て、これで納得してくれる人が果たしてどのくらいいるのか……
翌日。休日の早朝から電話で叩き起こされる。携帯を見ると穂乃果からだった。
「……はい」
『あ、お姉ちゃん。おはよう』
「うん、おはよう」
それから何とか頭を回し穂乃果に本題を聞くと、今から学校に来て欲しいらしい。なんか話があるとか。穂乃果、今の時間見て考えようか、と言おうと思ったけど、朝練とかするとなるとこの時間に起きてるのは普通か。
「あいよ~取り敢えず支度したら向かうわ」
『うん! それじゃあ学校で!』
なんか穂乃果の声がやけに元気というか、なんというか。まぁ吹っ切れたみたいな感じだったみたいだから良い、のかな?
「行って来ま~す」
「今日は随分早いのね。もしかして委員会?」
「ううん。ちょっと呼び出しがね。あ、そうそう。今日μ'sのライブやるみたいだから暇だったら来てね」
「分かってるわよ。友香と一緒に見に行く予定よ」
む? お母さんいつ知ったんだろうう? 私が知ったの昨夜の絵里からのメールだし……まさか私にだけ連絡来てなかったやつ?
「まぁ良いや。行って来ま~す」
そんなに穂乃果を待たせるわけにはいかないからね。いつもよりは少し急ぎ気味で登校するよ。て言うか、意外とこの時間から登校してる人多いな。少なかったらショートカットとか出来たのに……ええい、嘆いていても仕方ない。取り敢えず急ごう。
そして急いだのが功を奏したのか、比較的早く学校に着く事が出来た。んだけど、どこに行けばいいんだろう? 場所とか聞いてなかったんだけど……取り敢えず近くの生徒にでも聞いてみるか。
「あの、すいません」
「え!? 東野先輩!?」
なぜ声を掛けただけで驚かれ……あー、思い出した。まぁそれは今は関係ないから放って置くとして、今は穂乃果の居場所だね。
「高坂さんを見かけはしませんでしたか?」
「高坂さん、ですか? それなら講堂に行くのを見ました!」
「ありがとうございます。わざわざ引き止めてしまってすいませんでした。それでは朝の練習頑張って下さい」
そっか、穂乃果は講堂か。って、あれは
「海未じゃん、何してって聞くだけ野暮か。穂乃果に呼ばれたんでしょ?」
「はい。と言う事は友実もですか?」
「まぁね」
講堂の通路で海未と出くわし、一緒にホールに入る。中に入るとステージだけがライトで照らされ、そのセンターに穂乃果が一人で立っていた。
「二人ともゴメンね。急に呼び出したりして」
「いえ」
「寝起きだったけど、全然大丈夫だよ」
「それで、あの……ことりちゃんは……」
「ことりなら今日、あと一時間くらいでことりの乗る飛行機が日本を発つよ」
穂乃果はそれを聞くと少し寂しそうに俯く。そうなるなら仲直りすればいいのに。
「私ね、ここでファーストライブをやった時思ったんだ。海未ちゃんとことりちゃんともっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって。辞めるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。学校の為とか「ラブライブ!」の為じゃなく。私好きなの、歌う事が。それだけは譲れない」
そう言えばにこが、この前神田明神の境内で穂乃果と話したって言ってたな。絵里も穂乃果と二人で話したって。詳しくは話してくれなかったし、私も聞かなかったけど、きっと穂乃果にそれぞれの思いをぶつけたんだろうね。
「だから、ごめんなさい! これからもっと迷惑をかける。夢中になって誰かが悩んでるのに気付かなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う。だって私不器用だもん。でも追い掛けていたいの! 我が儘なのは分かってるけど、私……」
不安そうに言う穂乃果に私と海未は顔を見合わせて思わず笑ってしまう。いきなり笑いだした私達に不思議そうに聞いてくる。だってねぇ?
