・・俺が生まれたのは、地図にも載っていないような、小さな村の一軒家だった。
もともと父親は居なくって、母さんと妹と俺の、三人暮らしだった。
村はとても貧しくて、その日食べるものがあるかすら危ういような所だった。
畑の作物は固い土のせいでほとんど育たず、俺達はいつも飢えていた。
山に近い位置に村はあったが雨は降らず、水ですら満足に飲むことが出来なかった。
妹のトルテは、いつも空腹や喉の乾きを訴えていた。
ろくに食事など取れていないにも関わらず、トルテの腹はぷっくりと膨らんでいた。
「……ママ、お腹すいたよぉ・・」
トルテがそう言うと、母さんは自分の食事与えようとしていた。
「母さん、俺の分をトルテにあげるから、母さんは食べなよ。・・ほら、トルテ。俺の分を分けてやるよ」
俺はそう言って、よくトルテに食事を譲っていた。
……その頃の俺は、今よりもっと痩せ細っていたはずだ。
トルテと同じように、腹が出ていたのを覚えている。
母さんはそんな俺達に「ごめんねごめんね」と何度も謝ってきたけど、俺は母さんとトルテがいるだけで幸せだった。
二人が居てくれるなら、ほかに何も要らなかった。
その日は、俺の十歳の誕生日だった。
その日の食卓に並んだのは、見たことのない御馳走の数々だった。
ふんわり焼き上がった、柔らかそうなパン。
美味しそうな匂いのするスープに、綺麗に装飾されたケーキ。
中でも一番目を引いたのは、こんがり焼かれた、大きな大きな肉の塊だった。
・・・なんの肉だったのかは、今になってやっとわかった。
でも、俺はそこで生まれてはじめて肉と言うものを見た。
妹のトルテは、その肉をさも美味しそうな食べていた。
母さんもまた、そんなトルテを嬉しそうに見ながら、肉を食べていた。
・・・俺は、どうしてかその肉を食べることができなかった。
母さんはそんな俺を心配してきたけど、適当に理由をつけてはぐらかした。
きっと、それは正しかった。
ケーキを食べ終えてから、母さんは俺にプレゼントを渡してくれた。
トルテがそれを羨ましがって、母さんが「誕生日なあげるから」と言っていたのを、今でも覚えている。
俺が、プレゼントの箱を開けようとした、その時だった。
突然、村の男達と共に知らない大人達が家に入ってきた。
大人達は、母さんを取り押さえてつれていこうとした。
驚いた俺は、「母さんを離せ!!」と叫んで大人達に殴りかかろうとした。
…もちろん、小さかった俺が大人達の力に敵うわけがなく、壁に突き飛ばされた。
大人達は、どういうわけか俺とトルテまで取り押さえてきた。
けれど俺が捕まっていたのはほんの数分で、すぐに俺だけが放された。
村の男達に、俺は押さえつけられた。
俺は、母さんとトルテが大人達に無理矢理つれていかれるところを、ただ見ていることしか出来なかった。。。
一回で収まった!!
次から、本編に戻ります。