったら画集借りたいんだけど、ここにあるかな」
カウンターで仕事をしていると、突然カウンター越しに声を掛けられる。いや、まぁ私がカウンターで仕事してる時点で声を掛けられるとなると、同じ役員か一般生徒のどっちかだから当たり前か。え~と、画集だっけ?
「画集ならあそこの角のコーナーに纏めて置いてますよ」
「おぉ、ありがとう…………図書委員ちゃん。しかしそうか、二年前はまばらだったのにあの角っこに纏められたんだ。委員長は仕事しないから、さぞ優秀な委員がやってくれたんだろうねぇ」
図書委員ちゃん? 不思議な呼び方をされるなぁとは思ったものの、そう言えば私も真姫達の事「赤毛ちゃん」とか呼んでたからそこまででもないのか。にしても今の口ぶり、まるで現委員長の遥さんを知ってるかの様な口ぶりだったな。
「あなたは遥さんをご存じなのですか?」
「まぁね。あれだよ、シャー芯を貸しあう仲というか、そんな感じかな?」
「俗に言う知り合い以上、友達未満といった関係なんですね」
でもシャー芯を貸しあうって事は仲良いのかな……? いや、遥さんからそんな話は聞いた事ないから例え話かな?
そう思い改めて質問者を見る。鉛色の髪にどこか儚そうな印象を受けるな。呼び方は……鉛色ちゃん? いや失礼だな。じゃあ儚いちゃん? あれ、命名レベルは同じくらい? まぁいいや。
儚いちゃんを見ていると向こうもこちらをジっと見て来る。あ、緑青色の目と合った。儚いちゃんは目が合うと首を傾げる。
「……ん? 君、どっかで見た事あるぞ……? 有名人……ってワケじゃなさそうだけど、既視感あるな」
「あー……自己紹介が遅れました。私、東野友実と言います。私を見たのは多分全校集会の時などでしょう。生徒会の役員として司会をよく任されますので」
「東野……あー! アレか! 君が三大美女とかいう何を基準に判断してるか分からないアレの! それにしても君の名前だけやったら出回ってるから、不思議でさ」
自己紹介をしたら分かったのか、三女の事まで思い出したみたい。ていうか、司会とかよくやってるから顔だけでも知られてると思ったのに……さては儚いちゃん、全校集会の時とかそれにしても三大美女かぁ、最近言われてないし、久し振りに聞いたな。
「私も自分の事ながらなぜ三大美女と呼ばれているのか……他の二人の事を考えてみると、生徒会に所属しているのが原因なのですかね……?」
「さてね、僕は分からないよ。その美しさを羨み、それを超えてやろうという気があるからそう称していると思ってたけど、全く違って驚きさ。見えるけど触れられない、さながらアイドルみたいな扱いとは、
蓮崎さんは自己紹介をすると、一礼してからカウンターに背中を預ける。今は人がいないし、別に仕事の邪魔でもないから注意はしない。だって本当に邪魔じゃないし、騒がしくもしてないからね。それにしても三女の扱いか……
「憧れの対象、とでも認識していれば良いんですかね。そういえば蓮崎さんが図書室に来るのは久しいんですか? 先程も『二年前は』と言っていましたけど」
「そう、実に二年ぶりだよ。あの時も画集借りに来たのはいいんだけど、画集と普通の本が混ざっててね、萎えてやめたんだ。それっきり来てなかった」
「それは失礼しました。一年生から図書委員をやっていたのに気付けなかったなんて……不覚です」
いつだ。て言うか二年前の委員長も仕事をしっかりとして欲しい。いや、気付けなかった私もいけないのか?