「今更迷惑をかけるかもって言われてもね?」
「はい。穂乃果には昔から迷惑を掛けられていましたから」
「え?」
「昔からよく話してたんだよね。穂乃果と一緒にいるといつも大変な事になるって」
「どんなに止めても夢中になったら何にも聞こえてなくて。大体スクールアイドルだってそうです。私は本気で嫌だったのですよ? どうにかして辞めようかと思っていました。穂乃果を恨んだりもしましたよ? 全然気付いてなかったでしょうけど」
ほう、それは意外。海未の事だから結局は楽しくなってノリノリでやってると思ったんだけど。それに恨みなら私にもあるよ? 例えば試験勉強の時、私の読書時間が減ったり、生徒会での仕事だったりだとか。
「でもさ、海未。穂乃果がいなかったら今の私達はいなかったと思うんだ。穂乃果がいたからにこや絵里、μ'sの皆と出会えた。違う?」
「はい、その通りです。穂乃果は私達だけじゃいけない場所まで連れて行ってくれるのです。私が怒ったのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからではなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘を吐いたからです。穂乃果に振り回されるのはもう慣れっこです。だから連れて行って下さい。まだ見た事のない世界へ! 私もことりも、μ'sの皆もそう思っています!」
「勿論私だってそうだよ。まぁ行き過ぎたら止めるけどね」
そう言って私達は穂乃果を挟む様に壇上に立つ。
「さぁことりを迎えに行ってあげて下さい!」
「えぇ! でもことりちゃんは」
「私達と一緒ですよ。ことりも引っ張って行って欲しいんです。我が儘言って欲しいんです」
海未の我が儘発言に穂乃果が驚くけど、何をそんなに驚くんだろう?
「だって有名デザイナーに見込まれたのに、それを断って日本に残ってって相当な我が儘だよね」
「そうです。そしてそんな我が儘を言えるのは穂乃果、あなただけです!」
「で、でも時間が」
「大丈夫大丈夫。さっき一時間あるって言ったでしょ。それだけあればここから空港まで間に合うって。ねぇ遥さん!」
私の声だけが講堂に響く。そして一番後ろの席から遥さんが現れた。やっぱりいたか。
「や、友実、それに高坂さんに園田さん。おはよう……って空気じゃないかな?」
「取り敢えず話は後。遥さんなら
「持ってない事もないけど、そんな事より」
「話は後で、必ずするから。時は一刻を争ってるの」
「分かったよ。その代わり約束だからね」
遥さんの念を押した言葉に頷く。大方聞きたい事の内容は予想がつく。そんな事の確認で時間を無駄にしたくない。私は講堂から走って出て行く遥さんと、それに着いて行く穂乃果を見送った後、昨夜絵里に頼まれた事をやりに行く。
「あの、友実」
講堂を後にしようとしたら海未に呼び止められた。はて、何の用かな?
「……その、ありがとうございます」
「私は別にお礼されるような事はしてないよ」
穂乃果が自分の本当に気持ちに気付いたのは穂乃果、にこ、絵里の成果だし、空港までの道を作っているのは遥さん。私は特に何もしてはいない。だからお礼されるような事はしていない。
「いえ、友実はずっと私達を支えてくれました。小さい頃からずっと。それだけでも、友実にしてみればそんな事かもしれませんが、私達にとってそれはとてもありがたい事でした」
「そう。じゃあ、ありがとう、で良いのかな? お礼の言葉にお礼で返すのはやっぱりおかしいね」
「そうですね」
私達は一度クスリと笑うと私は講堂から出て教室へ。海未は……多分講堂にいると思う。
教室で遥さんに話す事を纏める事数十分。穂乃果とことり、遥さんが走ってるのが目に入り、時間を確認する。時間はμ'sのライブ開始五分前だった。
「って、ヤバ! 遅れる!」
慌てて立ち上がり講堂に向かう。校内にいた人達は全員講堂にいるのか、誰ともすれ違う事なく講堂に着く。
「あ、おねえちゃ~ん、こっちこっち~」
声のした方を見るとこっちに手を振っている友香が見えた。速足で近付くとちょうど講堂のステージが見える位置だった。そしてブザーとともに流れる、穂乃果が、穂乃果達が最初に歌って踊った曲が流れ始める。
