東條さん達を助けてから絵里に怒られた後、にこ主導で晩御飯にカレーを作り、見事完食。その時に驚いたのは、小泉さんがカレーのルーと米を分けて食べてた事。絵里がツッコミを入れようとしてたけど、気にしないで下さい! て言われてたよ。
「では、私が食器を洗っておきますので、皆さんはごゆっくりしていて下さい」
「そんな悪いよ。私も手伝うよ」
食器を流しに置いて行くついでに言うと、ことりも手伝いを志願してくれた。十人分なら一人でも大丈夫だけど、せっかくの好意を無下にしたらいけないね。
ついでに皆の分の食器も下げるか。
「ちょっと待って。そういう不公平は良くないわ。皆も自分の食器は自分で片付けましょう」
私が食後ソファに寝転んでお茶を要求している穂乃果の分まで下げようとすると、絵里からストップをかけられる。
う〜ん。私は別に気にしないんだけどな。
「絢瀬さん。私はμ'sと関係ない部外者ですから、そのくらいでしたらやるのは吝かではないですよ?」
「いいえ。部外者ならなおさら友実に任せたらダメだと思うの」
結局、絵里に押し負けて皆で協力して晩御飯の後片付けを終わらせる。それから皆でお風呂に入る事になった。
「はぁ〜。気持ち良いねぇ〜」
「そうだねぇ〜」
露天風呂に浸かりながら私と穂乃果は、淵に寄り掛かりながら夜空を見上げる。私達の上には満天の星空。
「ねぇお姉ちゃん」
「うん? どうした〜?」
「お姉ちゃん。今日何回か素が出てたよ」
「へぇ〜……マジで!?」
「うん」
いつだ? 一体いつ素が出た? 星空さん、小泉さん、東條さんがいない時だったら良いけど、もしいた場合を考えると誤魔化したりするの大変そうだ。
「ちなみにどのタイミングでか聞いて良い?」
「えーと、私が分かってるものだと、トランプをしてる時かな」
「あとウチ達を助けた時も素に戻ってたで」
「東條さん!?」
穂乃果と話してたら、気付かぬ内に東條さんが隣に来て話に加わってきた。いつからいたのか分からないけど、今の台詞から考えると私が仮面を被ってるのを知ってるよね……
「あの、東條さん。説明はあとでちゃんとしますので、その」
「分かってるて。今は詮索しないよ」
「ありがとう」
せめても誠意としてお礼は仮面を外して言う。穂乃果の言う事が本当なら小泉さんや星空さんの前でも素になっちゃったみたいだし。
そしてお風呂から上がり、布団を敷いたリビングに仮面の事を説明していない三人を呼ぶ。
「友実ちゃんどうしたの?」
「その、少し大事なお話が」
「大事なお話?」
小泉さんの言葉に頷き、仮面の事についての説明と謝罪をする。
話を聞き終えた三人の反応は分かれていて、東條さんは納得のいった顔で頷く。一方星空さんと小泉さんは唖然としていた。
「ま、まぁという訳で。今まで嘘ついてたからこれから私と話したくないと言うなら、私は甘んじてそれを受け入れるよ」
「友実っち。ウチは言わずもがな、これからも一緒やで」
「り、凛もだよ!」
「私も。どんな友実ちゃんでも、友実ちゃんは友実ちゃんだから」
「東條さん、星空さん、小泉さん……」
三人とも優しいね。
「じゃあ友実っち。これからはウチの事も下の名前で呼んでな?」
「あ、それなら凛も凛も!」
「わ、私もその〜」
東條さんの言葉に星空さんと小泉さんも乗る。
ちょっと待って。彼女らからの私への信頼度っていうの? いやどっちかと言うと友好度? 異様に高くない?
