喰種にショタコンが多い件について   作:床太郎

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更新遅れた上に今回短いです。ごめんなさい。

そして、戦闘描写は目を瞑って見てください。(おい)

書いたあとに気付いた。ノロさんの空気感……。




サンタが赤を届けにやってくる。2

 白くすきとおった雪がコンクリートに吸い込まれていく。そんな中、白いスーツを着た集団がケースを片手に走る。

 

 「急げ! 二区の要請から二十分は経過してるぞ!!」

 

 未だこんな事態があっただろうか。堂々としたCCGへの襲撃。それも壊滅する寸前まで追い詰められていると聞いた。

 

 故に男たちは走る。自分たちが人々を守る正義だと信じて。

 

 「くそっ。まだつかんのか!?」

 

 「あと少しです! およそ二百メートル先を右折すれば、……ッ!?」

 

 最初の一人はそれが最後の言葉となった。

 巨大な赫子はいとも簡単に捜査官を持ち上げ、呑み込んだ。

 

 「…ッ!?」

 

 突然の出来事に咄嗟に捜査官達は後ずさった。

 

 「何だ! 貴様は!!」

 

 一人が声を張り上げる。だがまたしても、巨大な赫子に呑み込まれて消えていった。

 

 不意に雲が晴れた。つられて月明かりが辺りを照らし出す。

 

 そこでようやく、襲撃者の風貌が露わになる。

 

 フードを被った大男は光を纏って、その仮面に描かれる大きな口のようにゆっくりと、

 

 

 

嗤った気がした。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 互いに交錯する瞳。瞬間的な膠着状態に二人の化け物は何も口にしない。ただ真っ直ぐにその相貌で一心に視線を交えさせた。

 

 やがて小さな呻き声を上げて少女の手の中の女性が崩れ落ちる。目を見開いたその驚愕の表情のまま女性は静かにその生を閉じた。

 

 たとえ何が起ころうとそんなもの気にならなかった。ただただ目の前の化け物に互いが互いに目が離せなかった。

 

 その濁りきったドス黒い瞳。悲観し、諦観し失意し絶念したその表情。

 

 一目見て直感的に確信した。こいつは自分と同じだと。世界を知り、そして絶望してなお、世界にその精神を存在させている。

 

 【【ああ、なんて最高の日なんだ。】】

 

 

 

 「「こんにちは、同類(バケモノ)」」

 

 世界で唯一、自身を理解できる存在。それが今、目の前に現れた。心の底から湧き出て来る感情を無理やり押し殺して二つの絶望はーーーー

 

 

 

 ーーーー嗤った。

 

 

 さあ、俺を(私を)ーーーー

 

 

 ーーーー理解してくれ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 少女の背後が膨張したと同時に、大量の鋭利な礫が吐き出された。

 少年は瞬時に身を屈め、倒壊した建物の残骸を盾に巧みに躱していく。走り際にあちこちに散乱したクインケの一つを手に取ると少女目掛けて引き金を絞った。

 如雨露のような形状のクインケから小さな鉄釘サイズのナニカが大量に排出される。少女の赫子とぶつかり互いに火花を散らしながら相殺した。

 

 「アハハハハッ!! すごいすごい!」

 

 少女の無邪気な声が響く。

 

 「なら、こんなのはどぉ?」

 

 また、少女の背後が動いた。意思を持った生命体のごとく様々に形を変え右肩に移り、それは一つの長大なブレードへと収束していく。

 

 そして、駆けた。一直線に、少年まで。

 

 単調な動きではあるが、その速度は人間のそれとは全く別物となっていた。先程までの少年の行動を観察しての攻撃。少年の身体能力ではこれ程の速度を保った一撃を交わすことは出来ない。致命傷は避けられてしまうではあろうが、それでも片腕くらいは持っていける。そう、少女は考えていた。

 

 そんな回避不能な超速の一撃に対して、少年はーーーー

 

 

 「ッ!?」

 

 

 ーーーー駆けた。

 

 避けるでもなく、ただ真っ直ぐ向かって走る。そして、背後に隠し持っていた小刀のようなクインケを振るう。

 

 

 

 そして、激突した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 瞬間的に発生した土煙に巻かれ、少女は背後へ後退した。

 

 「……。」

 

 一連の攻防を繰り返して、少女は少年の評価を無謀と称した。

 左肩から真下にかけて切り裂かれた自身の左腕を見やる。恐らくあの小刀は初撃を躱した時にあのクインケと一緒に拾っておいたのだろう。

 

 確かに少年は少女に傷を負わせた。だが、その代償は余りにも大き過ぎた。少年はこんな一撃に自身の命を払ったのだから…。少女が放った超速の一撃をもろに食らっただろう。確かな感覚が自身の赫子から感じられた。あんなものを食らって生きている人間などいない。

 

 だが、

 

 そうして思考を完結させた少女は驚愕することになる。土煙が晴れたそこに立っている無傷の少年を視認して。

 