「友実。ちょっと良いかい」
背中を軽く小突かれそっと振り向くと、真剣な表情の遥さんがそこにいた。私は黙って頷くと、隣でステージに魅入っている友香に気付かれない様に、そっとその場を離れる遥さんに着いて行く。そして着いた場所は学校から少し離れた小さな公園。
「さて、ここなら大丈夫かな」
「そうだね」
今の時間なら生徒は講堂でライブに行ってると思うからね。遥さんもそれが分かってるのか、背を向けて黙っている。
「さて、それじゃあいつまでも黙っていても仕方ないからね。さっそく本題から行くよ。友実。説明してくれるよね」
振り返った遥さんの目は、今までのどの時よりも真剣だった。私もここで逃げたり、誤魔化したりするつもりもなく、正直に話す。今までμ'sのメンバーの誰にも話さなかった事。私が仮面を被る切っ掛けになった話を。
「話すよ。私がどうして仮面を被る事になったのか」
私はベンチに座り、中学時代の事を思い出しながら話し始める。
「あれは私が
「まぁ、友実は怒ると怖いからね」
ははは。高校三年間だと遥さんに一番怒ってたからね。でも多分、中学時代に比べると抑えられてると思うんだよね。
「それでね、友香や穂乃果達からも心配され始めて……いつだったかなぁ。私を目の敵にしていたグループが、ちょっとした噂を流してね」
「噂?」
「私がね、男の娘じゃないかって。私は特に気にしなかったんだけど、穂乃果達がそのグループと対立仕掛けてね。唯一の救いは、そのグループが三年生で私と同時に卒業するから、その一年をやり過ごせばなんとかなった事なんだ」
「そんな事、でも友実ならどうにか出来たんじゃ……」
「多分出来たんだろうね。でもその時はまだ今ほど積極的になれてなくてね」
だから多分、あの時の私は何も出来なかったと思う。
「それで卒業式が近くなった時、グループのリーダーが友香に目を付けてね。きっと卒業前に私に一泡吹かせようとしたみたいで。もちろんそれが分かった時点で私が止めに入ったけど。そんな事があって、高校ではキャラを作って、仮面を被って、何事もなく平穏に過ごそうってね」
「それで仮面を被って過ごそうって決めたんだ」
「そうだよ。まぁ高校デビューって気持ちも少しあったんだけどね」
「でも大半は周りの、友香ちゃんや高坂さん達の為なんでしょ?」
遥さんの言葉に頷く。私は敵を作って周りに被害が行くのが嫌だった。私に来るならやり返せば良いだけだから問題はない。けど、穂乃果やことり、海未、それに友香に被害が行くのは許せなかった。だから私は仮面を被ることにした。
「それじゃあ、私が三年間接してきた友実は、偽物だったって事か。友実は私と話しながらも、内心じゃ笑ってたんだ……何も知らないで馬鹿なやつって」
「それは違う! 確かに三年間仮面を被って接してきたけど、笑ってなんかいないよ! それに……!」
「……っははは! 分かってるって。仮面を被ってたとはいえ三年間も友実と毎日のように顔を合わせて話してたんだよ? 友実が誰も傷付けたくないって思ってる事くらい分かってるって」
遥さん……
「まぁその割には結構私には暴力的だった気がするけど」
「そ、それはその……」
「大丈夫、分かってるって。別に私はその事で友実を恨んだりしてないよ。ちゃんと私に原因がある事分かってるから」
「それならもう少し真面目に仕事して下さいよ。遥さん」
自覚があるならしっかりして欲しい。そうすれば私や夏帆さんの負担が少しは減ると言うのに。
「そうそう、そんな寛大な私でもね一つだけ許せないことがあってね」
「……ちなみにそれは」
「そろそろ私の呼び方を「遥さん」から「遥」に変わらないかな~って」
「そ、それは……」
確かにμ'sの皆は仮面を外してる時は呼び捨てだけど、でもそれだってそれなりの抵抗が少なからずあったからで、急に呼び捨てにしてって言われてもそれに対応出来るかって聞かれたら出来なくはないけどちょっと恥ずかしいと言うか。そもそも今まで「名前+さん」で呼んでた人を急に呼び捨てるなんて私の中で躊躇いが発生しない訳がなくて……
「呼んで、くれないの?」
「あー! もう分かった! 呼ぶ、呼ぶから目を潤わせて見ないでよ遥!」
「ふふふ。やっと友実に呼び捨てで呼んで貰えた」