「いや、これ入学した直後の話だから気にしなくていいよ。委員の募集はまだ始まってなかった頃だし、あの図書委員よだれ垂らして寝てたしね」
「あの先輩か……結局卒業するまで碌に仕事しませんでしたね。よく考えれば遥さんはあの人の影響を受けたのでしょうか……あ、立ち話もなんですからよろしければ司書室でお話しします?」
「そうだね。時間も十分あるし、お邪魔するよ」
「ではこちらへどうぞ」
そろそろ利用者も増えそうな時間だし、いつまでもカウンター越しに話してるのも他の人に迷惑だし、立って長話すものでもないしね。
いつものごとく司書室に通し、夏帆さんにカウンターを頼む。まぁ慣れたものだよね。穂乃果達もよく来るし。
「それでは今何か淹れますので、お掛けになってて下さい」
「ありがとう、お言葉に甘えて座ってるよ」
私が椅子を示して言うと、蓮崎さんも座る。さて、何を淹れようか。私は自分で淹れるのは紅茶って決めてるけど。
「お茶にコーヒー、紅茶とありますがどれになさいますか?」
「お茶でお願いするよ。出来れば濃いのを頼むよ」
「分かりました。少々お待ちを」
蓮崎さんからオーダーを取り、濃いめのお茶を淹れ、司書室を眺めてる蓮崎さんの前に置く。やっぱり一般生徒からしたら司書室って珍しいのかな。
「お待たせしました」
「ありがとう。……あら美味しい。久しぶりに人の淹れたお茶を飲んだなぁ」
「お口に合ってよかったです」
「人の淹れた」って事は一人暮らしでもしてるのかな? いや、家では自分で淹れてるって事も考えられるな。流石に聞かないけど。いくら私でも、会って数分の人に「一人暮らししてるの?」なんて聞けないし、聞かない。
「そういや、君は何で図書委員に?」
「何で、と聞かれましても本が好きだから。としか答えようがないですね」
図書委員になる理由とか聞かれても、本当に本が好きだから、としか考えてなかったな。
蓮崎さんは私の答えを聞くと一つ頷き、そうか、と続ける。
「そうか……君もまた自分に素直に生きている人間なのか。大和撫子といった容姿だけど、案外その内心は違った美しさがありそうだ」
「あ、あはは。まさかそんな事……」
「鏡は物しか映さない、しかし目は物と共に在り方を映すと知り合いがボヤいててね……まぁ仮面も在り方の一つ、仮面と素顔にはそれぞれの美しさがある。例え君が仮面を被っていたとしても、それは君だ。君以外の何者でもない。だから気にしないでくれよ」
あーうん、完全にバレてますね。おかしいな。最近ちゃんと被ってないから鈍ったのか? いや、そんな事はない筈。その証拠に他の生徒達には怪しまれたりしてないし。
まぁバレたなら仕方ない。潔く仮面を外そう。いっつから気付いたのか気になるしね。
「あはは〜……いつから分かったの?」
「東野ちゃんの雰囲気だよ。僕が内面と外面の話をした後から凛々しかった雰囲気が崩れた気がしてね。カマをかけたってヤツかな」
「雰囲気で分かるとか……蓮崎さん凄いね。それにしても見事にしてやられた感があるよ」
まさかカマかけに引っかかるとは。もっと精進しないといけないね。でも雰囲気を鍛えるってどうしたら良いのかな。海未とかそこら辺に聞けば分かるか? て言うか雰囲気で分かるってどんだけよ。
「母と兄に鍛えられてね……あの人たちよっぽど感情動かないと普段と全く変わらないから雰囲気探ってたら自然と覚えたんだ」
「それはまた、なんとも凄い家族だね」
「我ながら血が繋がってるのか疑問視するレベルでそれぞれ違う方面に突出してるから困ったもんだよ」
「ちなみに蓮崎さんは何か突出してる事とかってあるの? 偶に変な子だって噂はチラホラ聞くけど」
まぁその情報源は秘密だよね。幼馴染みだったり、クラスメイトだったり、役員だったりあるけど、あえて誰とは言明はしない。
蓮崎さんは私の言葉に納得のいってる顔で頷く。いや、納得して良いの?
