二回目は明日の22時に!
抽選会の日から早くも一週間。図書委員の仕事を残って終わらせ、一人で帰っているとビニール袋を提げている私服姿のことりを見付ける。
「こーとり。こんな時間にどこ行ってたの?」
「ぴぃ!」
あれ? もしかして私に気付いてなかった? 肩叩いたらびっくりしてるんだけど。
「お、お姉ちゃんか。びっくりした~」
「うん。びっくりさせてゴメン。でも何してたのさ、こんな時間に」
時間は19時で辺りはもう真っ暗。女子高生が一人で歩く時間にしては危ない時間。
「あ、これ。衣装の装飾品のお買い物に行ってたの」
「あ~なるほど。じゃあ途中まで一緒に帰ろっか」
「うん……」
久し振りにことりと並んで帰るな。まぁ私は学校帰り。ことりは買い物帰りだけどね。
「ことり。最近μ'sの調子どう?」
「え? あ、うん。穂乃果ちゃんが「ラブライブ!」出場するんだ! って張り切ってるよ」
「そうか。まぁ穂乃果は目標がある方がやる気出せるからね~」
そんな何気ない会話をしていると、ふと気になる事があった。ことりの様子が少し変なのだ。どこか心ここに非ずって状態がしばしば見受けられる。
「ねぇことり」
「……なにお姉ちゃん」
「夏休みの前、メイドカフェで私が言った事覚えてる?」
夏休み前、ことりのバイト先でことりに言った事、ことりは覚えていなかったのか目を泳がせてから逸らす。
はぁ……まぁ覚えてないなら仕方ない。
「良い? もう一度言うからね? 何か行き詰ったり、一人じゃどうしようもなくなったらお姉ちゃんの所においでね? 一人で抱え込んでたら何とかなる物も悪い結果になるから」
「……」
「ことり……?」
返事がないから横を見ると、さっきまですぐ隣を歩いていたことりがいなくなっていた。いや、正確には少し後ろで袋を握りしめ俯き、立ち止まっていた。街灯に照らされて、何かが滴っているのが見える。
「あー……ウチに来る?」
ことりは黙って頷く。私はそんなことりに近付き、手を握ると家に向けて歩き出す。家に着くまでの間にさっきみたいな会話はなく、ただ黙って歩いていた。
そしてそのまま家に着き、お母さんと友香に一言断りことりを部屋に通す。
「取り敢えず座って」
ベッドに座る様に促し、隣に座りことりから話してもらのを待つ。こういった時は私から聞くよりも、ことりの心の整理が出来るまで待つ。
「……あのね」
ことりは鞄から一通の手紙を取り出し、こちらに差し出してくる。何々?
「Dear Kotori Minami?」
海外からの手紙? 内容は「服飾の勉強をしに来ないか」って所か。
「それでことりはこれに行くか迷ってるの?」
「……うん。お母さんもめったにないチャンスだって」
確かにこんなチャンスは滅多にない。て言うか高校生なのに海外からお誘いが来るって凄いな。
「この事穂乃果や海未、他のμ'sの皆には?」
「……まだ言えてない」
「そっか」
まぁ事が事だけにそうあっさり話せないよね。でも手紙によると、行くとしたらちょうど文化祭が終わって三週間くらい経った頃か。て事は決断の日は遅くても文化祭の少し後か。
「ことりは……その様子だとまだどうするか決まってない、か」
「……うん」
う~ん。こればっかりは私の手に負える事じゃない。こういった一生、とは言わなくてもこれからの人生に関わる事だから簡単に口出し出来る事じゃない。
また、穂乃果や海未に勝手に教えるのもしちゃいけないと思う。ことりのタイミングで皆に教えた方が、行くにしろ行かないにしろ後腐れは無いだろう。
「そっか……まぁ私も今すぐ答えを聞かせろ。なんて言わないから、ゆっくり考えて、ことり自身の答えを見つけな?」
「うん」
私は頷いたことりに手を伸ばす。時間は既に20時を回っている。下に降りてことりを送って来る旨を伝えると、お母さんに止められる。