「そ、それじゃあ、これからもよろしくね。希、凛、花陽?」
恐る恐る名前で言うと三人がそれぞれ笑って頷き「よろしく」と返してくれる。
一番の不安が解消され気持ちに余裕ができた時、ふと周りを見るとにこと絵里が私を見て優しく微笑んでいた。そして目が合うとVサインを送ってくれた。きっと最初から見守ってくれていたんだろう。
そしてそれを合図にしたかの様に穂乃果達が中に入ってくる。希達は入ってきたメンバーと話すも、真姫だけはまっすぐ私の元へとやってくる。
「あの、私からも一つ言いたい事が」
まぁその話をするだろうと思ってたよね。だって目の前で他のメンバーが名前で呼ばれるんだもん。真姫は多分、自分も名前で呼んでくれって言いたいんだろうなぁ
「どうしたの? 真姫?」
「……何でもないわ」
ふふふ。真姫が驚くも私は覚えてるからね? 今日のナンパ二人を伸した後、私に「何もそこまでやらなくていいでしょ!」って言ったの、ちゃんと聞いてたんだからね。だから私も約束を果たしたまでだよ。
「ほら友実。いつまでもボーッとしてないで寝るわよ」
「はいは〜い。で、私はどこで寝れば良いの?」
絵里に枕を渡されながら教えられた場所に寝転がる。おっと、就寝前の読書を忘れちゃいけないね。
「友実っち、暗い中本読むと視力落ちるで?」
電気の消えた部屋で隣の布団で寝ている希が聞いてくるも、私には関係ない。
「大丈夫大丈夫。こう見えても夜目は利く方だから」
「そういう問題なん?」
そういう問題なのです。てな訳で、これから先は邪魔する者は何人たりとも許さな……
「ちょっと、誰か何か食べてるでしょ! しかもこの音的に煎餅?」
本の世界に入ろうとした時、突然バリッと何か硬いものを齧る音が響く。絵里が電気を点け、皆が犯人を捜すと、一人咳き込みながら上体を起こす。
「穂乃果ちゃん、何してるの?」
「いや〜、中々寝付けなくて。何か食べたら寝れるかな〜って」
ことりに聞かれ照れくさそうに笑い頭を掻く穂乃果。そういえば少し前にも絵里に話してないで早く寝なさい、って注意されてたな。
「穂乃果。そんなに眠れない?」
「うん、ちょっと興奮しちゃって」
「じゃあ私と賭けポーカーする?」
「賭けポーカー?」
首を捻る穂乃果に私は簡単に賭けポーカーの説明をする。勝負内容は一回こっきりの普通のポーカー。カード交換は二回まで。そして一番大事な賭けの内容。それは
「私が勝ったら海未を見習って大人しく寝る事。穂乃果が勝ったら穂乃果が眠くなるまで私が付き合うよ」
「え、でもそれじゃあお姉ちゃんの寝る時間が……」
「穂乃果に大人しく寝ろって言ってるんだから、私もそれなりのものを賭けないとだからね」
それにポーカーなら負ける気はしない。
「さて、やる? やらない? ちなみに断っても大人しく寝て貰う事になるから」
「じ、じゃあやる!」
と言う事でここに私と穂乃果の賭けポーカーが始まった。ディーラーは第三者、絵里にお願いした。
「それじゃあ絵里、お願い」
「分かったわ」
絵里が私と穂乃果にカードを五枚ずつ配る。そしてカードを確認すると穂乃果にカード交換を促す。私はノーチェンジで勝負するよ。
穂乃果が二回交換し終え、カードをオープンする。手札はjoker込みの9のフォーカード。対する私の手札は
「はいナチュラルロイヤルストレートフラッシュね」
私が手札をオープンした途端、部屋に沈黙が流れる。まぁそりゃそうか。今回の私の手札であるナチュラルロイヤルストレートフラッシュが出る確率って65万分の1だしね。
「……え?」
「ロイヤル……」
「ストレート……」
「フラッシュ……!?」
穂乃果がポカンとしてる中、にこ、凛、花陽が信じられないものを見た目で私のカードを見つめ続ける。
「はい、てな訳で穂乃果は大人しく寝ようね"」
カードを片し再び本を開きながら言うと、目の前に広がったのは活字ではなく真っ白な世界。しかも何やら柔らかい材質。
「真姫ちゃーん。いくら信じられないからって、枕を投げちゃダメ、よ!」
希の言葉で私は枕を投げられた事が分かった。よろしい。私の読書時間を邪魔するとどうなるのか、仮面の話もした事だしμ'sの皆に教えてあげないとね。
戦争といこうじゃないか!
「わっ! お姉ちゃんがやる気に!?」
「ふふふ。私の読書の邪魔したらどうなるか、穂乃果達は知ってるよ、ね?」
取り敢えずさっき投げられた枕を希に投げ付ける。理由は簡単。最初に私の読書の邪魔をしたから。ただそれだけ。あ、枕で相殺された。
「友実っち中々やるやん」
「希こそ」
それからは熾烈な闘いだった。
いや枕投げ如きに何を言うって思うかもだけど、希の投げた枕に当たって負けると考えると、負ける訳にはいかんのよな。
希と正面切って投げ合っていると、横をすごい速さの枕が通って穂乃果に当たる。
投げた人を見ると、さっきまで寝てたはずの海未が不敵な笑みを浮かべて枕を握りしめていた。
「ちょっとそこの二人! 遊んでないで海未をなんとかしなさいよ!」
「いや、なんとかしてって言われても状況がわからないし」
「せめて説明が先やない?」
取り敢えず一時休戦してにこから今の説明を受ける。曰く、私と希の枕投げを見て穂乃果達もそれに感化され枕投げを開始。そしたら誰かの投げた枕が海未に直撃して、それで起きた海未が怒ったらしい。
まぁ海未は昔から寝起き悪かったからね。だから私も海未に被害が及ばない様に希を攻撃してた訳だし。
「あ、穂乃果と絵里がやられた」
「何淡々と言ってるのよ"」
「にこっち!」
私と希の目の前でにこが撃沈した。いやいや海未の枕どんだけ威力あるんだよ! もう人間辞めてない!?