「変な子ね、実に的を得ている。突出してる点……というよりも、人の感情が変わるその瞬間が好きで好きでたまらない、っていう……なんつーかな、尖った点はあるよ」
「人の感情が大きく……今まで経験した中だとどんなのがあるの?」
「……あれは……なんだったかな……あぁ、中学三年だ。修学旅行のご飯の時に水を零した子の表情の変わりっぷりったらもう最高でね……いやあれは実に良かった。怒り、悲しみ、羞恥、様々な感情が混ざりに混ざり合った何とも言えないあの顔……しかし所詮そこで止まってる。感情の変わる瞬間を好むとは言え、あまりそういう場面に接してないのは事実、言う程無いのさ」
「なんか自分で聞いといてなんだけど、蓮崎さんって本当に変わってるんだね」
いや、ほんと。お前が聞いといて何を言うって言われそうだけど、本当に変わってるよ。
「クククッ、変わり者だからね。それを言うなら君も変わってるだろう?」
「まぁね。高校生活でここまで仮面被って過ごしてる人はいないだろうしね」
「とはいえ必要な物の一つだよ、仮面は。誰も彼もが共に深淵を覗く者じゃない、深淵に落とす者だっているからね。いや、流石に関係ないか」
「まぁ誰も彼もに自分の内面見せる必要はないからね〜」
蓮崎さんの言葉に私は頷く。でもここまでキャラの違う仮面を被ってる高校生って中々いないと思う。だから私も他の人から見れば十分変わってるんだね。
「……しかしお茶美味しいな。習い事でも?」
「いやいや。遥さんがいる時とか、来訪者が来た時に振る舞う程度だよ」
「って事は誰かが淹れてくれるお茶だから美味しいのかな。そうだ、好きな本は何かな?」
お茶を誉めてると思ったら唐突な話題転換。あれかな。私が図書委員だから本の話題を出したって所かな? でも好きな本か。それなら一冊しかないかな
「鈴木忍さんの『瞳の中で』かな」
「うっはぁ、東野ちゃん随分なマニアだねぇ。文学少女に違わぬ素晴らしいチョイスだ」
「あの本を手に入れる為に学校に遅刻したからね……まぁ後で親にバレて怒られたけど」
「いいね、そういうの。僕好きだよ」
いやぁあの日は大変だったね。叱られた後におこずかい暫く減らされるし、その日の晩御飯は抜かされるし。
「そう言えば蓮崎さんは画集を見に来たんだよね。写真とか好きなの?」
「本格的に好きな人に比べれば見劣りするけどね。姉に付き合わされ続けて、いつの間にやらって奴よ」
「お姉さんがいるんだ。どんな人なの?」
「素直な人だよ。我が道を突き進む、厄介なね。姉貴ってのは恐ろしいよ……年が離れてるから、振り回される側としては涙が出るよ」
「振り回されてるんだ……姉は恐ろしい、か。私も怖がられてるのかな……」
結構振り回したりしてる自覚はないけど、そういうのって自分じゃ気付かないものじゃん? これで友香に怖がられるないし、苦手意識持たれてたらどうしよう。
「んにゃ? 東野ちゃんは妹いるのかい?」
「いるよ〜。三つ下に一人」
「三つだって!? なんて羨ましい……! 七つ離れた姉貴と兄貴を持つのとは大違いだ!」
「七つって、大分離れてるね。 でもそれだけ離れてると勉強とか教えて貰えるんじゃない?」
私と友香は三つしか違わないけど、友香の勉強を見てるし。まぁ殆どは本を読むからって断るけど。……あれ? 私って酷い?
