巻き込まれた図書委員   作:名前はまだ無い♪

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後編です


ex2「行ってくるね」

 あれからグレットさんのもとで魔法を学ぶこと数日。私は最低限の強力な魔法の仕組みだけを教えてもらった。グレットさん曰く、これで魔法を行使出来なかったらどんなに頑張っても習得は無理との事。

 

「試しに撃ってみい」

「はい。Afnám」

 

 魔力を僅かにだけ使い教えてもらった魔法の一つ、殲滅魔法を唱える。手の平に魔力が集中するのが分かった次の瞬間、目の前にあった練習用の的がまとめて消えた。

 

「……ほう」

「えっと、どうでした?」

「うむ、今まで教えてきた中で最速じゃな。小娘、勇者なぞ辞めて儂の元で本格的に魔法を学ばぬか?」

「あ、それは丁重にお断りさせて頂きます」

「そうか、それは残念じゃ。ま、勇者業に嫌気が差したらいつでもここへ来るといい。お前さんなら歓迎しようぞ」

「ありがとうございます。そして今日までの数日間ありがとうございました。それじゃあ行ってきます」

 

 一度グレットさんに頭を下げる。さて、じゃあ魔王退治を行きますか。

 

「Fljótandi」

 

 フワリと体が浮く感覚と共に、空中に体を躍らせる。

 ここ数日、グレットさんから魔法を教えて貰っている間は情報は全く入ってきていない。だからまずは情報収集から始めないといけないんだけど……一人一人に聞くのが正直面倒くさい。何が嬉しくて不確かな情報の為に何時間と時間をかけないといけないのか、こちらは急いでいるというのに。

 そんなわけでこんな時便利なのが盗聴魔法! 本来ならこの世界には存在しない、私が考えたオリジナル魔法。ただ難しいのが、この魔法は考えなしに使うと脳が処理出来なくなって、反動で使用時間に見合った時間気絶する事。初めて使ったのがスレットさんが偶に部屋でぶつぶつ呟いてる独り言を聞こうとした時。その時は麓の村の人達の会話まで聞こえてすぐにやめた。時間にして二、三秒。それだけでも一時間は意識が飛んでいた。

 なので同じ轍は踏まないように色々と試した結果、なんと聞ける内容に絞り込みが出来る事が分かった。これにはグレットさんも呆れていた。でも絞り込むと反動も少なくて済むのがいいところ。

 てな訳で盗聴魔法を使う。絞り込みは最近の魔物の動き!

 

「Eavesdropping」

 

 途端に入ってくる最近の魔物達の同行と、それに関する考察が流れてくる。量はそんなに多くないのかすぐに情報がまとまる。

 まず、私がグレットさんの所に行った日と同じ日に、東の方にある「トルボ国」の外れにある湖にいたクラーケンとその支配下の魔物が突然消えた。トルボ王国は大災害の前触れとか騒いでるらしい。最後のはどうせもいい情報……ううん、これがトルボ王国の仕業じゃないって事が分かるわね。

 次に、今まで魔物に襲われていた村や街、国から魔物が引いていき、人間界は平和そのものらしい。

 最後、二つ目の補足情報として魔物達は同じ方へと移動を始めていることが分かった。噂レベルの話だけど、魔王のいる城へと移動しているのではないかって言ってる人達がいるみたい。

 取り敢えず私の目的は魔王の城に行って魔王を倒す事、または魔物達を殲滅してこの世界の人達が安心して暮らせるようにする事。だから魔物達が移動した方へと飛んでいるんだけど……

 

「お腹空いたな……これはグレットさんの家で何か食べるべきだったかな」

 

 腹が減っては戦はできぬ。魔法の行使にも支障が出る。だから今前方に見えている街に降りてごはんを頂いても何ら問題はないわけです。確か名前は……そう「リベット街」!