「友実も外見は可愛い普通の女子高生なんだからね? 危ないのはあなたも同じなんだから」
「え~。別に私なら大丈夫だよ」
「いいから。車で送るわよ」
私の言葉を無視してお母さんは車のキーを持つ。それからことりと一緒に車の後部座席に乗り込み、南家へと車を出して貰う。南家に着くまでの道中、ことりは不安からなのかずっと私の手を握りしめていた。
「それじゃあことり。また明日学校で」
「うん。今日はありがとう」
家の前でことりが降り、玄関の戸を潜るまで見届ける。ことりが潜るのを見届けるとお母さんが再び車を出す。
「それで? ことりちゃんとはちゃんと話せた?」
「うーん、相談には乗れたけど答えは出なかった、って所かな」
「そう」
それだけ答えるとお母さんは何も言ってこなくなった。私も特に言う事もなく、家に着くまで窓の外を黙って見ているだけだった。
翌日の昼休み。生徒会室で書類を片付けながら昼食を摂っていると携帯が震えた。発信者をみると遥さんの名前が表示されていた。
「もしもし。友実です」
『あ、友実? ちょっとお願い事があるんだけど、今良いかな?』
「今、ですか」
一緒に書類を片付けている絵里と希を見ると、こっちは大丈夫と返される。私は一礼すると生徒会室を出て図書室に向かいながら電話を続ける。
「それでお願い事とは何でしょう?」
『いや~せっかく図書室に向かって来て貰ってる所悪いんだけど、今から文実室に向かってくれない?』
「文化祭実行委員会室に、ですか?」
文実室なんて今行っても忙しさから、慌ただしいのが目に見えてる。て言うか、なんで私が図書室に向かってるのが分かったんだろう。
『実はさ、あの〜一年生の子いるじゃん? 文実と掛け持ちしてる』
遥さんの言葉に三人いる一年生の内、委員会を掛け持ちしている子を思い浮かべる。そう言えば最近図書委員の方に顔を出してないな。
「彼女がどうかしました?」
『それが無理が祟ったのか、風邪拗らせたみたいでさ。どうにかできないかって文実長に相談されてさ』
なぜ遥さんに相談が行ったんだ? て言うか文実ってそんなに忙しいのか? いや、オーキャン前の生徒会の事を思い出すと結構忙しいんだろうなぁ。
「ちなみに、なぜ遥さんにその話が行ったのか、理由を聞いても?」
『いや~、どうせ遥は委員長の仕事してないから暇でしょ? 手伝ってよ。って言われてさ』
それって完全に遥さん舐められてないか? それに遥さんが仕事をしてないのは普段であって、今は一、二年生の子達の当番を代わったり、ちゃんと委員長としての仕事をしてたりしてる。つまり遥さんは今は忙しいのだ。
それと同時に、遥さんがなぜ私に文実室に行くように言ったのか合点がいった。
「分かりました。つまり私に彼女が治るまでの間、彼女と遥さんの代わりに文化祭実行委員の手伝いをすればいいんですね」
『さすが友実。話が早くて助かるよ』
「いえ。それでは着いたので電話は切りますね」
『あいよ~』
文実室の前で電話を切り、ノックする。中から一週間前にも聞いた文実長の声が聞こえた。一言断りを入れてから入ると、鉢巻きをした文実長に睨み付けられた。
「東野さん何? 今は特に生徒会から何もないと思うけど」
「あーいえ、遥さんの代わりに来ました。と言えば分かりますか?」
「本当!?」
私が用件を言うと部屋中から一斉に聞こえる声。
え、今って昼休みだよね? なんで文実委員が勢揃いしてるの?
「やったぁ! 東野さんがいてくれるだけで頑張れる!」
「これから昼休みと放課後、東野先輩と一緒にいられる! 文実に入って良かった!」
「これで勝つる!」
「辛かった事務仕事にグッバイ!」
……これ、扉をそっ閉じしちゃダメかな。凄い帰りたいんだけど。あ、背後を文実長に取られた!?