「小学生に中学生のやり方を教えられたよ。確かにありがたいけど、それぞれ教え方が違うしね。無茶な話だろ?ひどいものさ」
「それでも蓮崎さんは理解できたんでしょ?凄いよね。私なんて理数系が……うん。勉強の話は終わりにしよう!」
「理解させられたんだけど……まぁ、やめようか」
勉強の話はしたら最後、虚しさだけが残るだけだからね。切り上げは早い内の方が良いんだよ。
なんて考えてると司書室の扉が開く。まぁ夏帆さんが通すって事は役員か、松田先生、知り合いのどれかだろう。
「友実ー? 今いるー?」
「いるよ〜。ちなみに今来客中だからね」
「来客……? げっ、蓮崎……」
入って来たのはにこだった。それにしてもにこは蓮崎さんを見た途端顔を顰める。とてもアイドルがする行いじゃない気がする。それは蓮崎さんも思ったのかにこに言う。
「おやおや矢澤ちゃん、僕を見るなり『げっ』はないだろ『げっ』は」
「にこ……蓮崎に何か弱味でも握られてるの?」
取り敢えず私も続いて聞いてみるも、にこは首を振って否定する。まぁそりゃそうだよね。逆にこれで頷かれたら私が困る。
「単にあたしが苦手なだけよ」
「僕は好きだけどね、君のこと」
「……いつもこんなのだから調子狂うの」
私もさっき「好き」って言われたな。もしかして蓮崎さんって話す人全員に「好き」って……言ってるわけないか。流石にそれはないでしょ。
「でもにこ。私が言うのはアレだけど、いくら苦手でも出会い頭に『げっ』はないと思うよ?」
「ま、まぁそれは仕方ないでしょ? だって自分で『いつも教室の窓際にいる』って言ってる奴がコッチにいるなんて想像してなかったもの」
「それなら仕方……ないのかな?」
仕方、ないのか? いやでも「ゲッ」は失礼だと思う。
「でも蓮崎さんって窓際が好きなの?」
「んー……どうだろ? やること無いから窓際にいるだけだし、話す相手も少ないしねぇ。好きか嫌いかで言うと好きだけど」
「そんなにやる事ないの?」
そんなにやる事ないもんかな? 次の授業の準備だとか、委員会だとか、それこそ部活だとかあると思うんだけど。
「自分で言うのもアレだけど、変な感性持ってる人間なんてそんなものさ。部活も委員会も入ってないから、時間を潰す為に外を眺めるくらいしかないのさ」
「暇ならアイドル研究部の部室に行ってみれば? あそこ結構暇潰せるよ」
「ほほう、それは名案だ。というわけで矢澤ちゃん、明日から僕に構ってよー」
私の提案は酷く気に入って貰えたようで、蓮崎さんはにこにちょっかいを出し始める。
「子供じゃないんだから口尖らせるなっての! まぁ来るなら拒まないわ。どうせアイドル雑誌を片っ端から読むだろうから。友実も気を付けなさいよ? こいつってば猫みたいに寄ってくるクセにすぐ噛み付くからね」
「大丈夫大丈夫。私も
別に噛み付かれるくらいなら問題ない。そういう人は敵に回したら一番厄介になると思うしね。敵に回さない様に気を付けなくちゃいけない。
「なら、いいんだけど」
「しかし君は不思議だね。なんだかんだで受け入れてくれる、母性が強いとでも言うのかな? のぞみんのエセ母性とは大違いだ」
「まぁそれに反して母性の塊はないけどね……」
私はにこのとある部分を見ながら言う。うん。そこには平原が広がっていたよ。
「ゆ〜み〜ィ〜?今なんか言ったかしら?」
「べ、別に〜。ただもう少しで友香が抜きそうだな〜とか思ってなんかないよ〜?」
うん、私嘘つかない例え友香が成長期だからって、抜かしてる事は無いんじゃないかな……? 今度二人の正確な数字を教えて貰おう。にこのは……希に聞けば分かりそうだね。
「隠す気あんの!? バレバレよ!!」
「……思ったよりエグいかもね、彼女」
「あ、ゴメン。友香の方があるかも……」
「謝るなぁーっ!」
いやだってねぇ? 実際友香の方がありそうだし、そうなったら謝るしかないじゃん?
