巻き込まれた図書委員   作:名前はまだ無い♪

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これにて巻き込まれた図書委員閉幕


episode.final「本当にありがとうございました」

 そして日は経ち、つい昨日車椅子が取れたと思ったらもう卒業式。リハビリを受けていたからぎこちなくとは言え歩ける様になった。まぁ式に出るくらいなら何も問題ないからいいんだけど。

 

「そっか、久し振りにクラスの皆と会うのか」

「そうね。私達とはよく会っていたけど、友実にとっても、皆にとっても約半年ぶりよ」

 

 隣を歩く絵里がどこか楽しそうに言う。一体何が楽しいんだろうか? ちなみに今日は珍しく絵里と二人で登校している。何でも「穂むら」で友香、雪穂、亜里沙ちゃんで一緒に新品の制服を着るらしく、亜里沙ちゃんを送って私を誘ったらしい。まぁ私も「穂むら」に送った後、登校するつもりだったからタイミング的にも良かったし。

 それから何事もなくクラスに着き、久し振りに会うクラスメイト達に、これまた久し振りに被る仮面で接する。さり気なくにこ、希、絵里の三人を探すとにこは校門、希は中庭、絵里は生徒会室にいると、各々から連絡があった。

 さて、式の後だときっとそんなに時間がないから、私も始まるまでに校内を歩こう。生徒会室は絵里がいるとなると……あそこかな。多分彼女もいるだろうしね。

 

「やっぱりいたんだね、遥」

「まぁね、そのうち来ると思ってたから。友実」

 

 訪れた先は司書室。そこには予想通り遥がいた。

 

「そういや友実と初めて話したのも図書室(ここ)だったね」

「そうだったね。あの時から遥の怠けは変わらなかったね」

 

 私は座りなれた椅子に座って机を撫でる。ここには私の三年間の思い出が一番濃く残ってる場所だと思う。

 

「はい友実。紅茶」

「最後までこの味は再現出来なかったなぁ。やっぱり、遥の方がお茶淹れるの上手だよ」

 

 遥の淹れた紅茶を一口啜る。やっぱり私が淹れた物よりも美味しい。でもこうしてここで何気ない会話をするのも

 

「今日で最後、か」

「なーに柄にもなく感傷に浸ってるのさ」

「別に……ただそう思っただけ」

 

 そっか、私が、私達が図書委員会役員としてここに来る事はもうないんだ。

 

「待って。て事はもう友実に仕事しろって怒られなくて済むのか!」

「そうだね。もし大学に行って同じサークルとかに入らない限り、私が遥を怒る事はないね」

 

 ここ一年、毎日のように遥を叱っていた。面倒と思いつつも、こうして思い返すと私もその恒例のやりとりが楽しかったのかもしれない。

 

「あ~あ。なんだか仕事サボりたくなっちゃったよ」

「……三条さん、仕事して下さい」

「えぇ~だって東野さんがいれば私のやる事ないじゃ~ん」

 

 あぁ、このやり取りはやっぱり。図書委員会に入って初めて遥と仕事をした時の、遥との初めての会話。

 

「いいえ。三条さんに振り分けられた仕事はキチンと、こなして、くだ……さいよ」

「まったく。友実は……まったく泣き虫だな」

 

 そう言って笑う遥の目にも涙が溜まっていた。

 

「ははっ、そう言う遥だって」

「私は委員長だから良いの」

「なんだそりゃ」

 

 遥のよく分からない理由に私達は揃って笑う。そして一通り笑い、収まるとどちらからともなく司書室の出口に向かい、揃ってお辞儀し、図書室から出るときもお辞儀する。その時に私と遥が言った事は偶然なのか同じ言葉だった。

 

「「三年間、お世話になりました!」」

 

 そして私達はその場で抱き合い、図書室前を後にした。遥はそのまま別の所へと足を運ぶ様で、私も私で生徒会室に向かう事にする。

 

「あれ? 希?」

「あ、友実っち」

 

 生徒会室前に行くと生徒会室前に希が立っていた。あ、今日はいつもと髪型が違う。いつもは二つ結びしてるのに、今は三つ編みにして前に垂らしてる。

 

「その髪型似合ってるね」

「そう? ありがと」

「希ちゃん! それにお姉ちゃん!」

 

 希に中に入らないか聞こうとしたら、中から穂乃果と絵里が出て来た。二人は希がいる事にはたいして驚きを見せなかったけど、私がいる事に驚いてる。なんで?