 

 

 

 

「魔王サマゴ報告ガゴザイマス」

「……なに?」

 

 魔王城の大広間、デアンからの報告を聞く。返事に少し間があったのはイラついているから。イラつきの原因は明らかで、烏賊を持ち帰った日から毎日魔物達に攻撃をされるようになったから。

 デアン曰く、今までの魔王は配下との交流が少なかたけど、私は交流があって親しみやすいから訓練とかと同じ感覚で攻撃してくるそうだ。

 いや親しみ感じて攻撃するってなんだよ、と話を聞いた時は思ったけど、ご飯の時とか、城内を見て回ってる時に見る皆の表情は楽しそうに見えた。それ以外にも、暇潰しで作った将棋や囲碁とかの娯楽のウケがよく、また、私がいつも勝ってるからリベンジ魂を燃やしつつ、楽しんでるのもそうだって言われた。

 ちなみに魔王としての仕事とかもあるんだけど、皆それを重要視しないで勝負を仕掛けてくるからイライラする訳よ。でも根っこの原因は自分にあるから怒る事も出来ないというジレンマ。

 

「反逆の意思があるやつの心は片っ端から折ったつもりだけど、まだそんな事をしてこようとしてるやつでもいた?」

「イエ、皆魔王サマニ勝ッテミセル、ト意気込ンデオラレマス。実ハ諜報カラノ報告デ勇者ノ居所ガ判明シタソウデス」

「ほう、あの数日間世界中の至る所を捜しても見つからなかった、あの勇者が?」

「ハイ。現在勇者ハココカラソウ遠クナイ場所ニアル「リベット街」ニイルヨウデス」

「そっか。じゃあ行ってくるね」

「……エ?」

 

 ようやっと勇者を見ることが出来る。いや~楽しみ楽しみ。さてと、リベット街の場所なら把握してるから早速行きましょうそうしましょう。なにやらデアン達が慌ててるけど私にはそんなの関係ねぇ! 精神でさぁレッツ転移!

 

「っと、到着。なんか騒がしいな……てそりゃ勇者が来てるんだから当たり前か。さてさて、私も勇者を一目見る為に顔を隠さないと……いや、魔法で一時的に姿を変えよう」

 

 よし、これでどこからどう見てもこの街の住人だ。誰にもバレる心配はない……はず。まぁ大丈夫大丈夫。

 さてと勇者はっと人込みのある方に行けばいいかな。あ、いたい……た……? あ、あれれ? 私の目がおかしくなったのかな。勇者勇者騒がれてるのが友実なんだけど。友実、じゃないよね? だって友実までこっちに来てる訳……そう言えばデアンがいってたな。魔王と勇者は何かしらの繋がりがあるみたいな事言ってたけど、繋がりってこういう事!? こう「同年代くらいの子」とか「同じ世界の人」とかじゃないんかい! いやまて落ち着け、いくら友実でも今の私なら気付かれないはず……あ、目が合った。一先ず帰らないと。

 さっさと友実から離れて建物の影に隠れて転移する。

 

 

 

 

「今のって……」

 

 リベット街に入ったらなぜか私が勇者だという事が広まっていて、大勢の人に囲まれた。どうにかしてこの場を切り抜けようとして周りを見たら、なんか私をじーっと見てる男性が目に留まった。その男性は私と目が合うと慌ててどっかに行っちゃった。

 

「あ、私もう行かなくちゃいけないので。失礼します」

「おう頑張れよー」

「ほれ、これ食っていきんしゃい」

 

 などなど、街の人から色々な餞別を貰う。

 あ、これ以上は持ちきれないです。え? アイテムボックス? そんなの持ってないですよ。これ美味しいから食べてみて? では失礼ながらいただきます。あ、なんですかこれ凄く美味しい!

 

「あ、すいません。少し野暮用が出来たので、これで失礼します」

 

 気付けば数時間が経っていた。街の人達にお礼を言ってから飛行魔法で街から少し離れた所まで移動する。私が一人になったから時期に姿を現すと思うんだけど……あ、来た。

 

「なんだ遥じゃないんだ」

 

 魔力の反応があったから街から離れて様子を見たら、翼を持った魔物が私の上を旋回していた。取り敢えず先手必勝と行きますか。

 手に魔力を集中させて弾を打ち出す。弾は見事に魔物に当たり、地面に落とし……あ、耐えた。そしてそのまま背中を向けて、ってあれ逃げてるよね? 逃げる先って魔王の城だよね? 追わなきゃ。

 そんな訳で再び飛行魔法、だけだとさすがに疲れるので魔物に追いついたら背中に乗せてもらおう。

 

 

 

 

「デアン! デアンいる!!」

「ココニ」

「今すぐ移動の速いのを用意して、リベット街まで偵察させて!」

「ハッ」

 

 うぐぐぐ、あれ友実だよね。しかも友実の事だから私って気付いてもおかしくないのが怖い。取り敢えずデアンが選んだ高速飛行可能な魔物、フォークには様子見だけして勇者および一般民には手を出さないようにだけ言いつける。

 

「それじゃあお願いね」

「グルァ!」

 

 フォークは一声唸ってからリベット街の方へ飛んで行く。

 

「さ、私達も準備するよ。皆を集めて」

「ハッ」

 

 大広間に向かいながらデアンに指示を出す。私はそのまま玉座に座り、少し考え事。さて、どうしたものか。何かいい見本はないものか。

 いい感じのイメージがついて魔力を練って実体化させた所で、飛行場の方が何やら騒がしくなった。フォーク帰って来たのかな?