「まぁまぁ矢澤ちゃん、同い年の僕だって77だから気にしないの。デカイと前に貼ってデブの様に見えるらしいし、それにまだまだ見込みはあるよ。結婚でもして子を宿せばね」
「やだ蓮崎さんたらはしたない」
多少棒読みになった事には触れないでください。だって確かに、って思ったんだもん。
「胸デカくしたけりゃ夫見つけて子を宿せっておじいちゃんが冗談で言ってた」
「あんたのおじいちゃんよくそんなの言えたわね……」
「その後おばあちゃんに足踏まれてたけどね」
「そこで踏まれるのが足なのが手加減を感じるよね。私だったらたぶん蹴飛ばすね」
しかもただの蹴りじゃなくて、ちゃんと遠心力と体重を乗せてしっかりと鳩尾に決めるね。まぁ年取ってたら確かに踏みそうだけど。
「おばあちゃんも年だから流石に気を使ったらしいよ。父さん曰く若かりし頃は腹を殴ったらしい。ナイチチだからかな」
「目を向けないでよ」
「そっか……まぁにこはこれからに期待、だね」
私と蓮崎さんは揃ってにこのない胸を見つめると、にこは胸を隠す様に抑えると私を指す。
「友実だって言う程無いじゃん!」
「ありますーこれでも穂乃果や真姫より少し大きいんですぅ!」
それでもないと思うのならきっと着痩せしてるだけだよ。うん。まぁそれでもにこよりあるのは確かだね。
「どんぐりの背比べ、かね。不毛と気付きながらもやめられない……その感情もまた美しい……ククククッ、変な話題もなかなかどうして」
「そう言う蓮崎さんはどうなの?」
「さっきも言った通り、77。俗に言う貧相キャラさ」
「て事は……にこ。強く生きるんだよ」
77ってそんなに貧乳って程でもないと思うから……うん。にこ、頑張れ。
そんな私達の言葉にさすがのにこも疲れたのか、机に肘をつく。
「もう胸ネタはやめてよ…………疲れた」
「仕方ない。それで? にこはどうして来たんだい?」
「暇だったから、たまにはコッチから来てみようかなって思ったのよ。まさかこんな状況になるとは思ってなかったけどね」
それは偶然の産物ってやつじゃないかな? 偶々蓮崎さんが来た時に、偶々にこ司書室を訪れようとした。んで偶々蓮崎さんと会った。ってところか。
「あはは。慣れない事をするからじゃない? ほらよく慣れない事をすると雨が降るって騒ぐじゃん?」
「そういうものかしらねぇ。別に慣れない事ではないと思うけど」
「世の中そんなものだよ」
にこが不満そうな顔で言う。でもにこがここに来る理由って何かしらの用事がある時が大半だから来るのは慣れてても、暇だから来るって事は慣れてない、つまりは普段やらない事だと言い変えよう。
「そうそう。慣れない事はするもんじゃないよ。ちょいと無理して動き過ぎると、翌日筋肉痛で碌に動けないとかしょっちゅうだし」
「そーそー。花を育てる人が木を育てても上手くいかないってのと同じよ」
「友実に比べて蓮崎の例えはなんでこう、微妙なのよ……」
「まぁ例えは人それぞれだからね。それこそ十人十色、面白いじゃん」
「面白い事は面白い……それが真理さ」
まぁ、確かにその通りだけど……さて、会話に困ったぞ? まぁもとより私は図書委員の仕事、蓮崎さんは画集を借りに、にこは暇潰しに来ただけだからね。会話が止まって困るのは当たり前か。
「なんであんたはそう会話を潰したがるの」
「ごめんね、そういう人間だから」
「友実だって困ってるじゃないの……」
「まぁまぁ落ち着いてにこ。蓮崎さんは悪くないって。そこから話を発展させられない私の語彙不足も要因なんだから」
結構本を読んでるから語彙はある方だと思ったけど、さっきの返しには困ったよね。思わず苦笑いしちゃったよ。
「まぁ、そういうなら気にしないけど……」