 少年は今まで閉ざしていた口を開けて笑う。

 

 「なんだぁ? もしかして不死身に会うのは初めてか? バケモノ」

 

 

 

 二つの絶望の邂逅劇はまだ終わりを見せない。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 交錯する剣戟。飛び散る血飛沫。切り裂いて、折れ曲がって、破裂して、全てが四散していく。そんな中、二つの狂気がぶつかり合う。

 

 激戦する戦闘の均衡は少しずつ、ゆっくりと崩れていった。いくら少年が不死だとしても、彼と彼女の差はあまりにも隔絶しすぎていた。

 それは、膂力であったり才能であったり、ありとあらゆるものが少年は少女に遠く及ばない。

 どれだけ奇抜に動こうがどれだけ虚を突こうが少年の一撃は少女の致命傷にはなりえなかった。

 

 逆に少女は少年の不死性についてある程度の理解を深めていた。

 少年の不死は不死であって再生ではない。腕が千切れようが足がもぎ取れようが再生しなかった。少年は死に陥った時、初めて不死が発動していた。

 

 それだけわかれば、もう十分だった。

 殺さずに拘束してしまえば、少年はもう何もできない。

 

 少女は長大な赫子を出現させ、少年に突き刺した。

 完全な物量勝負。

 少年は瞬く間に手足を拘束され空中へ持ち上げあげられた。

 

 「吊るしビトだね」

 

 「うるせぇよ」

 

 それでもなお、少年は笑う。

 そんな少年がどこまでも自分に似ていて、少女はそれが、心底愛おしくなって仕方がなかった。

 

 「もっと魅せてよ。あなたの絶望を」

 

 「はっ。絶望は魅せるもんじゃねぇだろ?」

 

 「そうだね」

 

 「まあ、このままだとどっかに埋められちゃいそうだし。俺は奥の手を使うよ」

 

 一瞬の間を置く。

 

 「はやく本気にならないと死んじゃうぜ?」

 

 ゆっくりと少年の口元が動いた。

 

 明確な声は発せられていなかったがそれでもその形から言葉が読み取れた。

 

 

 『クロスケ』、と……。

 

 

 瞬間、少女の背後から急激に悪寒が走った。

 咄嗟に振り向いてガードの姿勢をとる。

 だが、そんなもの御構い無しと言わんばかりに激しい振動と共にあっさりと宙を舞った。

 二、三度地面を跳ねて瓦礫の壁へと激突する。

 

 「あーあ。だから行ったのに…。死んじゃったか?」

 

 そんな質問は無意味だと知っていた。

 こんな程度じゃ到底、死を運べない。

 俺たちはそういうものなんだ。

 

 「アアアアアアハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」

 

 そう。

 

 それでこそ、俺たち(バケモノ)だろ?

 

 

 赫子を全身に纏い、より強靭に変貌した少女は、その長い舌をだらんとたらして、睥睨する。

 

 ああ、まだ足りないよな?

 

 もっとやろうぜ。

 

 俺たちの最高に理不尽で不条理なーーーー

 

 

 

 ーーーー八つ当たりを(・・・・・・)

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇が支配していた東京を朝日が覆った頃、バケモノ同士の闘いは終わりを告げた。

 

 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 少年の手足は地面に縫い付けられていて身動きが取れず、少女は全身に打撃痕が無数に広がっていて、少しずつではあるが再生している。互いに地に伏しており、荒い呼吸を繰り返す。

 そんな瀕死の状態でありながら、二つのバケモノを満たす感情は歓喜だった。

 少年は少女に、少女は少年に全てをぶつけた。

 

 「あー。もう舌を噛み切る気力すらねぇわ」

 

 少年は掠れた声を漏らす。

 

 「じゃあ、私の勝ち?」

 

 「バカ言え。あんただって倒れてんじゃん」

 

 「アハハ。そうだね」

 

 どれだけそうしていただろうか。

 やがて覚束ない足取りで少女は立ち上がった。ふらふらと少年の元へ近づいていく。

 

 

 絶望の先に逃避した少年と、

 

 絶望の先に憎悪した少女。

 

 その在り方は驚く程に似通っていて、それでいて絶望的に隔絶していた。

 

 ゆえに、少年を理解してみたいと、少女は思った。

 

 ゆえに、少女の未来(さき)を観てみたいと、少年は思った。

 

 少女は少年の真上に立つと、見降ろしながら、言葉を紡いだ。

 

 「いつか私があなたを殺してあげる。だから、それまでーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーあなたは私のもの、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 世界は間違いだらけだ。

 

 だからこの出逢いもまた、間違いなのかもしれない。

 

 でも、

 

 だからと言って、

 

 間違い続けた先に正解がないとは限らない。

 

 間違えて、間違えて、

 

 そうやって、正解を探す旅に出るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私はエト。あなたは?」

 

 

 

 

 「千晴(ちはる)栗原(くりはら)千晴(ちはる)

 

 

 

 

 

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