 と思ったらデアンが扉を勢いよく開けて入って来た。

 

「魔王サマ、大変ナ事ニ!」

「どうしたの? フォークに何があった?」

「ソ、ソレ以上デス! 勇者ガ来マシタ! スグニ迎撃ノ準備ヲ!」

「ん、了解了解。ちょうどこれも出来た所だし」

 

 魔力を操って、実体化した鎧一式を身に纏う。少し視界が狭くなるけどこれなら友実に私だってバレないはず。

 

「デアン、 今すぐ全魔族をここに……いや、強制転移させよ」

「微力ナガラオ手伝イサセテ頂キマス」

 

 デアンから少し魔力を貰い、城内にいる全魔族を大広間に転移する。集められた魔族達は跪いて私の意見を待っている。ここで私が出す指示はたった一つ。

 

「これから勇者がここに来る。なにがあってもこの戦いで全てが終わる。なので皆に命令をしておくよ」

 

 気のせいか、友実がここに向かっている足音が聞こえてくる気がする。

 

「皆は私と勇者との闘いを見守っていてほしい。勇者とは一対一で戦いたいんだ」

 

 納得してないのも少しいるけど、こうでもしないと犠牲が出るんだよね、魔族側(こっち)が一方的に。なんか友実ならやりかねないしなぁ。あ、でもこっちから攻撃しなかったら友実は手を出さないかな?

 

「話は終わった?」

「うん、バッチ……リ……?」

「や、遥。まさかこんな所にいたなんてね。捜したよ」

 

 魔族達に話していたら、群衆の中から聞き覚えのある声が聞こえた。その声の主を見ると、まぁ、うん、友実が満面の笑みで立っていた。そう、友実が笑顔で、超笑顔を浮かべて立っていた。

 これはゲキオコですね間違いない。なんとか魔族達への攻撃は止められるかなー。数日とは言えお世話になったから被害は出したくないんだけど……

 

「さて遥。帰る準備はできてるよね? Svefn」

 

 友実が呪文を唱えた途端、大広間の魔族が全員その場に倒れる。息はあるから、多分友実が魔法で寝かせただけなのが分かった。良かった良かった、友実は魔族達に危害を加える気はないみたいだ。

 

「やぁ友実。久し振りだね」

「そうでもないんじゃない? さっきリベット街で目が合ったじゃない」

「あーそう言われれば。ていうかよく私って分かったね。一応魔法で姿変えてたのに」

「逆に魔法使ってたから気づいたって所よ。それに目が合った一瞬驚いているのが分かったもの」

 

 そ、それだけで分かるものなんだ。

 

「あーそれと遥。私からもいいかしら」

「? どうぞどうぞ」

「……いつまでその鎧着てるつもりなの?」

 

 ……あ、忘れてた。友実への正体バレを防ぐ為に着てたんだった。道理でさっきから友実が時々冷たい視線をしてると思ったら。

 

「ちょっと待ってね今消すから、っと」

「あ、消えた。それ魔法で作った物なんだ」

「まぁね。それより、友実もだいぶ魔法上手に使えるんだね」

「一応この世界一の魔法使いのお墨付きよ」

 

 そんな人がこの世界に……いや、まぁいるよね。なんなら武道一とか剣術一とかいてもおかしくないだろうし。

 

「まぁまぁさてさて、そんな雑談はあとでやるとして、一応私は魔王で友実は勇者となってる訳だ。それならやる事は決まってるよね?」

「なに? 私と戦うの? 言っておくけど、私こっちに来てから増してるのよね」

「へぇ、友実もなんだ。実は私もなんだ。それなら勝負の内容は決まったね」

「そうね」

 

 私は友実に、友実は私に、それぞれ近付く。やる事は決まっている。私達の間にテーブルと椅子を魔法で作り出す。

 

「時間は三秒」

「回数は一回」

「それじゃあ」

「五目並べで」

「「勝負!!」」

 