「遠慮なく胸ネタ使ってきたから『なに言ってんだ』くらい返すと思ってたんだけどね」
「もっと人の事考えなさい」
「善処するよ」
善処するって……これあれだよね? よく聞く「前向きに検討しする」って事と同じだよね? て事はこれからも弄る可能性があるって事か。まぁ私も弄る側になると思うから、私には関係ないけどね。
それはともかく喉乾いたな。見れば蓮崎さんのカップの中も空になってるし。
「さて今更だけど、にこ。お茶と紅茶、コーヒーあるけど、何か飲む?」
「紅茶でお願いするわ」
「はいよ。今淹れるから待っててね〜。あ、蓮崎さんもおかわりいる?」
「うん、お願いするよ」
「では少々お待ちを」
自分のと蓮崎さんのカップを持ち、ポットを沸かす。そして蓮崎さんのカップに濃いめのお茶、私とにこの分には紅茶を注ぐ。
「お待たせ〜。ほい紅茶と濃いめのお茶ね」
「ありがと」
「おっほ、来た来た。すまないね」
二人の前にカップを置くと、二人も喉が渇いていたのか一口啜る。私も息を吹き掛け少し冷ましてから一口。
「いやいや客人に持て成さないでいつ持て成すんだ。てね」
「……にしても友実と蓮崎って珍しい組み合わせね」
「そうだね。実際に蓮崎さんが図書室に来なかったら、こうして話す機会は無かったわけだし」
て言うか、ここで話すまで私は顔と名前が一致されてなかったし、私も知らなかったからね。つまりは今日という日がなかったら、蓮崎さんとは絡みがないまま卒業してただろうね。
「ふーん。蓮崎は何しに来たの?」
「画集を見に来た」
「画集ねぇ、何の画集? ゴッホとか?」
ゴッホか。確かに画集を出している偉人としては有名って言うか、真っ先に出て来るよね。ちなみに私はあまり画集は見ないけど、図書室にある画集なら一通り知ってる。
「……グスタフ・クリムト」
「あぁグスタフ・クリムトね。日本にあるのは『左を向いた少女』とか『女の胸像』とかだよね」
まぁ作風はちょっと官能的なテーマなんだけどね。一緒に見ていた友香が顔を真っ赤にしてたなぁ。私は画集って切り離して見てたから普通にページを進めたけどね。
「実物を見た事はなくてね、画集があればと探しに来たんだ。偶然知ったけど、あれは不思議な魅力があってねぇ……」
「話についていけない……」
「まぁ作風が妖艶だったり死の香りが感じられるものが多いらしいから、にこにはまだ早いんじゃないかな? まぁ風景画もあるからそっちを見てみたら?」
一人の画家が人物画と風景画を描くのは珍しい事じゃないからね。作風が合わなかったりで片方を見たら、もう片方も合わないって思って見ない人がいるけど、正直勿体ないと思うね。どっちかが合わないからって、もう片方も合わないとは限らないんだよ。
「おすすめは最も有名な『接吻』だよ。あれを見て合わなければ風景画に行くと良いね」
どうやら蓮崎さんも近い考えなのか、にこに風景画も勧めている。
「へ、へぇー……風景画がから見てみるわ」
「でも『接吻』て金箔とか使われてるから綺麗だよ?」
「……それ本当に絵画なの? 金箔とか貼ってるならもう絵というより、ただの芸術品なんじゃないの?」
「絵画もまた芸術品さ。それは十人十色、様々な描き方に加えて表現方法がある。それらは全て素晴らしい物ばかりだ。芸術品を見る時はただ見るか、調べた上で見るといい。また違った目線になるよ」
「あ、うん」
あ、にこめ調べてから見る気ないな? せっかく蓮崎さんが力説してくれたのに。
「その際は是非また図書室においでよ。暇だったら友実が相手してくれると思うからさ」
「遥さん! また急に現れて。やめて下さいと何回も言ってますよね?」
「…………」
蓮崎さんが突然固まった。遥さんのいきなりの登場に驚いたのかな?