「友実っち、ここは共闘といこうやん?」
「良いの?」
「もち!」
これは驚いた。まさか希から「共闘」を頼まれるなんてね。それにしても希が知ってるとは驚きだね。
「よし、希。前衛は任せた」
「え、ちょ、どう言ゔっ!?」
「よし、今だ!」
希が犠牲になった瞬間を狙って海未に枕を投げ返す。さらに海未の後ろからことりに援護投擲。取り敢えずこれで海未を鎮める事が……出来ない!? マズイな。今ので勝てると思ってたのに。万事休すか……!
そう思い、次に飛んでくる枕の衝撃に備えて目を瞑る。
「ぬぐぅ!」
しかし来ると思ってた衝撃は来ず、聞こえたのは海未の気の抜ける声。
おそるおそる目を開けると、真姫が腕を振り切った体勢で海未を見ていた。どうやら真姫が海未を鎮めてくれたみたい。
「う、うぅ。友実っち酷いやん。ウチを盾にするだなんて」
生存者である一年生三人とことりの五人でハイタッチを交わしていると、希が鼻を抑えながら起き上がる。
それにしても希はおかしな事を言うね。
「だって共闘って盾役と矛役から成り立つんでしょ?」
「その理屈はおかしい!」
「え? でも
特に遥さんと戦う時なんかは遥さん対その他ってくらいやらないと勝ち目ないからね。あ、トランプの話ね?
「でも友実ちゃんもトランプ強かったよね?」
「まぁ色々と努力したからね」
「努力……?」
おっと真姫に勘付かれそうだからこの話はサッサと畳もう。
「ほら、明日早いんでしょ? 早く寝ないと保たない」
「希!」
「任せて!」
「ちょ!」
真姫と希の阿吽の呼吸によって希に腕を掴まれる。そして袖から溢れる数枚のトランプ。
「これってイカサマ、よね?」
「えぇ!?」
「あはは〜。おやすみ!」
誤魔化すように布団に潜り、頭から毛布を被る。そしてそのまま意識は夢の国へ。
その間際毛布の向こうで真姫と希が何か言ってるも私には聞こえないし、聞きたくない。
翌朝目が覚めると希がどこかへ出掛けて行く所だった。別に後を追っても良かったけど、私はそんなに朝に強くない。枕元に置いてある携帯で時間を確認するも、普段ならまだ寝てる時間。
「二度寝……いや読書と洒落込むか」
そうだ。結局昨夜は希に邪魔されて読書が出来なかったんだ。だから今読んでも問題はあるまい。
「あんた、こんな朝から何してんのよ」
読書していると不意に横から本を掻っ攫われる。私は私の時間を邪魔した輩を思いっ切り睨み付ける。
「ねぇ? なんで読書の邪魔を……てにこか」
視線の先には私の読んでいた本を持ち、やや怯んでいるにこがいた。その後ろには慌てた様子の穂乃果とことり。
「取り敢えず本返して」
「ダメよ、これから朝食なんだから。あんたが食べないと食器を片せないのよ」
「……私朝食あんまり食べない派なんだけど……」
「何言ってるの。朝食をしっかり摂らないと頭が回らないし、体力も保たないわよ」
本を返せと手を出すも、にこはそれを頑として拒否。ていうか私のお母さんか!
「………………分かった。朝食食べるから本返して。せめて栞は挟ませてよ」
長考した結果、朝食を済ませてから読めばいいや、と結論が出た為素直ににこに従う。
この後、すれ違いざまにやったにこの髪型をツインテールからポニーテールにする悪戯はそのあと暫くバレなかった。やったね!
【妹ラジオ】
友「いや〜お姉ちゃんも遂に皆の前で仮面外したね〜」
雪「そうだね〜って言っても私達の前じゃいつも外してるから、私達に対しての接し方は変わらないでしょ」
亜「でも友実さんってトランプ強いんだね!」
雪「いやあれイカサマだから」
友「読者の皆も"夏なのにイカサマしやすい服装してるのかよ"って疑問は不燃ゴミとして出してね」
亜「でも友香。明日はビン・缶の日だよ?」
雪「いやゴミの日は関係ないから」
友「むむ。じゃあ可燃の日にゴミとして出すように!」
雪「不燃って言ってなかったっけ!?」
友「ま、それは置いといて。今回はこれといって話す事は特にないね」
亜「話の内容が晩御飯とお風呂、枕投げだけだからね〜」
雪「いや、逆に枕投げのインパクトが凄かったんだけど!?」
亜「そんなに?」
友「でも雪穂。雪穂も知ってるでしょ? 読書を邪魔された時のお姉ちゃんの怖さ。むしろあれで済んで助かったレベルだよ」
亜「そんなに怒ると怖いの?」
雪「怖いって言うか……相手にしたら勝てないレベル?」
友「この前も穂乃果さん達が邪魔した時は一睨みからの正座って聞いた」
雪「それに今回ではにこさんが怯んでたしね」
亜「やっぱり大和撫子は怒らせたらいけないんだね。亜里沙また一つ賢くなったよ」
友「はーい。という訳で今回はここまで〜」
『バイバーイ』