 

「まぁいいや。それより穂乃果、式の準備は大丈夫そう?」

「もう、お姉ちゃんまでそれ聞くの? 大丈夫だよ! お姉ちゃんの方こそ大丈夫なの?」

 

 大丈夫って何がだろう? 怪我の具合かな?

 

「うん。式に出るくらいなら問題ないよ」

「そうじゃなくて」

「ほ、穂乃果。そろそろ行かないといけないんじゃない? それ、必要な物なんでしょ?」

 

 穂乃果が何か言おうとしたら絵里に遮られ、最後まで聞けなかった。穂乃果が何を言おうとしたんだろう?

 

「ほら友実っち。ウチらもそろそろ行かんとコサージュ配られてまうよ?」

「え、もうそんな時間?」

「ほら友実、急ぐわよ」

 

 何か知っていそうな絵里達に聞こうとしたら、時間が来てしまった。でもコサージュが貰えなくなっちゃうなら早く戻らないと。卒業生なのに示しがつかないからね。

 そして教室でコサージュを受け取り、体育館へと移動を始める。並びと席は自由らしく、なぜか卒業生の列の一番前を絵里とともに歩く事になった。こういう時って生徒会長の絵里と副会長の希じゃないの?

 

「まぁまぁ。皆が友実っちはそこって言ってるんやし、ええやん?」

「まぁ皆さんが良いなら」

 

 別に一番前だからって何が悪いとかないから良いんだけど、なんか違和感があるんだよなぁ。

 

『卒業生、入場』

 

 違和感の正体について考えていたら、体育館の中からアナウンスが聞こえた。絵里と頷き合うと同時に歩き始める。中に入った途端、館内を拍手が響き渡る。あ、凛、真姫、花陽だ。

 そして始める音ノ木坂学院卒業式。理事長挨拶や卒業証書授与など恙無く進行され、送辞の時が来た。

 

『続きまして送辞。在校生代表、高坂穂乃果』

 

 やっぱり送辞は現生徒会長の穂乃果が読むのか。て事は答辞は元生徒会長の絵里かな?

 

『送辞。在校生代表、高坂穂乃果。

 

 先輩方、ご卒業おめでとうございます。実は昨日まで、ここで何を話そうかずっと悩んでいました。どうしても今思っている気持ちや、届けたい感謝の気持ちが言葉にならなくて、何度書き直してもうまく書けなくて……それで気付きました。私そういうのが苦手だったんだって。

 

 子供の頃から、言葉よりも先に行動しちゃう方で、時々周りに迷惑かけたりして、自分を上手く表現するのが本当に苦手で、不器用で。

 

 でもそんな時、私は歌と出会いました。歌は気持ちを素直に伝えられます。歌う事で皆と同じ気持ちになれます。歌う事で心が通じ合えます。私はそんな歌が大好きです。歌う事が大好きです!

 

 先輩、皆様方に感謝とご活躍を心からお祈りし、これを贈ります』

 

 穂乃果のその言葉に合わせて真姫が壇上のピアノの前に座り、伴奏を奏で始める。そして穂乃果が歌い始める。

 

「この曲……」

 

 横並びになった私、絵里、希、にこ。その誰かの、もしかしたら私のかもしれないその呟き。それは一学期始め、偶に放課後に聞こえて来たあの曲だった。そっか、あれは真姫が弾いていたのか。