「蓮崎?」
「なんでさ」
「?」
心配する様ににこが話しかけるも、それすら聞こえてないみたいに呟く。蓮崎さんの事はにこに任かせて、遥さんを叱ろう。と思ったんだけど
「おや、榛那じゃん。珍しいね君が図書室に来るなんて。さっきの会話からして大方画集を見に来たのかな?」
「……久しいね三条。僕がここへ来たのは確かに画集を見に来たからだけど」
私が何か言う前に遥さんが蓮崎さんに聞く。
それにしても久しいって……同じクラスメイトなのに話さないのかな? にしても蓮崎さんが呼び捨てにするってどれだけ遥さんは苦手意識持たれてるんだよ。いや、むしろ仲が良いのか? でもさっき遥さんの登場に固まったしな……うん。分からない。
「遥さん。相手はお客様ですよ? そこら辺キチンと理解して話しましょ?」
「おいおい友実。私は何も変な事は言ってないよ? ただ榛那が来たのを珍しがってるだけなんだから」
「ねぇ、聞いていいかしら。なんで蓮崎がこんな状態なの?」
にこが聞いて来るも、正直私も理由が分からない。私といた時は普通に話していたし、奇行はなかった。もちろんにこが来た時も。て事は
「う〜ん、なんででしょうか。考えられるのは遥さんが何かやったかしかないのですけど、その場合遥さんがあんなフレンドリーに行くはず無いですし……」
「…………大した事じゃないんだよ、別にね」
「ちょっとにこも友実も失礼だよ。私は何もしてないって」
遥さん。普段行いが行いだからなぁ。多分私とにこからのこういった事の遥さんへの信用度はそこそこ低いと思う。だって私は遥さんが何かやらかしたと気持ち半分思ってるからね。
「しかし遥さん。何もしてないにしては蓮崎さんは遥さんを避けてる様に見えますが……?」
「"ハルカ"って名前で明るい性格だから苦手なんだよ……」
「……へ?何それ、ちょっとよくわからない」
「成る程……」
つまり遥さんが苦手な訳ではなく、「はるか」と言う響きと遥さんの性格が苦手な訳だ。その言葉を聞いて遥さんが自慢げに胸を逸らす。
「ほらね。私の言った通りだったでしょ?」
「普段の行いが行いだから疑われるんですよ」
「サボりとかね、そういうのは良くないわよ」
やっぱりにこも私と同じ事を考えてたみたいで、私の言いたい事を言ってくれた。その時、蓮崎さんが何か言った。
「──逃げよ」
ん? 今逃げるって……
「悪いけど僕ここでお暇するから。お茶美味しかったし楽しかったよ!!」
「あ、待ってよ榛那。まだ私来たばっか……」
蓮崎さんが早歩きで司書室から出て行こうとするのを、遥さんが呼び止めようとするも私はそれを最後まで言わせない。
まぁ帰る人を無理やり留めるのは気が引けるからね。それに
「遥さんは仕事しましょうね。折角来たばっかりなのですから」
「……はい」
遥さんに書類を渡し、にこと揃って司書室を出ると夏帆さんにお礼を言って変わる。
私も自分の仕事片付けないと。
「……何で逃げたのかしらねぇ……?」
「さぁ?やっぱり遥さんが苦手だった、とか?」
にこが蓮崎さんと同じようにカウンター越しに聞いて来るも、その答えは分からない。分かるとしたら蓮崎さん本人くらいだろう。だけど話してくれなさそうだから私は聞かない。
誰にだって触れられたくない物の一つや二つはあるあらね。
さて、取り敢えず気付かない内に司書室から消えた遥さんの捜索にでも取り掛かるか。
【嗤って笑うラジオ】
友「さあ始まったよ【嗤って笑うラジオ】略して【
