お菓子のお家   作:深緑の古龍

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この章はポルの昔話となります。


五章 旅の理由

・・俺が生まれたのは、地図にも載っていないような、小さな村の一軒家だった。

もともと父親は居なくって、母さんと妹と俺の、三人暮らしだった。

村はとても貧しくて、その日食べるものがあるかすら危ういような所だった。

畑の作物は固い土のせいでほとんど育たず、俺達はいつも飢えていた。

山に近い位置に村はあったが雨は降らず、水ですら満足に飲むことが出来なかった。

妹のトルテは、いつも空腹や喉の乾きを訴えていた。

ろくに食事など取れていないにも関わらず、トルテの腹はぷっくりと膨らんでいた。

「……ママ、お腹すいたよぉ・・」

トルテがそう言うと、母さんは自分の食事与えようとしていた。

「母さん、俺の分をトルテにあげるから、母さんは食べなよ。・・ほら、トルテ。俺の分を分けてやるよ」

俺はそう言って、よくトルテに食事を譲っていた。

……その頃の俺は、今よりもっと痩せ細っていたはずだ。

トルテと同じように、腹が出ていたのを覚えている。

母さんはそんな俺達に「ごめんねごめんね」と何度も謝ってきたけど、俺は母さんとトルテがいるだけで幸せだった。

二人が居てくれるなら、ほかに何も要らなかった。

 

その日は、俺の十歳の誕生日だった。

その日の食卓に並んだのは、見たことのない御馳走の数々だった。

ふんわり焼き上がった、柔らかそうなパン。

美味しそうな匂いのするスープに、綺麗に装飾されたケーキ。

中でも一番目を引いたのは、こんがり焼かれた、大きな大きな肉の塊だった。

・・・なんの肉だったのかは、今になってやっとわかった。

でも、俺はそこで生まれてはじめて肉と言うものを見た。

妹のトルテは、その肉をさも美味しそうな食べていた。

母さんもまた、そんなトルテを嬉しそうに見ながら、肉を食べていた。

・・・俺は、どうしてかその肉を食べることができなかった。

母さんはそんな俺を心配してきたけど、適当に理由をつけてはぐらかした。

 

きっと、それは正しかった。

ケーキを食べ終えてから、母さんは俺にプレゼントを渡してくれた。

トルテがそれを羨ましがって、母さんが「誕生日なあげるから」と言っていたのを、今でも覚えている。

俺が、プレゼントの箱を開けようとした、その時だった。

突然、村の男達と共に知らない大人達が家に入ってきた。

大人達は、母さんを取り押さえてつれていこうとした。

驚いた俺は、「母さんを離せ!!」と叫んで大人達に殴りかかろうとした。

…もちろん、小さかった俺が大人達の力に敵うわけがなく、壁に突き飛ばされた。

大人達は、どういうわけか俺とトルテまで取り押さえてきた。

けれど俺が捕まっていたのはほんの数分で、すぐに俺だけが放された。

村の男達に、俺は押さえつけられた。

俺は、母さんとトルテが大人達に無理矢理つれていかれるところを、ただ見ていることしか出来なかった。。。




一回で収まった!!
次から、本編に戻ります。
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