 こうして私と友実の世界をかけた五目並べは始まった。ちなみに今までの戦績は六十八戦三十勝三十敗八分となってる。

 五目並べを始めて数分。お互いに持ち時間が三秒だから盤上が次々と埋まっていき、最終的には引き分けになった。ただこの高速五目並べ、勝負がつくのは早いんだけど、その分デメリットがあるんだよね~。

 

「……どうする?」

「……もう一回やるのはさすがに疲れるから、もうじゃんけんでよくない?」

「……そうね」

 

 そう、戦況が目まぐるしく変わるから脳の処理が追いつかなくなる時があるんだ。この世界で普段より頭が回るようになったから、最悪引き分けてももう一戦行けるかと思ったけど、これが意外とそうでもない。

 

「いくよ、ジャーンケーン」

「あ、待った。私はパーを出すよ」

「えー、心理戦ありでやるの?」

「いや、なんとなく言わないといけない気がしたから」

「そ。それじゃあ今度こそ、ジャーンケーンポン」

「ほい」

 

 結果、私はパーで友実はチョキで私の負け。

 

「わーやられたー」

「私の勝ちだー」

 

 駄目だ。二人とも疲れてテンションがおかしい。取り敢えず友実からこの世界での話を聞くと、私を倒したら元の世界に帰れるらしい。

 

「じゃあこれで帰れる?」

「どうだろう? でもいつでも帰れるように準備した方がいいかも」

「そっか。じゃあちょいと録画でもしてから……あれ? なんか友実の体透けてない?」

「そういう遥も透け始めてるよ」

 

 友実の言葉に自分の体を見ると、確かに透け始めていた。それなら残った魔族の皆に残すメッセージは早めにしないとね。

 取り敢えず魔法を使って見た目をボロボロにする。まるで激しい戦闘の後みたいに。

 次に人間と共存できるって事、その為の術をデアンに軒並み教えた事を残す。

 それから次の魔王を召喚しようとしたら私が叱りに来る事も残しておく。まぁこれはしないんだけど、これが抑止力になればいいかな程度。

 そこまでした所で体内の魔力が消えたのを感じた。多分この世界から消え始めたんだろうね。

 

 それじゃあ、短い間だったけど楽しかったよ。バイバイ。

 

 その言葉を最後に、私の目の前は真っ白に染まった。

 

 

 

 

「ここは……?」

 

 目を開けるとそこは大学のキャンパスだった。

 

「遥、こんな所にいたのね。さっき友実が探してたわよ」

「あ、にこ。なんか久し振りに会う気がするのはなんでかな?」

「アンタねぇ、今日の昼一緒に過ごしたの忘れたの?」

 

 そう言われれば確かに。今日のお昼は皆でワイワイしてたな。主に私が場を掻き乱す側で。

 

「そうだ、今何時!?」

「そろそろ十九時になるわね」

「うわっ! 早く帰って晩御飯作らないと友実に怒られる!」

「その友実なら近くのスーパーに行ったわよ。なんでも冷蔵庫の中身が空だとかで」

「情報提供感謝! それじゃあにこまた明日!」

 

 私はスーパーに向かって駆け出した。

 




雑談部屋

まさかこうなるとは……あ、どうも東野友実です

まぁ結構難産してたしね。いつかはこうなると思ってたよ。あ、三条遥です

展開が苦しいって言っても、修整とか出来そうなんだけど……それすら無理だったの?

無理無理。ていうか、どう進めようか完全に分からなくなってたらしいからね

そっかぁ。あ、でもこっちでまたサンシャイン!!書くって

そこはもうどう行くか決まってるみたいだから安心して。でもまぁ月一更新は諦めてもらうしか

作者そんなに忙し位の?

忙しいって聞いてる。主に艦これとか、PS4のゲームとか、FPSとかで

遊んでばっかじゃない!

でもさ、それ込みで考えてもこれってアレだよね

アレって?

過去の人気作に縋り付いてるようにしか見えない

人気作……なのかなぁ?

まぁ人気作の定義が難しいからそこは掘り下げないとして。あとは全然投稿される気配のないオリジナル小説の執筆、新作の執筆とかもあるみたいだよ?

あ、遊んでばっかりじゃなかったのね、よかったわ

そんな訳でこれから不定期更新になるけど、よろしくね!

今度こそサンシャイン!!も完結まて行きたいわね
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