「さ、東野さん。文実へようこそ」
肩に手を置かれ耳元でそう言われた時、私は安請け合いした事を後悔すると同時に、遥さんはこうなる事を理解して私に押し付けたんじゃ? という疑問が浮かんだ。
そして私が生徒会、図書委員、クラス、文実の四つを掛け持ちしてから一週間。最近は帰ってはすぐ寝ている為か、時間の流れが速く感じる。
何日かすると一日の日程は大体決まり、朝学校に行くとクラスの手伝い、授業受けて昼に生徒会、放課後に図書委員の方に顔を出して問題が無ければそのまま文実。何かあればそれを処理してから文実に行って仕事をしてから帰る。
それはそのまま、私がμ's、並びに穂乃果達と関わる時間は必然的になくなる事を意味していた。
時間が流れるのは早く、気付けば文化祭前日。ここまで来れば生徒会と文実の仕事が当日の見回りだけで、クラスと図書委員の方も最終チェックだけなので、久し振りに司書室でのんびりしてる。
「お、友実じゃん。お疲れさま」
「遥さん。お疲れ様です」
司書室で寛いでいると遥さんが入って来た。
何だろう。久し振りに遥さんとゆっくり話すかもしれないな。遥さんも同じ事を思っていたらしく、椅子に座るなりジーッと見つめ合う。
「こうして面と向かって話すのはなんだか久し振りだね」
「そうですね。ここ数日、お互いにバタバタしていましたからね」
遥さんの分のお茶を淹れ一啜り。なんか帰って来たって感じがするよ。文実にいた時はお茶を飲む暇があるなら書類を片付けろって空気だったし。
「それにしても明日で高校生最後の文化祭だね」
「ええ。明日の為に夏帆さんを筆頭に、皆さん凄く頑張っていましたね」
「友実は明日の予定は決まってるの?」
「明日は基本的に生徒会役員として校内の見回りですね」
まぁ見回りは文実と合同でやるから一日中見回ってる訳ではない。それに友香達に必ず暇な時間を作っとく様に言われてるしね。もちろんその時間はμ'sのライブの時間だ。
そう言えばことりは相談できたのだろうか。返事の期限は来週いっぱいだった気がするからしてない、なんて事はないよね?
「遥さんは明日はどの様な予定が?」
「ふっふっふ。私は彼氏と学内デート……」
「な、なんだって!?」
思わず立ち上がってしまう。遥さんいつの間に彼氏なんて作ったんだ? 相手は誰なんだろう? 遥さんの相手って結構気苦労が絶えなさそう。だって気を抜くとどこかに行っちゃうからね。
「っていきたかったんだけど、残念ながら相手がいなくてね~」
「……いないんですね」
うん、まぁ、知ってた。遥さんの事だから彼氏が出来たらもっと騒ぐからね。つまり一人で回るって事かな? それともクラスメイトかな?
「遥さん……友達いますよね?」
「当り前じゃないか! 私だって友達の二人や三人!」
「では明日はその方達と回るんですね」
ニッコリ笑いかけると遥さんは親指を立てて答える。もちろんって事かな。
「それじゃあ今日は特にやる事はないからだらだらしよっか」
「ですね。一日くらいなら休んでも大丈夫ですね」
「意外だね~友実がそんな事言うなんて」
「私だって遥さんがきちんと仕事をしていれば、普段から厳しくしたりはしませんよ」
さてと休憩がてら何か本でも読もう。まだ読んでない本持って来てたかな~。あ、ないや。ちょっと図書室から取って来よ。
「あれ? 友実どこに行くの?」
「いえ、本でも持って来ようかと思いまして」
「図書室は今、盗難防止の為に本を取り出せない様になってるよ? てか、これ言ったの友実だよね?」
そうでした……ダメだ本当にやる事が無くなった。
「やる事ないならのんびりしてればいいじゃないか~」
「……ですね。今日のこの時間くらいは本を読むのを辞めてみますか」
遥さんの言う通り机に肘を付きボーっとする。う~ん家でもこうしてボーっとする事あんまりないからなぁ、実際何すればいいのか分からないんだよなぁ。
「委員長、副委員長が揃いも揃って何してるのよ」
「あ、松田先生。お疲れ様です」
「敢えて言うなら何もしてない、が正しいですね」
二人してボーっとしていると松田先生が小窓から覗き込んでくる。
「いくら授業がないからって、朝からここでのんびりされても少し困るのだけれど……?」
「と、言われましても」
「実際にやる事が無いんだよ。まっちゃ~ん」
そう。松田先生の言った通り、今日は文化祭前日という事で授業が全部休みなのだ。屋上から音楽が微かに聞こえて来る所から、穂乃果達は練習してるのが分かる。まぁ今見に行っても明日の仕上げに入ってるだろうから、邪魔になるだろうから行かない。
それにしても……
「雨、降りそうですね」
「だね。こりゃいつ振ってもおかしくないね」
窓の外の灰色の空を眺めて言うと、遥さんも窓の外を見る。
明日の、出来れば穂乃果達のライブが終わるまで降らない事を祈るばかり。神頼みにでも行くか……?