「嘘泣きだったの!」
「女の涙は武器なんだよっと。いや~それにしても、本当に友実に呼び捨てで呼んで貰えるとはね~」
くそ、完全に騙された。でもいつもの遥さ……遥だ。良かった、もしこれで嫌われたりしたら私……
「ほら友実。いつまでも座ってないで学校に戻ろ。ライブは終わっちゃってるだろうけど、友香ちゃんいるんでしょ。心配かけさせちゃまずいだろうし」
「連れ出した本人が何を言ってるんだか。あ、そうそう遥。学校ではいつも通り「遥さん」って呼ぶからね」
「え~。てか学校の皆にバラす気はないんだ?」
「さすがに事が事だけにバラせないって。それに私は卒業までこのキャラ通すって決めてるから」
せっかく高校デビューしたんだし、卒業まではこのままでいこうかな。
「ちなみに聞くけど、音ノ木で知ってるのはどのくらいいるの?」
「え~っと彩さんとアイドル研究部の計十人かな?」
「それは多いのか、少ないのか」
多分少ない方だと思う。まぁ隠してるから当たり前だけど。っとなんか音ノ木坂の方が騒がしいな。もう講堂から帰る人達であふれてるのかな。
遥と話しながら音ノ木坂に続く階段を上ると、友香がこっちに駆け寄って来た。
「おねえちゃ~ん!」
「ッ! 友香危ないっ!」
「……へ?」
友香が道路に出た時、私は左からトラックが迫っているのが見えた。そこからは脊髄反射のごとく、気付いたら走り出し友香を突き飛ばしていた。そしてそのすぐ後に来る身体への鈍い衝撃。
あれ? これ死んだんじゃない? 遠くで誰かが叫んでるのが聞こえるけど、誰が叫んでるのかは分からない。
「友実! しっかりして!」
「友実!」
「友実お姉ちゃん!」
あぁ、この声は絵里達か。大丈夫だよ、私は平気。それより、友香は。
「友香……」
「お姉ちゃんしっかりして! 死んじゃ嫌だよ!」
「ははは。私は簡単にゲホッ……死なないって」
あれおかしいな。友香の頭を撫でたいんだけど、右腕が動かないや。それに動く左腕にも上手く力が入らない。取り敢えず友香に確認しなくちゃ。
「友香……怪我、ない?」
「うん。うん、ないよ」
「そっか……それは、良かった……」
そこで私の意識は暗闇へと沈んでいった。
【図書委員だより】
遥「前回の【妹ラジオ】で今回のあとがきでの茶番ないと思った? 残念【図書委員だより】がありました〜」
友「あのさ遥。今の私、これに出てるどころの騒ぎじゃないんだけど……」
遥「まぁまぁ。この作品の図書委員って言ったら、私と友実、あと夏帆しかいないんだからさ。さすがに私と夏帆でやるわけにはいかないじゃん?」
友「だったら別に、休みでも良かったじゃん……」
遥「えぇ〜、だって本編がシリアスだから、ここでバランス取らないと作者が嫌だって」
友「我が儘か!」
遥「それにしても、作者のオリジナル主人公って大体が酷い目に遭ってるよね」
友「一人は通り魔に手を切られた上にお腹刺されて入院、更に真姫を庇いながら階段から転げ落ちてこれまた入院」
遥「一人は事故って入院。まぁこれは言ってるだけで本当かは分からないけどね。作者の中ではそうなってるよ」
友「そして今回の私、か。四人中三人っておかしくないかな?」
遥「まぁ何かと便利だからねぇ、事故とかそう言うの」
友「それにしても、でしょ。私のこれ、下手したら死んでるレベルだよね?」
遥「まぁ入院は確定として、ちゃんと意識戻るかがちょっと不安だよね」
友「もしかしてだけどさ、これ後日談で友香視点で語って完結。とかないよね? ないよね!?」
遥「ど、どうだろう。いくら作者とは言えそんな蛮行しないと思うけど……面白いから。その一言でやりそうな気がしないでもない」
友「その場合、私の扱いどうなるの? 綺麗な顔してんだぜ状態?」
遥「……喪服って黒だよね」
友「不吉な事言わないでぇ!」
遥「まぁ冗談冗談。ちゃんと生きてるから安心して」
友「って、ホラ! 私の過去に触れないまま時間来ちゃったじゃん!」
遥「私に文句言われても……強行突破しなかった友実も悪いし、なにより話題に出さなかった作者が悪い。私は悪くねぇ!」
友「遥、ちょっと髪切ろうか。そしたらまともになるでしょ」
遥「そんじゃ私の髪に危機が迫った所で今回はここまで! バイバーイ!」