榛「なんで僕なんだい? そもそも作者のトゥーンには許可を貰ってるのかい?」
友「まぁ裏話的な事言うと一回書き終わった後に、蓮崎さんのキャラ確認の為に見て貰ってるから、大丈夫」
榛「それは大丈夫なのかな?」
友「大丈夫でしょ。作者間でそのやり取りがあったみたいだし」
榛「ふーん。 前回前々回のコラボのを聞いた限りだと、ここは作者達による裏話とかを対談形式で話していたのに、どうして今回は僕と君なのか知りたいね」
友「まぁまぁいいじゃん。決して作者間のやり取りを明文化したりするのがめんどかったり、別の方のオリ主をここに出したら面白そう、とかの思い付きで決まったんじゃないんだしさ」
榛「なるほど。つまりは面倒と思い付きで僕の出演が決まったんだね」
友「まぁ、そうだね。ちなみにウチの作者が書いてから榛ちゃんの作者の方にチェック受けて文章が変わるから、今書いてる文章がどう化けるかはウチの作者ですら分かってないからね」
榛「なんとも二度手間感が素晴らしいね。感心すら覚えるよ」
友「さ、そんな事より何か話したい事ある?」
榛「話したい事っていうより、聞きたい事ならあるよ」
友「ほうほう。それは一体?」
榛「君は本編最後まで僕の事を苗字で呼んでいなかったかい? それが今は名前で呼んでいる。その理由は?」
友「あ、それ知りたい感じかぁ~。榛にゃんは」
榛「どうしたんだ急に?」
友「だって好きな様に呼んで良いって言ってたから」
榛「あのね、それは高坂ちゃん達を対象に言ったのであって、君には言ってないよ」
友「えー酷くない?」
榛「酷くはないよ。当然だろ?言葉の意味は正しく取るべきだ。あの場に君はいない。というか何故知ってるんだか」
友「まぁとにかくそういう訳だよ」
榛「待ってくれ、どういう訳かさっぱり分からないんだが……」
友「ま、簡単に言うと本編と一切関係ないこっちまで『蓮崎さん』呼びはちょっと硬いかなってね」
榛「むしろそれを分かっている読者がどのくらいいるんだい?僕はそっちが気になるよ」
友「『巻き込まれた図書委員』を読んでくれている読者さん達ならきっと『なんだ、いつもの本編の進み具合を無視した茶番か』程度に呼んでると思うから大丈夫だよ」
榛「とりあえず、何一つ大丈夫じゃない事が分かったよ」
友「と、言う事でもうそろそろ時間なのです!」
榛「始まり方や呼び方、内容もぶっ飛んでるなら終わりもまたぶっ飛んでるね」
友「【妹ラジオ】や【音ノ木チャンネル】ならいつもの事だよ。それじゃあ最後に榛ちゃん。自分の小説の宣伝をどうぞ!」
榛「君はまた、なんて無茶ぶりを……えー、この僕、蓮崎榛那が主人公を務めるトゥーン作『嗤って笑う彼女と女神達』は原作で突っ込まれなかったアレコレにイジワル系ボクっ子の僕が突っ込んでμ’s達の心を覗いていこうというお話です。アンチってワケじゃないけど、そっち系とも取れる発言とかしちゃうから、そっち系に耐性ある人とか是非ご閲覧お願いいたします」
友「では榛ちゃんの素晴らしい宣伝も聞けた事で、今回はここで終わりです! それではまた次回に会いましょう!」
榛「いや、前回までのを聞き返したら、あとがきは妹達だけでやってるでしょうに」
友「それは言わないで~……てな訳で、トゥーンさんの『嗤って笑う彼女と女神達』もぜひ読んでみて下さい! 私とは別種の女オリ主の作品なので楽しく読めると思います!」
榛「それじゃあ、またね」