「遥さん。私ちょっと出かけてきます」
「ん? おぉ行ってらっしゃ~い」
遥さんに一言断り学外に出る。今は一応準備日だから学校の出入りは自由だ。さーてと、神田明神に行ってお参りでもしますか。
「……ん?」
外に出た途端、ポツリと頬に冷たい何かが触れる。もしかして……。私の嫌な予感を裏切らないかのように雨が本降りになる。慌てて校舎内に戻り空を見る。昇降口には同じように外の様子を見ている生徒が数人。
どうやら買い出しに出かけた人達を心配してるみたい。
「それにしても雨、ですか……」
「災難だったね」
「遥さん」
振り返るとついさっき別れたばかりの遥さんがいた。理由を聞くと、雨が降って来たのに気付いき、もしかしたらまだ校内から出てないかも、とここに来たらしい。
「いや~友実がまだ校内にいて良かったよ」
「これが無事に思えますか?」
私は少し濡れた制服を見せながら遥さんに言うも、遥さんはそれを見て見ぬふりして司書室に戻る。私も黙って遥さんの後に着いて行き司書室に入る。その際松田先生が顔を顰めるも、外の様子を知ってるからなのか特に何も言われなかった。
「ほら、今度は私の淹れたお茶だよ」
「あ、ありがとうございます」
遥さんが淹れてくれたお茶を啜り、濡れた制服を脱ぎタオルを頭から掛けて机に肘を付く。
「外に出た途端に降られるなんて相当運が無かったねぇ」
「確かにその通りですけど、一番運が無いのは……」
そう言って今は静かに雨の降り頻っている屋上を見上げる。遥さんも続けて見上げる。
「あーそう言えばアイドル研究部は明日屋上でやるんだっけ。この様子じゃ、明日は中止かな?」
「……いえ。きっと彼女達ならライブを行いますよ」
そう、きっと穂乃果達なら最高のライブを見せてくれる。私はそう信じてる。
それから放課後までダラダラと過ごして家に帰る。
「お姉ちゃん! 明日は絶対に暇な時間を作ってね!」
「はいはい、分かってるって。私も穂乃果達のライブ見たいし、もう遥さんやクラスには話し通してあるから大丈夫」
まったく、友香は晩御飯の最中はずっとこんな感じ。口を開けば明日の事ばかり「時間作ってね!」「校内を案内してね!」「ライブ一緒に見ようね!」としつこく言ってくる。お母さんはお母さんで姉妹仲睦まじいいって喜んでるし。いや、止めてよ。
「ちょっとお姉ちゃん聞いてるの!?」
「あーあー聞いてる聞いてる」
「それでね!」
友香の言葉を聞き流しながらご飯を進める。友香はそれでも構わず話し続ける。そして先に食べ終わった私は食器を片付け、お風呂に入りすぐに布団に潜り込む。明日は早いのだ。開会式の準備やらクラスでの下準備やらとやる事が多い。早く寝とかないと明日が持たない。
この時、なくなりかけた意識が何かが開く音を聞いたが、既に身体が起きる事を拒否してる為、そのまま眠りに着く。
この時無理やりにでも起きなかったのか、後に後悔する事になるとは知らずに。
【妹ラジオ】
友「いや〜……始まっちゃったね。シリアス」
雪「そうだね。作者大丈夫かな」
亜「でも作者さんってシリアス得意なんでしょ?」
友「亜里沙。それ作者がそう思われてるだけで、実際は苦手なんだよ」
雪「作者もなんでそう思われてるか不思議なんだって言ってたし」
亜「ハラショー……」
友「う〜む。シリアスが続くとここで話す事がなくなるんだよねぇ」
雪「いやいや。シリアスの後ろに裏話とかあるでしょ」
友「でもそれ言っちゃうとその後の展開に響くし」
雪「あ、確かに……」
「「「…………」」」
雪「いや放送事故! いくら話せる事がなくても黙っちゃダメだよ!? あと亜里沙がさっきから何も言わせて貰えてないんだけど作者!」
亜「い、一体ナニヲハナセバ……」
友「片言になってる! 亜里沙、片言になってるよ!」
亜「でもこういう事じゃない?」
雪「と、言うと?」
亜「本編でシリアスやるなら私達が巫山戯ればいいんだよ!」
友「な、なるほど!」
雪「なるほど! じゃない! そんな事したら「あとがきでシリアスが台無し」って感想で言われちゃうから!」
亜「その感想すら来ればいいけどね」
友「なんか亜里沙のキャラがブレてきてるから今回はここまで!」
雪「次回までに元に戻る事を願って」
友雪「「バイバイ!」」
亜「ふふふふふふ」