 穂乃果のソロが終わるのか、真姫が「さぁ!」と言うと、後ろから海未とことりの歌声が聞こえた。そして続く様に凛と花陽の声も。

 私は思わず俯いて涙を流す。絵里と希は驚いて後ろの席を振り返り、にこはジッと前を見つめ続けている。でもその姿はどこか、涙を我慢している様にも見えた。

 そして穂乃果の一言で在校生の皆が一斉に合唱を始める。

 

『続きまして答辞。卒業生代表、東野友実』

「……え?」

 

 司会の言葉に小さいながらも声が出てしまった。何を言ってるのか分からず戸惑っていると、隣の席の絵里に小突かれる。

 

「ほら友実。ちゃんとやって来なさい」

「あ、う、うん」

 

 絵里に小突かれて思わず頷き、返事をしてから立ち上がる。そして壇上に上がる階段を上ってる時に気付いた。なんで私が答辞をやるの!? こういうのって絵里の仕事だよね? 

 そう思いマイク前で一礼した後、そっと絵里と多分主犯格の希を見るとウィンクで返された。違う。私が欲しい答えはそれじゃない。でも仕方ない。もうマイクの前に立っちゃったからには答辞やるけど、上手くやれるかは保証しないからね!

 

『答辞

 

 厳しい寒さの中にも、春の訪れが感じられる、このよき日に私達三年生一同は無事卒業式を迎える事が出来ました。この度、私達の為にこのような素晴らしい卒業式を催して頂き、心より感謝申し上げます。そして、卒業生代表として答辞を読ませて頂く事を光栄に思います。

 

 高坂さん。先程は素晴らしい送辞をありがとうございます。サプライズを貰ったからには、サプライズで返そうかと思いましたが、この答辞を読む事自体がさらにサプライズとして重ねられました。

 

 今、三年間を振り返ると、本当にたくさんの思い出があることに気付きます。音ノ木坂学園に合格し、入学したあの日、知り合いが少なく不安でいっぱいでした。しかし今では、かけがえのない友達や仲間がいます。

 

 先生方には学校生活の中でとてもお世話になり、いつも私達を見守ってくださり、ご指導くださいました。廃校の危機に瀕したこの学園で、今、こうして次世代に想いを託して卒業出来るのも理事長、先生方のお蔭だと思っております。ありがとうございました。

 

 在校生の皆さん、これからの音ノ木坂学院を創り上げていくのはあなた達です。私の、私達卒業生の大好きなこの音ノ木坂学院を胸を張って自慢出来るような、そんな学院にしてください。

 

 最後になりましたが、音ノ木坂学院のこれからのご発展とご活躍を祈り、感謝の気持ちを述べ、答辞を終わらせて頂きます。

 

 本当にありがとうございました。

 

 卒業生代表、東野友実』

 

 一礼し、拍手が響く中壇上から降りる。それから席に戻ると絵里を軽く睨む。正直サプライズの重ね掛けで、途中から何を言ってるのか、自分でも分からなかった。まぁ多分普通の答辞になっちゃったと思うけど、この学院での思い出はきっと、言葉に出来ないくらいのものだと思う。

 そして答辞が最後のプログラムだったらしく、卒業生退場のアナウンスが流れる。

 

 拍手に包まれながら私達は体育館から出て行く。

 

 

 

 こうして楽しくも、騒々しい、だけどきっと一番の思い出になる、巻き込まれた図書委員の話はお終い。




総話数四十八話。合計文字数245.088文字。

お気に入り登録をして下さった150余名の方々、九ヶ月に及ぶ連載を一から見守って下さった読者様方、ありがとうございました。

今作品の物語が完結したからといって、友実さんがいなくなる訳ではなく、時たま活動報告に上げている短編に登場する時がございます。その際、友実や友香、遥などのキャラを懐かしみ、またこの作品に目を通して頂けると作者冥利に尽きます。

更に作者自身、他にも作品を投稿していますので、物書きを辞める事はないです。

それではこれにて「巻き込まれた図書委員」を完結とさせて頂きます。

友実さん、遥さん、友香。お疲れ様でした。

PS.気になった方がいるか分かりませんがあとがきの茶番の総文字数は19.649文字でした。それでは!

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